「源泉徴収票の発行は義務なのか」という疑問を抱かれている方に対して、この記事では源泉徴収票が義務であるかどうかは勿論、罰則や交付タイミングなどをまとめて解説します。
源泉徴収票の主な項目や書き方、電子交付の条件などもご紹介していくため、ぜひ最後までご確認ください。
源泉徴収票の交付は義務なのか
はじめに源泉徴収票の交付が義務であるのかについて、確認していきましょう。
源泉徴収票の交付は義務
源泉徴収票とは、従業員が1年間で得た総収入と納付した所得税額が記載されている書類であり、法的に交付が義務付けられています。
所得税法226条の規定により、給与支払者はその年において支払いが確定した給与と所得税について、雇用している各従業員に対して源泉徴収票を交付しなければなりません。
正社員だけでなく、アルバイトや契約社員なども対象となる点には注意してください。
源泉徴収票の交付を怠った場合の罰則
源泉徴収票は所得税法によって交付が義務付けられた書類であるため、交付を怠った場合は、当然罰則が科されます。
具体的には所得税法242条の規定により、1年以下の懲役、又は50万円以下の罰金が科されることになるでしょう。
上記の罰則は交付を怠った場合だけでなく、虚偽の内容を記載して交付した場合も同様に適用される点は留意してください。
源泉徴収票を発行するタイミング
源泉徴収票は対象期間となる翌年の1月31日までに発行しなければなりません。
例えば2023年1月〜12月分を対象とする源泉徴収票は、2024年1月31日までに交付することになります。
また従業員が退職した場合も発行が必要であり、退職日以後一か月以内に交付しなければなりません。
その他、従業員からの交付依頼があった場合も対応する必要があるため、各年度におけるデータを適切に保管しておき、いつでも発行できるようにしておくこともポイントです。
税務署に提出が必要な源泉徴収票について
源泉徴収票は特定条件を満たした場合は、従業員だけでなく税務署にも提出する必要があります。
例えば、以下のようなケースが該当するでしょう。
- 対象年における給与などの支払金額が150万円を超える法人の役員や顧問
- 対象年における給与などの支払金額が250万円を超える弁護士や司法書士、税理士
- 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した者で、主たる給与などの金額が2000万円を超えるため年末調整をしなかった者
税務署への提出を行った場合や、虚偽の内容で提出した場合は、先に挙げた罰則が適用されます。
【補足】源泉徴収票の保管は義務ではない
源泉徴収票は交付こそ義務付けられていますが、保管義務はありません。
ただし、源泉徴収票と関連する以下のような書類は保管が義務付けられています。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 所得金額調整控除申告書
これらの書類は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保管することが求められており、税務署長から提出が求められた場合は提出しなければなりません。
源泉徴収の基本知識
源泉徴収票の概要や交付義務について確認いただいたところで、そもそも源泉徴収とは何かについておさらいしておきましょう。
源泉所得税とは
源泉所得税とは、給与支払者が従業員の給与から天引きし、従業員に代わって国に納付する所得税のことです。
この源泉所得税を毎月の給与などから差し引くことを源泉徴収と呼びます。
本来1月1日〜12月31日までの総所得に対して所得税が発生しますが、毎月の給与などから分散して徴収することで、納税漏れなどを防止していると言えるでしょう。
源泉徴収義務者とは
源泉徴収義務者とは、源泉徴収の義務が課されている組織や個人のことです。
会社や個人だけではなく、以下のような組織も源泉徴収義務者となります。
- 学校
- 官公庁
- 社団
- 財団
上記のような組織でも従業員や職員に対して給与を支払うケースが多いため、源泉徴収義務者に該当すると言えるでしょう。
源泉徴収の対象
源泉徴収が必要になるのは、従業員に支払う給与だけではありません。
以下のような個人に支払う報酬や料金についても、源泉徴収の範囲となります。
- 原稿料や講演料
- 弁護士や公認会計士などに支払う報酬
- モデルやプロスポーツ選手などに支払う報酬
- 映画や演劇などへの出演にかかる報酬
詳細については以下の国税庁のページをご確認ください。
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
源泉徴収票の作成方法と注意点
ここからは源泉徴収票の作成方法と注意点をご紹介します。
源泉徴収票の主な項目
源泉徴収票の書き方について確認する前に、源泉徴収票の主な項目を確認しておきましょう。
源泉徴収票に記載する主な項目は以下のとおりです。
- 給与の総支払額
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除額の合計額
- 源泉徴収税額
- 控除対象配偶者の有無等
- 控除対象扶養親族の数
- 16歳未満扶養親族の数
- 障害者の数
- 社会保険料等の金額
- 生命保険料の控除額
- 地震保険料の控除額
その他、詳細な項目については以下のページからフォーマットをご確認ください。
源泉徴収票の書き方
源泉徴収票の書き方としては、大きく以下の流れになります。
- 給与所得者に関する情報を記載する
- 支払総額と給与所得控除後の金額を記載する
- 所得控除額の合計額を記載する
- 源泉徴収税額を記載する
- 控除対象配偶者や扶養親族といった扶養に関する情報を記載する
- 社会保険の金額や生命保険などの控除額を記載する
上記で示した流れはあくまで目安であり、それぞれの項目に漏れがなければ自由に記載しても構いません。
また作成する際は該当するデータをすぐに参照できるようにしておくことで、効率よく作成できるでしょう。
源泉徴収票を作成する際の注意点
源泉徴収票を作成する際の注意点としては以下の点が挙げられます。
マイナンバーの記載について
源泉徴収票を作成する際、交付対象によってマイナンバーの必要性の有無が変わります。
給与や報酬を支払った従業員や個人に対して交付する場合は、マイナンバーは記載しません。
対して税務署側に提出する源泉徴収票にはマイナンバーの記載が求められます。
通勤手当の扱いについて
給与所得者に支給する通勤手当は非課税となっているため、支払金額の総額を計算する際、通勤手当は含まないようにしましょう。
ただし、それぞれの通勤手当については非課税限度額が設けられています。
もし限度額を超過した場合は、超過分の金額が課税対象となるため注意してください。
源泉徴収票は電子化が可能
最後に源泉徴収票を電子交付するための方法や注意点についてご紹介します。
源泉徴収票を電子交付するには
源泉徴収票を電子交付する場合は、所得税法施行令353条の規定により、あらかじめ交付対象者に対して電子交付に用いる方法や内容を説明した上で、電子交付の承諾を得る必要があります。
そのため電子交付を行う際は、従業員に同意書を提出してもらうなどの手続きを設けるとよいでしょう。
同意が得られた後は、電子メールへの添付といった形で交付することが可能です。
電子交付する際の注意点
電子交付する際の注意点についても確認しておきましょう。
電子交付を行う場合は事前に承諾を得る必要があると解説しましたが、もし交付対象者から承諾が得られたとしても、途中で書面交付に切り替えなければならないケースがあります。
具体的には、書面による交付の申請があった場合や電子交付の拒否があった場合が挙げられ、これらのケースでは電子交付ができないため注意しましょう。
まとめ
今回は源泉徴収票の交付義務をテーマに、罰則や発行すべきタイミング、作成方法などをまとめて解説しましたが、いかがでしたか。
源泉徴収票の作成や交付は、従業員に対して給与を支払っている以上、避けては通れません。
また正社員だけでなく、アルバイトやパート社員など、雇用形態に関わらず交付する必要があります。
交付漏れによる罰則や従業員とのトラブルを避けるためにも、正しい知識を押さえた上で源泉徴収票の作成や交付に取り組みましょう。
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