銀行の振込手数料が安くなる!という話を耳にした方も多いと思います。
2021年10月1日からの銀行間手数料の引き下げにともない、ほとんどの金融機関が他行宛の振込手数料の値下げを発表しています。
今、どうして値下げがおこなわれるのでしょうか?
私たちが普段使っている銀行ではどのような変化があるのでしょうか?
今回は銀行振込手数料の値下げの背景と、その影響についてまとめてみました。
銀行振込の仕組みと全銀ネット・全銀システムについて
まず、銀行振込の仕組みについて簡単に解説します。
銀行間で振込をおこなう際、送金側の銀行(仕向け)と受取側の銀行(被仕向け)の間では、全銀ネット(全国銀行資金決済ネットワーク)の全銀システムを使った取引がおこなわれています。
全銀ネット
全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)では、金融機関相互間の内国為替取引をオンライン処理する「全銀システム」に加え、企業間の振込電文に様々なEDI情報(支払通知番号・請求書番号など)を添付可能とする「全銀EDIシステム(ZEDI)」を運営しています。
全銀システム
全銀ネットは、銀行間の内国為替取引をオンライン・リアルタイムで中継するとともに、取引に伴う資金決済を行うための銀行間ネットワークシステム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」を運営しています。
引用元:全国銀行資金ネットワーク
全銀システムは銀行から送られてきた為替取引に関するデータをリアルタイムで処理し、受取人の取引銀行に送信します。また銀行からの振込指図などの為替決済も集計し、日本銀行に送信しています。
こういったシステムがあることで、私たちは日々安心して取引をおこなうことができます。
銀行間手数料とは
銀行間手数料とは、送金側の銀行(仕向け)から受取側の銀行(被仕向け)に支払われる料金のことをいい、この銀行間手数料が、利用者が負担する振込手数料のベースとなっています。
本来、銀行間手数料は個別銀行間の協議により定められるとされていますが、公正取引委員会の「QRコード等を用いたキャッシュレス決済に関する実態調査報告書」によると、実際には、一般の振込で3万円未満が117円(税抜)、3万円以上が162円(税抜)と、すべての銀行が横並びで40年以上変わらずに据え置かれていました。
全銀ネットは2021年10月1日より、この銀行間手数料を廃止して「内国為替制度運営費」を新設し、送金側の銀行(仕向け)から受取側の銀行(被仕向け)に支払われる為替取引1件あたりの手数料を送金額に関わらず一律「62円(税抜)」にすることとしました。
受取側の銀行(被仕向け)の為替取引に要するコスト(「被仕向け対応コスト」)が50円とされ、このなかには全銀システムの提供元であるNTTデータに支払う全銀システム経費も含まれます。
残りの12円が受取側の銀行(被仕向け)において、為替事業の継続に必要な利益相当分(「為替事業利益相当分」)とされています。
なお、「内国為替制度運営費」が合理的な水準であることを維持するため、5年に一度、被仕向け対応コストおよび為替事業利益相当分を算定のうえ見直しをおこなう、とされています。
銀行間手数料引き下げの背景
今回の銀行間手数料の見直しには、次のような背景があります。
キャッシュレス決済の普及推進
キャッシュレス決済の利用シーンが拡大するなか、キャッシュレス決済を提供する店舗への売上の入金も銀行振込によっておこなわれており、この場合も全銀システムが使われているため振込手数料が発生しています。
現状ではほとんどの場合、この振込手数料はキャッシュレス決済事業者が負担しており、キャッシュレス決済普及の障害となっていました。
そこで政府が2020年7月17日に閣議決定した「成長戦略実行計画」および「成長戦略フォローアップ」に、銀行間手数料を全銀ネットが定める仕組みに統一し、コストを適切に反映した合理的な水準への引き下げを実施することが盛り込まれました。
実務コストの低下
銀行間手数料が設定された当時、ほとんどの業務は紙を使って手作業でおこなわれていましたが、現在ではデジタル化・自動化が進んでおり、長いあいだ実務コストを大幅に上回った設定のまま、銀行間手数料は支払われ続けていました。
2020年4月、この状況を問題視した公正取引委員会が報告書をまとめ、銀行業界に見直しを要求していました。
振込手数料への影響
銀行間手数料は2021年10月1日より一律62円(税抜)に引き下がることが決定していますが、私たちが実際に支払うことになる振込手数料の金額や変更時期は、あくまで各金融機関が決定することになっています。
これまでに発表されている主要な銀行の手数料改定について以下にまとめました。
みずほ銀行
法人向けEB
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 490円 | ▼60円 | |
3万円以上 | 660円 | ▼110円 |
自動送金サービス
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 380円 | ▼60円 | |
3万円以上 | 550円 | ▼110円 |
みずほダイレクト
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 150円 | ▼70円 | |
3万円以上 | 320円 | ▼120円 |
ATM(カード)
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 270円 | ▼60円 | |
3万円以上 | 330円 | ▼110円 |
ATM(現金)
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 380円 | ▼60円 | |
3万円以上 | 550円 | ▼110円 |
窓口
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 710円 | ▼60円 | |
3万円以上 | 880円 | ▼110円 |
※料金には消費税が含まれています
三菱UFJ銀行
EB(CAMS,U-LINE,BizSTATION,電子記憶媒体,FAX)
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 484円 | ▼66円 | |
3万円以上 | 660円 | ▼110円 |
定額自動送金サービス
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 264円 | ▼66円 | |
3万円以上 | 550円 | ▼110円 |
三菱UFJダイレクト
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 154円 | ▼66円 | |
3万円以上 | 220円 | ▼110円 |
ATM(カード)
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 209円 | ▼66円 | |
3万円以上 | 330円 | ▼110円 |
ATM(現金)
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 374円 | ▼66円 | |
3万円以上 | 550円 | ▼110円 |
窓口
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 594円 | ▼66円 | |
3万円以上 | 770円 | ▼110円 |
※料金には消費税が含まれています
三井住友銀行(2021年11月1日から順次変更)
法人向けインターネットバンキング(Web21ライト)
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 330円 | ▼120円 |
法人向けインターネットバンキング(Web21ライト以外)
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 495円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 660円 | ▼110円 |
SMBCダイレクト
振込金額 | 改訂前※1 | 改定後※1 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 330円 | ▼110円 |
ATM(カード)
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 330円 | ▼110円 |
ATM(現金)
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 385円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 550円 | ▼110円 |
窓口
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 710円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 880円 | ▼110円 |
※料金には消費税が含まれています
りそな銀行(2021年11月1日から改定)
振込の種類 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
インターネットバンキング マイゲート(個人) | 165円 | ▼55円 | |
インターネットバンキング ビジネスダイレクト(法人) | 605円 | ▼55円 | |
窓口 | 770円 | ▼110円 |
※料金には消費税が含まれています
ゆうちょ銀行(2021年11月1日から改定)
ゆうちょダイレクト
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
5万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
5万円以上 | 165円 | ▼275円 |
ゆうちょBizダイレクト
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
5万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
5万円以上 | 165円 | ▼275円 |
総合振り込み
振込金額 | 11月以前 | 11月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
5万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
5万円以上 | 165円 | ▼275円 |
※料金には消費税が含まれています
イオン銀行
種類 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
インターネットバンキング | 110円 | ▼110円 | |
ATM(カード) | 132円 | ▼88円 | |
現金(5万円未満) | 374円 | ▼66円 | |
現金(5万円以上) | 550円 | ▼110円 |
※料金には消費税が含まれています
セブン銀行
ビジネスweb
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 165円 | ▼275円 |
ビジネスPC
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 165円 | ▼55円 | |
3万円以上 | 165円 | ▼275円 |
種類 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
総合振込 | 165円 | ▼275円 | |
給与振込 | 165円 | ▼55円 | |
リアルタイム振込 | 165円 | ▼55円 |
種類 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
ダイレクトバンキングサービス | 165円 | ▼55円 | |
ATM | 165円 | ▼55円 |
※料金には消費税が含まれています
インターネット専業銀行
PayPay銀行
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
【法人】3万円未満 | 160円 | ▼16円 | |
【法人】3万円以上 | 160円 | ▼115円 | |
【個人】3万円未満 | 145円 | ▼31円 | |
【個人】3万円以上 | 145円 | ▼130円 |
楽天銀行
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 145円 | ▼23円 | |
3万円以上 | 145円 | ▼117円 |
GMOあおぞらネット銀行
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 145円 | ▼21円 | |
3万円以上 | 145円 | ▼116円 | |
個人取引 | 86円 | ▼71円 |
振込料金とくとく会員(月額プラン) | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
月額利用料 | 500円/月 | ▼1480円 | |
他行宛て振込手数料 | 135円 | ▼25円 |
住信SBIネット銀行
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 145円 | ▼15円 | |
3万円以上 | 145円 | ▼105円 | |
個人取引 | 88円 | ▼69円 |
ソニー銀行
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
一律料金 | 110円 | ▼110円 |
auじぶん銀行
振込金額 | 10月以前 | 10月以降 | 下り幅 |
---|---|---|---|
3万円未満 | 99円 | ▼79円 | |
3万円以上 | 99円 | ▼184円 |
※料金には消費税が含まれています
地方銀行・信用金庫
全国のほとんどの地方銀行および信用金庫も、振込手数料引き下げの発表をしています。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、40年以上変わらなかった銀行間手数料の見直しによる振込手数料の引き下げについてまとめました。
なお、給与・賞与の振込については内国為替制度運営費の設定対象外ということですので、給与振込や賞与振込の手数料に変化はなさそうですが、毎月の支払いなどの振込手数料が下がるのは企業としても個人としてもうれしいですよね。
振込手数料の改定時期や下げ幅は金融機関ごとに異なるので、よく使う銀行や取引のある銀行の手数料改定がどのようになるか、ぜひチェックしてください。