税制改正で基礎控除・給与所得控除などの見直しがおこなわれたことにより、昨年(令和2年/2020年)の年末調整では控除申告書の様式が大幅に変更されました。(昨年の変更点について詳しくはこちら 【令和2年/2020年】年末調整が大きく変わる?!変更点・電子化について詳しく解説

今年(令和3年/2021年)からの変更点については現在国税庁のホームページにて「源泉所得税の改正のあらまし」が公開されていて、政府が昨年から推進している年末調整手続の電子化をさらに加速させるような内容も含まれています。

リモートワークや新しい生活様式が定着しつつあるなか、年末調整の電子化について「今年こそは!」という思いをお持ちの方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、令和3年(2021年)の年末調整から適用となる新たな変更点と、政府が推奨する年末調整手続の電子化に必要な準備について解説します。

令和3年の年末調整に関わる変更点

税務署への事前申請が不要に

従業員の年末調整申告書を電子データで受付・回収する場合、これまでは事前に所轄の税務署長に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要がありました。

通常は申請した翌々月からデータでの受付が可能となるため、例えば11月から受付したい場合は9月中に税務署への事前申請が必要でしたが、今年からはこの事前申請が不要となります。

これまで事前申請を忘れて電子化のタイミングを逃してしまっていたり、事前申請そのものを手間に感じていた方には、良い改正ではないでしょうか。政府としても、手順を簡略化することで年末調整電子化に対するハードルを下げる狙いがあると考えられます。

▽不要となった「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書

▽電子データで受け取る際に事前申請が不要となった申告書

 ※令和3年4月1日以後に提出する申告書に適用されます。

  • 給与所得者の扶養控除等申告書
  • 従たる給与についての扶養控除等申告書
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • 給与所得者の基礎控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
  • 所得金額調整控除申告書
  • 退職所得の受給に関する申告書
  • 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書

参考:【国税庁】源泉所得税の改正のあらまし

税務関係書類への押印義務廃止

政府が進める「脱はんこ」の流れの一環か、税務関係書類における押印義務の見直しがおこなわれ、税務署長等に提出する源泉所得税関係書類についても押印が不要となりました。

国税庁のサイトには「国税庁ホームページに掲載している申告書等の様式については、順次、押印欄の無い様式に更新しています。」と記載されており、例えば「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」については、すでに押印欄の無い様式に更新されたものが公開されています。

【令和2年分】給与所得者の扶養控除等申告書(押印欄あり)

【令和3年分】給与所得者の扶養控除等申告書(押印欄なし)

参考:【国税庁】税務署窓口における押印の取扱いについて

政府による年末調整手続の電子化(電子申告)推進の取り組み

昨年(令和2年分)は保険会社等の控除証明書が電子データで取得・提出できるようになり、今年からは企業から税務署への事前申請が不要になるなど、国を挙げて様々な方面から年末調整手続の電子化が促進されています。

ここでは上記以外の、電子化に向けた取り組みについて紹介します。

年末調整控除申告書作成用ソフトウェア「年調ソフト」の無料提供

年末調整の電子化を推進する取り組みの一環として、「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」のPC用ソフト、スマートフォン用アプリが、昨年10月から国税庁のホームページにて無償で提供されています。

従業員それぞれの端末へこの「年調ソフト」をインストールし、各控除証明書の電子データをインポートしてもらうことで、会社へ提出する年末調整の控除申告書の電子データや書面を簡単に作成することができます。従業員の書類作成の手間が少なくとも手書きよりは軽くなること、会社側の控除証明書原本含めた書類回収・管理の手間や各書類の印刷費用を軽減できること、なにより特別な専用ツールを購入しなくても無料で利用できることは大きなメリットといえるでしょう。

ただし、個々の提出状況を管理するような機能はないため、状況の確認や催促などの管理業務は残りますので、これらはこれまで通りおこなうことになります。

参考:【国税庁】年末調整手続の電子化に向けた取組について

支払調書の電子提出義務の拡大

企業が税務署に提出する「給与所得の源泉徴収票」などの法定調書について、前々年の当該法定調書の提出枚数が100枚以上だった場合、令和3年(2021年)1月1日以降の提出分からはe-Tax又は光ディスク等による電子提出が義務となりました。

令和2年までの判断基準は前々年1,000枚以上だったため、電子提出が義務づけられる対象が大幅に拡大されたことになります。新たに対象となった企業の方も多かったのではないでしょうか。

出典:【国税庁】e-Tax又は光ディスク等による提出義務基準の引下げについて

今年がチャンス!年末調整を電子化するための準備

では実際に、今年から年末調整を電子化するために必要な準備を確認してみましょう。前述のとおり税務署への事前申請は不要となりましたので、今年からは準備のハードルが一段下がっています。

①申告書データ作成に使うソフトを決める

先ほどご紹介した「年調ソフト」ももちろん使用できますが、出力される「年末調整申告書XMLデータ」の仕様は政府から公開されているため、申告書データは「年調ソフト」に限らず、同様の仕組みを取り込んだ民間企業のソフトウェアを利用して作成することもできます。

企業によっては、現在すでに利用している給与システムの提供会社が、申告書作成ソフトの提供を開始している可能性もあります。個々の提出状況まで給与システム内で管理できれば、年末調整関連の業務はかなり楽になるのではないでしょうか。ぜひ事前に確認してみてください。

②早めに従業員へ周知する

従業員からの事前承諾は特に必要はありませんが、各種控除証明書を電子データで取得・提出してもらう必要があるため、周知は早目におこなっておきましょう。全員が電子データでなくても、すべての書類が電子データでなくても受付できる旨も併せて説明すれば、従業員の不安も小さくなるはずです。

参考:【国税庁】年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ
(一部、今年の変更点が反映されていない内容も含まれます)

各種控除証明書の電子データは契約している保険会社のホームページ等から取得でき、政府が推奨する「マイナポータル連携」を活用すれば、複数の控除証明書等データの一括取得や各種申告書への自動入力も可能になります。

「マイナポータル連携」自体は必須ではありませんが、従業員の手間を確実に軽減できるのでおすすめです。ただしまだマイナンバーカードを持っていない場合、発行には現在2ヶ月ほどかかるとアナウンスされていますので、オプション的な要素として周知しておいたほうが良いかもしれません。

参考:【国税庁】マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡便化

【電子化をはじめる場合の年末調整業務フロー】
  1. 人事労務担当:従業員へ電子化する旨の説明
  2. 全社員   :申告書作成ソフト(アプリ)のインストール
  3. 人事労務担当:従業員へ申告方法などの説明
  4. 従業員   :年末調整申告書と各種控除証明書をデータ提出
  5. 人事労務担当:申告書の内容確認・差し戻し・再確認
  6. 人事労務担当:給与システムにデータを読み込み年末調整の計算
  7. 人事労務担当:翌年1月31日までに各種法定調書を税務署に提出

まとめ

いかがでしたか?今回ご紹介した、今年の年末調整から変更される点は以下の2つです。

  • 年末調整申告書を電子化する際の、税務署への事前申請が不要になった
  • 年末調整書類を含め、税務関係書類への押印が不要になった

世の中の変化に合わせて、様々な手続きが合理的に簡略化されてきている印象を受けますね。年末調整においては、「とりあえず従業員からもらうデータを電子化できればいい」という状態であれば、国税庁から提供されている無料の「年調ソフト」を大いに活用しましょう。

ただし、提出状況の管理などの関連業務にも課題感を持っているなら、自社の課題にあったソフトウェアを探してみても良いかもしれません。いずれにしろ、「今年も電子化できなかった…」と後悔することのないよう、この機会に準備を進めてみてはいかがでしょうか。

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