新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降、「テレワークありき」の新しい働き方への対応が求められています。最近では、政府が「テレワーク推進の妨げになる」として「ハンコ不要」の見解を示し、大きな注目を集めました。

ハンコ以外にも、テレワークの障害となりうる慣例や作業は色々あります。その1つが、「書類の発送業務」です。書類の印刷・発送業務が必要な場合、担当者は出勤せざるを得ません。従業員へ毎月発行する給与明細についても、印刷して紙で交付している企業もまだまだ多いのではないでしょうか?

給与明細のWeb化を行えば、テレワークでも発行・交付が可能となり、新型コロナウイルスの感染拡大防止や業務の効率化にも繋がります。そこで今回は、給与明細のWeb化についてご紹介します。

給与明細のWeb化は法律面では問題ない?

所得税法では

給与明細のWeb化は、所得税法において問題ありません。平成18年度の税制改正により、平成19年度1月1日から、一定の要件の下で「電磁的方法」による給与明細の交付が可能となりました。

法律で認められている「電磁的方法」
  1. 電子メールを利用する方法
  2. 社内LAN・WANやインターネット等を利用して閲覧に供する方法
  3. フロッピーディスク、MO、CD-ROM等の磁気媒体等に記録して交付する方法

参照元:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A」2.事前承諾 問6の答

労働基準法では

給与明細のWeb化は、労働基準法においても問題ありません。給与を口座振込で支払う場合、行政通達により賃金の支払いに関する計算書を交付するよう義務付けられていますが、書面での交付は定められていません。

使用者は、口座振込み等の対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払に関する計算書を交付すること

(1) 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額

(2) 源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料額等賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額

(3) 口座振込み等を行った金額

引用元:H10.9.10基発第530号

その他の法律では

健康保険法・厚生年金保険法・労働保険の保険料の徴収等に関する法律においても、給与明細のWeb化は問題ありません。保険料の控除に関する計算書の作成と通知が義務付けられていますが、これらの法律でも書面での交付は定められていません。

事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

引用元:健康保険法(保険料の源泉控除) 第167条3項

事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

引用元:厚生年金保険法(保険料の源泉控除) 第84条3項

事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、前条第一項又は第二項の規定による被保険者の負担すべき額に相当する額を当該被保険者に支払う賃金から控除することができる。この場合において、事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を当該被保険者に知らせなければならない。

引用元:労働保険の保険料の徴収等に関する法律(賃金からの控除)第32条

給与明細Web化のメリット

発送業務をなくしてテレワークを促進

テレワークを導入したら、従来手渡ししていた給与明細の発送業務が新たに必要になった…なんてことも、意外とあるのではないでしょうか。給与明細をWeb化すれば、印刷・発送業務が不要となるので、担当者が発送業務のためにわざわざ出勤してくる必要がなくなります。

Web給与明細システムの多くは、CSVファイルのインポートに対応しているので、給与計算ソフトで出力した給与データをCSVで読み込むだけで給与明細を発行できます。また、交付や通知もWeb給与明細システムからメールなどで行えるため、場所を選ばず業務を進めることができます。

経費削減

紙で給与明細を発行し従業員へ発送する場合、紙代・封筒代・郵送費と、発送業務にあたる人件費がかかります。給与明細をWeb化することで、ペーパーレス化を促進し、給与明細の発行・発送にかかっていた経費を丸ごと削減することができます。

紛失のリスクをゼロに

給与明細を紙で交付した場合、従業員が紛失する可能性があり、個人情報の流出にもなりかねません。また紙で発行している場合は、再発行の要望にも対応する必要があり、いちいち手間がかかります。

給与明細をWeb化すれば、従業員が紛失するリスクはゼロに等しくなります。また過去の給与明細が必要になった場合にも従業員が自身で出力すれば済むため、再発行にかかる手間をなくすこともできます。

給与明細をWeb化する際の注意点

従業員の同意が必要

給与明細をWeb化する場合、所得税法により従業員から同意を得ることが義務付けられています。ただし、同意は受給者個人単位で確認できればよく、全従業員からの同意を得ないと「給与明細のWeb化ができない」というわけではありません。

給与等、退職手当等又は公的年金等の支払者(交付者)が電子交付するためには次のことが必要です。

①受給者(交付を受ける者)に対し、あらかじめ、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、電磁的方法又は書面で承諾を得ること

引用元:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A」1.基本的な事項 問2の答

同意確認には同意書を取得する必要がありますが、Web給与明細システムの中には、ログイン時に各従業員の同意を確認する機能が付いているものもあります。

同意してもらえない場合

何かしらの事情により同意が得られない場合もあります。紙での交付を希望する従業員には、紙に印刷し対応する必要があります。Web給与明細システムの提供会社によっては、発送希望の受付・発送業務の対応を行ってくれるところもあります。

同意していない従業員の中には、特に理由もなく「面倒臭そう」と思い込んでしまっている可能性もあります。そのため、従業員がWeb化のメリットを理解できるよう、利便性を丁寧に説明し、同意取得に努めることも重要になります。

まとめ

テレワークが当たり前となってきている昨今、様々な手続きがWeb上で完結できるように整備され、給与明細のWeb化も当たり前となりつつあります。

企業側のメリットもさることながら、給与明細をいつでも・どこでも確認できるようになることは、従業員にとって非常に便利で大きなメリットになるはずです。

同意確認の機能や発送対応など、提供会社により機能は様々です。自社にあうWeb給与明細システムを見つけて、ぜひ検討してみてください。

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