2021年(令和3年)3月1日より、障害者の法定雇用率が引き上げられます。当初は2021年1月1日からの予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響などを考慮し、2ヶ月後ろ倒しとなりました。
法定雇用率の引き上げに伴って雇用義務が生じる民間企業の事業主の範囲(労働者の数)も変わるため、今まで雇用義務の対象とならなかった事業主も、3月からは対象となる可能性があります。
今回は、3月1日から適用される改正内容のほか、実施されている障害者雇用の支援策などについて紹介します。
法定雇用率の引き上げ
冒頭でもお伝えした通り、障害者雇用率制度の改正により、2021年3月からは各事業者区分に応じた法定雇用率が0.1%ずつ引き上げられます。
事業主区分 | 現行 | 令和3年3月1日以降 |
---|---|---|
民間企業 | 2.2% | 2.3% |
国、地方公共団体等 | 2.5% | 2.6% |
都道府県等の教育委員会 | 2.4% | 2.5% |
障害者雇用率は (障害者である労働者の数 ÷ 労働者の数) で計算されます。計算する際の注意点として、分子の「障害者である労働者」では、1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者1人は0.5人、重度身体障害者・重度知的障害者1人は2人として数え、重度身体障害者・重度知的障害者かつ短時間労働者の場合には1人として数えます。分母の「労働者の数」も同様に、1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者1人は0.5人として数え、20時間未満の労働者はカウントしません。
雇用義務となる対象事業主の範囲変更
法定雇用率の引き上げに伴い、雇用義務の基準となる従業員数(労働者の数)が45.5人以上から43.5人以上へ変わります。現状、従業員数が43.5人以上45.5人未満の事業主の方は、2021年3月から以下の実施義務が発生しますので、注意が必要です。
◆ 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければなりません。
引用:【厚生労働省】事業主のみなさまへ
◆ 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。
※障害者雇用推進者とは
障害者雇用を促進・継続するための環境整備、各種報告・届出、国との連絡窓口業務を担当します。
雇用率は企業全体で満たせばOK
障害者の法定雇用率は事業主(企業)単位での適用となるため、事業所が複数ある場合でも、企業全体で満たしていれば問題ありません。グループ会社の場合は原則として親会社・子会社それぞれで法定雇用率を達成させなくてはなりませんが、一定の要件を満たす子会社であれば「特例子会社制度」が適用されます。
特例子会社制度
以下の要件を満たす子会社の場合には、例外としてその子会社に雇用されている労働者を親会社の労働者として、実雇用率を算定することができます。
○ 特例子会社認定の要件
引用:【厚生労働省】「特例子会社」制度の概要
(1) 親会社の要件
○ 親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること。 (具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
(2) 子会社の要件
① 親会社との人的関係が緊密であること。 (具体的には、親会社からの役員派遣等)
② 雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること。
③ 障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること。(具体的には、障害者のための施設の改善、専任の指導員の配置等)
④ その他、障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること。
障害者雇用における支援
障害者雇用納付金制度による助成金
従業員100人以上の企業が法定雇用率を未達成の場合には、納付金が徴収されます。(100人以下の中小企業は、徴収されません。)
この徴収した納付金を財源として、法定雇用率を達成している企業に対する調整金や報奨金、障害者雇用を雇い入れる企業への助成金が支給されています。
参考:【厚生労働省】障害者雇用納付金制度の概要
【(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構】障害者雇用納付金制度の概要
障害者雇用安定助成金
障害者雇用安定助成金は、障害者の定着を図ることを目的に、障害特性に応じた雇用管理や雇用形態の見直し、柔軟な働き方などの工夫をする措置を行う事業主に対して助成するものです。
障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)
引用:【厚生労働省】障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~
職場定着支援計画を作成し、「柔軟な時間管理・休暇付与」「短時間労働者の勤務時間延長」「正規・無期転換」「職場支援員の配置」「職場復帰支援」「中高年障害者の雇用継続支援」「社内理解の促進」のいずれかの措置を講じた事業主に対して助成されます。 ※助成額は、措置ごとに異なります。
障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)
ジョブコーチ(職場適応援助者)による援助を必要とする障害者のために、支援計画に基づき企業在籍型ジョブコーチによる支援を実施する事業主に対して助成されます。
※訪問型ジョブコーチについては、ジョブコーチ支援を提供する社会福祉法人などが支給対象となります。
まとめ
いかがでしたか?今回は障害者雇用における法定雇用率の改正や、各支援策についてまとめました。
義務化の対象範囲が変更されることで、3月より新たに雇用義務が発生する事業主の方もいらっしゃるかと思います。新型コロナウイルス感染症の影響が続き大変な時期ではありますが、しっかりと対応できるよう準備をしておきましょう。