労働者の「うつ」などのメンタルヘルス不調を防止・早期発見することを目的として、50人以上の労働者がいる事業所では年に1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。

今回は、このストレスチェックについて実施の流れを紹介していきます。

▽ストレスチェック制度の実施対象についてはこちら

ストレスチェックに必要な準備とは

衛生委員会で内容を決める

まずは、産業医や衛生管理者を含む衛生委員会で、「だれが」「いつ」「どのように」ストレスチェック制度を実施するのか、などの内容を決めておく必要があります。

主な事項は以下の8点です。

話し合う必要がある事項(主なもの)

① ストレスチェックは誰に実施させるのか。
② ストレスチェックはいつ実施するのか。
③ どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか。
④ どんな方法でストレスの高い人を選ぶのか。
⑤ 面接指導の申出は誰にすれば良いのか。
⑥ 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか。
⑦ 集団分析はどんな方法で行うのか。
⑧ ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか。

引用元:【厚生労働省】ストレスチェック制度導入マニュアル 

決めた内容は社内規程に明文化し、すべての労働者に知らせることを徹底しましょう。

実施にあたり、実施体制・役割分担も決める必要があります。1人がいくつかの役割を兼任することも可能です。

実施体制の例

○制度全体の担当者
事業所において、ストレスチェック制度の計画づくりや進捗状況を把握・管理する者。

○ストレスチェックの実施者
ストレスチェックを実施する者。医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師の中から選ぶ必要があります。外部委託も可能です。

○ストレスチェックの実施事務従事者
実施者の補助をする者。質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務を担当します。外部委託も可能です。

○面接指導を担当する医師

引用元:【厚生労働省】ストレスチェック制度導入マニュアル

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者を決める

ストレスチェックの実施義務は事業者に課せられるものですが、ストレスチェックの実施者は事業者ではありません。上述の「実施体制の例」にも「医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要があります。」とありますが、ストレスチェックの実施者は労働安全衛生法で以下のように定められていて、産業医や外部委託が一般的になっています。

第六十六条の十 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

引用元:【総務省】電子政府の総合窓口 e-gov 労働安全衛生法 第六十六条の十

ストレスチェック実施者の補助をする実施事務従事者は社内から選ぶこともできますが、ストレスチェックを受ける労働者の解雇、昇進、異動に直接の権限を持つ監督的地位にある者、つまり上司や人事権をもつ従業員は、ストレスチェックの実施者にも、ストレスチェックの実施事務従事者にも、なることはできません。

秘密保持の体制を整える

ストレスチェックの実施者と実施事務従事者には、労働安全衛生法第104条に基づき、秘密保持の義務が課されます。実施者と実施事務従事者は、検査結果を含めた情報が上司や事業者を含めた第三者に漏れることのないよう、細心の注意を払わなければなりません。

第百四条 事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

引用元:【総務省】電子政府の総合窓口 e-gov 労働安全衛生法 第百四条

ストレスチェックの結果は企業内のキャビネットやサーバー等に保管することも可能ですが、無闇に第三者に閲覧されることがないよう、実施者もしくは実施事務従事者が、鍵やパスワードを厳重に管理しなくてはなりません。

ストレスチェック実施の流れ

ストレスチェックは、以下の3項目を満たす質問票を用いて実施します。労働者に紙で配布しての実施でも、オンライン上での実施でも、実施方法はどちらでも問題ありません。

  1. ストレスの原因に関する質問項目
  2. ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
  3. 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

労働者が回答した質問票は、ストレスチェック実施者または実施事務従事者が回収を行います。この時も、第三者や人事権を持つ者が内容を見てしまうことがないような実施体制を敷きましょう。

回収した質問票への回答に基づいて、医師などのストレスチェック実施者が各労働者のストレス状態を評価し、高ストレス者・面接指導が必要な労働者を選定します。

ストレス状態や高ストレス者に該当するかどうか、医師の面接指導が必要かどうかといった診断結果は、実施者から労働者本人に直接通知されます。結果は事業者へは共有されませんので、結果を知る必要がある場合は、労働者本人の同意が必要となります。

面接指導の実施について

高ストレス者と判断された労働者に対しては、医師による面接指導を受けるか否かの意思確認を行い、労働者の希望があれば面接指導を実施します。

どの労働者が高ストレス者か、面接指導を受けているか、等の状況は、事業者には共有されません。面接指導が実施された後、担当医師から業務上の処置について意見をもらったら、労働時間の短縮・業務量の調整など必要な措置を行うようにしましょう。

▽面接指導の実施について詳しくはこちら
【ストレスチェック】面接指導の対象者・必要な対応についてまとめて解説!

まとめ

いかがでしたか?今回は、ストレスチェック制度を実施する際の流れを紹介しました。

ストレスチェックを実施する大まかな流れは掴めたのではないでしょうか。ストレスチェック制度の義務は事業者にありますが、実施者=事業者でない点には注意が必要です。実施に当たっては秘密保持を徹底し、第三者や労働者の上司・人事担当者などに情報が漏れることがないような体制を整えましょう。