- 法定雇用率とは?
- 法定雇用率引き上げの内容は?
- 法定雇用率を達成する方法は?
この記事は上記のような疑問を抱いておられる方に向けて、法定雇用率の概要を解説した上で、引き上げの具体的な内容や対応方法について解説していきます。
最後に障がい者雇用の流れや募集方法などもご紹介していますので、ぜひ最後までご確認ください。
法定雇用率とは
まずは法定雇用率について基本的な内容をおさらいしておきます。
法定雇用率の概要
法定雇用率とは、企業や行政機関などにおいて達成が義務付けられている障がい者の雇用率のことです。
障害者雇用率制度において定められており、以下の数式で算出されることになります。
障がい者は一般労働者と比べ雇用の機会を得にくいと言えます。
そのためそういった状況を緩和し、障がい者であっても一般労働者と同じように雇用機会を得られるようにすることを目的とした制度と言えます。
法定雇用率と除外率
法定雇用率と関連した概念として除外率についても押さえておきましょう。
障がい者の雇用は確かに重要であるものの、職種によっては実際就労が難しいものがあるのも事実です。
そこで障がい者の就労が困難であるとされる業種において、法定雇用率で雇用労働者数を計算する際に、一定の労働者数を控除する制度が設けられました。
この制度が除外率制度であり、業種ごとに除外率が設けられ、それに相当する労働者数を控除できるようになっています。
除外率制度についてより詳しく知りたい方は、以下のサイトからご確認ください。
法定雇用率の現状と推移
法定雇用率の現状と、これまでの引き上げの推移についてもご紹介します。
民間企業における法定雇用率は現在2.3%となっていますが、制度が設けられて以降何度も引き上げられてきました。
当初は1.5%だった法定雇用率も、今では0.8ポイントも上昇していることがわかります。
それだけ障がい者の雇用機会創出に国が力を入れている証拠と言えるでしょう。
法定雇用率が未達成の場合の罰則
本記事の冒頭で、法定雇用率達成は企業に義務付けられていると解説しました。
義務である以上、懲役や罰金という形ではないものの、達成していない企業に対しては一定のペナルティが課されます。
具体的には法定雇用率を満たさない企業は障害者雇用納付金の納付が求められます。
障害者雇用納付金は、不足している障がい者一人につき月額50,000円となるため、不足している人数が多いほど納付すべき金額も多くなる点は留意しておきましょう。
法定雇用率が令和6年より段階的に引上げ
ここまでご紹介してきた法定雇用率は令和6年より更に引き上げられます。
ここからは引き上げの内容について確認しておきましょう。
法定雇用率の引き上げの内容
先ほど法定雇用率引き上げはこれまでも行われてきた旨をご紹介しましたが、令和6年から更に段階的に引き上げられることになります。
具体的には令和6年度より2.5%、令和8年度からは2.7%まで引き上げられます。
令和6年度の時点で1977年の法定雇用率1.5%よりも1%高くなり、最終的にはそこからさらに0.2ポイントの引き上げが実施されることとなり、企業側はより一層障がい者の雇用に務めなければなりません。
法定雇用率が引き上げられる背景
それではなぜ更に法定雇用率が引き上げられるのでしょうか。
法定雇用率が更に引き上げられる背景には、「障がい者の活躍の場を拡大する」という政策課題があります。
第123回労働政策審議会障害者雇用分科会にて提出された「障害者雇用対策基本方針の改正について」においても、障がい者の多様な就労ニーズを踏まえた働き方の推進や、障がい者雇用の質の向上といったことが見直しの要素として挙げられています。
これらの政策課題を解決する手段の一つとして、法定雇用率の引き上げがなされ、障がい者雇用への取り組み強化が図られたと言えるでしょう。
法定雇用率の引き上げに伴うその他の変更点
また法定雇用率の引き上げに伴い、除外率の引き下げや算定方法の変更も行われます。
除外率はこれまで設定されてきた業種ごとの除外率から、それぞれ10ポイント引き下げられることになります。
また算定方法も変更となり、以下の条件を満たした障がい者も対象として算定できるようになります。
- 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障がい者(1人分でカウント可能)
- 週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神・重度身体・重度知的障がい者(0.5人分でカウント可能)
法定雇用率引き上げへの対応
続いて法定雇用率引き上げへの対応方法について解説していきます。
必要な障がい者の数を把握する
まず必要な対応として挙げられるのは、法定雇用率を満たす上で必要な障がい者の数を把握するという点です。
現時点において法定雇用率を達成していても、法定雇用率が引き上げられることで、当然必要な障がい者の数も多くなります。
とはいえすぐに障がい者を雇用できるわけではありませんので、引き上げ後に必要な人数を把握し、早々に障がい者の雇用を進める準備をしておきましょう。
障がい者雇用におけるポイントを把握する
また障がい者雇用におけるポイントを把握しておくことも、重要なポイントになります。
法定雇用率引き上げに伴い、雇用する障がい者が増えることで、これまで以上に障がい者が気持ちよく就労できるような環境を構築することが求められます。
- 知的障がい者のために、わかりやすいテキストや挿絵などを入れたマニュアルを用意する
- 車いすの人に合わせたデスクの配置や高さの調整を行う
- 募集内容について、文面だけでなく音声データでも提供する
- 面接において筆談などの対応も行う
- 出退勤の時間や休日、通院などに最大限配慮する
上記のような合理的配慮を行うことで、障がい者雇用を促進することができるでしょう。
社内・受け入れ部門の理解を得る
社内、特に障がい者を受け入れることになる部門の理解を得るという点も押さえておく必要があります。
障がい者の受け入れ人数が増えれば、それだけ受け入れ部門側の配慮すべきことなども増え、それなりの負荷がかかってくることになるでしょう。
そのため「雇用した後は現場に任せる」といった対応をするのではなく、受け入れ部門の理解を得た上で、会社全体で障がい者の就労をサポートしていくというスタンスが重要になります。
法定雇用率を達成するための方法
最後に法定雇用率を達成する上で、避けては通れない障がい者の募集方法についてご紹介します。
法定雇用率達成に必要な障がい者雇用の大まかな流れ
まず障がい者雇用の大まかな流れについて押さえておきましょう。障がい者雇用の流れとしては、以下のようになります。
- 法定雇用率を達成するために必要な人数の把握
- 職務内容や労働条件などの採用計画を立てる
- 募集や選考の実施、現場への理解促進の取り組み
- 内定
- 受け入れ、就労中のフォロー
基本的な流れ自体は通常の雇用と大きく変わりませんが、これらの動きと合わせて、合理的配慮を行うための職場環境整備も進めていくことになるでしょう。
障がい者雇用に活用できる主な募集方法
障がい者雇用に活用できる主な募集方法としては、以下のようなものが挙げられます。
求人媒体の活用
まず挙げられるのは求人媒体の活用です。ハローワークを始め、事業会社が運営する求人媒体などを用いて、障がい者の募集を行うことになります。
特別支援学校との提携
障がい者が通っている特別支援学校と提携をすることで、所属する生徒に対して求人情報を提供することができます。
自社募集
自社の採用サイトなどを立ち上げて、直接募集を行う手法です。
採用マーケティングなどのノウハウが必要になりますが、採用サイトを上手く活用できれば、コストを押さえながら募集を行うことができるでしょう。
人材紹介サービス
人材紹介サービスの中には障がい者の雇用に特化したサービスを展開しているものがあり、これらを活用することで募集を進めることができます。
障がい者雇用をサポートしてくれる機関
募集方法と合わせて、障がい者雇用をサポートしてくれる機関として以下の2つの機関をご紹介します。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障がい者の就業生活における自立をサポートすることを目的として、全国に設置されている公的機関です。
雇用した障がい者の職場適応などを支援してくれる上、各障がい者の特性を踏まえた上での雇用管理面での助言などを行ってくれます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障がい者への職業リハビリテーションサービスや、企業への雇用管理に関する援助などを行っており、全国に配置されています。
企業側の障がい者雇用へのニーズや課題を分析した上で、専門的な助言やサポートを提供してくれます。
まとめ
今回は法定雇用率をテーマに、概要や引き上げの内容、対応方法まで解説してきましたが、いかがでしたか。
慢性的な人手不足が課題となっている日本においては、障がい者を含めた多様な人材の活用が求められています。
そのため法定雇用率達成を目指すことは当然のこととして、障がい者雇用への取り組みは全ての企業にとっての大きな課題となってくると言えるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、法定雇用率の達成や障がい者雇用に取り組んでいただければ幸いです。
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