2021年(令和3年)4月から労働者派遣法の施行令が一部改正され、へき地の医療機関への看護師等(看護師・准看護師・薬剤師・臨床検査技師・診療放射線技師)の派遣と、社会福祉施設等への看護師の日雇い派遣が解禁されます。

今回は看護師派遣に関する変更内容について紹介します。

「へき地の医療機関」への看護師等の派遣解禁

これまでは、直接雇用への移行を前提とした紹介予定派遣産休・育休の代替の場合以外、病院やクリニックなどの医療機関で行う看護師業務・診療補助等の業務の派遣労働は原則禁止されていました。(社会福祉施設や保育園など医療機関ではない施設への派遣は禁止されていません)しかしこの4月からはへき地の医療機関に限定して、看護師等による看護師業務・診療補助等の業務の派遣労働が認められることになりました。

解禁の理由としては、へき地では医師だけでなく、診療を補助する看護師等の医療従事者についても深刻な人員不足が発生している、という状況があります。この「人員不足の解消」と「医療の質の向上」を図るため、看護師や准看護師のほか、薬剤師・臨床検査技師・診療放射線技師についても派遣が認められることとなりました。

解禁にあたっては、すでに行われている医師の派遣と同様に、事前研修や派遣先の教育訓練などを行うことが条件とされています。

(1)労働者派遣を行うことが可能なへき地の範囲
労働者派遣を可能とする「へき地」の範囲については、以下のいずれかの地域をその区域内に含む市町村とする。
・ 離島振興法の規定により離島振興対策実施地域として指定された「離島の区域」
・ 奄美群島振興開発特別措置法に規定する「奄美群島の区域」
・ 辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律に規定する「辺地」
・ 山村振興法の規定により指定された「振興山村の地域」
・ 小笠原諸島振興開発特別措置法に規定する「小笠原諸島の地域」
・ 過疎地域自立促進特別措置法に規定する「過疎地域」
・ 沖縄振興特別措置法に規定する「離島の地域」

(2)事前研修
へき地の医療機関に看護師等の労働者派遣を行うに当たっては、派遣元は、へき地においては対応すべき医療ニーズが広範にわたり得るという特性に鑑み、へき地の医療機関において業務を円滑に行うために必要な研修(以下「事前研修」という。)を受けた看護師等を派遣することとする。
※ 事前研修については、実施主体、内容等について検討の上、一般的に受講すべきものを示す予定。ただし、派遣先となる病院等の意向を十分に確認した上で、派遣される看護師等の個人的な属性(へき地勤務経験等)や労働者派遣契約の内容(勤務場所、期間、業務内容)等に応じた取扱いをしても差し支えないこととする予定。

(3)派遣先での教育訓練
派遣労働者である看護師等を受け入れる医療機関は、受入後にあっても、地域における医療事情に、より即応した内容・形態の研修を必要に応じて行うなど、へき地において業務が円滑に行われるよう教育訓練の機会に努めることとする。

引用元:【厚生労働省】へき地の医療機関への看護職員等の派遣及び福祉・介護施設における看護師の日雇派遣について

「医療機関以外」への看護師の日雇い派遣解禁

労働者を30日以内の短期で派遣するいわゆる「日雇い派遣」は、労働者保護の観点から現在は原則禁止されています。看護師も例外ではなく、社会福祉施設や保育園など医療機関ではない施設への派遣自体は認められているものの、日雇いでの派遣は禁止されていました。

新型コロナウイルス感染症の影響もあって看護師のニーズが高まるなか、看護師不足を解消する選択肢の一つとして、2021年4月からは例外的に、社会福祉施設など医療機関ではない施設に限り、看護師の日雇い派遣が認められることとなりました。(日雇い派遣の解禁については准看護師・薬剤師・臨床検査技師・診療放射線技師は対象に含まれません)

(1)適切な事業運営の実施を図るための主な措置
➢ 派遣元・派遣先は、労働者派遣契約において、派遣される看護師の業務を、基本的には利用者の日常的な健康管理とするとともに、必要に応じ、派遣される看護師に求める条件を定めること
➢ 派遣元は、社会福祉施設等への看護業務を適切に遂行するための教育訓練を実施すること
➢ 派遣元は、派遣就業日の業務内容等をきめ細かに把握した上で、派遣労働者に対し、派遣就業前に説明すること
➢ 派遣先は、派遣労働者に対し、具体的な業務内容等についてオリエンテーションを実施すること
➢ 派遣先は、利用者に対し、派遣される看護師を含むサービス提供者の勤務の体制等について適切に説明を行うこと

(2)適正な雇用管理の実施を図るための主な措置
➢ 派遣元は、労働者派遣法上求められている就業条件の明示を、派遣労働者に対し確実に行うこと
➢ 派遣先は、労働者派遣法上求められている責務(※)を適切に果たすこと
➢ 派遣元・派遣先は、労働者派遣契約を締結する際には、損害賠償を含む責任の所在について明確にするよう努めること
※ 労働者派遣法に基づき、派遣先には、労働時間管理、労災防止措置等の労働関係法令に基づく事業主としての責務の一部が課せられている。

引用元:【厚生労働省】社会福祉施設等への看護師の日雇派遣について

派遣業界への影響は?

今回の2つの解禁は、派遣業界や派遣会社にはどのような影響があるのでしょうか。歓迎の声から新たな悩みまで、様々な声が聞こえてきています。

派遣会社の声
  • 「日雇い派遣の解禁は販路を増やせるのでプラスになる」
  • 「マッチングの可能性が増えるのでものすごいチャンス」
  • 「今まで看護師を扱っていない派遣会社の新規参入は難しいのではないか」
  • 「日雇いをやる場合には手間がかからないようシステムの見直しが必要」
  • 「へき地の医療機関への派遣解禁も販路の拡大に繋がるのではないか」
  • 「へき地の医療機関への派遣はおそらくマッチングが難しい」

まず、これまで看護師派遣を扱っていない派遣会社の場合、日雇い派遣が解禁されたとはいえ、派遣する看護師の確保が難しく新規参入のハードルは高そうです。

へき地の医療機関への派遣解禁については、派遣会社として販路が増えるものの、へき地での派遣労働を希望する医療従事者がどの程度確保できるのか、案件とのマッチングの難しさが課題となりそうです。

日雇い解禁の観点で見ると、これまでも医療系の短期案件を取り扱ってきた派遣会社にとっては、登録スタッフと短期案件のマッチングがしやすくなるため販路の拡大に繋がり、大きなチャンスとなりそうです。しかし新たに短期案件の取扱いを始める場合は、登録スタッフの希望勤務日やマッチング状況など、従来より短いスパンで管理する情報が増えるため、派遣会社内部の業務が煩雑になることが懸念され、新たな管理システムの導入やシステム入替を検討している派遣会社もあるようです。

そして派遣労働を希望する看護師にとっては、「週20時間以上」「31日以上」に縛られることがなくなるため、短期で働きたくても働けなかった状況が解消され、よりライフスタイルにあわせた柔軟な働き方ができるようになります。

まとめ

いかがでしたか?今回は2021年4月より解禁されるへき地医療機関への看護師等の派遣と、看護師の日雇い派遣について紹介しました。

看護師や薬剤師といった人員の不足で困っている施設や地域にとって大きな助けとなりそうなのは勿論ですが、出産・子育て等のライフスタイルにあわせた働き方を希望する方々にとって、より柔軟で働きやすい環境や社会が実現されることを期待します。

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