日雇い派遣を活用しているものの、法的な観点での理解は浅く、意図せず法律違反になっていないか不安に感じている方も少なくないでしょう。

本記事は上記のような派遣先企業の担当者様に向けて、日雇い派遣の定義や禁止理由などを踏まえつつ、例外的に受け入れられる業務や労働者を紹介します。

日雇い派遣労働者を受け入れる際の注意点も併せて解説しているため、ぜひ最後までご確認ください。

日雇い派遣とは

まずは日雇い派遣の定義や現状、禁止となった理由などについてご紹介します。

日雇い派遣の定義

日雇い派遣とは、雇用期間が31日未満の労働者派遣を指し、派遣法第35条の4において原則禁止とされています。

ただし一部業務や特定の条件を満たす労働者については、例外として日雇い派遣での受け入れが可能です。どういった業務や条件があるかについては後ほどご紹介します。

日雇い派遣はいつから禁止となった?その理由は?

派遣法が制定された1985年時点では日雇い派遣は規制されていませんでしたが、2012年に行われた派遣法改正によって禁止されました。

派遣法が改正される前、特に2007年〜2008年にかけて、派遣労働者の給与から200円差し引かれる「データ装備費」問題などをはじめ、日雇い派遣を取り巻く不適正な雇用管理が社会問題化していました。

また2008年のリーマンショックによって、日雇い派遣労働者を含めて大量の派遣切りが生じ、雇用の不安定さが再認識されたことも重なり、禁止されるに至ったと言えるでしょう。

日雇い派遣の禁止の原則に違反したらどうなる?

先述のとおり、日雇い派遣は2012年以降禁止されているため、違反した場合のペナルティが設けられています。

2024年時点では日雇い派遣を受け入れた派遣先に対しては、懲役や罰金といった重いペナルティは設けられていないものの、行政から是正勧告を受ける可能性はあるでしょう。

また是正勧告を受けたにも関わらず従わなかった場合は、企業名などが公表され、社会的な信用が低下する可能性もあるため注意してください。

日雇い派遣と単発バイトの違い

日雇い派遣と混同される雇用形態として単発バイトがありますが、両者は雇用関係に違いがあります。

単発バイトも1日単位や数週間程度の就業を前提としていますが、派遣元と雇用関係がある日雇い派遣とは異なり、アルバイト先企業に直接雇用されます。

日雇いが禁止されているのはあくまで「派遣」であり、就業先との間で直接雇用関係が結ばれる単発バイトは法的に禁止されていません。

日雇い派遣の受け入れが可能なケース

続いて日雇い派遣が可能となるケースとして、例外業務や例外となる労働者についてご紹介します。

日雇い派遣の例外業務

日雇い派遣は原則禁止されていますが、一部の業務に従事する場合は例外的に受け入れが可能となっています。

日雇い派遣の例外業務となっているのは、以下の18業務です。

・ソフトウェア開発
・機械設計
・事務用機器操作
・通訳、翻訳、速記
・秘書
・ファイリング
・調査
・財務処理
・取引文書作成
・デモンストレーション
・添乗
・受付・案内
・研究開発
・事業の実施体制の企画、立案
・書籍等の制作・編集
・広告デザイン
・OAインストラクション
・セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

<参考:日雇派遣の原則禁止について|厚生労働省> 

日雇い派遣が認められる労働者

先に挙げた業務以外でも、特定の労働者であれば日雇い派遣での受け入れが可能です。

具体的には以下の労働者が挙げられます。

日雇い派遣が認められる労働者補足
60歳以上の者数え年ではなく、実年齢が60歳以上
雇用保険の適用を受けない昼間学生夜間学校や通信教育に通っている学生、休学中の学生は、昼間学生に該当しないため、日雇い派遣の禁止対象
生業収入が500万円以上で日雇い派遣を副業とする者あくまで一つの仕事による収入が500万円以上であることが条件となるため、複数の仕事の掛け持ちによる合計収入が500万円以上の場合は例外として扱われず、禁止の対象となる
世帯収入が500万円以上で主たる生計者でない者世帯収入のうち50%以上を担う人が「主たる生計者」

<参考:日雇派遣の原則禁止について|厚生労働省

【補足】日雇い派遣が認められる条件はおかしい?

日雇い派遣が認められる条件について、「おかしい」という意見が少なからず見受けられますが、これらの条件の設定には明確な理由があります。

例外業務は派遣法における「専門26業務(2015年の法改正で廃止)」から、「特別な雇用管理が必要な業務」と「日雇い派遣がほとんど見られない業務」を除外して選定されました。

日雇い派遣の問題は不適切な雇用管理に起因していることから、適正な雇用管理に支障を及ぼす可能性がないことを基準に選ばれたと言えるでしょう。

また受け入れ可能な労働者の要件について、昼間学生や60歳以上の労働者は生計を維持するために働くケースは多くないと考えられたため、日雇い派遣でも受け入れが可能とされました。

また生業収入あるいは世帯収入が500万円以上であれば、生活を維持するための収入が十分にあると考えられるため、受け入れが可能となっていると言えるでしょう。

<参考:政令で定める26業務|厚生労働省

<参考:日雇派遣の原則禁止について|厚生労働省

日雇い派遣を受け入れるメリット・デメリット

ここでは日雇い派遣を受け入れる際のメリットとデメリットについてご紹介します。

日雇い派遣のメリット

日雇い派遣は現場の状況に合わせながら、必要な人材をスポットで活用できます。

繁閑の波が大きい業務では、繁忙期の業務量に合わせて固定人員を確保していると、閑散期では人員が余剰し、無駄なコストが生じてしまうでしょう。

その点、日雇い派遣の場合は繁忙に合わせた柔軟な人材活用が可能となるため、リソースやコストの最適化が可能です。

またスポットでの活用を前提としているため、派遣労働者への教育にかかる費用や時間も必要最小限に抑えることができます。

日雇い派遣のデメリット

日雇い派遣で受け入れた労働者が優秀であり、長期契約に切り替えたいと考えても、承諾を得られないケースがあります。

日雇い派遣で就業する労働者は、そもそも短期就業のスタイルを希望して労働に従事しているケースも多いためです。

また短期間での業務でしっかりとパフォーマンスを出してもらうために、マニュアルの整備や任せる仕事の整理などの事前準備が欠かせません。

教育時間を削減できる分、誰でもすぐに一定以上の成果を出せる環境を事前に構築しておく必要があると言えるでしょう。

日雇い派遣労働者を受け入れる際の注意点

次に日雇い派遣労働者を受け入れる際の注意点をご紹介します。

注意点①:派遣禁止業務に該当しないか確認する

日雇い派遣について、労働者の条件に基づいて受け入れる際は、派遣禁止業務に該当しないかどうかを確認する必要があります。

仮に昼間学生や60歳以上の労働者であっても、派遣法において禁止されている業務には従事できません。

派遣法で禁止されている業務は以下のとおりです。

・港湾運送業務
・建設業務
・警備業務
・病院等における医療関係業務
・弁護士
・外国法事務弁護士
・司法書士
・土地家屋調査士
・公認会計士
・税理士
・弁理士
・社会保険労務士
・行政書士
・建築士事務証の管理建築士の業務

これらの業務での人材活用を検討している場合は、直接雇用や外部委託が必要になります。

注意点②:例外条件に関する証明書類を回収できているか確認する

昼間学生や60歳以上といった労働者を日雇い派遣で受け入れる際は、例外条件を満たしていることを証明できる書類を、派遣元企業が回収できているかを確認しましょう。

日雇い派遣の例外対象であると証明するには、それぞれ以下のような書類が必要になります。

60歳以上免許証などの本人確認書類(年齢を確認できる書類)
昼間学生学生証や在学証明書
生業収入500万円以上で副業として従事する者所得証明書や源泉徴収票
世帯収入が500万円以上で主たる生計者でない者主たる生計者や世帯構成員の所得証明書や源泉徴収票

契約を締結する前に、これらの書類を派遣元企業が回収しているかを確認することで、労働者側の虚偽による違反を防止できるでしょう。

注意点③:教育訓練も怠らずに実施する

2018年に実施された派遣法の改正により、2020年4月以降は派遣先企業にも派遣労働者に対する教育訓練義務が課されています。

この教育訓練は全ての派遣労働者が対象となるため、当然日雇い派遣で受け入れた労働者も含めて実施しなければなりません。

長期的な就業を前提とした派遣労働者のように継続的な教育訓練こそ不要ですが、業務に従事する上で最低限理解しておくべき内容については、研修などを実施することが求められるでしょう。

適切な派遣元企業を選ぶには

日雇い派遣の受け入れには法的要件を満たす必要があるため、これらの要件を順守し、適切な事業運営をしている派遣元企業を選ぶことが重要になります。

適切な派遣元企業を選ぶ際に確認すべきポイントとしては、以下のような点が挙げられるでしょう。

  • 優良派遣事業者認定の有無
  • 過去の日雇い派遣の実績
  • 派遣労働者や派遣先企業の口コミ

これらの情報を事前に確認した上で、派遣元企業のコンプライアンスに対する意識などをチェックしてください。

まとめ

日雇い派遣は原則禁止となっているものの、例外業務や特定条件を満たした労働者は受け入れが可能となっています。

日雇い派遣を上手く活用することで、業務の繁忙などに合わせた柔軟な人材活用を実現することが可能です。

ただし、あくまで短期就業を前提としたものであるため、長期的に活躍してもらうことは難しいと言えます。

そのため慢性的な人材不足などの課題を抱えている場合は、日雇い派遣だけでなく長期就業を前提とした人材を採用する取り組みも必要となるでしょう。

ぜひこの記事を参考に、日雇い派遣の適正運用に取り組んで頂ければ幸いです。

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