スキマバイトサービスは有益なサービスですが、依存性や労働者保護の観点で様々な問題点が指摘されています。
そこで本記事では、スキマバイトサービスの概要やメリットなどを踏まえつつ、サービスが抱えるデメリットや問題点についてご紹介します。
最後にスキマバイトサービスへの依存を防止するための取り組みも解説しているため、ぜひ最後までご確認ください。
スキマバイトサービスとは
まずはスキマバイトサービスの概要や現状について確認します。
スキマバイトサービスの概要
スキマバイトサービスとは、短期的な就業を希望する労働者と、一時的な人材確保を望む企業をマッチングするサービスです。
半日や1日、あるいは1〜2週間といったように短期間に絞って人材を活用できるため、突発的な欠員の一時的な埋め合わせや業務繁忙時の応援人材をスピーディ―に確保できます。
代表的なサービスとしては、「タイミー」や「シェアフル」などが挙げられるでしょう。
スキマバイトの現状
スキマバイトサービスを提供するタイミーの公表したデータによると、タイミーを利用してスキマバイトに従事している労働者は年々増加しており、2023年時点で600万人に達しています。
また企業側の募集人数なども拡大しており、2021年から2023年にかけて約8倍に増加しました。
これらのデータはあくまで「タイミー」単独のデータであるため、他のスキマバイトサービスなどと合わせると、労働者や募集人数もより大きく増加していると推察できるでしょう。
<参考:データで振り返る“2023年のスキマバイト”トピックス | 株式会社タイミーのプレスリリース>
スキマバイトが普及しはじめた背景
スキマバイトサービスが普及しはじめた背景には、人口減少による慢性的な人材不足があります。
日本は1995年以降、生産年齢人口が減少しており、様々な業界において正社員をはじめとする長期労働者の確保の難易度が高まっている状況です。
そんな中、スキマバイトサービスは短期的な就業を前提としているため、労働者側が気軽に応募・就業でき、その分人材を集めやすいという特長があります。
そのため人材確保に課題を抱えている飲食などの接客業を中心に、活用が進んでいると言えるでしょう。
スキマバイトサービスを活用するメリット
ここでスキマバイトサービスを活用するメリットをご紹介します。
メリット①:急な人手不足を解消できる
スキマバイトは急な人手不足の解消に役立ちます。
従業員の病欠や退職などによって急な欠員が出た際に、正社員などの長期労働者の採用では選考プロセスが長期化するため、必要なタイミングでの確保ができません。
その点、スキマバイトサービスでは面接などのプロセスはなく、すぐに人材を採用できるため、業務への影響を最小限に抑えられるでしょう。
メリット②:社会保険などのコストが不要
スキマバイトサービスで雇用する労働者は、1日や数日といった短期間での採用となるため、社会保険や各種手当の対象外となります。
正社員を雇用する場合は、給与の他に社会保険料の負担や手当支給なども支払わなければなりません。
その点スキマバイトでは、社会保険は未加入かつ手当支給は不要であるため、人件費としては働いた分の給与しか発生しないという特徴があります。
メリット③:必要なタイミングで必要な人数を確保できる
スキマバイトは業務量などに応じた柔軟な人材活用が可能です。
正社員などの長期労働者を雇用した場合、業務が少ない閑散期において、人的リソースが余剰してしまう可能性があります。
その点スキマバイトサービスでは、特定のタイミングや期間に応じて、必要な人数だけ確保できるため、リソースの効率活用を実現できます。
スキマバイトサービスを活用するデメリット
次にスキマバイトサービスを活用する際のデメリットをご紹介します。
デメリット①:手数料が発生する
スキマバイトサービスを活用して労働者を雇用した場合、労働者への給与に加えて、サービスへの手数料が発生します。
例えばタイミーの場合、スキマバイトで就業した労働者の報酬金額における30%の手数料に加え、220円(労働者一人当たり)の振込手数料を支払わなければなりません。
そのため、自社単独で雇用するよりも採用自体にかかるコストが高くなります。
デメリット②:ミスマッチの可能性もある
スキマバイトサービスは、正社員の採用などよりもミスマッチの可能性が高いという難点があります。
スキマバイトサービスでは早急な就業開始を前提としているため、通常の採用と異なり面接などの選考が行えません。
そのため事前に十分な見極めができず、想定していたような人材が来ないこともある点は留意してください。
デメリット③:急なキャンセルなどが発生することもある
急なキャンセルなどが発生することがある点も、デメリットとして挙げられるでしょう。
スキマバイトサービスは短期間での就業となるため、長期バイトや正社員などの案件と比べ、労働者も軽い気持ちで応募しやすいという特徴があります。
そのためマッチングしていたにも関わらず、労働者の都合や気持ちの変化などで、当日になって急なキャンセルが生じることもある点は留意しましょう。
企業にとってのスキマバイトサービスの問題点
スキマバイトは一時的な人材を確保する上では有用なサービスですが、以下のような問題点を抱えています。
問題点①:依存性が高い
スキマバイトサービスは依存性が高いという問題があります。
スキマバイトサービスは通常の採用活動よりも人材を確保しやすいため、一度利用しはじめると、人材採用におけるスキマバイトサービスの比重が高まりやすくなります。
そのため、「正社員が採用できなくても、スキマバイトサービスがあれば何とかなる」と錯覚し、依存してしまう可能性があると言えるでしょう。
その結果、正社員採用が疎かになってしまい、自社の中核となる人材を確保できず、将来的に内部からビジネスが崩れていく事態を招きかねません。
問題点②:人材不足に対する対症療法でしかない
スキマバイトサービスは、1日といった短期間での就業を前提としたものであり、あくまで一時的な人材ニーズを満たすサービスです。
急な欠員に対する対症療法として活用する分には問題ありませんが、慢性的な人手不足に対する打ち手としては機能しません。
そのためスキマバイトサービスを利用していても、人材不足の根本的な解決には繋がらず、長期労働者の採用に向けた取り組みは別途必要になるでしょう。
問題点③:労働者保護が不十分
そもそもスキマバイトサービスは、労働者保護が不十分であるといった見方もあり、働いた労働者からは実際に以下のような声も出てきている状況です。
- 契約以上の業務に従事させられた
- 名前ではなくサービス名で呼ばれた
また社会保険の適用外での就業になることを踏まえ、実態は禁止されている「日雇い派遣」に該当すると考える有識者もいることから、今後何らかの規制が入る可能性もあるでしょう。
もし規制が入った場合、スキマバイトサービスに依存していた企業は、従来のように人材を確保できなくなり、ビジネスが傾いてしまうリスクがあると言えます。
スキマバイトサービスへの依存を防止する取り組み
最後にスキマバイトサービスへの依存を防止する上で有効となる取り組みをご紹介します。
取り組み①:採用ブランディングと採用マーケティングに取り組む
まず挙げられるのは採用ブランディングと採用マーケティングです。
採用ブランディングに取り組むことで、ビジョンや価値の明確化を通じて、求職者に対する訴求力向上や、自社と親和性の高い母集団の獲得といった効果を得られます。
また採用マーケティングでは、求職顕在層だけでなく退職者や内定辞退者といった幅広い層と接点を構築し、それぞれ最適な情報提供などを行うことで、採用候補者のデータベースを形成することが可能です。
これらの取り組みを実施することで、効果的な採用活動を実現でき、スキマバイトサービスに依存しなくても必要な人材を確保できるようになるでしょう。
取り組み②:RPOや採用コンサルティングを利用する
RPO(Recruitment Process Outsourcing:採用代行)や採用コンサルティングを活用するのも一つの方法です。
RPOでは、採用における豊富な知見や経験を持ったプロに採用業務の一部、あるいは全部を代行してもらえます。
また採用コンサルティングは、採用のプロが採用課題の見極めや改善策の提案などを実施してくれるサービスです。
これらのサービスを有効に活用することで、自社単独では取り組みにくい採用課題も解決でき、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
取り組み③:多様な人材を採用対象とする
これまで採用候補にあがっていなかった多様な人材を、採用対象として検討することも有効な取り組みと言えるでしょう。
今後も生産年齢人口が減少していくことは確実視されており、採用競争が激化していくことは避けられません。
こういった状況で、例えば若手のポテンシャル層のみに絞って採用活動に取り組んでも、競合他社との競争が激しく、なかなか採用に結びつかない可能性が高いでしょう。
自社にとって必要な人材を安定して確保するには、年齢や国籍などにこだわらず、シニアや外国人労働者、障がい者などの多様な人材も視野に入れて検討しなければなりません。
取り組み④:適切な人材マネジメント制度を確立する
適切な人材マネジメント制度の確立は、採用した人材に長く安定して活躍してもらうために欠かせない取り組みです。
いくら優秀な人材を確保できても、社内の評価制度や教育制度が整備されておらず、人員配置なども適切に実施されていなければ、早期離職などに繋がりかねません。
そのため採用活動だけにフォーカスするのではなく、従業員の定着にも注力する必要があります。
従業員のパフォーマンスを正しく評価するための考課制度は勿論、個々の適性や能力を見極めた教育や配置といった取り組みを実現することで、採用した人材に長く働いてもらうことができるでしょう。
まとめ
スキマバイトは一時的な人材ニーズを満たす上で有効なサービスですが、慢性化している人材不足を解決する方法としては機能しません。
あくまで急な欠員の一時的な補填として割り切って活用し、人材不足の解決に向けては、別途正社員採用などに取り組む必要があります。
ぜひこの記事を参考に、スキマバイトを上手く活用しつつ、正社員の採用力を高めるための取り組みを実施していただければ幸いです。
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