2026年5月、気象庁が発表する「防災気象情報」が刷新され、特別警報の体系が変更されました。この変更は、企業の出社判断や避難指示といった防災対応に直結する重要な内容を含んでいます。従業員の命を守り、安全配慮義務を確実に果たすためには、新制度を正しく理解し、社内ルールを見直すことが欠かせません。
本記事では、2026年5月以降の特別警報に関する主な変更点から、企業が負う安全配慮義務の法的リスクまで解説します。災害時就業マニュアル改定の具体策や、安否確認システムを活用した社内体制の構築ポイントもまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
【2026年5月】特別警報に関する3つの変更点

2026年5月29日から、気象庁による新たな防災気象情報の運用が開始されました。これは、氾濫、大雨、土砂災害、高潮の4つの災害について、5段階の警戒レベルに応じた情報へと整理・統一されたものです。

以下で、新たな防災気象情報における3つの主な変更点について詳しく見ていきましょう。
1.すべての情報に対する「警戒レベル」の付記
1つ目の変更点は、すべての情報名に「レベル△」という数字が直接付記されるようになったことです。従来の情報名からは危険度が直感的に伝わりにくいという課題があったためです。
具体的には、これまでの「大雨警報」は「レベル3大雨警報」に、「高潮特別警報」は「レベル5高潮特別警報」に名称が変更・統一されました。情報名に警戒レベルが組み込まれたことで、情報を見た瞬間にどの警戒レベルに相当し、どのような避難行動をとるべきかが直感的に判断できるようになりました。
2.全員避難の基準となる「レベル4危険警報」の新設
2つ目の変更点は、警戒レベル4に相当する「危険警報」が新設されたことです。これまでは、警報と特別警報の間に明確な気象情報が存在しない災害種別があったためです。
新たに「レベル4大雨危険警報」や「レベル4土砂災害危険警報」などが設定され、レベル4の「全員避難」というトリガーが明確になりました。企業においても、レベル4「危険警報」の発表は、避難指示や事業所閉鎖を決定するための判断基準の目安になります。
3.大河川を対象とした「レベル5氾濫特別警報」の新設
3つ目の変更点は、河川の氾濫に関する情報が整理され、「レベル5氾濫特別警報」が新設されたことです。
「レベル5氾濫特別警報」は、洪水予報河川(大河川)において、氾濫がすでに発生している、または極めて切迫している命の危険がある状態を示すためのものです。従来の市町村単位の「洪水警報」は廃止され、洪水予報河川以外の多くの氾濫リスクは大雨に関する情報(レベル別の大雨警報など)に一体化して発表されるようになりました。ただし、中小河川のうち「水位周知河川」については、引き続き河川管理者から河川ごとの水位情報が発表されます。
このように河川の区分によって確認すべき情報が異なるため、自社の拠点がどの河川のリスクを抱えているかを事前に把握しておく必要があります。
【2026年5月】特別警報に対する企業防災と安全配慮義務の重要性

気象庁の基準が明確化されたことにより、企業側の災害に対する「知らなかった」という対応の遅れは許されなくなりました。ここでは、特別警報の変更に伴い、なぜ企業防災を見直す必要があるのか、対応が遅れた際に生じる安全配慮義務違反などの法的リスクとあわせて解説します。
企業防災の意義
今回の特別警報の変更により、企業にはこれまで以上に積極的な防災への取り組みが求められます。基準の明確化によって危険度が可視化されたことで、万が一対応が遅れた際に「予見できなかった」という言い訳が通用しにくくなりました。
企業にとって、常に最新の気象情報と連動し、「早期注意情報」や「警戒レベル相当情報」などを活用して迅速に初動対応をとれる体制を平時から整備しておくことは、事業継続(BCP)において重要なポイントとなります。
毎年8月30日から9月5日は、防災週間です。この期間を一つの契機として、従業員の命を守るための災害時就業マニュアルが防災気象情報の変更に対応できているか確認しましょう。
安全配慮義務と労務トラブルの法的リスク
災害時の対応の遅れは、企業にとって法的リスクとなります。企業は労働契約法に基づき、従業員が生命や身体の安全を確保しつつ働けるよう配慮する義務を負っているためです。
例えば、台風や大雨の予測があり気象庁から警報が出ているにもかかわらず、無理に出社させたり、帰宅困難になるまで業務を継続させたりして被災した場合、損害賠償などの法的責任を問われるリスクがあります。
さらに、安全配慮義務は、派遣スタッフをはじめとする非正規雇用者に対しても及びます。指示フローが曖昧な場合は深刻な労務トラブルに発展する危険性が高まるため、明確なルールの徹底が不可欠です。
関連記事:企業の安否確認とは?必要性や確認事項、ポイントまでわかりやすく解説
【2026年5月】特別警報の変更に伴うマニュアル改定の2つの具体策

新しい防災気象情報の運用開始に合わせて、企業は災害時就業マニュアルを改定する必要があります。
ここでは、警戒レベルに応じた具体的な実務対応のポイントを解説します。各企業の立地や状況に応じた出勤制限や、自宅待機の判断基準を設定する際の参考にしていただけますと幸いです。
具体策1.レベル3「警報」での事前対策と在宅勤務への切り替え
高齢者などの避難開始基準となるレベル3「警報」の発表は、企業にとって実質的な対応フェーズの始まりです。レベル3「警報」の段階で本格的な備えを始めないと、その後の急速な天候悪化に対応できなくなるおそれがあるため注意が必要です。
以下のように、マニュアルにはレベル3「警報」が発表された際の具体的な対応を明記しましょう。
- 不要不急の外出や出張の禁止
- 原則としてテレワーク(在宅勤務)への切り替え
また、すでに出勤して業務にあたっているスタッフに対しては、交通網が麻痺する前に早期帰宅を促し、安全なうちに帰宅させる判断基準を設ける必要があります。
具体策2.レベル4「危険警報」での立地等に応じた出勤制限や自宅待機
企業防災において重要な原則は、レベル5「特別警報」を待たずにレベル4「危険警報」の段階で避難や就業見合わせを完了させることです。レベル5「特別警報」はすでに災害が発生・切迫しており、命の危険が迫っているため、避難を開始するには手遅れになる可能性が高いためです。
マニュアルには、レベル4「危険警報」が発表された時点で、各企業の立地等に応じた出勤制限や自宅待機を判断できるよう一定の判断基準を設定しましょう。
具体的には、対象地域の事業所閉鎖や出勤前スタッフの自宅待機を促すルールを明記します。勤務中のスタッフについては、外への移動(帰宅)が安全か、あるいは屋内での垂直避難が安全かを速やかに判断し、命を守る行動を優先させることが大切です。
【2026年5月】特別警報の変更に伴う社内体制構築のポイント

マニュアルを新しい防災気象情報に合わせて改定しても、必要な情報が現場の非正規スタッフを含めた全員に届かなければ意味がありません。以下で、全従業員の安否をリアルタイムで一元管理し、企業の安全配慮義務を確実にするための社内体制構築のポイントについて解説します。
属人化を防ぎトップダウンの指示フローを構築する
災害時の初動対応は、属人化を排除し本部からのトップダウンで行うフローを構築することが大切です。避難や出勤制限の判断を各拠点の現場長任せにしてしまうと、拠点ごとの対応にばらつきが生じる可能性があるためです。
判断の遅れや対応のばらつきを防ぐためには、気象庁が提供する「キキクル(危険度分布)」などの情報を活用し、危険度が基準に達した時点で、本部から一斉に指示を出す仕組みを整える必要があります。誰が気象情報を監視し、誰の権限で避難指示を出すのかというルールをマニュアルに明文化することが、安全配慮義務を果たすうえで重要です。
スタッフ任せによる情報伝達のリスクを排除する
多拠点で事業を展開している企業では、情報伝達のリスクを排除する仕組みが欠かせません。電話やメールといった手作業によるやり取りだけでは、災害時に連絡網が機能不全に陥りやすいためです。
本部が「誰がどこで勤務し、対象地域にいるのか」をリアルタイムで把握できていなければ、的確な避難指示や出勤制限は出せません。本部とスタッフ間の連絡の遅れや状況把握の漏れは、逃げ遅れによる重大な労務トラブルや安全配慮義務違反のリスクを増大させます。
スタッフからの自己申告に頼るのではなく、全従業員の勤務地・シフト情報を一元管理できるデータベースを構築したり、複数の連絡手段を用意したりするなどの具体的な対策を講じることがポイントです。
システムを導入してリアルタイムの安全確保を実現する
担当者の負担を減らし、確実な安全配慮を行うためには、安否確認システムの導入や見直しが不可欠です。特に、災害時は担当者自身も被災する可能性があり、手動での連絡や対応が困難になるケースも想定されます。
命の危険が迫るレベル5「特別警報」のタイミングで担当者が手動で動けない状況を想定し、気象庁の発表と自動連動して安否確認が一斉配信されるシステムの導入を検討しましょう。安否確認システムによるリアルタイムな一元管理を実現することで、現場の命を確実に守り、企業の事業継続(BCP)と社会的な信頼向上につなげられます。
特別警報の変更への対応なら「apseedsポータル」がおすすめ
企業の安全配慮義務を確実に果たすためには、日常的な業務連絡から緊急時の対応まで一元化できるシステムの導入が効果的です。安否確認体制の強化におすすめなのが、従業員へのメッセージ配信や問い合わせ対応、シフト管理などの機能を備えた多機能アプリ「apseedsポータル」です。
気象庁の警報発令時には、システムが連動して自動で安否確認を配信する仕組みを備えており、担当者が手動で動けない緊急時でも負担を軽減しつつ、迅速な初動対応を実現できます。従業員の命を守り、安全配慮義務を果たすための体制構築にぜひ利用をご検討ください。
まとめ
本記事では、2026年5月に変更された特別警報の概要とあわせて、企業の安全配慮とマニュアル改定のポイントについて解説しました。特別警報に関する主な変更点は以下のとおりです。
- すべての情報名にレベル表記を追加
- レベル4「危険警報」の新設
- レベル5「氾濫特別警報」の新設
企業としては、レベル5「特別警報」を待たずにレベル4「危険警報」で出勤制限や自宅待機などの対応を完了させる原則に基づいてマニュアルを改定する必要があります。安否確認システムの活用は、法的リスクを回避し、従業員の命を守るために役立ちます。防災週間などを機に、自社の安否確認体制を見直してみましょう。




