雇用している特定技能外国人から「母国に一時帰国したい」と相談された際、企業側に休暇を認める義務があるのかわからず、対応に悩む担当者もいるでしょう。かつての技能実習制度とは異なり、特定技能には一律の帰国義務はありません。しかし、受け入れ企業には休暇の配慮義務が求められるため、正しい労務対応プロセスを理解しておく必要があります。

本記事では、特定技能外国人の一時帰国に関する企業の義務範囲や、在留資格を維持して帰国させるための手続きなどを解説します。出国前の面談チェックリストもまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

特定技能外国人の一時帰国は義務?企業に求められる3つの配慮

雇用している特定技能外国人から一時帰国の申し出があった際、企業はまず自社が負うべき法的義務の範囲を整理する必要があります。特定技能制度では通常の労働基準法に加えて、外国人特有の生活や権利を守るためのルールが定められています。

以下で、特定技能外国人の受け入れ企業が知っておくべき3つの配慮義務について見ていきましょう。

参照:特定技能外国人受入れに関する運用要領|法務省

1.希望時には有給休暇を取得させる

特定技能外国人が一時帰国を希望した場合、受け入れ企業には必要な有給休暇を取得させることが義務付けられています。特定技能基準省令(第1条第1項第5号)に「外国人が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させるものとしていること」と明確に定められています。

技能実習制度のように段階移行に伴う一律の帰国義務はありませんが、希望があった場合の休暇取得は事実上の法的義務です。どうしても代替要員の確保が困難な業務上やむを得ない事情がある場合には、時季変更権の行使や日程調整が可能です。

しかし、帰国そのものを拒否したり、休暇取得を理由に解雇や減給などの不利益な取扱いをしたりすることは、受け入れ機関の基準不適合になり得るリスクがあります。

2.有給不足や消化済みの場合は無給休暇の取得を認める

対象の特定技能外国人に有給休暇の残数がない場合であっても、企業は無給での休暇付与を認めるなどの配慮をする必要があります。出入国在留管理庁の運用要領において、有給不足や消化済みの場合は、追加の有給休暇や無給休暇の取得に配慮することが望ましいと明記されているからです。

例えば、転籍直後で継続勤務が6か月未満の特定技能外国人には法定有給がありません。しかし、「有給がないから帰国は認めない」と一切拒否する対応は、特定技能の制度趣旨に反すると判断される可能性があるため注意が必要です。

企業は就業規則などで無給の休職・休暇フローを整え、柔軟に帰国をサポートする必要があります。

3.在留上限を考慮して一時帰国の期間を調整する

一時帰国の期間に法律上の制限はありませんが、実務上は通算在留期間やシフト調整を踏まえ、最長10日〜2週間程度で調整するケースが一般的です。特定技能1号の通算在留期間(上限5年)は、一時帰国で日本を離れている期間であってもカウントが進行し続けるためです。

本人の希望だからといって1か月以上の長期帰国を安易に認めてしまうと、その分だけ日本国内で働ける実質的な期間が短くなってしまいます。また、出国から1年以内に再入国しなければならない「みなし再入国許可」の有効期限も考慮する必要があります。

事前に上限満了日を把握したうえで、対象の従業員と話し合って帰国日数を決定することが大切です。

特定技能外国人の一時帰国の費用ルールと積立金の禁止事項

特定技能では、入国時や帰国時、一時帰国時における旅費の費用負担ルールが技能実習とは異なります。ここでは、渡航費用の法的ルールと、給与から旅費を天引きすることの禁止事項について解説します。

参照:特定技能外国人受入れに関する運用要領|法務省

原則として特定技能外国人本人の自己負担

一時帰国にかかる往復航空券などの渡航費用は、原則として特定技能外国人本人の自己負担です。特定技能における一時帰国の旅費の負担について、制度上は企業に支払う法的義務がありません。

一時帰国は、雇用契約が完全に終了した際の帰国担保措置(本人が旅費を負担できない場合に、企業が帰国費用を負担する義務)とは別の場面であり、混同しないよう注意が必要です。

ただし、例外として、建設分野においては一般社団法人建設技能人材機構(JAC)による一時帰国支援制度があり、条件を満たせば1人1回あたり5万円の支援金が支給されます。そのほかの分野では、契約上の特別な取り決めがない限り、渡航費は全額本人負担です。

参照:負担を軽減「一時帰国支援」|一般社団法人建設技能人材機構

旅費の給与天引き積立は禁止

一時帰国の渡航費に備えるためとして、特定技能外国人の給料から天引きして積立を行うことは禁止されています。本人の同意がある場合であっても、受け入れ企業が特定技能外国人の金銭やそのほかの財産を不当に管理することは、制度の基本方針に反するからです。

仮に「良かれと思って天引き積立をしていた」という事実が発覚した場合には、受け入れ企業の基準不適合とみなされる可能性があるため注意が必要です。場合によっては、受入れ停止措置などの重い処分を科されるリスクがあるため、渡航費は本人に自主管理させるよう徹底しなければなりません。

特定技能外国人の一時帰国で利用すべき「みなし再入国許可」

特定技能外国人の一時帰国を認めても、日本に戻ってこられなくなっては労務トラブルにつながります。特定技能外国人が在留資格を維持したままスムーズに出入国するためには、「みなし再入国許可」の利用が必須です。

ここでは、みなし再入国許可の手続きと有効期限にまつわる注意点について解説します。

再入国出国記録の再入国希望欄にチェックを入れる

みなし再入国許可の手続きは、出国当日に空港の出国審査場で必ず本人が行う必要があります。出国から1年以内に再入国する予定であれば、通常の再入国許可の事前申請を省略し、現在の在留資格を維持したまま日本に戻ることが可能です。

具体的には、空港で「再入国出国記録(EDカード)」を記入する際、「一時的な出国であり、再入国する予定である」のチェック欄にマークを入れ、在留カードと一緒に提示します。マークを入れ忘れて出国してしまうと、特定技能の在留資格を喪失し、日本に戻れなくなるため注意が必要です。

トラブルを防ぐためにも、企業として対象者向けに再入国出国記録の具体的な書き方をレクチャーしておくことをおすすめします。

参照:再入国許可(入管法第26条)|出入国在留管理庁

有効期限が切れる前に再入国する

特定技能外国人が一時帰国する際は、みなし再入国許可の有効期限を把握し、必ず期限内に再入国させることが鉄則です。

みなし再入国の有効期限は原則として出国から1年以内ですが、在留期限が1年未満に到来する場合は、その在留期限の日までが有効期間になります。例えば、在留期限が残り3か月の状態で出国した場合は、みなし再入国の有効期限も3か月です。海外滞在中に在留期限を迎えると、日本への再入国はできません。

残りの在留期限が短い場合は、在留期間更新許可申請を完了させてから出国させるか、正式な再入国許可をあらかじめ取得する必要があります。

参照:みなし再入国許可(入管法第26条の2) | 出入国在留管理庁

一時帰国前の事前面談で確認すべき4つのチェック項目

特定技能外国人の一時帰国に伴う実務トラブルを防ぐためには、出国前の事前面談で意思疎通を図っておくことが大切です。以下で、一時帰国前の事前面談で確認すべき4つのチェック項目を解説するので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

1.往復航空券

特定技能外国人が一時帰国する際は、出国前に本人名義の往復航空券(eチケット)の控えを回収・確認しましょう。帰国スケジュールを事前に確定させ、復帰後のシフトに穴を開けないようにするためです。

再入国日を事前に明確にしておくことは、厚生年金の脱退一時金を目的とした形式的な一時退職(偽装退職)を防ぎ、失踪や再入国拒否のリスクを抑える効果も期待できます。一時帰国前の面談時には必ず往復航空券の控えを確認し、スケジュールを合意しておきましょう。

2.一時帰国中の給与と社会保険

一時帰国中の給与計算と社会保険料の精算方法について、事前に書面で合意します。一時帰国中も雇用関係は維持されるため、社会保険料の個人負担分が発生し続けます。

有給不足で無給休暇となる場合の給与計算や、給与天引きができない期間の保険料をいつ、どう精算するか面談でわかりやすく説明することが大切です。一時帰国中の金銭トラブルを防ぐため、事前に精算ルールを明確にしておきましょう。

3.緊急連絡手段

一時帰国中の本人の連絡先と、現地の家族の緊急連絡先を事前に把握しておきます。病気や天災、渡航不備などの予期せぬトラブルで再入国が遅れた際に、音信不通になるのを防ぐためです。

現地で通話可能な電話番号や各種コミュニケーションツール(LINEやWhatsAppなど)に加えて、万が一に備えて親族の連絡先も確認します。トラブルにより予定通り日本に戻れない事態を想定し、担当者への速やかな報告フローを事前に確立しておきましょう。

4.みなし再入国許可

一時帰国する特定技能外国人に対し、出国前に空港でのみなし再入国許可の手続き手順を指導します。

再入国出国記録(EDカード)のチェック漏れなどのミスがあると、特定技能の在留資格を喪失するためです。

再入国希望欄へのチェック方法を教え、パスポートと在留カードをセットで入国審査官に提示することを周知します。また、有効期限(出国から1年、または在留期限までの短いほう)を確認し、期限が近い場合は出国前に更新申請を完了させます。在留資格を喪失するリスクを避けるためにも、一時帰国前に本人と一緒に確認しておくと安心です。

まとめ

特定技能外国人の一時帰国は、本人にとって精神的リフレッシュや母国の家族と会う大切な機会です。

企業側に一律の帰国義務はありませんが、申し出があった場合には休暇を柔軟に取得させる配慮義務があります。一時帰国の渡航費は原則本人負担となり、空港で「みなし再入国許可」を忘れずに行うというのが基本ルールです。

本記事では、特定技能外国人の一時帰国に関する企業側の義務について解説しました。現場のシフトに穴を開けず、在留資格の喪失や税金・保険料の未納トラブルを防ぐためには、出国前の丁寧なすり合わせが不可欠です。事前面談までの流れをあらかじめ社内フローに落とし込み、特定技能外国人の円滑な一時帰国を実現させましょう。

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