毎月の給与明細の印刷や封入・配布作業に負担を感じていて、電子化を急ぎたいと考えている担当者も多いのではないでしょうか。しかし、給与明細を電子データで交付するためには、所得税法に基づき従業員本人から「同意」を得る必要があります。
本記事では、給与明細の電子化を進めるために必要な同意書の必須項目やテンプレートを紹介します。また、「みなし承諾」のルールや電子化に同意しない従業員への対応策など、スムーズに導入するためのポイントもまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
給与明細の電子化には従業員の同意が必要

給与明細を電子化するためには、法律上のルールを遵守しなければなりません。企業が一方的に電子データでの配布に切り替えることは認められておらず、従業員本人から個別に同意を得る必要があります。
まずは、同意が必要となる法的根拠と手続きを簡略化する方法について見ていきましょう。
所得税法に基づく電子交付の要件
企業が従業員に対して給与明細(給与等の支払明細書や源泉徴収票など)を交付することは、所得税法第231条によって義務付けられています。
法律が定める原則は「書面(紙)」による交付であり、書面に代えて電子データで給与明細を提供するためには、「受給者(従業員)本人の承諾(同意)」を事前に得ることが例外的な措置として条件付けられています。
注意すべき点として、個別の意思表示が必要となるため、労働組合との労働協約による一括同意や、反対意見がないから良しとする「黙示の同意」は原則として認められていません。
みなし承諾によるスムーズな同意取得
2023年度の税制改正により「みなし承諾」という新たな仕組みが導入され、同意取得の手続きが簡略化されました。
みなし承諾とは、「会社が指定した期限までに承諾しない旨の回答がないときは、承諾があったものとみなす」という内容を、あらかじめ従業員へ通知しておく手法です。これにより、指定した期限までに従業員から異議申し出などの回答がなかった場合、企業は同意を得たものとして取り扱うことが可能です。
みなし承諾の活用によって、全従業員から同意書を個別に回収する手間を削減できれば、よりスムーズに電子化を進められるでしょう。
参照:給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A|国税庁
給与明細電子化のための同意書と取得方法

給与明細の電子化をスムーズに進めるためには、事前に同意書のフォーマットや取得方法について確認しておく必要があります。ここでは、同意書の必須項目と取得方法について解説します。
【テンプレート】同意書の必須項目
従業員から同意を得るための書類に特定のフォーマットはないものの、トラブルを防ぐために必ず盛り込むべき項目があります。給与明細の電子化に必要な同意書の必須項目は以下のとおりです。
| 必須項目 | 記載内容の例 |
|---|---|
| 同意の対象となる書類 | 「給与支払明細書」「賞与支払明細書」「源泉徴収票」など |
| 具体的な交付方法 | 「社内ポータルの専用ページにて閲覧」「指定のメールアドレスへ送付」など |
| ファイル形式 | 「PDF形式」 |
| 交付開始時期 | 「△年△月支給分より」 |
| 同意する旨と撤回に関する事項 | 「電子交付に同意する」旨の記載「いつでも同意を撤回できる」旨の記載 |
| 署名・捺印・日付 | 従業員本人が同意したことを客観的に証明するための「署名」「捺印」「同意日」 |
必須項目を網羅した同意書のテンプレートを活用することで、所得税法の要件を満たしつつ、後々のトラブルを防ぐための手続きを進められます。
同意書の取得方法
給与明細を電子化する際の同意取得は、必ずしも紙の書面である必要はありません。同意の取得において重要なのは「誰が、いつ、何に同意したのか」という客観的な記録を残すことであり、メールやシステムを用いた電磁的な方法でも有効です。
紙の同意書を印刷して全従業員に配布し、回収・管理するアナログな運用は、担当者にとって大きな負担になるでしょう。効率的な取得方法としては、従業員からのメールの返信で記録を残したり、社内のアンケートフォームを活用したりするやり方が挙げられます。また、Web給与明細システムを導入し、従業員の初回ログイン時に同意事項を表示させて「同意する」ボタンをクリックしてもらうのも方法の一つです。
担当者の実務負担を抑えるためには、紙での回収にこだわらず、自社の環境に合わせた電子的な方法で同意を取得することをおすすめします。
給与明細電子化の同意をスムーズに取得するポイント

給与明細の電子化を進めるためには、従業員の理解が不可欠です。システム導入への不安を取り除き、スムーズに同意を取得するためのコミュニケーションのポイントや配慮について解説するので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
電子化のメリットとセキュリティ対策について説明する
従業員からスムーズに同意を得るためには、電子化のメリットとシステムの安全性をセットで説明する必要があります。従業員が「自分にどのようなメリットがあるのか」を知らないままだと不満が生じやすく、情報漏えいや不正アクセスに対する不安を抱きやすいからです。
具体的には、電子化に伴う以下のようなメリットを伝えましょう。
- 紙とは異なり紛失や盗難のリスクがなくなる
- いつでもパソコンやスマートフォンで過去の明細を確認できる
- 自分でPDF保存や印刷ができるため、会社に再発行を依頼する手間が省ける
あわせて、通信の暗号化や本人認証(パスワードや二段階認証など)といったセキュリティ体制が整っているシステムを選んでいることを明示し、安全性についても説明します。
スマートフォンを持たない人や紙を希望する人に配慮する
電子化を進める際は、IT機器の操作に不慣れな従業員や、スマートフォンを持っていない人への配慮も不可欠です。操作に対する不安や、自宅にインターネット環境がないといった物理的な制約は、従業員に同意をためらわせる要因の一つです。
具体的なサポートとして、操作に不安がある従業員向けにマニュアルを作成したり、専用の問い合わせ窓口を設置したりして体制を整えましょう。また、スマートフォンを持っていない従業員や、紙の明細を希望する人に対しては、社内の共有パソコンで明細を閲覧できるようにする、社内プリンターを利用していつでも印刷できる環境を提供するといった代替案を提示します。
電子化に向けたサポート体制と代替案をあらかじめ用意しておくことで、スムーズな同意取得につながります。
給与明細の電子化に同意しない従業員への対応策

十分な説明と配慮を行っても、さまざまな事情から電子化に同意しない従業員が一定数発生することもあるかもしれません。万が一、同意が得られなかった場合に企業がとるべき対応について解説します。
従業員の意見を尊重して無理強いしない
給与明細の電子化について同意が得られない場合でも、企業は従業員に無理強いできません。電子交付は原則として従業員本人の同意が必要と定められており、企業が一方的に電子化を強行することは違法になるからです。
このとき、「電子化に同意しないと評価を下げる」「紙での発行は有料にする」などと不利益な扱いを示唆することは、パワハラに該当するリスクもあるため注意が必要です。従業員が同意できない理由に耳を傾け、決して無理強いをせずに本人の意思を尊重する対応が求められます。
同意しない従業員には紙の給与明細を交付し続ける
電子化に同意しない従業員に対して、企業は従来どおり紙の給与明細を交付し続ける必要があります。そのため、全社的に電子化システムを導入する際は、同意しない従業員の分だけ個別にデータを印刷して手渡すといった紙交付の運用ルールやフローを事前に決めておくことが大切です。
同意しない従業員向けに紙交付の体制をあらかじめ整備しておくことで、法的義務を果たしながらシステムの運用を進められます。
給与明細の電子化なら「web給与明細サービス」がおすすめ

給与明細の電子化をスムーズに実現するなら、給与明細サービスの利用がおすすめです。apseedsの「web給与明細サービス」なら、既存の給与計算ソフトから出力したCSV等のデータを読み込むだけで明細の発行が完了するため、担当者の業務負担を最小限に抑えられます。
また、従業員は専用アプリからいつでも明細を確認できるほか、必要なときには自分でPDF保存・印刷することも可能です。サービスの特徴や具体的な機能については、以下のページより詳細をご確認ください。
まとめ
給与明細の電子化には、所得税法に基づく従業員からの事前の同意が不可欠です。みなし承諾のルールを活用したり、同意書のテンプレートを用意して効果的な取得方法を選択したりすることで、移行にかかる手間を削減できます。
本記事では、給与明細の電子化に向けた同意書のテンプレートや効率的な取得方法、同意しない従業員への対応策について解説しました。
給与明細の電子化を進める際は、従業員にメリットやシステムのセキュリティに関する丁寧な説明を行うことが大切です。自社に最適なシステムを選定し、労務業務の負担軽減とペーパーレス化を実現しましょう。

web給与明細サービス
給与明細書をいつでも・どこでも確認可能に!
電子化・ペーパーレス化を実現します。
毎月の給与明細書を電子化し、webで発行できるサービスです。
現在お使いの給与計算ソフトはそのまま出力した給与データを読み込むだけ!


