従業員の友人や知人の紹介で採用を進める「リファラル採用」。マッチ率が高い、低コストで採用できる、など会社にとってメリットの多い採用手段ですが、ただ就業規則に紹介手当を設定するだけではなかなか進めることはできません。
ここでは、リファラル採用を成功させるためのポイントと、運用のヒントとなるような導入事例を紹介します。
リファラル採用とは
リファラル(referral)は“紹介”“推薦”という意味で、自社従業員に友人や知人を紹介してもらう採用手法です。紹介者を介しているためトラブルが起こりにくく、定着率の高い採用が期待できる、とされています。
縁故採用との違い
縁故採用の “今風” の言い回しがリファラル採用でしょ、と思っている方も多いのではないでしょうか?従業員からの紹介、という意味では共通していますが、実は微妙な違いがあります。
縁故採用は “血縁” や “コネクション” の意味合いが強く、スキル等の部分にはあまり重点をおかない、採用を前提に進められたもの、を指す傾向があります。対してリファラル採用は試験・面接といった通常の選考過程を踏み、基準を満たさなければ不採用もありうるため、あくまでも採用の「効率」や「質」を高めるための手法であるといえます。
注目が集まる背景
リファラル採用が注目される背景として、労働力減少による採用の売り手市場化が挙げられます。2014年を境に有効求人倍率(求職者1人あたりの求人数)は1.0を大きく超え、ただ求人を出すだけでは採用できない、求人情報を見てもらうにも工夫が必要、といった状況が続いてきました。
そこで、従来の “待つだけ” の求人ではなく、積極的に欲しい人材を獲得しにいくダイレクトリクルーティング、その1つとしてリファラル採用を検討・導入する企業が増えていったのです。
求人倍率の変動
※コロナ禍で多くの採用活動が抑制・停止されたことにより、有効求人倍率(グラフ内ピンク折れ線)は一時的に1.0に近い数値まで下がりましたが、当記事執筆時点(2022年4月)の最新データでは1.2超まで上昇しています。労働人口の減少は今後も続くと考えられ、コロナ禍の落ち着きとともに、採用市場もまた激化していくことが予測されます。
リファラル採用のメリット
ミスマッチが起こりにくい
リファラル採用の最も大きなメリットとしてあげられるのが「マッチ率の高さ」「ミスマッチの起こりにくさ」です。信頼できる従業員を通して、企業が事前に候補者の性格やスキルを知っておけること、候補者には実体験をもとにした仕事内容や社内の雰囲気を知っておいてもらえることから、企業と候補者双方で安心感が得られ、早期退職リスクが低く、定着率の高い採用が期待できます。
採用コストを抑えられる
大手求人媒体を利用する場合の1人あたりの採用コストは中途採用で62万円、アルバイトで5万円と言われているのに対し、リファラル採用では従業員に支払う紹介インセンティブ、会食費用など自社で設けた制度の費用しかかかりません。定着率も高いため、新規採用の回数や頻度も抑えることができ、採用コスト全体を抑えられます。
採用市場の影響を受けにくい
掲載すれば人が集まる、と言われていた時代が過去にあったように、採用マーケットには波があり、売り手市場の場合は他社との採用競争が発生します。競争が起きればコストは増大し、施策にもあれこれと工夫をしなければなりません。
対して、リファラル採用では競争がほとんど発生せず、他の採用手法と比べて市場の影響を受けません。さらに一般の採用市場には存在しない人材=「仕事はしているが、合う会社があれば転職したい」と考えているような段階の人にもリーチできる可能性があり、タイミングが合えば、市場の状況によらない質の高い人材獲得が見込めます。
リファラル採用のデメリット
急な採用には向いていない
欠員補充など期限が迫っている採用活動の場合、リファラル採用には期待しないようにしましょう。焦って紹介を強要してもよい人材獲得にはつながらず、よい結果は見込めません。一度でも「紹介を強要してしまう」または「強要されているように感じさせてしまう」などの失敗をし、リファラル採用への印象が悪くなると、以後の紹介が入ってこなくなるリスクがありますので、急を要する場合は別の採用手法を検討するようにしてください。
同時退職のリスクがある
紹介者・被紹介者どちらかにトラブルが生じた際、一緒に退職してしまう事態も考えられます。紹介が特定の従業員に偏ってしまっている場合、派閥が生まれたり、職場内トラブルによって複数が一気に辞めてしまうことも考えられますので、偏りを作らないよう、社内全体でリファラル採用に取り組んでもらえるような空気作りにも注力しましょう。
リファラル採用を成功させるためポイント
担当者やチームを作る
リファラル採用を成功させるには、前述のように偏りを作らず、全員で取り組んでもらえる雰囲気作りが大切です。まずは担当者やチームで制度や周知方法をしっかり検討し、紹介しやすい枠組みを作っていきましょう。
インセンティブを設定する
紹介してくれた従業員へ支払うインセンティブ、紹介料を設定しましょう。相場は1~30万円と企業によってかなりばらつきがあります。予算が限られている場合はインセンティブ以外の費用(周知・応募用ツールの費用や面談・会食費)の想定も忘れないようご注意ください。
紹介フローを明確にする
従業員が「紹介してみよう」と思ってくれたときに、まず誰に話すのか、被紹介者に何をしてもらう必要があるのかなど、採用までの流れをあらかじめ明確にしておきましょう。できるだけ物理的・心理的負担がかからない方法にしておくのがおすすめです。
・専用の紹介フォーム設置し、上司を通さなくても紹介できるようにする。
・名前と連絡先を人事部に伝えるだけでOKにする。
・専用応募ページが記載された紹介カードを作り、被紹介者に渡してもらうだけにする。 など
求める人物像や条件を明確にする
欲しい人材の性格やスキルを明確に周知することで、紹介者も候補の顔が浮かびやすくなります。採用判断は会社がおこなうこと、どのような紹介でも有難いことを繰り返し伝え「友達と呼べるほどの仲良しではないから」「条件には合いそうだけど1回しか会ったことない人だから」といった小さな不安から紹介を逃すことのないようにしましょう。
従業員から「信頼される」会社になる
リファラル採用は最終的には従業員の気持ち次第なので、「紹介してみよう」と思ってもらえる空気を作れなければ、結果を出すことができません。従業員とよい関係を築き、「信頼される」ことが何より重要です。紹介をもらえたら、採用・不採用の結果に関係なく、しっかり感謝の言葉を伝えていきましょう。
注意すべきポイント
人材が偏らないように心がける
紹介者と被紹介者は似たような属性になる傾向が強いので、特定の従業員にばかり頼ってしまうと、人材に偏りが生まれてしまうリスクがあります。紹介に消極的な従業員がいたら、プレッシャーをかけないよう注意しながらインタビューをして原因を探るなど、工夫しながら社内全員で取り組んでもらえるような仕組みづくりを心がけましょう。
不採用時のフォローは手厚く慎重に
リファラル採用では選考の結果、不採用になってしまう場合もありますが、この不採用時のフォローにこそ細心の注意を払いましょう。気遣いを怠ると「紹介者と被紹介者」「紹介者と会社」の関係に亀裂が入ってしまう可能性があり、1人の従業員からネガティブな印象が広がってしまうと、その周りの従業員からの紹介もなくなってしまうかもしれません。
従業員が会社を少なからず良く思ってくれているからこそ、大切な友達や知人を紹介してくれていますので、感謝の気持ちと、それらを伝えるためのしっかりした制度設計を心がけましょう。
導入企業の例
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社ではリファラル採用専用ページを誰でも見られる形で公開しています。トヨタ自動車の従業員が知人にいれば、求職者側から手を挙げ、声をかけて応募することもできるオープンな仕組みになっているのが特徴的です。紹介者が選考プロセスに関わらない旨や、採用までのステップが、明確にわかりやすく記載されています。
株式会社すかいらーくホールディングス
飲食産業大手・株式会社すかいらーくホールディングスもアルバイト・パートのリファラル採用専用ページを開設していて、クルー(アルバイト・パート従業員)の5人に1人を紹介制度で採用するほど力を入れています。紹介制度で採用されたクルーのインタビュー動画やQ&Aも掲載され、リファラル採用の仕組みがよくわかるように、紹介者や被紹介者の不安を事前に取り除けるように工夫されています。
freee株式会社
会計ソフトなどでも有名なfreee株式会社も「入社後フィットのしやすさ」「優秀な人の知り合いは優秀なはず」といった観点から、リファラル採用に積極的に取り組んでいます。実際に紹介した・された従業員のインタビューを自社の採用ブログにも掲載し、紹介者と被紹介者の関係性などを紹介しています。「SNSで知り合いだった」程度の仲からでも良好な関係で仕事ができていることなどが紹介されていて、紹介や応募の心理的ハードルを下げる工夫がされています。
まとめ
いかがでしたか?
リファラル採用を成功させるには、今いる従業員から「この会社なら紹介できる」と信頼されることが何よりも大切です。ふだんから感謝の気持ちを伝え、良好な信頼関係を築いておきましょう。
当ブログではこの記事の他にも、定着率向上や人材獲得のヒントになる記事を多数アップしていますので、ぜひお役立ていただければと思います。
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