「健康経営の基本的な知識を押さえたい」という思いを抱かれている方に向けて、この記事では健康経営の概要やメリット、取り組みの流れや例などをわかりやすく解説します。
注意点も併せてご紹介しているため、ぜひ最後までご確認ください。
健康経営とは
まずは健康経営の概要や求められる背景、福利厚生などとの違いについて解説します。
健康経営の概要
健康経営とは、企業が経営課題として従業員の健康管理を捉える経営戦略の一種です。
健康経営では従業員の労働生産性や業績の向上などを目的として、従業員の健康維持や増進に向けて、積極的に投資していくことになります。
これまで健康管理は従業員本人が取り組むものと捉えられていましたが、昨今従業員の健康維持や増進が将来の収益に大きく関わると考えられるようになり、健康経営に取り組む企業も増えてきました。
健康経営が求められる背景
健康経営が求められている背景としては、大きく以下の2点が挙げられます。
生産年齢人口の減少
日本では1995年を境に生産年齢人口(15歳以上〜65歳未満)の人口が減少し続けており、様々な業界で人手不足に陥っています。
そうした状況下において、健康経営は企業イメージを向上させ、従業員の定着や新規人材の獲得にもよい影響をもたらすため、多くの企業に注目されていると言えるでしょう。
従業員の高齢化
少子高齢化の影響を受け、多くの企業では従業員の高齢化という課題を抱えています。
高齢化した従業員は健康面に何かしらの問題を抱えているケースも多くなりますが、新規人材の獲得が難しい状況においては、高齢化した従業員にも長く安定して就業してもらうことが重要になるでしょう。
そういった背景もあり、従業員の健康に対して積極的に関わる企業が増えてきたと言えます。
健康経営と福利厚生、ウェルビーイングとの違い
概要の最後に、健康経営と混同されやすい福利厚生やウェルビーイングとの違いを確認しましょう。
福利厚生との違い
福利厚生とは従業員の就業環境を整えるために提供するサービスのことを指します。
健康経営は先述のとおり経営戦略の一種であり、健康経営の一つの施策として福利厚生が含まれている構図になるでしょう。
ウェルビーイングとの違い
ウェルビーイングは従業員の心身の健康だけでなく、社会的な満足度の向上も含めて目指す取り組みのことを指します。
健康経営と同義として扱われている場合もありますが、ウェルビーイングは健康に加えて満足度の高い状態も目指す、より包括的な概念であると言えるでしょう。
健康経営に取り組むメリット
続いて健康経営に取り組むメリットについてご紹介します。
メリット①:労働生産性の向上
一つ目に挙げられるメリットは労働生産性の向上です。
健康経営に取り組み、従業員の健康状態が良化することによって、安定的かつ高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。
その結果、従業員一人ひとりの労働生産性が向上し、業績や収益の向上にも繋げることができるでしょう。
メリット②:従業員エンゲージメントの向上
次に挙げられるのは従業員エンゲージメントの向上です。
健康経営に取り組むことで、各従業員の健康維持や増進に繋がり、通院や薬の購入といった機会が減少することが見込まれます。
その結果、従業員側の医療費削減にも繋がり、エンゲージメント向上を実現できます。
メリット③:離職率の低下
離職率の低下も健康経営の大きなメリットと言えます。
先のメリットで挙げたように、健康経営に取り組むことで従業員エンゲージメントの向上が期待できます。
エンゲージメントの高い従業員は企業への帰属意識も高くなり、その分離職率も低下するため、従業員の定着化に繋げることが可能です。
メリット④:企業イメージ向上
次に挙げられるメリットは企業イメージの向上です。
健康経営における様々な施策を行い、特定の条件を満たした企業は、健康経営優良法人としての認定を国から受けることができます。
健康経営優良法人認定を通じて、社内だけでなく社外に対して優良企業であることをアピールできるため、企業イメージの向上にも繋げることができるでしょう。
メリット⑤:採用力の強化
採用力の強化に繋がる点も見逃せません。
健康経営に取り組むことで、求職者に対して良好な就業環境や福利厚生があるという点をアピールできます。
そのため求職者側の興味を引きやすく、効率的かつ効果的に人材採用に取り組むことができるでしょう。
メリット⑥:助成金を利用できる
メリットの最後にご紹介するのは助成金を利用できるという点です。
健康経営に取り組むことで、働き方改革推進支援助成金やエイジフレンドリー補助金といった助成金を活用できます。
取り組みの内容によって他にも利用できる助成金があるため、詳細は以下のサイトなどを参照してください。
<参考:労働条件等関係助成金のご案内|厚生労働省>
健康経営に取り組むデメリット
次に健康経営に取り組むデメリットについて確認しましょう。
デメリット①:コストがかかる
デメリットとしてまず挙げられるのは、コストがかかるという点です。
具体的な取り組みについては後ほどご紹介しますが、健康経営における各種取り組みを実施するには、予算が必要になる場合も多くなります。
また健康経営の施策を運用するための人員確保など、相応のコストがかかる点は認識しておく必要があるでしょう。
デメリット②:効果がわかりにくい
次に挙げられるデメリットは、効果がわかりにくいという点です。
健康経営における取り組みの多くは、その効果が定量的に表れにくいという特徴があります。
そのため投入した費用に対して実際どれくらいの効果が出ているのかを把握しづらく、改善活動に繋げにくいと言えるでしょう。
デメリット③:従業員が望まない可能性もある
デメリットの最後に挙げられるのは、従業員が望まない可能性もあるという点です。
企業が経営課題として従業員の健康管理に取り組むことに対して、従業員がネガティブに捉え、精神的な負担を感じてしまうケースがあります。
そうなると健康経営に取り組んでも、従業員の健康の増進といった効果を得られない上、満足度やエンゲージメントも低下してしまうでしょう。
健康経営の取り組みの流れ
ここからは健康経営の取り組みの流れについて、5つのステップに分けて解説します。
ステップ①:従業員に対する方針説明
健康経営の取り組みに際して、まず行うべきは従業員に対する方針説明です。
具体的な説明もない状態で、いきなり取り組みを始めると、従業員からネガティブな反応や意見が出る可能性が高いと言えます。
そのため健康経営の具体的な方針や取り組む理由、予定している施策内容などについて、事前に従業員に対して説明しておきましょう。
ステップ②:体制の構築
次のステップは体制の構築です。
健康経営を推進するにあたって、必要な役割や体制について整理した上で、各取り組みを推進していく専任者や部門などの設置を行います。
また先にご紹介した健康経営優良法人の認定要件の一つとして、「健康づくり担当者の任命」が挙げられているため 、もし認定を検討している場合は忘れずに選出しなければなりません。
ステップ③:健康課題を把握する
体制を構築できた後は、健康課題を把握していくステップに入ります。
定期健康診断やストレスチェックの結果、残業時間などについて、ヒアリングやアンケートなどを通じて調査し、現状を把握しましょう。
現状を正確に把握することで、はじめて有効な取り組みを検討できるため、しっかりと洗い出していくことが重要になります。
ステップ④:目標と取り組み内容を設定する
現状の課題を踏まえ、目標と取り組み内容を設定します。
どういった状態を目指すべきなのかを検討し、具体的な目標として設定した上で、「現状とのギャップを埋めるためには、どういった取り組みが必要か」を考えていくことになるでしょう。
具体的な取り組み例については後ほどご紹介します。
ステップ⑤:施策実施と効果検証・改善
最後に施策展開と効果検証・改善を行います。
先のステップで設定した取り組みを実際に実施しながら、定期的に効果を検証します。
効果検証の内容を踏まえつつ、継続的に改善や新たな施策検討などに着手し、精度を高めていくことになるでしょう。
健康経営の具体的な取り組み例
ここで健康経営における具体的な取り組み例をいくつかご紹介します。
取り組み例①:年次有給休暇の取得推進
取り組み例として一つ目に挙げられるのは、年次有給休暇の取得推進です。
労働基準法では毎週1日、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えることが義務付けられていますが、従業員の健康面を考慮すれば、それだけでは十分ではありません。
従業員にしっかりと休日を取り、リフレッシュしてもらうことで、はじめて健康面が安定し、業務面においても高いパフォーマンスを期待できます。
そのため年次有給休暇を積極的に活用できるような環境や雰囲気を全社的に構築し、取得を推進していく取り組みが有効となるでしょう。
取り組み例②:健康に関するセミナーの実施
健康に関するセミナーを実施することも、有効な取り組みの一つとして挙げられます。
健康維持や増進に役立つ情報を提供するようなセミナーを定期的に開催することで、従業員の健康に対する意識を高めることが可能です。
たとえば以下のようなテーマを取り上げるとよいでしょう。
- 仕事の合間にできる簡単なストレッチ方法
- 簡単に作れる健康レシピ
- 生活習慣病の予防方法
- 健康に関する有益な情報を得られるサイトや書籍などの紹介
取り組み例③:メンタルヘルス対策の実施
メンタルヘルス対策の実施も健康経営における重要な取り組みです。
身体的な健康面については従業員自身や企業側も把握しやすいため、対応なども比較的容易ですが、精神面については把握しづらく、対応が後手に回りがちになります。
しかし精神的な健康は業務パフォーマンスにも大きく影響するため、メンタルヘルス対策も適切に実施していかなければなりません。
そのため定期的なストレスチェックは勿論、匿名で相談できる窓口の設置、上司や人事部門との定期的な面談の実施といった仕組みを構築しましょう。
取り組み例④:食事に関する支援
次にご紹介する取り組み例は、食事に関する支援です。
食生活によって健康面が大きく左右されることは言うまでもありません。
そのため健康経営においては、従業員が十分な食事が取れるように食事補助手当を支給したり、社員食堂で健康的なメニューを導入したりといった支援を行うケースが多くなります。
その他、栄養補助食品の無料提供なども有効な取り組みと言えるでしょう。
取り組み例⑤:運動やスポーツの機会創出
続いて挙げられるのは運動やスポーツの機会創出です。
健康維持や増進においては、運動も重要なポイントになります。
そのためレクリエーションなどを利用して、運動会を開催したり、ウォーキングイベントを企画したりといった取り組みも有効と言えるでしょう。
またジムや体操教室などを利用する従業員に対して、利用料の一部を支給するといった施策も挙げられます。
取り組み例⑥:働きやすい環境の構築
取り組み例として最後にご紹介するのは、働きやすい環境の構築です。
従業員の健康に影響をもたらすのは食事や運動だけではなく、就業環境も大きな要素となるでしょう。
長時間労働が常態化していたり、休日出勤が多かったりする職場では、従業員の心身は疲弊してしまいます。
そのため長時間労働の削減などを含めて働きやすい環境を構築し、適切なワークライフバランスを実現することも、健康経営における重要な取り組みとなります。
健康経営に取り組む際の注意点
最後に健康経営に取り組む際の注意点をご紹介します。
注意点①:従業員に一方的に押し付けない
一つ目に挙げられるのは、従業員に一方的に押し付けないという点です。
デメリットでも触れたように健康経営の施策を実施していく際、企業側から一方的に押し付けてしまうと、逆効果になりかねません。
そのため従業員の意見も積極的に取り入れながら、従業員にとって本当に意味のある施策や取り組みを実現していく必要があります。
体制構築の時点で、現場の従業員にも推進メンバーとして参画してもらうことで、従業員の意見を反映させた健康経営に取り組むことができるでしょう。
注意点②:アルバイトやパートも対象に含めて検討する
二つ目に挙げられる注意点は、アルバイトやパートも対象に含めるという点です。
人材不足が過酷化した現状において、アルバイトやパートといった非正規社員も企業にとって重要な人的資源となります。
そのため健康経営の対象としてアルバイトやパートも含めた上で、適切な取り組みを検討することが重要になります。
アルバイトやパートでも利用できる制度を構築できれば、早期離職などのリスクを低減できるでしょう。
まとめ
今回は健康経営とは何かについて、概要やウェルビーイングとの違いなどを踏まえつつ、取り組みの流れや例などをご紹介してきましたが、いかがでしたか。
日本社会は高齢化や人材不足が加速しています。そういった状況においては、従業員の健康に投資し、従業員に長く安定したパフォーマンスを発揮してもらうことは、欠かせない取り組みと言えるでしょう。
ぜひこの記事を参考にして、健康経営を実現していただければ幸いです。
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