BCPという言葉を聞いたことがあるものの、具体的な内容やどういったメリットがあるのかまではわからない。

この記事は上記のような方に向けて、BCPの概要や中小企業にとってのメリットを踏まえ、策定手順をわかりやすくご紹介します。

策定におけるポイントや、関連する制度である「事業継続力強化計画」についても解説しているため、ぜひご一読ください。

BCPとは

まずはBCPの概要やBCM、BCMSとの関係などについてご紹介します。

BCPの概要

BCPとは「Business Continuity Planning」の略称であり、事業継続計画と訳されます。

BCPは地震や洪水といった自然災害やコロナなどの感染症の流行、テロといった危機的状況において、企業への損害や影響を最小限にし、早期復旧を図るために策定される計画です。

2001年にアメリカで起きた同時多発テロや、2011年の東日本大震災などの影響もあり、それ以降日本においてもBCPが徐々に注目されるようになりました。

BCPとBCM、BCMSとの関係

BCPと関連する用語としてBCMやBCMSについてご紹介します。

BCM

「Business Continuity Management」の略称であり、事業継続マネジメントと訳されます。

災害発生時において、ビジネス上の被害を最小限に抑えるためのマネジメント活動を指し、BCMの一環としてBCPが策定されることになるでしょう。

BCMS

「Business Continuity Management System」の略称であり、事業継続マネジメントシステムと訳されます。

BCMを効率的かつ効果的に遂行するためのシステムや仕組みを指し、これらの仕組みを基にBCPが策定されます。

中小企業におけるBCPの策定率

ここで中小企業におけるBCPの策定率について確認しましょう。

内閣府が発表した「令和3年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によると、中小企業のBCP策定率は以下のとおりです。

引用:令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査の概要①|内閣府

大企業の70.8%に対して、中小企業は40.2%と低い結果となっています。

グラフにあるように東日本大震災があった2011年(平成23年)から増加し始めたものの、まだ半数にも至っていないのが実状と言えるでしょう。

中小企業がBCPを策定するメリット

ここでは中小企業がBCPを策定した場合のメリットをそれぞれ解説します。

メリット①:事業継続性の向上

メリットとしてまず挙げられるのは事業継続性の向上です。

BCPを策定していることで、災害や感染症発生といった危機的状況下においても、損失を最小限に抑えた上で早期復旧を図ることができるため、事業を継続できる可能性が高まります。

もしBCPが策定されていなければ、危機的状況に陥った際に被害が大きくなり、倒産や従業員の解雇などに繋がりかねないでしょう。

メリット②:社会的信頼性の向上

二つ目のメリットとして挙げられるのは、社会的信頼性の向上です。

BCPを策定していることで、社内外から危機的状況下であっても事業が存続する可能性が高いと判断され、ステークホルダー全体からの信頼を得やすくなります。

その結果、取引増加や従業員の確保、投資家を見つけやすくなるなど、企業にとってプラスの効果を得られるでしょう。

メリット③:事業の優先度が明確になる

事業の優先度が明確になる点も、メリットとして挙げられます。

BCP策定を通じて、危機的な状況下において早期に復旧すべき事業はどれかを検討することになり、各事業の優先度が明確になります。

自社にとって影響度の高い事業を見極められるため、経営効率の向上や事業体制の見直しなどにも繋げられるでしょう。

メリット④:雇用の安定

続いて挙げられるメリットは、雇用の安定です。

BCPを策定しておくことで、危機的状況下においても事業を継続しやすくなるため、人員削減の方針を取らなければならない事態を避けることができます。

従業員にとっても解雇されるリスクが低くなるため、従業員満足度の向上や信頼獲得にも繋げられます。

メリット⑤:従業員のリスク意識の向上

次に挙げられるのは従業員のリスク意識の向上です。

BCP策定を通じて、企業が様々な状況に対して危機感を持ち、しっかりと対策していることを社内にアピールできます。

その結果、従業員一人ひとりのリスクへの意識を高めることができ、リスク管理能力の向上にも繋げられるでしょう。

メリット⑥:助成金を受けられる

BCPを策定した場合、助成金や補助金を受けられる可能性があります。

例えば東京都の場合は、BCP実践促進助成金が設けられています。

BCP実践促進助成金は特定の要件を満たした企業に対して、安否確認システムの導入や減災設備の工事、クラウドサービスの利用料などに関する助成金が支給される制度です。

他府県でもBCPを対象とした助成金や補助金を設けているケースがあるため、必要に応じて確認してください。

<参考:BCP実践促進助成金 | 設備助成 | 東京都中小企業振興公社

BCPの策定手順

ここからはBCPの策定手順として、以下のステップに分けてご紹介します。

ステップ①:基本方針の決定

まずはBCPにおける基本方針を決定します。

現時点で取り組んでいる防災などの取り組みを把握した上で、改めて経営理念やビジョンなどに立ち返り、BCPを策定する目的や背景を再確認しましょう。

基本的には従業員の保護は勿論、CSR(企業の社会的責任)の推進やステークホルダーからの信頼獲得などを軸として、基本方針を設定します。

ステップ②:中核事業とリスクの洗い出し

次に危機的状況に陥った際に企業活動を継続する上で、最も重要かつ影響度の高い中核事業を洗い出します。

売上が大きな基幹事業は勿論、事業が滞った場合に顧客を含めたステークホルダーに対して多大な影響が生じる事業などを確認しましょう。

中核事業を洗い出した後は、事業を継続するにあたって想定されるリスクを全て洗い出すことが重要です。

自然災害は勿論、感染症やテロ、サイバー攻撃といった観点から抽出するとよいでしょう。

ステップ③:優先順位と目標復旧時間の設定

続いて優先順位と目標復旧時間を設定します。

先のステップで洗い出したリスクについて、発生確率や頻度、事業に与える影響などを考慮して、どのリスクから対応すべきかの優先順位を見極めます。

それと併せて、リスクが顕在化した際にどの程度の時間で事業を復旧させるのか、目標を設定しましょう。

ステップ④:具体的な対応策と運用体制を策定する

最後に具体的な対応策と運用体制を策定します。

発生から復旧にあたっては、大きく「被害状況の確認」「応急処置」「復旧作業」の3つのプロセスを経ることになります。

これらのプロセスにおいて、誰が何をすべきかといった運用体制を踏まえつつ、必要な対応策を検討しましょう。

BCP策定におけるポイント

次にBCP策定におけるポイントをご紹介します。

ポイント①:社内に徹底周知する

一つ目のポイントは、BCPを社内に徹底周知するという点です。

どれほど効果的なBCPが策定されていても、従業員が正しく理解していなければ、緊急時に適切な対応を取れず、結局被害が大きくなってしまう可能性があります。

そのため策定したBCPは社内に徹底的に周知した上で、定期的に訓練や研修を実施し、いざという時に全従業員が適切な行動を取れるようにしておかなければなりません。

ポイント②:実行可能な施策や目標を設定する

次に挙げられるポイントは、実行可能な施策や目標を設定するという点です。

仮に復旧目標が現実的でなかったり、対策を実行するためのリソースが足りていなかったりすれば、形骸化してしまうでしょう。

そのためBCPにおける具体的な対応策や復旧目標を立てる際は、自社リソースを踏まえながら、実行可能な範囲で策定しなければなりません。

ポイント③:検証と改善のPDCAサイクルを回す

ポイントの最後に挙げられるのは、検証と改善のPDCAサイクルを回すという点です。

BCPに基づく施策を実行した際は効果検証を必ず行い、問題点や課題を分析した上で、改善していかなければなりません。

はじめてBCPを立てた場合は内容に不備がある可能性も高いため、施策実行と改善のサイクルを継続的に回すことが、精度を高める上で欠かせないでしょう。

【補足】事業継続力強化計画とは

最後にBCPと関連して、事業継続力強化計画について簡単にご紹介します。

事業継続力強化計画の概要

事業継続力強化計画とは中小企業強靭化法によって規定されたものであり、BCPと同様に事業継続力を高めることを目的として、災害発生の対策や初動の運用面などを規定します。

内容は類似していますが、BCPとは異なり要件を満たすことで国からの認定を受けることが可能です。

検討すべき項目などが定まっているため、決められた書式がないBCPよりも策定ハードルは低いという特徴があります。

詳しくは以下のページをご確認ください。

<参考:事業継続力強化計画 | 中小企業庁

事業継続力強化計画のメリット

事業継続力強化計画を策定するメリットとしては、以下のような点が挙げられています。

  • 低利融資や信用保証枠の拡大など金融支援
  • 防災・減災設備に対する税制支援(20%の特別償却)
  • 補助金(ものづくり補助金等)の加点
  • 認定事業者を要件とした県・市町など地方自治体等からの補助金等支援
  • 認定ロゴマークの利用

このようにBCPよりも策定ハードルが低い上に、税制や補助金などの支援を受けられるため、BCPの前段階として事業継続力強化計画を策定するというのも一つの方法と言えるでしょう。

<参考:事業継続力強化計画とは ~自然災害に加えて、新型コロナなどの感染症に対応~ | 経済産業省 中小企業庁

まとめ

今回はBCPについて概要やメリットなどを踏まえつつ、策定の手順やポイントなどをまとめて解説しました。

昨今、地震や台風などの自然災害の頻度が増している上、コロナといった感染症リスクもあり、企業は事業や従業員の雇用を守るために、様々な対策を講じなければなりません。

BCPは事業継続性を高め、従業員の雇用を守るために必要な対応策をまとめたものであるため、あらゆる企業にとって必要性が高いものと言えるでしょう。

中小企業庁が中小企業のためにBCPのガイドラインを発行しているため、以下のページから確認していただきながら、BCP策定にチャレンジしてください。<『中小企業BCP(事業継続計画)ガイド』のご紹介|中小企業庁

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