- 合理的配慮とは何かおさらいしたい
- 合理的配慮の義務化のタイミングを知りたい
- 合理的配慮の具体例や流れを知りたい
この記事は上記のような方に向けて、合理的配慮の意味や義務化のタイミングといった基本的な情報を踏まえつつ、具体例や提供の流れをわかりやすく解説します。
最後に合理的配慮を提供する際のポイントも併せてご紹介しているため、ぜひ最後までご確認ください。
合理的配慮とは
まずは合理的配慮の意味や義務化のタイミング・背景などについてご紹介します。
合理的配慮の意味と根拠法
合理的配慮とは、障がいを持つ人達が就業や日常生活などを送りやすくなるように、それぞれの障がいの特徴やそれに伴う困りごとに応じて、実施される配慮のことです。
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」いわゆる「障害者差別解消法」の第8条2項によって規定されており 、当該障がい者から配慮の提供について申し出があった場合に実施しなければなりません。
合理的配慮の義務化のタイミングと背景
障害者差別解消法における合理的配慮は、これまで行政機関のみ義務となっており、一般事業者は努力義務となっていました。
しかし2021年6月の法改正によって、2024年4月1日から全ての事業者が合理的配慮の実施が義務化となります。
合理的配慮の目的である「障がい者とそうでない人達が、互いのらしさ認める共生社会の実現」を図るには、行政機関だけでなく、一般事業者による配慮も必要であると判断され、義務化されたと言えるでしょう。
合理的配慮の提供対象
合理的配慮の提供対象としては、「障がいにより継続的に日常生活や社会生活において、相当な制限を受ける者」となっており、具体的には以下のような者が挙げられます。
- 身体障がい者
- 知的障がい者
- 精神障がい者(発達障がいを含む)
- 上記以外の心身機能の障がいを抱える者
合理的配慮の提供義務に違反した場合の罰則
提供義務に違反したり、十分な配慮ができていなかったりした場合、まずは障害者差別解消法第12条の規定により、行政から状況報告を求められ、かつ助言や勧告などを受けることになります。
その際、報告しなかったり虚偽の報告をしたりした場合、同法26条の規定によって20万円以下の科料に処されるため、適切に対応しなければなりません。
合理的配慮の具体例
ここからは合理的配慮の具体例についてご紹介します。
物理的環境への配慮
一つ目にご紹介するのは物理的環境への配慮であり、主に肢体不自由者に対して提供されます。
例えば飲食店に訪れた車いす利用者から、そのまま着席したい旨の申し出があった場合に、配置していた椅子を片付けて、車いすのまま着席できるようにスペースを確保するといったケースが挙げられるでしょう。
同じく車いす利用者に対して、陳列棚の高い位置に置いている商品を、手元まで降ろして見えるようにするといった対応も該当します。
意思疎通への配慮
続いてご紹介するのは、意思疎通への配慮です。
主に聴覚や視覚などに障がいを持ち、一般的なコミュニケーションが難しい人に対して提供されます。
具体的には、難聴を抱えた人から筆談によるコミュニケーションの申し出があった際に、メモやペンを用意してコミュニケーションを図るといったケースが挙げられます。
他にも知的障がいがある来店者に対して、簡単な言葉でわかりやすく案内や商品説明を行うといった対応も該当するでしょう。
ルール・慣行の柔軟な変更
具体例の最後にご紹介するのは、ルール・慣行の柔軟な変更です。
例えば通常では電話でしか受付の対応をしないところ、聴覚障がい者からの申し出があった際は、ファックスなどでの受付も行えるようにするといったケースが挙げられます。
他にも発達障がいなどに起因して、文字の読み書きに時間がかかる人からの申し出を受け、開催しているセミナーのホワイトボード撮影を許可するケースなども該当するでしょう。
合理的配慮の提供義務違反に該当しないケース
次に合理的配慮の提供義務違反に該当しないケースをご紹介します。
合理的配慮の前提となる要件
該当しないケースを確認する前に、そもそも合理的配慮の前提となる要件を確認しておきましょう。
義務化といっても無条件に提供しなければならないわけではなく、事業の目的や内容・機能に照らし合わせて、以下の3つの要件を満たした場合に限って提供すべきとしています。
- 必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
- 障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
- 事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
<参考:令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!|内閣府>
合理的配慮の提供義務違反に該当しない事例
合理的配慮の提供義務違反に該当しない事例として、内閣府は以下のようなケースを紹介しています。
・飲食店で食事介助を事業として提供していない場合、食事介助を求められた際に断る
これは「必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること」という要件に該当しないため、提供義務違反になりません。
・抽選販売を行っている限定商品について、申し込み手続きを行うことが難しいことを理由として、当該商品を確保しておくように求められた際に断る
これは「障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること」という要件に該当しないため、提供義務違反になりません。
<参考:令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!|内閣府>
過重な負担に該当する場合も提供義務違反にならない
先に紹介した事例以外でも「過重な負担」に該当する場合は、提供義務違反にはなりません。
過重な負担となるかどうかは、個別ケースごとに以下の点を考慮した上で、総合的・客観的に判断します。
- 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
- 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
- 費用・負担の程度
- 事務・事業規模
- 財政・財務状況
過重な負担の例として、「小売店に訪れた視覚障がい者の申し出を受け、他の顧客への対応を中断して、店内に揃えている全ての商品を口頭で説明する」といったケースが挙げられるでしょう。
合理的配慮の提供における基本的な流れ
続いて合理的配慮の提供を行う際の基本的な流れを押さえましょう。
ステップ①:障がい者からの申し出
合理的配慮の提供は、障がい者の申し出からスタートします。
障がい者から各障がいの特性に応じて、具体的にどういった配慮の提供を望んでいるのかを聞くことになるでしょう。
ステップ②:建設的対話の実施
続いて実施するのは建設的対話です。
障がい者からの申し出内容を踏まえつつ、自社の状況も鑑みながら、障がい者と対話を重ねていき、一緒になって解決策を検討します。
ステップ③:配慮内容の決定
建設的対話を通じて解決策の方向性や内容が具体的になってきたタイミングで、実際に提供する配慮内容を決定します。
申し出内容自体の提供が難しくても、建設的対話を重ねることで、代替案を見つけることができるでしょう。
ステップ④:実施と検証
最後のステップは配慮の実施と検証です。
決定した合理的配慮を実際に提供するとともに、実施状況や効果などを記録・社内共有した上で、その情報を基に改善策の検討などを実施します。
合理的配慮提供におけるポイント
最後に合理的配慮の提供を行う際のポイントについてご紹介します。
ポイント①:障がいへの理解を深める
一つ目に挙げられるのは、障がいへの理解を深めるという点です。
従業員が障がいに対して理解を示さず、偏見や差別的な考えを持っている場合、適切な合理的配慮を提供することは難しいでしょう。
そのため障がい者との接点となりうる従業員全てが、障がいへの理解を深め、合理的配慮の必要性を理解しなければなりません。
ポイント②:合理的配慮に関する相談窓口を設置する
次に挙げられるポイントは、合理的配慮に関する相談窓口を設置するという点です。
ただ合理的配慮を提供しているだけでは、実際に配慮を受けた障がい者がどう感じたか、といった点を把握しにくいと言えます。
その点、専用の相談窓口を設置すれば、提供している合理的配慮に対する評価や、「もっとこういう対応をしてほしかった」といった要望を効率的に集めることが可能です。
ポイント③:定期的な見直しを実施する
ポイントの最後にご紹介するのは、定期的な見直しを実施するという点です。
実施している合理的配慮の効果や窓口に集まった意見などを基に、提供する配慮の内容や進め方などについて定期的に見直すことが重要になります。
配慮の提供と見直しを徹底することで、障がい者への理解をさらに深め、より効果的な配慮の提供に繋げることができるでしょう。
まとめ
今回は合理的配慮について意味や義務化のタイミング、具体例や提供の流れなどをまとめて解説してきましたが、いかがでしたか。
高齢化が進む日本において障がい者の数は増加傾向にあり、合理的配慮を提供しなければならないシーンもその分増えてくることが予想されます。
そのため、あらゆる企業は障がいへの理解を深め、適切な合理的配慮を提供しなければなりません。
ぜひこの記事を参考に、合理的配慮の提供に取り組んでいただければ幸いです。
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