- フリーランス新法とはどういった法律なのか知りたい
- フリーランス新法はいつから施行されるのか知りたい
- フリーランス新法に罰則があるのか知りたい
この記事は上記のような方に向けて、フリーランス新法の概要や目的などを踏まえつつ、具体的な内容や施行日、罰則などを解説します。
法施行に際しての必要な対応や問題点なども併せてご紹介しているため、ぜひ最後までご確認ください。
フリーランス新法とは
まずはフリーランス新法の概要や下請法との違い、適用のタイミングなどについて解説します。
フリーランス新法の概要と目的
フリーランス新法とは、フリーランスと発注者間の取引を適正化させることや、フリーランスの就業環境の整備を目的とした法律です。
正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」と言います。
2022年6月に出された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に端を発し、2023年5月に公布されました。
フリーランス新法と下請法の違い
フリーランス新法は、同じく立場の弱い事業者を保護する規定を設けている下請法と混同されやすいと言えますが、規制対象や保護対象に違いがあります。
下請法における規制対象は資本金1,000万円超の事業者ですが、フリーランス新法では資本金などに関わらず全ての事業者となっています。
また下請法が資本金1,000万円以下の下請け業者を保護対象としている一方で、フリーランス新法の保護対象は業務を受託するフリーランスです。
フリーランス新法はいつから適用されるのか
フリーランス新法の具体的な施行日については、2024年1月時点では未定です。
ただし、中小企業庁が発行している資料では2024年秋頃までには施行される予定と記載されています。
<参考:フリーランスの取引に関する新しい法律ができました|中小企業庁>
フリーランス新法の対象者
このあとフリーランス新法の具体的な内容に入っていきますが、その前に新法の対象者を簡単に確認しておきましょう。
特定受託事業者(=フリーランス)
業務委託の相手方である事業者であり、従業員を使用しないもの
特定受託業務従事者
特定受託事業者である個人、あるいは特定受託事業者である法人の代表者(一人社長)
特定業務委託事業者
特定受託事業者に対して、業務委託をする事業者であり、従業員を使用するもの
フリーランス新法の内容
ここからはフリーランス新法の具体的な内容についてご紹介します。
内容①:取引条件を書面などで明示する
一つ目の内容は取引条件を書面などで明示するという点です。
フリーランスに業務を委託する場合は、委託する業務の内容は勿論、報酬額や支払期日といった取引条件を書面などで明示することが義務化されます。
内容②:60日以内での報酬支払い
次に挙げられるのは、60日以内での報酬支払いが求められるという点です。
フリーランスに対する支払い期日は、商品やサービスの納品日から数えて60日以内に設定し、期日内に報酬を支払わなければなりません。
内容③:継続的業務委託を行う場合の禁止事項
続いて挙げられるのは、継続的業務委託を行う場合の禁止事項です。
単発ではなく継続的に業務委託を行う契約を締結する場合は、以下のような禁止事項に該当しないようにしなければなりません。
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
- 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
- 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
- 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること
引用: 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料 内閣官房新しい資本主義実現本部事務局|公正取引委員会|中小企業庁|厚生労働省 P.2
内容④:募集情報の的確な表示
募集情報の的確な表示も、フリーランス新法の内容として挙げられます。
フリーランスの募集に関する情報をWebサイトや広告などに掲載する場合、虚偽や誤解をまねくような表記は禁止され、正確な内容を記載しなければなりません。
また記載している情報についても、更新情報がある場合は差し替えるなど、常に最新な状態を保つ必要があります。
内容⑤:育児介護などと業務両立への配慮
次に挙げられるのは、育児介護などと業務両立への配慮です。
継続的な業務委託契約において、委託するフリーランスが育児や介護も行っている場合は、フリーランス側からの申し出に応じて必要な配慮を求められます。
たとえば「就業時間の短縮や在宅業務の日数を増やす」といった対応が挙げられるでしょう。
内容⑥:ハラスメント対策の体制整備
ハラスメント対策の体制整備も内容として含まれています。
フリーランスに対するハラスメントについて、相談対応のための体制構築といった措置を講じなければなりません。
フリーランスとの窓口となる従業員に対してハラスメント防止の研修を実施したり、ハラスメントの相談担当者を設置したりといった対応が挙げられます。
内容⑦:中途解除などにおける事前予告
内容の最後に挙げられるのは、中途解除などにおける事前予告の義務化です。
業務委託契約を中途解除する場合や、継続的に更新してきた業務委託契約を更新しない場合、30日前までの予告が義務付けられます。
違反した場合の罰則
フリーランス新法では、ここまで紹介してきたように発注者側に様々な義務が設けられます。
これらの義務に違反した場合は、まず助言指導などの措置や勧告が出され、勧告に従わない場合は、その勧告に従うように命令を受けることになります。
この命令も無視して是正しない場合は、50万円以下の罰金が科されることになるため、注意しましょう。
フリーランス新法施行に際して必要な対応
続いて、フリーランス新法の施行に際して、企業側に必要な対応について解説します。
対応①:契約書などのフォーマットを作成する
必要な対応としてまず挙げられるのが、契約書などのフォーマットを作成するという点です。
フリーランス新法によって、取引条件の書面交付は勿論、正しい募集情報を掲載する必要性が高まりました。
これらのポイントに適切に対応するために、フリーランスとの契約書や業務委託募集に際するフォーマットをあらかじめ用意しておくとよいでしょう。
対応②:支払いサイトの見直し
次に挙げられるのは、支払いサイトの見直しです。
先にご紹介したようにフリーランスとの取引においては、成果物などの納品日から数えて60日以内の支払期日の設定と支払いが求められます。
そのため、現在支払いサイトを60日以上にしている場合は、請求支払業務の仕組みやフローを見直し、60日以内での支払いに対応しなければなりません。
対応③:対応マニュアルの作成
対応マニュアルの作成も、忘れてはなりません。
先に挙げたフリーランス新法の要点を押さえ、適切にフリーランスと取引を行うためには、フリーランスとの取引対応マニュアルをあらかじめ用意しておくべきと言えます。
支払いサイトなどの業務フロー見直しと併せて、マニュアルも一緒に作成しておきましょう。
対応④:フリーランス新法に関する情報収集を徹底する
次にご紹介するのは、フリーランス新法に関する情報収集の徹底です。
フリーランス新法については、2024年1月時点では未施行であり、かつ今後義務項目などが追加される可能性があります。
そのため新法に関する情報は常日頃からチェックしておき、「いつから対応が必要になるのか、追加項目などはないか」といった点を確認しましょう。
対応⑤:フリーランス新法について社内教育を実施する
続いてご紹介するのは、フリーランス新法についての社内教育です。
フリーランス新法について、法務や上層部だけが認識していても意味がありません。
フリーランスとの契約を行う窓口部門や担当者に対して、フリーランス新法について教育を行うことで、はじめて適切な対応を実現できます。
対応マニュアルなども活用しながら教育することで、教育効果を高めることができるでしょう。
対応⑥:フリーランス新法を順守する旨を発信する
フリーランス新法については、企業だけでなくフリーランスも動向をチェックしています。
そういった状況においては、企業側からフリーランス新法を順守する旨を、社内外に対して積極的に発信することが重要になります。
企業側が発信することで、現在取引しているフリーランスは勿論、今後取引する可能性のあるフリーランスからも信頼を得やすくなるでしょう。
フリーランス新法の問題点
最後にフリーランス新法における問題点について解説します。
問題点①:ライフリスクまでは対策できていない
問題点の一つ目に挙げられるのは、ライフリスクまでは対策できていないという点です。
フリーランス新法はあくまで業務におけるトラブルを中心に対策しています。
しかしフリーランスにとって業務上のトラブル以上に、生活面での保障やセーフティネットに関する支援が重要であることは言うまでもありません。
フリーランス新法ではそういった点に対応できておらず、フリーランスの就業環境整備にはまだまだ大きな課題があると言えるでしょう。
問題点②:発注者側の負担増加
次に挙げられるのは、発注者側の負担増加です。
フリーランス新法では書面交付の義務化や支払いサイトの設定、ハラスメント対策の整備などが求められます。
これらの対応を行うには、仕組みの見直しや担当者の配置といったように、発注者となる企業側の工数や負担が増加することが見込まれます。
フリーランス側の保護が目的であるため、企業側の対応工数などがそこまで考慮されない点は仕方ありませんが、対応には一定の負荷がかかる点は否めないでしょう。
問題点③:フリーランスへの発注を控える可能性
問題点の最後に挙げられるのは、フリーランスへの発注を控える企業が出てくる可能性があるという点です。
先の問題点でも挙げたように、フリーランス新法は発注者側の負担が増えるため、一部の企業は「フリーランスへの発注を控える」という判断をする可能性があります。
そうなると、フリーランスの業務機会が損なわれ、本末転倒になる恐れがあるでしょう。
まとめ
今回はフリーランス新法をテーマに、概要や具体的な内容、施行に際して必要な対応などをまとめて解説してきましたが、いかがでしたか。
少子高齢化や時代の変化を受け、フリーランスという働き方を選ぶ人材も増えています。
また社内の人手が不足しやすい現代においては、フリーランスを事業活動における人的リソースとして積極的に活用しなければならないケースも出てくるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、正しいフリーランスとの取引を実現し、事業発展に繋げていただければ幸いです。
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