EVPとはどういったもので、企業にとってどのようなメリットがあるのか知りたい。
この記事は上記のような方に向けて、EVPの概要や求められる理由を踏まえつつ、メリットや導入手順をわかりやすく解説します。
最後にEVPに関する企業事例もご紹介しているため、ぜひ最後までご確認ください。
EVPの概要
はじめにEVPの意味やEVPとなりうる要素などについてご紹介します。
EVPとは
EVPとは「Employee Value Proposition」の略称となっており、企業が従業員に提供する価値を意味する言葉として使われています。
一昔前までは「従業員が企業にどのような価値をもたらすのか」に力点が置かれ、従業員よりも企業の方を優先的に捉える考え方が主流でした。
しかし時代が変化したことにより、「待遇や福利厚生などを含めて、企業がどのような価値を従業員に提供できるのか」を重視する考え方が現れ、EVPとして確立されたと言えるでしょう。
EVPが求められる理由
戦後からバブルにかけて、日本社会は終身雇用制度が機能しており、基本的には新卒で入社した企業で定年まで働くことが一般的でした。
しかし現代は働き方や労働者の価値観が多様化したことによって、転職も一般化し、人材の流動性が高まっています。
こうした状況下において従業員に長く務めてもらうには、企業が従業員に対して自社に在籍する価値を提供しなければなりません。
また少子高齢化による人口減少の影響を受け、採用の難易度も高まっています。
そのためEVPを確立し、現在の従業員に長く働いてもらえる環境を整えつつ、求職者に対しても「働き手から見た自社の価値」を訴求する企業が増えてきたと言えるでしょう。
EVPとなりうる諸要素
EVPとして取り入れられる要素としては、主に以下のようなものが挙げられます。
- 企業ブランド
- ビジョンやバリュー
- 人事評価制度
- 教育やキャリア開発制度
- 勤務制度(フレックスや在宅など)
- 給与や福利厚生
- 表彰制度
- 休暇制度
- 従業員
- 風土や環境
このようにEVPには企業における様々な制度や要素が含まれるため、「EVPがない…」という企業はありません。
どのような企業であっても必ずEVPとなる要素はあるため、後はそれを自覚した上で、従業員や外部に訴求できるかどうかが、重要になると言えるでしょう。
EVPを導入するメリット
続いてEVPを導入することで得られるメリットをご紹介します。
メリット①:企業理念や価値観の浸透
企業として大切にしている理念や価値観をEVPに込めて訴求することで、従業員への浸透を促すことが可能です。
理念や価値観はそのままの状態では抽象度が高く、従業員側からすると「どのような価値があるのか」を感じにくいと言えます。
その点、従業員目線でEVPに落とし込むことができれば、理解してもらいやすくなるでしょう。
メリット②:従業員満足度やエンゲージメントの向上
EVPを導入することで、自社で働くことによって得られる価値やメリットなどを、従業員に理解・体感してもらうことができます。
その結果、従業員側もその企業で働いていることに満足感を覚え、エンゲージメントも向上することが見込まれます。
メリット③:従業員の定着率向上
先述のとおり、EVPが導入されることによって従業員満足度やエンゲージメントが高まるため、退職や転職を考える従業員が減少することが期待できます。
自ずと従業員の定着率も向上し、一度採用した従業員に長期にわたって安定的に就業してもらえるようになるでしょう。
メリット④:企業イメージの向上
EVPが導入されると従業員の満足度やモチベーションが高まり、結果として顧客に提供するパフォーマンスの品質も向上するため、顧客からポジティブな評価を得られるようになります。
加えて「従業員を大切にしている企業である」という点も訴求できるため、顧客や求職者といった外部からの企業イメージも良化するでしょう。
メリット⑤:採用力の強化
EVP導入によって従業員に対する価値が明確になるため、求人や採用活動における訴求すべき点にぶれが無くなります。
EVPを軸に求職者に対してアピールすることで訴求力も高まり、応募者数の増加やミスマッチの防止といった、採用面でのポジティブな効果を発揮するでしょう。
EVPの導入手順
ここからはEVPの導入手順をいくつかのステップに分けてご紹介します。
ステップ①:現状分析
EVPの導入にあたって、まずすべきことは現状分析です。
現在の人事評価制度や教育・キャリア開発制度、給与や福利厚生など、従業員との接点となる各種制度について棚卸しましょう。
その内容を踏まえ、自社が現時点で従業員に対して提供できている価値や、今後提供できる可能性のある価値について整理します。
ステップ②:従業員ニーズの分析
次に従業員のニーズ分析を行います。
まずは既存の各種制度についての意見を集め、改善すべき点を抽出しましょう。
さらに現在の制度では対応できていないニーズを分析するために、従業員に対してアンケートやインタビューなどを実施します。
理想は全ての従業員の意見を集めることですが、インタビューとなると人数的に厳しい場合も出てくるでしょう。
その場合、役職階層と評価軸などでマトリクスを組み、各マトリクスにいる従業員を数名抜粋することで、ある程度網羅した情報を得られます。
ステップ③:他社のEVPの分析
ここでEVPの策定に移りたいところですが、その前に採用競合となる他社のEVPを分析しましょう。
自社とカテゴリや業態が似ている競合企業について、Webサイトや求人情報などをチェックし、どのような要素をEVPとして打ち出しているのかを分析します。
もし競合他社から転職してきた従業員がいれば、そこから情報を聞き出すというのも一つの方法です。
ステップ④:EVPの策定
ここまでの内容を踏まえ、EVPを策定します。
競合他社のEVPと自社の各種要素を相対比較しつつ、自社の強みや独自性のある制度をEVPとして策定しましょう。
現時点で要素や制度として確立されていなくても、すぐに実現できるものであれば、それをEVPとして掲げてもかまいません。
ステップ⑤:EVPの周知
策定したEVPは社内に周知しなければなりません。
どれだけ素晴らしいEVPを策定できても、その存在や内容を従業員が理解していなければ、何の効果も発揮しないでしょう。
そのためEVPについて社内報や説明会などを通じて周知し、自社の価値についての理解を深めてもらう必要があります。
また外部、特に求職者の認知を得るためにも、企業サイトや採用ページなどへの反映も忘れずに対応しましょう。
ステップ⑥:EVPのブラッシュアップ
EVPは一度策定して終わりではなく、定期的にブラッシュアップしましょう。
EVP導入後は、従業員の理解度やエンゲージメント、求職者への訴求効果などを定期的に検証していくことが求められます。
検証結果を踏まえて、新たな制度や要素を取り入れたり現制度を見直したりと、ブラッシュアップを継続することで、より効果のあるEVPを確立できます。
EVPを導入する際のポイント
次にEVP導入時のポイントについて確認しましょう。
ポイント①:トップマネジメントが主導する
EVPは企業が従業員へと提供する価値であるため、人事部門などの一部門が主導するのではなく、トップマネジメントが主体的に関わる必要があります。
もしトップマネジメントがEVP策定に関心を示さず、現場任せにしてしまえば、EVPの信頼性が下がり、形骸化してしまうでしょう。
トップマネジメントがEVP策定に対してコミットし、策定プロジェクトを手厚くバックアップすることで、はじめて本当に効果の出るEVPを策定できます。
ポイント②:従業員や求職者の意見を積極的に取り入れる
EVPはそもそも「従業員にとっての価値」であるため、企業側が一方的に決めるものではありません。
策定前の分析時は勿論、実際にEVPを決定する打ち合わせなどにおいても、従業員に参画してもらうことで、「自分たちの意見も反映されている」と感じてもらえ、理解も促すことができるでしょう。
また求職者が企業に対してどのような価値を求めているのかを調査し、それらの内容を取り入れることも、有効なEVPを作る上で役に立ちます。
ポイント③:各制度と連動させる
いくら聞き心地の良いEVPを掲げても、その根拠となる社内制度がEVPと紐づいていなければ、従業員がその価値を実際に体感することなく形骸化してしまいます。
そのため、EVPを策定する際は制度としっかり連動させなければなりません。
特に現時点では提供していない新しい要素をEVPとして導入する際は、それに伴い新たな制度を構築したり、既存制度を拡張させたりする必要があるでしょう。
EVPの企業事例
最後にEVPの企業事例についてご紹介します。
事例①:マクドナルド
まずご紹介するのは、ハンバーガーチェーン店を展開する日本マクドナルド株式会社の事例です。
マクドナルドは「ピープルビジネス」という考え方を基に、従業員を成功させること自体がビジネスであると捉え、以下のようなEVPを確立しています。
引用:「採用広報」に対する考え。マクドナルドのEVPを発信する理由とは? | PR TIMES MAGAZINE
右側に位置する目に見えない価値を重視しつつ、それらの内容を盛り込んだトレーニングや研修といった制度を取り入れることで、効果的にEVPの理解促進や体現に繋げています。
<参考:「採用広報」に対する考え。マクドナルドのEVPを発信する理由とは? | PR TIMES MAGAZINE>
事例②:サイバーエージェント
次にご紹介するのは、インターネット広告の代理事業などを展開する株式会社サイバーエージェントの事例です。
サイバーエージェントはユニークな福利厚生制度をEVPとして訴求し、優秀な従業員の確保に繋げています。
例えば、「女性活躍促進制度macalonパッケージ」や、リフレッシュ休暇制度である「休んでファイブ」などが挙げられるでしょう。
また会社承認を受けた部活動「CArcle」といった制度を作り、事業部や組織を超えた従業員同士の繋がりを生む機会も提供しています。
事例③:ユナイテッドアローズ
事例の最後にご紹介するのは、小物や衣類などを扱ったセレクトショップを展開する株式会社ユナイテッドアローズです。
ユナイテッドアローズは、「顧客」「従業員」「取引先」「社会」「株主」という各ステークホルダーに対する価値を創造し、高めていくことを約束として掲げています。
これらの価値を高めるにあたって、別の価値を犠牲にするといったトレードオフにならないように意識しているそうです。
例えば、従業員の教育プログラムを充実させる場合、その先にある「顧客への提供価値」に繋がることも意識して制度を構築しています。
このようにEVPが別の価値にも繋がる仕組みを作り、「どのような会社でも通用する人材」へと成長してもらうことを、大きな価値として提供していると言えるでしょう。
まとめ
1995年以降、生産年齢人口が下がり続けている日本では、人材獲得競争は激化し、ネームバリューのある大手企業であっても、優秀な人材を獲得しづらくなっています。
そういった状況下においては、現在雇用している従業員に長く働いてもらえるように、社内制度や環境を整えながら、新しい人材も着実に採用していかなければなりません。
EVPは従業員の定着や採用力の強化といった効果があり、現代における企業にとって欠かせない要素となるため、ぜひこの記事を参考に導入をご検討ください。
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