多くの企業にとって欠かせない戦力であるアルバイト・パートですが、雇用する際には注意すべき法律がいくつかあります。法律をきちんと把握しないで雇用していたために「実は法律違反をしていた…」なんてことも起こり得ます。

そこで今回は、アルバイト・パート雇用の賃金や雇用契約に関わる法律を簡単にまとめました。

賃金に関連する法律

最低賃金法

「最低賃金法」とは、アルバイトやパートなど労働者に支払われる賃金の最低額を保障する法律です。労働者の生活の安定や労働条件の改善、労働力の質的向上などを目的とし、都道府県毎に設定されています。

第一条 この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

引用:【総務省】電子政府の総合窓口 e-gov 最低賃金法 第一条

第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

引用:【総務省】電子政府の総合窓口 e-gov  最低賃金法 第四条

たとえ研修期間や高校生であっても、最低賃金を下回ることは基本的に認められません。万が一、最低賃金を下回っていた場合、法律違反となり50万円以下の罰金が課せられます。

第四十条 第四条第一項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、五十万円以下の罰金に処する。

引用:【総務省】電子政府の総合窓口 e-gov 最低賃金法 第四十条

最低賃金は毎年見直され、8月頃に改定後の金額が発表されます。改定された場合には、その年の10月上旬から適用されるため「いつの間にか最低賃金を下回っていた」なんてことのないよう注意が必要です。

令和2年度(2020年度)についても、改定後の金額が発表されていますので、忘れず確認してくださいね。

※北海道・東京・静岡・京都・大阪・広島・山口の7地域は、据え置きとなっています。

賃金支払いの5原則

賃金の支払い方も「労働基準法 第24条」により定めされており、以下の内容を「賃金支払いの5原則」といいます。賃金支払いの5原則に違反した場合には、30万円以下の罰金が課せられます。

(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならない

引用元:【厚生労働省】賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。

[1]通貨払いの原則

賃金は通貨(現金)での支払いが義務付けられています。ただし、労働者が同意した場合には、労働者が指定する本人名義の銀行口座や証券口座への振込により支払うこともできます。

[2]直接払いの原則

賃金は労働者本人に支払うことが義務付けられています。銀行口座への振込であっても、家族など他人名義の口座に支払うことはできません。

[3]全額払いの原則

賃金は支払うべき額を全額支払わなくてはなりません。企業側が強制的に賃金の一部を天引きするなどの行為は禁止されています。

ただし例外として、所得税や社会保険料などの法令で定められているものと、労使協定を結んでいるものは、賃金からの控除が認められています。

[4]毎月1回以上払いの原則

賃金は少なくとも毎月1回以上支払うよう定められており、「今月支払い分を来月まとめます」などということは認められません。

[5]一定期日払いの原則

賃金は毎月一定の期日を定めて支払わなくてはならず、「毎月第4月曜日」などの変動する期日は認められていません。

雇用契約に関連する法律

労働条件の明示義務

アルバイト・パートの採用が決まり雇用契約を結ぶ際、「労働基準法 第15条」において、労働者保護の観点から労働条件の明示が義務付けられています。また「労働基準法施⾏規則第5条 第4項」により、書面もしくは電子交付が義務付けられています。

十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

引用元:【総務省】電子政府の総合窓口 e-gov 労働基準法 第十五条

第五条 4 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。

一 ファクシミリを利用してする送信の方法

二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)

引用元:【総務省】電子政府の総合窓口 e-gov 労働基準法施行規則 第五条 第四項

電子交付の場合には、労働者本人の希望が必要です。企業として以前から「労働条件通知書」の電子化を行っているとしても、新たに雇用したアルバイト・パートの同意を得ず、勝手に電子交付することはできません。

雇用契約(労働条件通知書)の電子化に関する注意点はこちら

労働条件の明示内容

労働条件の明示内容には、「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」があります。「絶対的明示事項」は必ず明示しなくてはならない項目であり、「相対的明示事項」は該当する規定がある場合には明示する必要がある項目です。労働者とのトラブルを防ぐためにも、きちんと明示しましょう。

絶対的明示事項
  1. 労働契約期間
  2. 期間の定めがある契約を更新する場合の基準
  3. 就業場所及び業務内容
  4. 始業・終業時刻、休憩、休日など
  5. 賃金の決定方法、支給時期
  6. 退職・解雇の事由
  7. 昇給
相対的明示事項
  1. 退職手当
  2. 賞与など各種手当
  3. 食費や作業用品など労働者の負担
  4. 安全衛生
  5. 職業訓練
  6.  災害補償
  7. 表彰や制裁
  8. 休職

参考:【厚生労働省】労働基準法の基礎知識

まとめ

いかがでしたか?今回は、アルバイト・パート雇用の賃金・雇用契約に関わる法律を簡単にまとめました。特に最低賃金は、毎年見直されているため「うっかり法律違反をしていた」なんてことがないように注意してくださいね。

アルバイト・パートの方が安心して働ける職場づくりを心がけ、雇用に関わる法律に違反している点がないか、常に最新情報でのセルフチェックを心掛けましょう!