ダブルワークを行う従業員を雇用する場合の注意点について知りたい。
この記事は上記のような思いをお持ちの方に向けて、ダブルワークの現状などを踏まえつつ、雇用における注意点をわかりやすく解説します。
ダブルワーカーを雇用するメリットも併せてご紹介しているため、ぜひ最後までご確認ください。
ダブルワーク(副業)の現状
ダブルワーク雇用における注意点を解説する前に、まずはダブルワークの現状について確認しましょう。
ダブルワーク(副業)をしている人数と推移
ダブルワーク(副業)をしている人は増加傾向にあります。
引用:急増する「副業者数」の分析 ~けん引役は高齢者~|株式会社第一生命経済研究所
上記のグラフは株式会社第一生命経済研究所が2023年7月に発行したレポートから引用したものです。
グラフにあるとおり、副業者は2012年以降増加しており、2022年時点の副業者数は332万人となっています。
労働者数に対する副業者数の割合が増えていることも見て取れるでしょう。
ダブルワーク(副業)をしている労働者の年齢層
ダブルワークをしている労働者の年齢層としては、以下のような構成となっています。
引用:急増する「副業者数」の分析 ~けん引役は高齢者~|株式会社第一生命経済研究所
上記のグラフを見ると、65歳以上のシニア人材が多いことがわかります。
また60〜64歳以外の年齢層も、2012年時点の副業者数より増加している点も見逃せません。
今後ダブルワーカーを雇用する機会は増える
ここまでグラフなどを参考に現状を見てきたとおり、ダブルワーカーの中心的な存在はシニア人材です。
日本は少子高齢化が深刻化しており、今後もシニア世代が増加することを踏まえると、ダブルワーカー自体も今後増加していく可能性が高いと言えます。
そのため様々な企業において、今後ダブルワーカーを雇用する機会も増えるでしょう。
ダブルワーク雇用における4つの注意点
ここからはダブルワーク雇用における注意点を解説します。
注意点①:労働時間は通算される
一つ目の注意点として挙げられるのは、ダブルワークによる労働時間は通算されるという点です。
例えば就業先Aでの労働時間が3時間、就業先Bでの労働時間が4時間の場合、ダブルワーカーの労働時間は7時間として扱います。
そのため既に別の企業で働いている方を採用する場合、あらかじめ労働時間を確認する必要があるでしょう。
【補足】労働時間が通算されないケース
補足として、ダブルワーカーでも労働時間が通算されないケースについてご紹介します。
労働時間が通算されないケースとしては以下の2つのケースが挙げられます。
・労働基準法の適用対象外の労働者
フリーランスや個人事業主は労働基準法が適用されないため、労働時間が通算されません。
・労働基準法における労働時間規制が適用外となる労働者
農業や畜産、水産事業に従事している労働者や、管理職の立場にいる労働者などは、労働基準法の労働時間規制が適用されないため労働時間は通算されません。
注意点②:後から雇用した企業が割増賃金を支払う
次に挙げられる注意点は、後から雇用した企業が割増賃金を支払うという点です。
自社が先に雇用している従業員が、別の企業と雇用契約を結びダブルワーカーとなった場合は、基本的に割増賃金を支払う必要はありません。
逆に別企業で既に働いている労働者をダブルワーカーとして雇用する場合は、自社が割増賃金を支払うことになります。
【補足】先に契約した会社が割増賃金を支払うケース
先に契約した企業でも割増賃金を支払わなければならないケースがあります。
ダブルワークの所定労働時間を合計して法定労働時間内に収まっている場合において、先に雇用した企業が時間外労働を行わせたことにより通算労働時間が法定労働時間を超えた場合は、先に雇用した企業が割増賃金を支払わなければなりません。
そのため仮に自社が先に雇用している場合でも、ダブルワークを行う従業員については他企業の労働時間を確認し、時間外労働が可能かどうかを確認しておく必要があるでしょう。
注意点③:ダブルワークは法的に禁止できない
次に挙げられるのは、ダブルワークは法的に禁止できないという点です。
雇用契約によって定められた就労時間外の時間については、どのように過ごそうとも労働者本人の自由となります。
そのため基本的には就業時間後に行うダブルワークについて、企業側は禁止できません。
【補足】:禁止できるケース
ただし例外的にダブルワークを禁止できるケースがあります。
具体的には以下のようなケースでは禁止することが可能です。
- 自社における労務提供に支障が出るケース
- 情報漏えいなどによって自社の利益が害されるケース
- 会社のイメージが低下するような違法性のある業務に従事するケース
ただし、それぞれ判断基準が難しいため、ダブルワーク禁止に該当する規則を定める際は、弁護士などの専門家の意見を十分に取り入れるとよいでしょう。
注意点④:各種保険は条件を満たせば加入手続きを行う
注意点の最後に挙げられるのは、各種保険は条件次第で加入する必要があるという点です。
社会保険については、各職場において加入条件を満たしている場合、双方の職場で加入しなければなりません。
その場合、各職場の報酬を合算した標準報酬月額を基に保険料が算定され、各職場において案分した保険料を負担することになります。
雇用保険については、いずれかの職場でしか加入できないという規定があるため、ダブルワーク先で既に加入している場合は手続きをする必要はありません。
また65歳以上の労働者に限り、各職場で雇用保険の加入要件を満たしていなくても、各職場の労働時間を合算することで加入要件を満たす場合は、適用される措置が設けられている点について留意しておきましょう。
各保険の加入要件については以下のサイトをご確認ください。
・社会保険の加入要件について
<パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。|政府広報オンライン>
・雇用保険の加入要件について
<雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省>
ダブルワークしている労働者を雇用するメリット
最後にダブルワーカーを受け入れる企業側のメリットについて確認しましょう。
メリット①:社外のスキルやノウハウを得られる
一つ目のメリットは、社外のスキルやノウハウを得られるという点です。
ダブルワーカーを受け入れない場合、社内に蓄積されるノウハウや経験は限定的となり、視野も狭くなってしまう可能性があります。
その点、ダブルワーカーは社外のスキルやノウハウを持っているため、それらを積極的に取り入れることで、これまでとは違った角度から自社の発展に繋げることができるでしょう。
メリット②:労働者の成長
次に挙げられるのは労働者の成長に繋げることができるという点です。
自社の従業員に対してもダブルワークを推奨することで、自社に在籍しているだけでは経験できない様々な業務経験を積んでもらうことができます。
またダブルワーカーを受け入れることにより、社員に対して社外のスキルや知識を提供してもらうことも可能です。
そのため自社だけで育成するよりも、効率的かつ効果的な育成に繋げられるでしょう。
メリット③:人材確保の機会が増える
メリットの最後に挙げられるのは、人材確保の機会が増えるという点です。
少子高齢化に伴って生産年齢人口が減少していく中、65歳以上のシニア世代は増加していくことが見込まれます。
ダブルワーカーの中心はシニア世代であるため、ダブルワーカーも採用の俎上に乗せることで採用母数を増やすことができ、人材確保もしやすくなるでしょう。
まとめ
今回はダブルワーク雇用の注意点をテーマに解説してきましたが、いかがでしたか。
働き方改革や少子高齢化が進み、労働者の価値観も多様化した現代において、ダブルワーカーも年々増加しています。
人手不足に課題を抱える多くの企業にとって、ダブルワーカーの活用は課題解決の一つの方法と言えるでしょう。
ぜひこの記事を参考にダブルワーカーの雇用に取り組んでみてください。