外国人の雇用を検討されている方の中には、特定技能という言葉を聞いたことがあるものの、正直よくわからないという方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では特定技能の概要やメリットなどを踏まえつつ、受け入れの流れまでわかりやすく解説します。
受け入れのポイントなども併せて紹介していくため、ぜひご一読ください。
特定技能の基本知識
はじめに特定技能の基本知識として概要や種類、技能実習などとの違いについて解説します。
特定技能の概要
特定技能とは
特定技能は2019年4月に新しく設けられた就労系在留資格であり、特定産業分野と呼ばれる12の分野において外国人の受け入れを認めました。
「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格では就労が禁止されていた「単純労働」と見なされる職種でも、外国人の就労が可能となった点が特定技能の最大の特徴と言えるでしょう。
日本国内における人口減少に伴い、多くの業界で生じている人手不足を解消するための一つの対策として導入されました。
特定技能において登場する3機関
特定技能では3つの機関が登場します。ここでそれぞれの概要を押さえておきましょう。
・受け入れ機関
特定技能外国人(特定技能の在留資格を有する外国人)を雇用する企業や組織。受け入れ機関となるためには一定の基準を満たす必要がある(基準については後述します)。
・送り出し機関
特定技能外国人を受け入れ機関に対して紹介する海外現地の機関。送り出す人材に対して日本語やビジネスマナーなどの教育も実施する。
・登録支援機関
特定技能外国人に対して行う「支援に関する計画策定や実施」などをサポートしてくれる機関。
特定技能の種類
特定技能の在留資格には1号と2号の2種類設けられています。それぞれの特徴としては以下の通りです。
特定技能1号
- 在留期間:1年を超えない範囲で指定する期間ごとの更新(通算で上限5年まで)
- 技能水準:特定技能評価試験などで確認(技能実習2号修了者は試験など免除)
- 日本語水準:日本語能力試験などで確認(技能実習2号修了者は試験など免除)
- 家族の帯同:基本的に認められない
- 支援:受け入れ機関または登録支援機関による支援が必要
- 対象分野:12分野全て
特定技能2号
- 在留期間:3年、1年または6か月ごとの更新(通算上限はなし)
- 技能水準:試験などで確認
- 日本語水準:試験などでの確認は不要
- 家族の帯同:要件を満たした場合、配偶者と子に限り可能
- 支援:受け入れ機関または登録支援機関による支援は不要
- 対象分野:現状は建設、造船・舶用工業の2分野のみ
※特定技能2号について、2023年6月9日の閣議決定により上記2分野に加えて、介護分野以外の全特定産業分野が対象として含まれることになりました(開始時期は未定)。
技能実習や特定活動との違い
特定技能と名前が似ている在留資格として、技能実習や特定活動がありますが、それぞれ全く異なるものであるため、ここで違いについて簡単に確認しておきましょう。
技能実習との違い
技能実習は日本の技術を学び、それを母国の経済発展に役立ててもらうことを目的とした国際貢献のための制度です。
純粋に労働力の確保を目的とした特定技能とは、そもそもの成り立ちが異なる点は留意しておくべきでしょう。
特定活動との違い
特定活動は、法務大臣が個々の外国人に対し、特に活動を指定する在留資格です。
特定技能を含めた在留資格では該当しない活動を行うための在留資格となっており、就労が認められたものから、学生向けのものまで多岐にわたります。
特定技能外国人を受け入れ可能な分野と国籍
ここからは特定技能外国人の受け入れが可能な分野と対象となる国籍について確認していきます。
特定技能外国人を受け入れ可能な分野・職種
特定技能外国人を受け入れ可能な分野は、日本国内において特に人手不足が過酷とされている12の産業分野です。
具体的には以下の12の産業分野が対象となり、それぞれ該当する省庁が管轄しています。
【厚生労働省管轄:2分野】
- 介護:身体介護など
- ビルクリーニング:建物内部の清掃など
【経済産業省管轄:1分野】
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業:機械金属加工、電気電子機器組み立てなど
【国土交通省管轄:5分野】
- 建設:土木、建築など
- 造船・舶用工業:溶接、仕上げ、塗装など
- 自動車整備:自動車の日常点検整備、定期点検整備など
- 航空:空港グランドハンドリング、航空機整備
- 宿泊:フロント業務、企画広報など
【農林水産省管轄:4分野】
- 農業:耕種農業、畜産農業など
- 漁業:漁具の製作・補修、水産動植物の探索、養殖水産動植物の収穫など
- 飲食料品製造業:飲食料品の製造加工、安全衛生など
- 外食業:飲食物調理、接客など
特定技能の対象となる国籍
特定技能は原則国籍を制限していませんが、実際には外国人保護や悪質なブローカーの排除という観点から、二国間協定を締結している国を中心に受け入れています。
二国間協定を締結している国は2023年8月時点で以下の15か国となります。
- フィリピン
- カンボジア
- ネパール
- ミャンマー
- モンゴル
- スリランカ
- インドネシア
- ベトナム
- バングラデシュ
- ウズベキスタン
- パキスタン
- タイ
- インド
- マレーシア
- ラオス
中国は二国間協定を締結していませんが、特定技能において多数来日しています。
特定技能外国人を受け入れるメリット・デメリット
続いて、特定技能外国人を受け入れるメリットとデメリットについて解説します。
特定技能外国人を受け入れるメリット
メリットとして主に以下の3点が挙げられます。
メリット①:若い即戦力人材を確保できる
特定技能外国人は2022年時点の平均年齢が29歳となっており、技能実習に次いで若い世代が多いという特徴があります。
また特定技能外国人は一定水準以上の技能を持つと認められているため、受け入れた後は即戦力として活躍してもらうことができるでしょう。
メリット②:外国人ならではの知見や考え方を活かせる
外国人は日本人にはない知見や考え方を持っており、日本人なら当たり前と考えることでも、外国人からすれば当たり前として捉えないケースがあります。
そういった知見や考え方、視点を積極的に取り入れることで、職場を活性化させることが可能です。
メリット③:特定技能2号なら5年以上の雇用が可能
特定技能2号に移行すれば、5年を超えた雇用が可能です。
2023年8月時点では建設と造船・舶用工業の2分野に限られていますが、日本人と同じく長期的な労働力として確保できる点はメリットと言えるでしょう。
特定技能外国人を受け入れる場合のデメリット
デメリットとしては以下の3つが挙げられます。
デメリット①:受け入れまでの手続きが複雑
外国人を雇用する場合、在留資格申請が必ず必要となります。
さらに特定技能1号の外国人の場合は、支援計画の策定などの手続きもあり、受け入れまでの手続きがかなり複雑と言えるでしょう。
デメリット②:高度な日本語能力はないケースが多い
特定技能の在留資格を取得するには日本語能力試験に合格しなければなりません。
ただしこの試験は日常会話レベルであるため、実際は日本語による高度なコミュニケーションが難しいケースも多いと言えるでしょう。
デメリット③:採用にかかる費用が比較的高め
特定技能外国人を採用する場合、通常の採用にかかる費用に加えて、送り出し機関への手数料や登録支援機関への委託費用などが発生する可能性があります。
そのため日本人を採用する場合は勿論、他の外国人を採用するよりも比較的費用が高くなる点はデメリットと言えるでしょう。
特定技能外国人の受け入れ方法
次に特定技能外国人の受け入れまでの流れや受け入れ機関が満たすべき基準、受け入れのパターンについて確認していきましょう。
受け入れまでの流れ
特定技能外国人を受け入れる際の流れとしては、大きく以下のようになります。
- 求人・人材の募集(送り出し機関への紹介依頼含む)
- 選考・面接・内定
- 特定技能雇用契約書の締結
- 1号特定技能支援計画の策定
- 在留資格認定・変更の申請
- 入国・就業開始
特定技能の在留資格認定・変更の申請には、特定技能雇用契約書や支援計画を提出する必要があります。
そのため内定から入国に至るまで、それなりの時間や工数がかかってくる点は留意しておきましょう。
受け入れ機関が満たすべき要件
特定技能外国人を受け入れるためには、受け入れ機関である企業側も一定の要件を満たす必要があります。
具体的には以下のような要件が設けられています。
- 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
- 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 1年以内に受け入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 5年以内の出入国・労働法令違反がないことなど、欠格事由に該当しないこと
- 受け入れ機関が違約金を定める契約などを締結していないこと
- 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
他にも多くの基準が設けられているため、詳しくは以下資料のP25〜27も併せて参照してください。
※参考:外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組|出入国在留管理庁
特定技能外国人受け入れの3つのパターン
特定技能外国人を受け入れる流れや要件を押さえていただいたところで、受け入れのパターンについて押さえておきましょう。
特定技能外国人を受け入れる際のパターンは主に3つあります。
パターン①:技能実習からの切り替え
技能実習と特定技能では受け入れ分野が重複しているケースも多く、同じ分野で技能実習2号を修了していれば、試験などを受けることなく特定技能に切り替えることができます。
パターン②:留学生からの切り替え
留学生が特定技能評価試験に受験・合格すれば、その留学生を特定技能外国人として雇用することが可能です。
ここまでは既に日本に在留している外国人を採用するため、比較的採用の難易度も低く、採用までにかかる時間も短くなります。
パターン③:海外からの採用
海外現地に住む外国人を送り出し機関を通じて紹介してもらい、特定技能評価試験を受験してもらった上で採用することになります。
送り出し機関への対応や在留資格を新たに取得するための手続きも生じるため、難易度も高く、採用までの時間が最もかかる点は注意しましょう。
特定技能外国人を受け入れる際のポイント
最後に特定技能外国人を受け入れる際のポイントを2つご紹介します。
ポイント①:登録支援機関を利用する
一つ目のポイントは登録支援機関を利用するという点です。
特定技能1号の外国人を採用する場合は、日本での生活や就労を円滑なものにするための支援計画を策定し、実施しなければなりません。
しかし支援計画の策定や実施は、特定技能外国人の受け入れに慣れていない内は難易度も高く、時間や工数もかかってしまいます。
そのため初めて特定技能外国人を受け入れる際は、登録支援機関に支援計画の策定や実施を委託する方がよいでしょう。
委託費用はかかりますが、その分特定技能外国人の育成などに時間をかけることができるため、ぜひ登録支援機関の利用を検討してみてください。
ポイント②:各種届出を忘れずに行う
また特定技能外国人を受け入れた場合に必要な各種届出を忘れずに行いましょう。
具体的には以下の書類や届出を提出する必要があります。
【四半期ごとに必要な届出】
- 受け入れ状況にかかる届出書
- 活動状況にかかる届出書
- 支援実施状況にかかる届出書(登録支援機関に支援を委託している場合は提出不要)
【事由発生時に必要な届出】
- 特定技能雇用契約にかかる届出書
- 支援計画変更にかかる届出書
- 支援委託契約にかかる届出書
- 受け入れ困難にかかる届出書
- 出入国又は労働に関する法令に関し不正又は不当な行為にかかる届出書
これらの書類は、受け入れ機関の所在地を管轄している地方出入国在留管理官署へ提出します。
まとめ
今回は特定技能をテーマとして、概要や技能実習などとの違い、受け入れのメリットなどを解説してきましたが、いかがでしたか。
まだ大半の分野では通算5年という受け入れ期間の制限があるものの、特定技能外国人は年々増加しており、人口が減少している日本において有力な労働力となります。
ぜひこの記事を参考に、特定技能外国人の受け入れを検討してみてください。
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