- カスタマーハラスメントとは何か?
- 通常のクレームと何が違うのか?
本記事は上記のような疑問を抱かれている方に向けて、カスタマーハラスメントの概要や具体事例、対応フローなどをご紹介します。
カスタマーハラスメントに備えた対策なども併せて解説しているため、ぜひ最後までご確認ください。
カスタマーハラスメントとは
まずはカスタマーハラスメントの概要や増加した背景、具体事例についてご紹介します。
カスタマーハラスメントの概要
カスタマーハラスメントとは、顧客からの理不尽且つ社会通念上妥当性がないクレームや要求、迷惑行為全般を指します。
悪質なカスタマーハラスメントは、脅迫罪や恐喝罪、強要罪などに該当する可能性があり、その分従業員の精神的な被害も大きくなるでしょう。
そのため企業としてはカスタマーハラスメントについて、正しい知識や対応方法を理解し、適切に対応していかなければなりません。
カスタマーハラスメントと正当なクレームの違い
カスタマーハラスメントと正当なクレームを見分ける上でのポイントは「妥当性」です。
顧客や消費者からの要求について、内容に妥当性があり、それを実現する手段が社会通念上相当だと考えられる場合は正当なクレームとなり、真摯に向き合って対応しなければなりません。
逆に妥当性や社会通念上相当でないものは、カスタマーハラスメントとなるため、企業としては従業員のケアなども含めて、慎重に対応することが求められます。
カスタマーハラスメントが増加した背景
近年、SNSの普及によって一般消費者や顧客側の発信力が強まり、SNS上での口コミなどが購買に影響を与える度合いも大きくなっています。
こういった状況下では企業が下手に出るような対応を取りがちになるため、顧客側の態度が増長し、カスタマーハラスメントも増加しやすくなっていると言えるでしょう。
また過剰とも言えるサービスを提供する企業も少なからずあるため、そういった状況に顧客が慣れてしまっている点も背景の一つです。
こういった顧客は別の企業に対しても同様のサービスを求めてしまい、それが叶わなかった際にカスタマーハラスメントに及んでしまうケースがあります。
カスタマーハラスメントの具体事例
ここでカスタマーハラスメントの具体的な事例について、いくつかご紹介します。
- 牛乳パックのフタに顧客自身が探してもわからないような小さな傷があるからと、数日前に買った商品を交換してほしいと言ってくる
- 消費期限が明日になっている商品について、1週間後でも食べられるのになぜ消費期限を延ばさないのかというクレームを1時間ほど受けた
- 食べ放題を注文していない顧客が、食べ放題対象の商品を取っていたため注意したところ、後日来店して謝罪を求められた上、もう二度と来店しないことや知人にも利用しないように言うと言われた
- レジ袋の有料に納得しない顧客に、購入されたパンをちぎって投げつけられた。
上記以外の事例も知りたい方は以下の資料を併せてお読みください。
<顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議|UAゼンセン>
カスタマーハラスメントに潜むリスク
続いてカスタマーハラスメントに潜むリスクについてご紹介します。
リスク①:離職者や休職者の増加
カスタマーハラスメントを受けた従業員は精神的な負荷が高まるため、適切なケアやフォローをしなければ、休職や離職してしまう可能性が高まります。
また十分な事前対策を講じていない場合、カスタマーハラスメントが継続的に発生しやすくなる上、都度の対応負荷も大きくなるため、離職者や休職者の数が増加してしまうでしょう。
リスク②:生産性の低下
カスタマーハラスメントは総じて対応が難しく、長期化する可能性も高いため、現場の生産性を大きく低下させる恐れがあります。
事前対策や現場対応方法を確立できていなければ、想定以上に手間や工数がかかってしまい、現場での通常業務の遂行が滞ってしまうでしょう。
リスク③:社会からの評判や信頼低下
カスタマーハラスメントに対して適切な対応をしなければ、従業員は勿論、顧客や株主といった社会全般からの評判や信頼が低下します。
そうなると離職者の増加や顧客離れなども加速し、売上の低下や事業撤退といった事態に繋がる恐れもあるでしょう。
リスク④:安全配慮義務違反
カスタマーハラスメントは従業員の心身の健康や安全を害するものであるため、正しく対応しなければ、安全配慮義務違反と判断される可能性があります。
カスタマーハラスメントに該当する安全配慮義務については罰金や懲役刑こそ設けられていませんが、損害賠償請求や訴訟といったリスクはあるため注意しましょう。
カスタマーハラスメントの基本的な対応フロー
次にカスタマーハラスメントへの基本的な対応フローをご紹介します。
1.顧客へのヒアリングと記録を実施
まずは部分的な謝罪(クレーム内容に対してではなく、時間を割いてもらっていることなどに対しての謝罪)をした上で、顧客が主張している内容について詳しくヒアリングしながら記録しましょう。
この際従業員の負担を軽減し、ヒアリングや記録の客観性を担保するためにも、一人で対応させず、必ず複数名で臨むようにすることがポイントです。
2.事実確認・調査
次にヒアリングした内容を基に事実確認や現場調査を行い、上長などと連携しながら対応方針などを検討します。
その場での対応完結に固執せず、より詳細を調査したり社内見解などを求めたりするために、必要に応じて持ち帰りしても構いません。
3.会社としての方針を通知する
調査や事実確認の結果に基づき、会社方針を顧客に対して通知します。
法的な措置や今後の取引有無などを含めて、会社として今後どのように対応していくのかを通知しましょう。
その後、必要に応じて弁護士などの協力を得ながら、具体的な対応に取り組むことになります。
4.カスタマーハラスメントを受けた従業員へのケア
カスタマーハラスメントを受けた従業員に対して、フォローやカウンセリングなどを行い、精神的な負担を軽減するとともに、再発防止への対応を実施しましょう。
ここの対応が不十分になると、従業員の休職や離職に繋がる可能性が高まるため、最優先で取り組むようにしてください。
【補足】カスタマーハラスメント対応におけるNG行動
ここでカスタマーハラスメント対応において、やってはいけないNG行動をいくつかご紹介します。
- 全面的に謝罪をする
- 現場従業員一人に対応・判断させる
- 顧客が主張している時に話を遮る
- 感情的になって対応する
- 謝罪文や落ち度があることを認める書類へ捺印する
- 対応を後回しにする、あるいは放置する
これらの行動は顧客の態度を悪化させ、より悪質なハラスメントを生み出すことになりかねません。
そのためカスタマーハラスメントに対応する際は、上記に挙げた行動は控えましょう。
カスタマーハラスメントに備えた対策
最後にカスタマーハラスメントに備えて企業が実施しておくべき対策についてご紹介します。
対策①:基本方針の明確化と周知
一つ目に挙げられるのは、基本方針の明確化と周知です。
まずはカスタマーハラスメントを企業として断固として認めず、法的な措置なども辞さない姿勢など、対応における基本方針を立てましょう。
その上で「どういった言動をカスタマーハラスメントとみなすか」「カスタマーハラスメントに対してどのような対応をするか」も明確にし、社内外に対して周知することで、カスタマーハラスメントを抑止できます。
対策②:カスタマーハラスメント対応マニュアルを策定
次に挙げられるのはカスタマーハラスメント対応マニュアルを策定しておくという点です。
マニュアルがなければ、カスタマーハラスメントが生じた際に、都度どのように対応すべきかを検討しなければなりません。
その点マニュアルによってカスタマーハラスメントの判断基準、具体的な対応手順や現場で対応しきれない時の対処方法、相談先などをまとめておくことで、適切な対応を実現できます。
対策③:カスタマーハラスメントの相談窓口の設置
続いて挙げられるのは、カスタマーハラスメント専用の相談窓口を設置するという点です。
カスタマーハラスメントを受けた従業員がいつでも相談できる窓口を設置することで、従業員の精神的な負荷を軽減できます。
相談窓口の設置によって適切なケアを行うことで、カスタマーハラスメントを起因とした離職や休職も防止できるでしょう。
対策④:従業員研修の実施
従業員に対して研修を実施することも重要な対策の一つです。
カスタマーハラスメントへの対応について、マニュアルや過去事例など参照しつつ、従業員に対して定期的に研修を実施しておくことで、カスタマーハラスメントが生じた際に冷静に対応しやすくなります。
対策⑤:弁護士などに相談できる体制を構築する
続いて挙げられるのは、弁護士などに相談できる体制を構築しておくという点です。
カスタマーハラスメントは脅迫罪や強要罪などに該当するケースも多く、時には法的措置も検討しなければなりません。
法的措置を検討する場合は弁護士などの専門家の助けも必要になるため、いつでも相談できるような連携体制を構築しておくべきでしょう。
対策⑥:ハラスメント事例を蓄積し社内に共有する
ハラスメント事例を蓄積し、社内に共有しておくことも重要な対策の一つです。
カスタマーハラスメントの事例は記録しておくことで、従業員の研修教材として活用できることは勿論、再発防止策の検討もできます。
「どういった事例がカスタマーハラスメントに該当するのか」の判断基準としても役立つため、漏れなく蓄積しましょう。
厚生労働省の対策マニュアルも参照しよう
カスタマーハラスメントへの対策を講じる上で、厚生労働省が出している対策マニュアルを参照することも有効です。
先に挙げた対策と併せてマニュアルを活用することで、有効な対応を実現できるでしょう。
まとめ
昨今SNSなどの普及によって、顧客が持つ発言力や影響力は高まり、企業との関係性も大きく変化しました。
それによってカスタマーハラスメントも増加しており、今ではどの業界でも起こり得ると言えます。
そのため、あらゆる企業はカスタマーハラスメントについて、正当なクレームと判別し、適切かつ早急な対応を取る必要があると言えるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、カスタマーハラスメントに向けた対策を講じていただければ幸いです。