アルバイトを早上がりさせた場合に休業手当が必要なのかを知りたい。

本記事は上記のような方に向けて、休業手当とは何かをおさらいした上で、早上がりで支給が必要になるケースや計算方法を解説します。

早上がりや休業手当について、労務管理上知っておくべきポイントも紹介しているため、ぜひ最後までご確認ください。

アルバイトを早上がりさせる場合は休業手当が必要?

まずは休業手当とは何かをおさらいした上で、早上がりさせる場合に休業手当が必要なケースと不要なケースをご紹介します。

そもそも休業手当とは

休業手当とは会社都合で従業員を休ませた場合に企業が支払う手当です。

経営上の障害や業務量の減少などによる休業に際し、本来得られるはずだった給与が消失することで生じる経済的な被害を最小化するために設けられています。

休業手当の支給対象には雇用形態の指定がないため、正社員は勿論、アルバイトやパートを含めた全ての従業員が対象となります。

 【補足】休業補償との違い

休業手当と類似する制度として休業補償が挙げられます。

休業補償は労働災害に起因して傷病などを患った従業員が休業する場合に、労災保険より支給される補償金です。休業中の生活の安定を図ることを目的として支給されます。

会社側の都合で休ませた場合に企業が支払う休業手当とは、支給目的や支払の行為者が異なる点には留意しましょう。

早上がりで休業手当が必要になるケース

会社側の都合で早上がりさせた場合は、休業手当が必要になります。

例えば以下のようなケースで早上がりさせた場合は、休業手当の支払いが求められるでしょう。

  • 想定よりも業務量が少なくなることを見込んで早帰りを命じた
  • 工場設備などの故障でこれ以上業務が遂行できないため早帰りを命じた
  • 経営不振で業務量を担保できないため、一定期間シフト時間の短縮を実施した

上記のように不可抗力による休業を主張できないケースは、休業手当を支払わなければなりません。

早上がりでも休業手当が不要なケース

逆に以下のようなケースでは、早上がりであっても休業手当の支払いは不要となります。

  • 労働者の個人的な都合による早退
  • 自然災害によって交通機関の計画運休が決まっている
  • 早上がり日において既に働いた時間分の賃金が休業手当額を上回っている

自然災害であっても、交通機関の運休もない状態で念のため早く帰宅させたり、悪天候によって客足が減少することを見越して早帰りさせたりするケースは、休業手当の適用対象となる点は留意してください。

休業手当の計算方法

次に休業手当の計算方法について、支払うべき金額や関連する平均賃金なども踏まえて確認しましょう。

休業手当の金額 

休業手当の金額は企業個別で自由に定められるわけでなく、労働基準法第26条によって規定されています。

具体的には平均賃金の100分の60以上を支給しなければなりません。

各従業員の平均賃金の差があることによって、休業手当額が変わることはありますが、もし平均賃金が同じであれば休業手当の額も同じになります。

そもそも平均賃金とは

ここで休業手当の基準となる平均賃金について、定義や求め方について確認しましょう。

平均賃金とは、労働基準法における手当や補償を算定する際に基準として活用する金額であり、以下の計算式で求められます。

平均賃金=算定事由が発生した日の直近3か月間に支払われた賃金総額÷その期間の総日数

賃金総額には、賞与や結婚手当などの臨時支給される賃金は含まれません。

休業手当を支払う場合、休業や早帰りが生じた日を算定事由の発生日として扱い、その期間の総日数は就労日数ではなく暦日数となります。

日給や時給制の場合は、上記の式と以下の式で算出した金額(最低保障額)と比較し、より高い方を平均賃金として扱う点には注意してください。

最低保障額=(算定期間中の賃金総額÷算定期間中に労働した日数)×0.6

休業手当の計算方法

ここで具体例を出しながら休業手当を計算してみましょう。

計算に際して、以下条件のアルバイトを雇用していると仮定します。

  • 時給制のアルバイト
  • 時給1,000円
  • 月80時間勤務(週5日/4時間)
  • 算定事由が発生した日:8月1日

この場合の平均賃金と休業手当は以下のように求められるでしょう。

<平均賃金>
1:平均賃金 240,000÷92=2,609円
2:最低保障額 (240,000÷60)×0.6=2,400円
※1と2を比較し、1の方が高いためこちらを平均賃金とする 

<休業手当(平均賃金の100分の60以上)>
平均賃金2,609円×0.6=1,565円

このアルバイトに対して2時間の早上がりを命じた場合、既に働いた分に対する支払いは2,000円となります。

この場合、休業手当である1,565円を超えているため休業手当の支給は不要です。

逆に3時間の早上がりを命じた場合、1時間の労働となりその日の賃金が1,000円となるため、休業手当との差額565円を追加で支給しなければなりません。

早上がりと休業手当について押さえておくべきポイント

最後に早上がりや休業手当に関連して押さえておくべきポイントについてご紹介します。

ポイント①:残業時間との相殺はできない

まず挙げられるのは、早上がりした時間と残業時間との相殺はできないという点です。

例えば週5日8時間働いている従業員がいたとして、ある日に3時間の早上がりがあったとしましょう。

翌日以降に残業が3時間発生した際に、先の早上がりと相殺できる(割増は払わなくていい)と考えがちですが、実際のところ相殺できません。

たとえ早上がりがあったとしても、残業した分については割増賃金を支払う必要があります。

ポイント②:企業側の一方的な判断で年休取得扱いにできない

早上がり時間分を、企業側の一方的な判断で年休扱いにすることもできません。

あらかじめ労使協定を締結し、就業規則へと記載すれば、時間単位の年次有給休暇制度を導入できます。

そのため早上がりした時間について、年休として処理すること自体は可能ですが、事前に労働者との合意を得ておく必要があるでしょう。

ポイント③:休業手当を支給しない場合は罰則が適用される

休業手当を支払うべき事案であるにも関わらず支給しない場合、罰則が適用されます。

具体的には労働基準法120条の規定により30万円以下の罰金が科されることになるでしょう。

また休業手当を支払わなかった使用者に対して、労働者側の請求によって裁判で争われた場合、未払いの休業手当に加え、休業手当と同額の付加金を支払わなければなりません。

【補足】早上がり以外に休業手当の対象となるケース

ここまで企業側の都合による早上がりは休業手当の対象となると解説しましたが、他にも休業手当の対象となりうるケースがあります。

例えばシフトの急な削除や、あらかじめ雇用契約において定めていた労働日数よりも少ないシフトになっている場合などが挙げられるでしょう。

上記のケースでは削除されたシフト日や、契約に記載のある日数と実際の労働日数の差分が休業手当の対象として扱われます。

まとめ

飲食業などの繁閑の差が激しい業種では想定よりも業務量が少なくなり、アルバイトのシフトを調整したり、早上がりさせたりするケースも多くあるでしょう。

業務などの兼ね合いで、アルバイトを早上がりさせること自体は違法ではありませんが、休業手当の対象となる点は押さえておかなければなりません。

ただし休業手当を支払っても、「もっと働きたかった」といった労働者の不満などは解消できず、モチベーションが低下してしまう可能性はあるため、その点は注意しましょう。

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