退職代行サービスについて聞いたことがあるものの、実際に退職代行業者から連絡があった際に、「どのように対応すべきかわからない」という企業担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では退職代行サービスの概要を踏まえた上で、企業が取るべき対応や注意点をわかりやすくご紹介します。

最後に退職代行の利用を防止するためのポイントも解説しているため、ぜひ最後までご確認ください。

退職代行サービスとは

まずは退職代行サービスの概要についてご紹介します。

退職代行サービスの概要

退職代行サービスとは、従業員の退職意志を本人に代わって企業に伝えるサービスです。

基本的には使者のような役割を担い、従業員と企業の間に入って双方の意思をそれぞれに伝えることになります。

サービスによっては単なる伝達役ではなく、退職条件などの交渉を行えるサービスもあり、昨今利用する従業員も増えてきている状況と言えるでしょう。

退職代行サービスの種類

退職代行サービスと一口に言っても、大きく3つの提供事業者に分かれており、それぞれ対応できる範囲に違いがあります。それぞれの違いを見てみましょう。

1.弁護士単純な退職意思の伝達に加え、各種条件の直接交渉も可能。退職に関する裁判などの対応までできる。
2.退職代行ユニオン退職に関する意思伝達に加え、団体交渉権に基づいた各種交渉まで対応可能。ただし裁判対応はできない。 ※退職代行ユニオン:労働組合がない企業に勤める労働者が加入できる合同労働組合の一種
3.その他の事業者弁護士や退職代行ユニオン以外のサービス提供事業者を指す。あくまで本人の使者として退職意志を伝えることしかできず、交渉や裁判などの対応はできない。

退職代行サービスの利用状況と利用される理由

退職代行サービスは退職の一つの方法として、徐々に一般化してきている状況といえます。

株式会社マイナビが実施した「退職代行サービスに関する調査レポート(2024)」によると、直近1年間で退職した人の内、16.6%の人が退職代行を利用していることがわかります。

これは5人に1人に近い割合であるため、退職代行がどの企業にとっても縁遠いものではないことが理解できるでしょう。

引用:退職代行サービスに関する調査レポート(2024年) | マイナビキャリアリサーチLab

また同調査によると、退職代行サービスを利用した理由としては、以下の3点が上位を占める結果となっています。

  • 退職を引き留められたから(引き留められそうだから):40.7%
  • 自分から退職を言い出せる環境でないから:32.4%
  • 退職を伝えた後トラブルになりそうだから:23.7%

参考:退職代行サービスに関する調査レポート(2024年) | マイナビキャリアリサーチLab

退職代行における企業対応の流れ

ここからは退職代行業者から連絡があった際に、企業が取るべき対応の流れについてご紹介します。

ステップ①:退職代行業者のカテゴリを確認する

まずは連絡してきた退職代行業者のカテゴリを確認しましょう。

先述のとおり退職代行業者が弁護士なのか、退職代行ユニオンなのか、それともその他の事業者なのかによって、対応できる範囲が異なります。

特にその他の事業者の場合は、事業者から勤務先に対して退職条件などの交渉を直接行うことができないため、あらかじめ事業者のカテゴリを確認し、今後の対応の方向性について認識しましょう。

ステップ②:従業員の意志によるものかを確認する

次に従業員の意思による退職なのかを確認します。

退職を希望している従業員が誰かを把握した上で、代行業者経由で委任状などの提出を依頼し、本人による退職希望なのかを確認しましょう。

もし本人の意思ではないものであった場合は、退職代行自体が無効となります。

ステップ③:対象従業員の雇用契約を確認する

本人の意思による退職意向である旨を確認した後は、対象従業員の雇用契約を確認しましょう。

正社員をはじめとした期間の定めのない従業員は、いつでも退職の申し入れができますが、有期雇用の場合は原則契約満了日まで退職できません。

もし対象となる従業員が有期雇用の場合、状況に応じて退職を拒否することが可能です。

ステップ④:回答書の送付

続いて回答書の準備と送付を行います。

退職を認める旨をはじめ、退職日の調整に関することや引き継ぎに関する依頼、自社の連絡窓口などを記載した回答書を作成し、代行業者に送付しましょう。

ステップ⑤:退職届など必要書類の提出依頼

退職日や引き継ぎなどの調整と並行して、退職に必要な書類の提出を依頼しましょう。

退職届は勿論、秘密保持誓約書や競業避止義務に関する誓約書など、自社の状況などに応じて必要な書類を依頼しなければなりません。

ただし競業避止義務の誓約書については、法的に協業避止義務を課すことが妥当か判断されることになり、場合によって無効とされる可能性があるため注意しましょう。

ステップ⑥:貸与品の返還依頼と私物の返却

退職届の受理後、会社から貸与しているPCや作業着などがあれば、それを返還するように事業者を通して依頼をします。

従業員の私物などが事務所に残っている場合は、これらの返却に関する手続きも並行して行い、本人の手元に渡るように手配しましょう。

ステップ⑦:保険・税金関連の手続き

最後に通常の退職と同様に、保険や税金関連の手続きを行います。

社会保険や雇用保険の資格喪失手続きに加え、離職票や源泉徴収票の発行・送付を実施しましょう。

各手続きにはそれぞれ期日が設けられているため、従業員が退職した後は速やかに手続きを行わなければなりません。

退職代行へ対応する際の注意点

続いて退職代行に対応する際に注意すべき点をご紹介します。

注意点①:退職代行は原則拒否できない

民法627条では雇用の期間の定めがない場合、労働者はいつでも退職の申し出ができるとしているため、たとえ退職代行を通じた退職であっても原則企業側は拒否できません。

ただし本人からの依頼でなかった場合や、有期雇用社員の場合は拒否できるケースがあります。

有期雇用であっても、病気や家族の介護などといった「やむを得ない事由」がある場合は、退職を認めなければならないケースがある点は押さえておきましょう。

注意点②:無資格の代行業者による非弁行為は違法

弁護士資格や団体交渉権を持たない退職代行業者はあくまで伝達役しかできず、仮に交渉をしてしまうと非弁行為として扱われ、代行業者が罪に問われます。

そのためもし代行業者が、弁護士でも退職代行ユニオンでもない場合、交渉してきたとしても応じる必要はありません。

また非弁提携にも併せて注意する必要があるでしょう。退職代行における非弁提携とは、弁護士資格を持たない代行業者が弁護士と提携し、弁護士の名前だけを借りながら非弁行為(交渉など)を行うことを指します。

例えば最初は弁護士が対応すると聞いていたにも関わらず、実際の交渉の場には無資格の担当者しか現れず、弁護士が一切表に出てこない場合などが該当するでしょう。

もし非弁行為や非弁提携の疑いがある場合は交渉には応じず、顧問弁護士などに相談してください。

注意点③:従業員との直接対話を強制しない

従業員との直接対話や連絡を強制しないようにすることも重要です。

そもそも退職代行を利用している時点で、企業側と直接話し合いをしたくないという状況にあると言えます。

無理に直接対話しようとすると思わぬトラブルに発展する恐れがあるため、従業員に直接対話の場を強制しないようにすべきでしょう。

ただし代行業者の対応が著しく遅い場合や、連絡が取れないなどといったやむを得ない事情がある場合は、本人に直接連絡などをしても差し支えありません。

注意点④:有給消化は拒否できない

たとえ退職代行を利用したとしても、年次有給休暇の利用は労働者側の権利であるため、拒否できません。

勤務中の従業員であれば時季変更権によって、取得時季を変えてもらうことができますが、退職する場合はそれも難しいため、基本的には退職者の希望どおりに取得してもらいましょう。

注意点⑤:退職代行を理由とした損害賠償請求はできない

退職代行を利用すること自体に会社への損害はないため、退職代行を理由とした損害賠償はできません。

ただし正当な理由もなく一方的に退職意志を示し、出社を拒否することで業務を停滞させるなど、企業側に実害を生じさせた場合は損害賠償請求ができる場合があります。

退職代行の利用を防ぐために企業がすべきこと

最後に退職代行の利用を防止するために企業がすべきことをご紹介します。

1.従業員との良好な関係性を構築する

まず挙げられるのは従業員との良好な関係性の構築です。

日頃から従業員と良好な関係を構築しておくことで、悩みなどを抱えている従業員が相談しやすくなり、退職に至りそうな火種を事前に消すことができます。

たとえ退職の方向性に向かったとしても、関係性を構築できていれば、退職希望者としっかりと対話をした上で、円満に退職してもらえるでしょう。

2.コンプライアンス委員会を設置する

コンプライアンス委員会などの設置も有効な対策の一つです。

自分から退職を言い出せない職場環境であることに起因して、退職代行を利用するケースも多いと言えます。

そのためハラスメントなどを監視・防止し、風通しの良い職場環境を構築するための機能として、コンプライアンス委員会などを設置すると良いでしょう。

その結果、従業員一人ひとりが意見を言いやすい環境へと変化でき、退職の方向に至ったとしても、直接対話してくれるようになることが期待できます。

3.アルムナイコミュニティの運営と周知

アルムナイ(退職者)コミュニティの運営と周知も、有効な対策として挙げられます。

アルムナイコミュニティを運営し、そこから再雇用する仕組みなどを構築することで、退職後も企業との良好な関係性を維持しておくメリットを、従業員側に示すことができます。

退職者にとって魅力的なアルムナイコミュニティを構築し、それを従業員に対しても周知しておくことで、円満な退職を促すことができるでしょう。

4.採用ブランディングに取り組む

最後に挙げられるのは採用ブランディングに取り組むという点です。

採用ブランディングに取り組み、自社の価値観やビジョンと親和性の高い従業員を採用することで、そもそも従業員とのトラブルも起こりづらくなります。

その結果、退職代行の利用を抑制するとともに、従業員の定着率向上といった効果も得られるでしょう。

まとめ

退職代行サービスは今や退職方法として一般化しはじめており、あらゆる企業が退職代行に対応する機会が巡ってくる可能性があります。

企業としては退職希望者と直接対話し、円満な関係を維持したいところですが、退職代行業者からの連絡がいつ来てもいいように、対応方法を正しく理解しておく必要があるでしょう。

ぜひこの記事を参考に退職代行への適切な対応を実現してください。

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