シニア人材の採用におけるポイントを押さえたい。

この記事は上記のような思いをお持ちの方に向けて、シニア人材が必要となる背景やメリットなども踏まえて、採用のポイントをわかりやすく解説します。

活用できる助成金や事例なども併せて紹介しているため、ぜひ最後までご確認ください。

シニア採用が必要となる背景

まずはシニア人材の採用が今後必要となってくる背景について、以下の3点をご紹介します。

背景①:少子高齢化と生産年齢人口の減少

一つ目に挙げられる背景は、少子高齢化による生産年齢人口の減少です。

日本では少子高齢化が加速しており、1995年を境に15〜64歳までの生産年齢人口が減少し続けています。

対して、65歳以上のシニア世代は増加しており、2065年には人口に占める割合が約4割になると推定されています。

そのため、今後はシニア人材の採用機会も増えてくることが予想できるでしょう。

背景②:若手人材の採用競争の激化

若手人材の採用競争の激化も背景として挙げられます。

先に挙げたように少子高齢化によって生産年齢人口が減少しているため、20〜30代の若手人材の採用難易度が高まっていると言えるでしょう。

また多くの企業が若手人材確保に注力していることから、採用競争も激化しています。

そういった背景の中で、シニア人材といった他の選択肢を検討する必要性が高まりました。

背景③:企業の人手不足

ここまで述べてきた背景もあり、多くの企業では慢性的な人手不足に陥っています。

この人手不足の課題を解決するために、外国人労働者や障がい者、シニア人材といったこれまで採用の俎上に乗せていなかった層も含めて、検討する必要性が生じたと言えるでしょう。

なかでも実務経験が豊富なシニア人材は、外国人労働者や障がい者よりも活躍してもらいやすいと言え、採用に取り組む企業も増加しています。

シニア人材を採用するメリットとデメリット

続いてシニア人材を採用するメリットとデメリットについて、確認していきましょう。

シニア人材の採用メリット

まずはメリットからご紹介します。

メリット①:人手不足の解消

メリットとしてまず挙げられるのは人手不足の解消です。

繰り返しになりますが、日本では少子高齢化の加速により慢性的な人手不足が生じています。

しかし、あくまで生産年齢人口が減少しているのであって、シニア人材は増加している状況です。

そのためシニア人材も採用対象として検討することで、採用母数を拡大でき、人手不足の解消に繋げられると言えるでしょう。

メリット②:豊富な経験や知識、人脈を活用できる

次に挙げられるメリットは、豊富な経験や知識、人脈を活用できるという点です。

シニア人材は、20〜30代の若手人材と比較して倍以上の就業経験を持っています。

長期間にわたる就業経験に裏打ちされた知識やスキルは、企業にとっても貴重な資産となるでしょう。

また幅広い人脈を構築している人材もいるため、新たな人材の採用やビジネスの機会などにも繋げることができます。

メリット③:若手社員の成長に繋げられる

若手社員の成長に繋げられるという点もメリットと言えるでしょう。

豊富な経験を持つシニア人材に若手社員のメンターや教育係を任せることで、研修や年齢の近い先輩による教育とは違った観点で成長を促すことができます。

若手社員だけでなく、教わることが少なくなった中堅社員やマネジメント層についても、シニア人材をアドバイザーとして付けることで、組織力向上に繋げることが可能です。

メリット④:助成金を利用できる

メリットの最後に挙げられるのは助成金を利用できるという点です。

人材を採用するには、求人広告費用やエージェントの手数料など、決して安くはない費用がかかります。

その点シニア人材の採用に取り組むことで、様々な助成金を利用できるため、採用費用の負担を軽減できると言えるでしょう。

どういった助成金を活用できるのかについては後ほどご紹介します。

シニア人材を採用した場合のデメリット

デメリットも併せて確認しておきましょう。

デメリット①:体力や健康面への配慮が必要

デメリットとしてまず挙げられるのは、体力や健康面への配慮が必要という点です。

シニア人材は高齢であるがゆえに、体力の衰えや持病を抱えている方も比較的多くなります。

そのためシニア人材に業務を任せる際は、体力や健康面などに配慮しながら調整していくことが求められるでしょう。

また定期的な通院が必要な人材も一定数いるため、勤務日や勤務時間の配慮も必要になります。

デメリット②:マネジメントしにくいケースがある

デメリットとして次に挙げられるのは、マネジメントしにくいケースがあるという点です。

シニア人材は経験年数や年齢がマネジメント層よりも上であるケースが大半を占めます。

そのためシニア人材との相性によっては、どうしても遠慮や言いにくさが生じ、マネジメントしにくいシーンが出てくる可能性があるでしょう。

デメリット③:賃金制度の見直しが必要な可能性がある

賃金制度の見直しが必要になる可能性がある点もデメリットとして挙げられます。

シニア人材は定年退職前に高い報酬を得ているケースも多いですが、その基準に合わせて報酬を設定することは、社内人材のモチベーションの観点でリスクが生じます。

そのためシニア人材だからといって一律で高い報酬を支払うのではなく、役割や職務に応じた適正賃金に見直す必要があるでしょう。

デメリット④:配属先次第では馴染めないケースがある

デメリットの最後に挙げられるのは、配属先次第では馴染めないケースがあるという点です。

シニア人材は豊富な経験がありますが、裏を返せば一定のやり方や考え方が染みついているとも言えます。

そのため配属先の業務特性やメンバーとの相性によって、馴染むことができず、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性もあるでしょう。

シニア人材採用における6つのポイント

ここからはシニア人材採用におけるポイントについてご紹介します。

ポイント①:能力や適性のある業務・役割を任せる

一つ目のポイントは能力や適性のある業務・役割を任せるという点です。

シニア人材のこれまでの経験や能力を踏まえて適性を判断し、最適な業務や役割を任せることでパフォーマンスやモチベーションを最大化できます。

例えば協調性やコミュニケーション能力に優れており、前職においても後輩教育に力を入れていた人材であれば、若手社員の育成を中心に任せるとよいでしょう。

【補足】活躍するシニア人材のタイプ

適性を見極める際の参考として、シニア人材のタイプをいくつかご紹介します。

・新規開拓タイプ

これまでの人脈を活かして、新規顧客の開拓を行うタイプのシニア人材

・現場サポートタイプ

自分自身の持つ経験を基に、現場業務をサポートするタイプのシニア人材

・社員育成タイプ

知識やスキルなどを現場社員に引継ぎ、若手人材の育成などを行うタイプのシニア人材

・顧問タイプ

高い専門性と経験を踏まえて、マネジメント層や社員に対するアドバイスを提供するタイプのシニア人材

・専門職タイプ

自らの専門性に基づき、実務スペシャリストとして業務に従事するタイプのシニア人材

<参考:ホワイトカラー系での高齢者雇用の活用事例集|東京都産業労働局

ポイント②:働きやすい環境を整備する

次に挙げられるポイントは、働きやすい環境を整備するという点です。

就業環境が劣悪な場合、健康面に影響が生じやすくなり、欠勤や退職に繋がりかねません。

その点シニア人材にとって働きやすい環境を整備できていれば、安定した就業やパフォーマンス向上にも繋げられます。

実際に就業しているシニア人材の視点に立って、就業環境の整備に取り組みましょう。

ポイント③:必要に応じて教育や研修を利用してもらう

必要に応じて教育・研修制度を利用してもらうといった点も、ポイントとして挙げられます。

シニア人材は経験が豊富ですが、配属先によってこれまでとは違った知識やスキルを求められるケースもあるでしょう。

そのためシニア人材のモチベーションに配慮しつつ、必要に応じてリカレント教育やスキルアップ研修などに参加してもらうこともポイントになります。

適切に教育や研修を行うことで、シニア人材のパフォーマンスを向上できるでしょう。

ポイント④:勤務条件などを柔軟に調整

続いて挙げられるポイントは、勤務条件などを柔軟に調整するという点です。

一般社員と同じ勤務条件を一律に当てはめてしまうと、健康面に悪影響が生じ、欠勤や退職に繋がる恐れがあります。

そのため各シニア人材の体力や健康面に踏まえて、就業時間や出勤日、休日取得などの条件について柔軟に対応する必要があるでしょう。

どれだけ気持ちが若いシニア人材でも、若手人材よりも体力が衰えていることには間違いないため、それぞれに合わせた勤務条件を構築することをおすすめします。

ポイント⑤:放置せずコミュニケーションをしっかり図る

放置せずにコミュニケーションをしっかりと図ることも、ポイントとして挙げられます。

シニア人材は経験豊富であるため、「放っておいてもやってくれるだろう」と考えてしまいがちでしょう。

しかし、いくらシニア人材だからといって放置し過ぎると、「自分は本当に必要とされているのか」といった疑問を感じ、モチベーションが下がってしまいます。

そのためシニア人材を採用した際は積極的にコミュニケーションを図り、関係性を構築したり、悩みなどはないかヒアリングしたりすることが重要になります。

ポイント⑥:社内の理解を得る

ポイントの最後に挙げられるのは社内の理解を得ておくという点です。

シニア人材の採用に対しては、「シニアではなく、若手を入れてほしい」「マネジメントしにくい」といった、ネガティブな意見を抱く現場社員も一定数いることが想定されます。

それらの意見を無視したまま採用に取り組んでも、現場からの協力が得られず、シニア人材がパフォーマンスを発揮する可能性は低いでしょう。

そのため、シニア人材採用の目的やメリットなどを事前に説明し、受け入れ現場の理解を得ておく必要があります。

シニア人材採用に利用できる助成金

次にシニア人材採用に取り組む企業が利用できる助成金についてご紹介します。

特定求職者雇用開発助成金

助成金の一つ目にご紹介するのは、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)です。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高齢者や障がい者といった就職が困難な人材を、ハローワークなどを介して雇用した事業主に対して支給される助成金です。

直接採用活動を行うのではなく、ハローワークや人材サービスなどを活用して受け入れることなどが条件となっています。

詳細は以下のページからご確認ください。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)|厚生労働省

65歳超雇用推進助成金

次にご紹介するのは、65歳超雇用推進助成金です。

65歳超雇用推進助成金は、高齢者が年齢に関わりなく働ける社会を実現するために設けられた助成金で、大きく以下の3つのコースが設けられています。

  • 65歳超継続雇用促進コース
  • 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
  • 高年齢者無期雇用転換コース

各コースによって支給額なども異なるため、詳細は以下のページからご確認ください。

65歳超雇用推進助成金|厚生労働省

高年齢労働者処遇改善促進助成金

助成金の最後にご紹介するのは、高年齢労働者処遇改善促進助成金です。

高年齢労働者処遇改善促進助成金は、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善を目的として、賃金規定の増額改定に取り組む事業主に支給されます。

支給要件を満たした上で、賃金規定等改定計画書を提出することで利用できます。

詳しくは以下のページを併せてご確認ください。

高年齢労働者処遇改善促進助成金|厚生労働省

シニア人材の活用事例

最後にシニア人材の活用事例についてご紹介します。

島屋株式会社の事例

事例としてまずご紹介するのは、ディスカウントストアやスーパーセンターを運営する島屋株式会社です。

島屋は運営するスーパーセンターにおいて、地元で長年生活してきたシニア人材をスタッフとして採用することで顧客目線での生の情報を集め、接客や運営に活用しています。

シニア人材の実体験を基に、アイテムの使い方や食材の調理法などを顧客に提案するといった取り組みも行っており、他店舗にはない付加価値の提供にも繋げられていると言えるでしょう。

<参考:シニア活用企業事例集|公益社団法人 岐阜県シルバー人材センター連合会

ダイキン工業株式会社の事例

次に事例としてご紹介するのは、空調機器の製造販売を行うダイキン工業株式会社です。

ダイキンでは2021年4月から、従業員が希望すれば70歳まで働き続けられるように、再雇用制度の拡充に取り組みました。

再雇用制度の整備に併せて報酬制度も見直し、賃金や賞与への配分を適正化することで、シニア人材の活躍を更に推進するといった取り組みも行っています。

その結果、海外拠点における新商品開発や顧客開拓、新工場の立ち上げといった幅広いシーンで、シニア人材の活躍を実現しています。

<参考:ベテラン層のさらなる活躍推進に向けて再雇用制度を拡充|ダイキン工業株式会社

株式会社アイ・エス・エスの事例

事例の最後にご紹介するのは、橋梁設計事業などを展開する株式会社アイ・エス・エスです。

アイ・エス・エスでは、技術を強化することに力点を置いた採用活動に取り組んでおり、経験値のある人材であれば年齢に関係なく採用しています。

なかでも総務アシスタントとして採用したシニア人材が社内のロールモデルになり、若い社員に対して良い影響を与えるといった成果を上げています。

必要な役割やスキルから逆算し、シニア人材でもその要件を満たしさえすれば採用するという、これからの少子高齢化社会において必要な採用スタンスを実現している事例と言えるでしょう。

<参考:ホワイトカラー系での高齢者雇用の活用事例集|東京都産業労働局

まとめ

今回はシニア人材採用のポイントをテーマに、メリットやデメリット、事例なども併せて解説してきましたが、いかがでしたか。

日本では将来にわたって生産年齢人口の減少が加速していくことが予測されており、あらゆる企業にとって人手不足は今後も大きな課題となるでしょう。

シニア採用は、その人手不足を解決するための糸口の一つとして有効な手法と言え、実際に取り組みを始める企業も増えてきています。

ぜひこの記事を参考に、シニア人材の採用に取り組んでみてください。

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