偽装請負という言葉は知っているものの、具体的にどういったケースが該当するのかわからない。

この記事は上記のような方に向けて、偽装請負の意味や罰則、判断基準などをわかりやすく解説します。

偽装請負を回避するポイントについても触れているため、ぜひご一読ください。

偽装請負の概要

はじめに偽装請負の意味や請負・派遣契約の内容、偽装請負の罰則などについて確認します。

偽装請負とは

偽装請負とは形式的には請負契約となっているものの、実態としては労働者派遣となっていることを指します。

偽装請負は違法行為となり、該当した場合は罰則が科せられることになります。

請負契約や派遣契約の違いを正確に把握していないことに起因して、意図せず該当してしまうケースもあるため、請負契約を締結する場合は注意しなければなりません。

請負契約と派遣契約の違い

それでは具体的に請負契約と派遣契約の違いについて確認していきましょう。

請負契約

請負契約は業務委託契約の一種であり、成果物の納品に責任が生じる契約形態となります。

業務委託を依頼する側の企業(以下、委託者)と請負業者の間で締結され、締結された内容を基に請負業者と雇用関係にある労働者が業務に従事します。

この際労働者に対して指揮命令を行うのは請負業者であり、委託者は請負業者の労働者に対して指揮命令を行うことはできません。

派遣契約

派遣契約は、派遣元企業と派遣先企業の間で締結される契約です。

派遣元企業が雇用した労働者を派遣先企業へと派遣し、派遣先企業側の指揮命令を受けて業務に従事します。

請負契約のように成果物の納品が目的ではなく、あくまで労働力の確保を目的として締結される契約形態と言えるでしょう。

偽装請負の罰則

偽装請負には先ほど罰則が設けられているとお伝えしましたが、ここで詳しい内容についてご紹介します。

労働基準法における罰則

労働基準法には中間搾取を禁止する条文(6条)があり、偽装請負はこの中間搾取に該当します。

中間搾取に該当した場合、労働基準法118条において1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

労働者派遣法における罰則

偽装請負は労働者派遣法において、無許可で労働者派遣事業を行ったとみなされます。

その場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになるでしょう(59条)。

職業安定法における罰則

職業安定法では、労働者供給事業の許可を受けた事業者以外が労働者供給を行うこと、また無許可の労働者供給事業者から供給される労働者に対して指揮命令を行うことを禁止しています(44条)。

いわゆる労働者供給事業の禁止ですが、この条文に違反した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます(64条)。

偽装請負が禁止されている理由

それではなぜ偽装請負は禁止されているのでしょうか。理由としては以下の二つが挙げられるでしょう。

理由①:労働者の立場が不安定になる

偽装請負をした場合、労働者の立場が不安定になる可能性があります。

労働者派遣契約で働く労働者は、労働時間の上限や割増賃金の規定など、労働基準法に守られた状態で業務に従事することが可能です。

しかし偽装請負の場合、契約形態としては請負であるため、労働基準法が守られないケースがあり、長時間労働や残業手当の未払いといった問題が生じやすいと言えるでしょう。

理由②:労働基準法上の中間搾取に該当する

労働基準法第6条では、以下の条文が示すとおり中間搾取を禁止しています。

“何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない”(引用:労働基準法第6条

先述の通り偽装請負はこの中間搾取に該当するため、禁止されていると言えるでしょう。

「法律に基いて許される場合」に該当するのは、有料職業紹介事業つまり人材紹介サービスとなります。

偽装請負の代表的なタイプ

ここからは偽装請負の代表的なタイプとして以下の4つをご紹介します。

タイプ①:代表型

一つ目に挙げられるのは「代表型」です。

委託者が請負業者に雇用された労働者に対して、直接業務指示などを行う場合はこの代表型に該当します。

業務遂行に関する技術指導を行う場合も代表型に該当する場合があるため、その点は注意が必要でしょう。

タイプ②:形式だけの責任者型

次にご紹介するのは「形式だけの責任者型」です。

請負業者の責任者を配置しているものの、実態としては委託者がその責任者を通じて、個々の労働者に対して細かな業務指示を出している場合などが該当します。

形式的に責任者を配置しているため、外部から見ると偽装請負であると判断しにくいという特徴があります。

タイプ③:使用者不明型

続いて挙げられるのは「使用者不明型」です。

責任の所在がどこにあるのか不明確になってしまうタイプの偽装請負となっており、たとえば以下のような流れがある場合は使用者不明型に該当するでしょう。

  1. 請負業者Aが委託者Bから業務を受託
  2. 請負業者Aが受託した業務を別の請負業者Cに再委託
  3. 請負業者Cの労働者が委託者Bの指揮命令下で業務に従事する

タイプ④:一人請負型

偽装請負のタイプとして最後にご紹介するのは「一人請負型」です。

企業Aが企業Bに対して労働者を斡旋するものの、企業Bは労働者と雇用契約ではなく請負契約を締結し、企業Bの指揮命令下で業務に従事させるといったケースが該当します。

企業Aと企業Bの関係も労働者派遣契約ではなく、請負契約として偽装されることが多いと言えるでしょう。

偽装請負の判断基準と回避のためのポイント

最後に偽装請負の判断基準と回避ポイントについて解説します。

偽装請負の判断基準

まずは偽装請負の判断基準を押さえておきましょう。偽装請負と見なされる主な基準は以下の通りです。

  • 業務遂行に関する指示を委託者が行っている
  • 業務遂行に関する評価などを委託者が行っている
  • 労働者の始業・終業時刻や休憩時間、休日や休暇などの管理を委託者が行っている
  • 労働者の服装や職場秩序に関する指示や管理を委託者が行っている
  • 労働者の勤務場所などの配置を委託者側が決定・変更している
  • 委託者側の労働者が請負業者側に応援に入り、共に業務に従事している

上記に該当する場合、偽装請負と判断されることになるため、しっかりと覚えておきましょう。

偽装請負を回避するためのポイント

偽装請負を回避するためのポイントとしては以下の4点が挙げられます。

ポイント①:請負契約・派遣契約を正しく理解する

一つ目に挙げられるのは請負契約や派遣契約を正しく理解するという点です。

各契約における指揮命令権の所在などについて正しく理解しておくことで、偽装請負に該当するような事態を事前に避けることができるでしょう。

ポイント②:契約書を正しく作成する

続いてのポイントは契約書を正しく作成するという点です。

作成する契約書に請負あるいは派遣契約であることを明記した上で、請負の場合は委託者側が指揮命令できない点なども記載することで、委託者側に理解を促すことができるでしょう。

また偽装請負の判断基準を記載した資料を契約書と併せて提供するのも、一つの方法と言えるでしょう。

ポイント③:現場確認を定期的に行う

実際に運用が始まった後は、現場確認を定期的に実施することもポイントになります。

「形式だけの責任者型」のように、一見偽装請負とはわからないケースもあるため、定期的に現場を視察し、正しい形態で運用されているかを確認すると良いでしょう。

なお現場視察は事前に予告せずに抜き打ちで行うことで、正確に実態を把握することが可能です。

ポイント④:委託者側の技術指導に注意する

最後のポイントは委託者側の技術指導に注意するという点です。

委託者側の技術指導は一部例外を除き、偽装請負に該当してしまいます。

偽装請負に該当しない技術指導としては、以下のようなケースが挙げられるでしょう。

  • 安全衛生上、緊急に対処する必要がある事項の指導
  • 委託者から借り受けた設備をはじめて操作する場合の説明
  • 新製品の製造時に行われる仕様に関する補助的な説明

これらのケース以外は偽装請負と判断される可能性があるため、注意しなければなりません。

まとめ

今回は偽装請負をテーマに、意味や罰則、主なタイプなどをまとめて解説してきましたが、いかがでしたか。

偽装請負は請負契約と見せかけた労働者派遣であり、知識不足などによって意図せず起こってしまうケースもあるでしょう。

特に委託者の事業所内で業務に従事するオンサイト型の請負契約の場合、偽装請負になってしまうリスクが高まります。

この記事でご紹介した偽装請負のタイプや判断基準を参考に、請負や労働者派遣を正しくご活用いただければ幸いです。

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