近年、福利厚生として「給与前払いサービス」を導入している企業が増えています。現在サービスについて情報収集をしている企業や、導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。提供会社やサービスも着実に増えてきており、ひとくちに「給与前払いサービス」といっても、その内容は多種多様になってきました。

民間のまとめサイトなどを見ると、簡略的な説明や、複数のサービスを一括りにした説明が掲載されている場合もあります。色々なwebサイトに掲載された注意点を読み込んでいただいた結果、「結局なんだか面倒臭そう…」と導入を諦めかけてしまっている検討者様の声も、たびたび耳にするようになりました。

そこで今回は「給与前払いサービス」について、検討の段階でのよくある誤解や、実際に導入する際に必要な準備について、詳しく紹介していきます。

▽給与前払いサービスについての詳細はこちら

ここが『面倒』?よくある誤解ポイント

人事・基幹システムとの連携が必要?

給与前払いサービスを運用する上で、従業員データと勤怠データは必要不可欠ですが、これらのデータは必ずしも「システム連携」や、APIがどうこう、といった複雑な設定が必要となるわけではありません。また「給与前払いサービス側に独自の勤怠管理システムがあり、各従業員の勤怠実績を管理している」という仕組みでもありません。

必要なデータをサービス提供会社へ「共有」さえできればOKなのです。大抵の人事・基幹システムにはデータを「出力」する機能が付いていますので、あとはそれを共有するだけ。ですので、給与前払いサービスと連携が可能か心配する必要も、現在使用しているシステムを入れ替える必要もありません。もちろん、システムを導入していない企業でも、給与前払いサービスを利用することができます。

従業員も口座開設が必要?

基本的に、自社の従業員に口座開設をしてもらう必要はありません。ふだん給与を受け取ってもらっている口座をそのまま利用できます。新規での口座開設が必要となる可能性があるのは、サービスを導入する企業側ですが、ここはサービスの提供会社により異なります。

まだ勤務してない分も前払いするの?

給与前払いサービスは、いわゆる「前借り」とは異なります。各従業員がすでに働いた分の勤務実績金額をベースに利用可能金額を決定するため、前払いの利用による過払い(払いすぎ)を心配する必要はありません。

また多くの給与前払いサービスでは、さらに「勤務実績金額の70%」といったように、事前に料率を決めておくことで前払い可能額を制限・調整することができます。他にも対象外額や上限額など、サービスによってはさらに細かい設定ができる場合もあります。

前払い資金を立て替えてくれるの?

サービス提供会社が資金を立て替えて前払いを行う「立替型」もありますが、給与前払いサービスすべてが「立替型」というわけではありません。導入企業が用意した資金で前払いを行う「直接払い型」と「預託金型」のサービスもあります。

「直接払い型」もしくは「預託金型」を導入する場合、前払い資金の用意が必要となりますが、「立替型」を導入する場合には、決算書の提出などサービス提供会社による与信審査が必要となる点を忘れないようにしましょう。

▽給与前払いサービスの種類と仕組みについて詳しくはこちら

給与前払いサービスとは?仕組みや導入を検討する際の注意点を詳しく解説

導入に必要な準備

次に、給与前払いサービスの導入にあたり、一般的に必要となる準備についてご紹介します。

※必要となる準備は給与前払いサービスの提供会社によってかなり違いがあります。サービス選定前に準備を進めると二度手間となってしまう可能性がありますので、検討しているサービスがある程度絞れている場合は、一度問合せや確認をしてから準備を進めることをお勧めします。

運用データの共有体制

給与前払いサービスを運用する場合、ユーザー情報の元となる「従業員データ」と、前払い可能額を計算するための「勤怠データ」が必要です。一般的には人事・基幹システムからCSVデータとして抽出し、サービス提供会社に共有します。サービス提供会社によってはデータ項目の並び順(配列)が決まっている場合もあるため、現在の出力データと合わない場合はシステム側の出力設定の変更、または企業側で出力データ自体の加工が必要となります。

▽各データ内容の例

従業員データ…各従業員の社員番号、氏名、所属、生年月日など

勤怠データ…各従業員の社員番号、勤務日と勤務時間(または勤務実績金額)など

この一連の業務をいつ・誰が行うとスムーズか、社内体制を考えておくといいですね。

金融機関等の選定・準備

サービスによっては選択肢がない場合もありますが、振込に使用する金融機関や送金関連システムを選定し、手続きを行います。

いま使用している口座をそのまま使えるサービスもありますが、振込作業の要否といった社内負荷の度合いや、土日祝・夜間の対応可否などからくる「使いやすさ」も、重要な選定基準となるでしょう。

労使協定の締結と給与明細への項目追加

給与前払いサービスを福利厚生として導入し、その利用料や前払いしている額を給与から控除(天引き)する場合、予めこの福利厚生費用について、賃金控除に関する労使協定を結んでおかなければ認められません。

労使協定を締結したら、給与明細の控除欄に「既払金清算」「給与前払いサービス利用料」といった関連項目を追加するのも忘れないようにしましょう。

▽給与前払いサービスに関する法律についてはこちら

給与前払いサービスに関連する法律とは?導入前に知っておきたい基礎知識

従業員へ制度の周知・説明

準備が一通り終わったら、福利厚生として日払い・週払いが利用できるようになる旨を、従業員へ知らせましょう。サービス提供会社によっては、従業員へ配布するサービス資料やガイドなどを準備してくれるところもありますので、上手に活用してみてください。

まとめ

いかがでしたか?今回は、給与前払いサービスの導入検討時によくある誤解と、必要な準備について紹介しました。

システム変更や従業員各個人の口座開設など、必須ではない準備を負担に感じて迷われている方、検討に二の足を踏んでいる方もよくいらっしゃいます。本当に必要な情報を知って頂き、導入を検討している方の参考になれば幸いです。

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