人手不足が慢性化している状況において、高校生アルバイトの活用を検討されている人事担当の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では高校生アルバイト雇用における注意点をまとめて解説します。

トラブル事例や税金・社会保険の扱い、雇用時に必要となる書類なども併せてご紹介するため、ぜひ最後までご確認ください。

高校生アルバイト雇用におけるトラブル事例

まずは高校生アルバイト雇用におけるトラブル事例として、以下の3点を確認しておきましょう。

事例①:一方的なシフト設定

一つ目にご紹介する事例は、一方的なシフト設定によるトラブルです。

高校生アルバイト全員の希望を全て叶えることはできずとも、それぞれのアルバイトの都合を聞き、バランスよくシフトを調整することが本来あるべき姿と言えます。

しかし高校生アルバイト側の都合は一切聞かず、シフト調整にかかる工数削減や企業側の都合を優先して、一方的にシフトを設定するケースも中にはあります。

そういったケースでは、高校生アルバイトとの間にトラブルが生じ、退職や無断欠勤などの事態にも繋がりかねないでしょう。

事例②:口頭での条件通知による契約不履行

続いて挙げられるのは、口頭での条件通知による契約不履行です。

正社員などと比べて、アルバイトの雇用を軽く見ている企業もあり、そういった企業は口頭による条件通知のみで、契約書などを交わさないケースがあります。

その場合、口頭で伝えていた契約内容の詳細を忘れ、契約時の金額と異なる賃金を支給してしまうなどのトラブルが発生しやすいと言えます。

事例③:深夜や休日労働に従事させる

事例の最後に挙げられるのは、深夜や休日労働に従事させるという点です。

高校生アルバイトは労働基準法第60条と61条により、深夜や休日に働かせることが禁止されています。

しかし違法であることを理解しながらも、深夜や休日に労働させている事例もあります。

そういった場合は、労働基準監督署への通報など、高校生アルバイトとの間に大きなトラブルが発生するでしょう。

高校生アルバイトを雇用する際の注意点

高校生アルバイト雇用によくあるトラブルを確認いただいたところで、改めてどういった点に注意すべきなのか確認していきましょう。

注意点①:労働条件を忘れずに明示する【労基法15条】

注意点として一つ目に挙げられるのは、労働条件は忘れずに明示するという点です。

企業が従業員を雇用する場合、労働基準法第15条の規定により、賃金や労働時間などを含めた労働条件を明示する必要があります。

労働条件を明示する際は、労働条件通知書兼雇用契約書を二部作成し、それぞれ押印したものを双方で取り交わし、保管しておくとよいでしょう。

そうすることで、契約内容についての認識違いに起因したトラブルを防ぐことが可能です。

注意点②:労働契約は本人と締結する【労基法58条】

続いて挙げられるのは、労働契約は本人と締結するという点です。

高校生のような未成年の場合、どうしても保護者との間に契約を結ぶ必要があるように感じてしまうでしょう。

しかし労働基準法第58条の規定により、高校生を含めた未成年に代わり、保護者などが労働契約を締結することは禁止されています。

そのため高校生アルバイトを雇用する際は、必ず本人と労働契約を締結するようにしましょう。

注意点③:年齢を確認する【労基法56・57条】

次に注意点としてご紹介するのは、年齢を確認するという点です。

労働基準法第56条では、「満15歳に達した日から最初の3月31日」が訪れていない未成年を雇用することを禁じています。

さらに同法第57条では、満18歳に満たないものを雇用する場合は、年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付ける必要があると規定されています。

そのため高校生アルバイトを雇用する際は年齢を証明できる書類を提出してもらい、忘れずに備え付けておくようにしましょう。

注意点④:保護者の同意書を提出してもらう

保護者の同意書を提出してもらうという点も、忘れてはいけません。

未成年である高校生を雇用する上で、保護者の同意が得られているかどうかは重要なポイントになります。

もし保護者の同意なく雇用しているとなれば、保護者との間でトラブルになりかねません。

そのため保護者の同意が得られているのかを確認するために、あらかじめ保護者の同意書を提出してもらうようにしましょう。

注意点⑤:就労時間・休日労働の制限【労基法60条】

続いて挙げられる注意点は、就労時間や休日労働の制限があるという点です。

高校生アルバイトは、労働基準法第60条の規定により原則1日8時間、週40時間を超えての就業はできません。

ただし、1週間の労働時間が40時間を超えない範囲において、1週間の内1日の労働時間を4時間以内に短縮することで、他の日の労働時間を10時間まで延長することが可能です。

また休日労働は制限されているため、それを踏まえた上でシフトを組む必要があるでしょう。

注意点⑥:深夜労働は原則不可【労基法61条】

次に挙げられるのは、深夜労働は原則不可であるという点です。

労働基準法第61条の規定により、満18歳に満たない者を22時~5時まで労働に従事させることは禁じられています。

ただし昼間と夜間の交代制によって雇用する16歳以上の男性である場合や、業務の性質上深夜労働が必要な業務などにおいては、例外的に許可される場合もある点は留意しておきましょう。

注意点⑦:禁止業務や禁止作業場所がある【労基法62・63条】

禁止業務や禁止作業場所があるという点も注意すべきです。

労働基準法第62・63条、及び年少者労働基準規則の第7・8条の規定により、高校生を含めた未成年者は以下のような業務に従事させることはできません。

  • ボイラーの取り扱いや溶接業務
  • クレーンなどの運転業務
  • 重量物を取り扱う業務
  • 危険物や毒性のある物を扱う業務

また以下のような危険が伴う場所での業務も禁止されています。

  • 高さが5メートル以上の場所
  • 土砂が崩壊する恐れがある場所
  • 深さが5メートル以上の地穴における業務
  • 異常気圧下における業務

注意点⑧:帰郷旅費の負担が必要な場合がある【労基法64条】

続いてご紹介するのは、帰郷旅費の負担が必要な場合があるという点です。

労働基準法第64条の規定により、雇用している高校生アルバイトを会社都合で解雇した場合、かつその高校生アルバイトが14日以内に帰郷する際は、必要な旅費を負担する必要があります。

ただし高校生アルバイト側の都合で退職となった場合は、この限りではありません。

注意点⑨:校則で禁止されていないか確認する

注意点の最後に挙げられるのは、校則で禁止されていないかを確認するという点です。

仮に校則で禁止されている高校生をアルバイトとして雇用しても、企業側に罰則などのリスクは生じません。

しかし学校側にばれることにより退職してしまい、急遽人手が足らなくなるといったリスクも生じる可能性があるでしょう。

そのため高校生アルバイトを雇用する際は、事前に校則で禁止されていないかを確認しておくべきと言えます。

労働基準法関連に違反した場合の罰則

ここまで高校生アルバイトの注意点について、根拠法とともにご紹介してきましたが、これら法に違反した場合は当然罰則が設けられています。

それぞれの罰則をまとめた表を以下に記載するため、ご参照ください。

労働基準法第15、57、58、64条120条の規定により、違反した場合30万円以下の罰金が科される
労基法61~62条119条の規定により、6か月以下の懲役、又は30万円以下の罰金が科される
労基法56・63条118条の規定により、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される

※労基法60条は罰則規定なし

高校生アルバイトの税金と社会保険

続いて高校生アルバイトを雇用した際の税金や社会保険の扱いについても押さえておきましょう。

高校生アルバイトの所得税

まず高校生アルバイトを雇用した際の所得税の扱いについて確認します。

高校生アルバイトを雇用した際、年収が103万円以下であれば所得税はかからず、年末調整なども不要です。

また勤労学生控除の対象となる高校生アルバイトの場合は、27万円の控除が受けられるため130万円以下であれば、同じく所得税の対象とはなりません。

勤労学生控除について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。

No.1175 勤労学生控除|国税庁

高校生アルバイトの社会保険

次に高校生アルバイトの社会保険について確認しましょう。

高校生アルバイトであっても労災保険は加入対象となり、健康保険についても加入条件を満たせば加入してもらわなければなりません。

健康保険の加入については、正社員の所定労働時間(所定労働日数)の4分3以上かどうかを基準に、総合的に判断されることになります。

雇用保険は、雇用保険法第6条の規定により昼間学生は適用外となる点も併せて理解しておきましょう。

高校生アルバイトを雇用する際に必要な書類

最後に高校生アルバイト雇用の必要書類として、以下の5点を紹介します。

必要書類①:年齢証明書

必要書類として一つ目に挙げられるのは年齢証明書です。

高校生アルバイトを雇用する際は年齢を証明する書類として戸籍謄本や住民票を提出してもらった上、その書類を事業所に備え付ける必要があります。

必要書類②:保護者の同意書

続いて挙げられるのは保護者の同意書です。

保護者とのトラブルを避けるためにも、高校生アルバイトを雇用する際は保護者の同意書を提出してもらいましょう。

保護者の同意書には、以下のような項目が網羅されていれば問題ありません。

  • 高校生アルバイト本人の名前・生年月日・住所
  • 保護者の氏名と捺印・住所・本人との関係
  • 同意書の記載日

必要書類③:マイナンバー

次に挙げられるのは、マイナンバーです。

もし雇用する高校生アルバイトについて、税金や社会保険などの手続きがある場合、マイナンバーが必要になるため、提出してもらいましょう。

必要書類④:本人名義の銀行口座

給与振り込みのために、本人名義の銀行口座も必要になるでしょう。

ただし銀行口座振り込みにて給与を支払う場合は、本人の同意が必要であるため、その点は留意してください。

必要書類⑤:労働条件通知書兼雇用契約書

最後にご紹介するのは、労働条件通知書兼雇用契約書です。

労働条件を明確化し、労使間の認識を一致させるためにも、労働条件通知書兼雇用契約書を作成し、取り交わしておきましょう。

労働条件通知書兼雇用契約書の記載項目については、以下のページをご参照ください。

採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省

まとめ

今回は高校生アルバイトを雇用する際の注意点をテーマに解説してきましたが、いかがでしたか。

高校生アルバイトを雇用する際は、大学生などの成人を雇用するケースよりも、注意しなければならない点が多くあります。

しかし人手不足が加速する社会において、高校生アルバイトも貴重な労働力であることには変わりません。

ぜひこの記事を参考に、しっかりと注意点を押さえて高校生アルバイトの雇用に取り組んでいただければ幸いです。

また厚生労働省が高校生アルバイトを雇用する際の留意点などをまとめた資料として、自主点検表を提供しています。併せてチェックしてみてください。

高校生等のアルバイトの労働条件に関する自主点検表|厚生労働省

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