派遣スタッフを受け入れる際にどのような準備が必要なのか知りたい。
この記事は上記のような思いを抱かれている方に向けて、派遣スタッフを受け入れるまでの流れを踏まえつつ、必要な準備事項や注意点を解説します。
最後に派遣スタッフに安定して働いてもらうためのポイントも紹介しているため、ぜひご一読ください。
派遣スタッフを受け入れるまでの流れ
まずは派遣スタッフを受け入れる際の流れを簡単に確認しましょう。
ステップ①:求人依頼
派遣スタッフを受け入れるには、まず派遣サービスを提供する人材サービス会社(以下、派遣会社)に対して、派遣スタッフの紹介依頼を行います。
派遣会社の担当者と打ち合わせを実施し、業務内容やスキル要件などについてすり合わせましょう。
ステップ②:派遣スタッフの紹介
打ち合わせの内容を基に、派遣会社が登録・雇用している派遣スタッフから適切なスキルを持つ人材を選定します。
その後、派遣会社から派遣スタッフのスキルが記載された資料(個人を特定する情報は記載していないもの)が送られてくるため、記載内容を基に受け入れ可否を判断します。
ステップ③:職場見学
スキルシートにおいて問題ないと判断できれば、原則そのまま受け入れることになりますが、当該派遣スタッフから要望があった際は職場見学会を設けます。
職場見学会では実際に就業するフロアなどを案内したり、教育担当や指揮命令者を紹介したりすることになるでしょう。
ステップ④:派遣契約の締結
受け入れが決まった際は、派遣会社との間で派遣に関する基本的な事項を定めた労働者派遣基本契約と、派遣スタッフごとの条件や指揮命令者などを定めた個別契約を締結します。
労働者派遣契約は、はじめて派遣スタッフを受け入れる派遣会社との間で締結するものであり、二人目以降の派遣スタッフを受け入れる際は個別契約のみで構いません。
ステップ⑤:受け入れ準備の実施
就業開始当日までに派遣スタッフの受け入れが決まったことを社内に周知しつつ、就業に必要な環境を整備したり、備品などを準備したりします。
具体的に必要な準備事項は後ほどご紹介します。
ステップ⑥:就業開始
就業開始当日は、派遣会社の担当者が派遣スタッフを就業場所までアテンドするケースが多くなります。
派遣会社担当者から派遣スタッフの案内を引き継ぎ、事前に決めておいたスケジュールに応じて、適切に受け入れ対応をしましょう。
派遣スタッフを受け入れる際に必要な準備事項
ここからは派遣スタッフを受け入れる際に必要な準備事項を具体的に紹介します。
準備①:任せる業務の整理
準備事項としてまず挙げられるのは、任せる業務の整理です。
個別契約の内容を踏まえ、派遣スタッフに対してどのような業務や作業を任せていくのかを具体化します。
契約内容のままでは抽象度が高く、具体的な業務内容がイメージできないケースがあるため、あらかじめ作業レベルまで言語化しておきましょう。
準備②:備品や機材などの手配
続いて挙げられるのは、備品や機材などの手配です。
派遣スタッフ専用のデスクや椅子、業務で使用するパソコンやログイン用IDなどの準備をしましょう。
その他、事務所や敷地に入るために入館証などが必要であれば、こちらも当日までに手配してください。
準備③:業務マニュアルの用意
業務マニュアルも必要に応じて手配しなければなりません。
業務遂行の具体的な手順や注意点などをまとめたマニュアルを用意しておくことで、派遣スタッフの立ち上がりもスムーズになります。
特に業務の難易度が高いケースや、派遣スタッフのスキルレベルが適正よりも低い状態で受け入れるケースにおいては、マニュアルの必要性は増します。
準備④:教育担当や指揮命令代行者の任命
次に挙げられるのは、教育担当者と指揮命令代行者の任命です。
OJTを行う教育担当者は勿論、指揮命令者が不在の際に指揮命令を行う代行者を任命しておきましょう。
これらの担当者が決まっていない場合、業務の立ち上がりが遅くなったり、指揮命令者の不在時に派遣スタッフが混乱したりするため、事前に決めておくことをおすすめします。
準備⑤:受け入れ初日のスケジュールや対応事項の確認
受け入れ初日のスケジュールや対応事項の確認も必要です。
フロアの案内やメンバーの紹介、業務に関する詳細説明といった必要事項をまとめ、タイムスケジュールに当てはめていくとよいでしょう。
また初日の昼食について、チームや部門のメンバーで集まって行く予定であれば、あらかじめ該当メンバーにその旨を周知しておくことを忘れないでください。
派遣受け入れ時の注意点
次に派遣スタッフを受け入れる際の注意点をご紹介します。
注意点①:面接行為は不可
一つ目の注意点は、面接行為は不可であるという点です。
派遣法26条第7項の規定により、派遣先による労働者の特定行為は禁止されているため、面接行為はできません。
仮に職場見学で顔を合わせてから受け入れを拒否した場合、面接行為と認識されてしまう可能性があります。
もし面接行為をしたことを労働基準監督署などに通報されてしまうと、勧告や公表などの行政処分の対象となるため注意しましょう。
注意点②:禁止業務がある
次に挙げられる注意点は、禁止業務があるという点です。
派遣法においては、以下の業務での派遣受け入れを禁止しています。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院などにおける医療関係業務
- 弁護士や司法書士
- 公認会計士や税理士
- 社会保険労務士や行政書士
これらの業務での受け入れを検討している場合、派遣ではなく直接雇用が必要である点は押さえておきましょう。
<参考:労働者派遣事業を行うことができない業務は・・・|厚生労働省>
注意点③:契約外の業務は任せられない
個別契約に記載のない業務については、派遣スタッフに任せられない点も留意しましょう。
例えばWebデザイナーという役割で、Webサイトやランディングページのデザインのみを業務内容として契約している派遣スタッフに、紙の販促資料などのデザイン業務は依頼できません。
派遣スタッフに対して将来的に依頼する可能性がある業務は、契約内容にあらかじめ盛り込んでおく必要があります。
注意点④:受け入れ期間の制限がある
2015年の法改正で3年ルールが設けられたことにより、各派遣スタッフの就業開始日から起算して3年経過した翌日に抵触日が設けられます。
抵触日以降、同じ派遣スタッフは同じ組織(基本的には課レベル)で受け入れることはできません。
例えばAさんを経理課1係で3年受け入れた場合、経理課2係でさらに3年受け入れることは禁止されます。
ただし、Aさんを会計課で受け入れるといったように、組織が変われば新たに3年間受け入れ可能です。
【補足】受け入れ制限がないケース
例外として、派遣会社との間で無期雇用契約を締結している派遣スタッフや、60歳以上の派遣スタッフは3年ルールの対象外となり、3年を超えた受け入れが可能です。
また日数限定業務や産休・育休代替業務、有期プロジェクト業務において受け入れる際も対象外となります。
注意点⑤:離職後1年以内は派遣受け入れ禁止
派遣法第40条の9第1項の規定により、離職後1年以内の元従業員を派遣スタッフとして受け入れることはできません。
本来継続して直接雇用すべき労働者を、労働条件などを下げるために、意図的に派遣スタッフへ切り替えることを禁止することを理由としています。
注意点⑥:二重派遣は禁止
注意点の最後に挙げられるのは、二重派遣の禁止です。
二重派遣とは、派遣会社から受け入れた派遣スタッフを、別の企業に派遣する行為を指します。
二重派遣は職業安定法第44条で禁止されている労働者供給と判断され、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるため注意してください。
派遣スタッフに安定就業してもらうためのポイント
最後に、受け入れた派遣スタッフに安定就業してもらうためのポイントをご紹介します。
ポイント①:導入研修を実施する
一つ目のポイントは、導入研修を実施するという点です。
新入社員向けに実施する導入研修を、派遣スタッフ向けにカスタマイズして実施することで、よりスムーズに就業してもらうことができます。
例えば以下のようなカリキュラムを取り入れることで、業務に入ってもらいやすくなるでしょう。
- 自社のビジネスや事業内容に関する講義
- 任せる業務の背景や意義に関する講義
- 業務遂行に必要な知識やルールに関する講義
ポイント②:業務指示は明確に行う
次に挙げられるポイントは、業務指示を明確に行うという点です。
派遣スタッフに対して業務指示を行う際は、「何を・いつまでに・どのように行うのか」を明確にしましょう。
また「その業務の成果がどのように他業務に繋がるのか」といった全体像も踏まえて指示を出すことで、誤解やそれに起因するミスを防止でき、スタッフも安心して働くことができます。
ポイント③:評価や労いの言葉をかける
評価や労いの言葉をかけることも重要なポイントになります。
派遣スタッフとの雇用関係は派遣会社にあるものの、派遣会社の担当者が常駐しているわけではないため、実際の仕事ぶりを見ているのは派遣先となる自社だけです。
そのため仕事に対して適切な評価を行い、時には労いの言葉をかけるなど、モチベーション管理を積極的に実施することで、派遣スタッフの意欲やロイヤルティも高まることが期待できます。
ポイント④:派遣会社からのフィードバックを積極的に聞く
続いて挙げられるのは、派遣会社からのフィードバックを積極的に聞くという点です。
派遣会社の担当者は派遣スタッフと定期的に面談し、自社の指揮命令者には直接言いにくいような悩みなどを聞き出しているケースがあります。
こういった情報を派遣会社から積極的に提供してもらい、一緒になって問題解決に取り組むことで、派遣スタッフの安定就業に繋げることが可能です。
ポイント⑤:自社の一員として扱う
ポイントの最後に挙げられるのは、自社の一員として扱うという点です。
派遣スタッフとはいえ、自社の事業活動の一部を担ってくれていることは間違いありません。
そのため、ないがしろな扱いや差別的な扱いをせず、自社の正社員達と同じように接し、関係性を築くことが重要です。
自社の一員として扱われることで、派遣スタッフのモチベーションも高まり、安定して働いてくれるようになるでしょう。
まとめ
今回は派遣スタッフの受け入れに際する準備をテーマとして、受け入れの流れやポイントなどを解説しました。
派遣スタッフは、自社のニーズや繁忙に合わせてフレキシブルに活用できる優れた人材リソースです。
また優秀な人材であれば、そのまま正社員として雇用することもできるため、ミスマッチを最小限に抑えた採用にも繋げられるでしょう。
この記事を参考に派遣スタッフの活用に取り組んでいただければ幸いです。
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