外国人アルバイトが退職する際、企業側には日本人アルバイトとは一部異なる手続きが求められます。特に、ハローワークへの外国人雇用状況届出や、在留資格に配慮した案内などは、適切に対応しなければ法令違反につながる可能性もあります。一方で、基本的な退職手続きの多くは日本人と共通しており、正しく整理しておくことでスムーズな対応が可能です。
本記事では、外国人アルバイトの退職時に企業が行うべき手続きを解説します。外国人雇用状況届出や退職証明書の発行、実務上の注意点もまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
外国人アルバイトの退職手続きチェックリスト

外国人アルバイトが退職する際は、以下の項目を中心に手続きの確認をしましょう。
| 1.退職日や最終出勤日の確認 | 退職日や最終出勤日を確認し、給与計算や各種届出の基準日を明確にする |
|---|---|
| 2.源泉徴収票の交付 | 退職者が年末調整や確定申告を行えるよう、退職後に源泉徴収票を交付する |
| 3.健康保険証の回収 | 健康保険の資格喪失に伴い、健康保険証を回収する |
| 4.住民税の残額に関する手続き | 未徴収の住民税がある場合は、一括徴収や普通徴収への切替などについて案内する |
| 5.雇用保険・社会保険の資格喪失手続き | 加入対象者のみ、退職に伴う雇用保険および社会保険の資格喪失届を提出する |
| 6.退職証明書の発行 | 退職者から請求があった場合に退職証明書を発行する(法律上の作成義務なし) |
| 7.外国人雇用状況届出の提出 | 外国人労働者が退職した事実を、期限内にハローワークへ届け出る |
| 8.在留資格や再就職に関する案内 | 退職後に必要となる在留資格上の手続きや相談先について案内する |
| 9.雇用終結書 (ターミネーションレター)の発行 | 退職者から請求があった場合に雇用終結書を発行する(海外での転職時に必要になる場合がある) |
退職日の確認から退職証明書の発行までは、日本人アルバイトが退職する場合と基本的に同じ流れです。一方、外国人雇用状況届出の提出や在留資格・再就職に関する案内、雇用終結書の発行は外国人特有の対応になります。
そのほか、企業によっては制服や備品などの貸与品返却、守秘義務に関する誓約書の作成なども必要です。パートやアルバイトなどの非正規雇用であっても、原則として正社員と同様の退職手続きが必要になる点を押さえておきましょう。
外国人雇用状況届出とは

外国人雇用状況届出制度とは、企業が外国人労働者を雇用した場合、または雇用している外国人が離職した場合に、氏名・在留資格・在留期間などの情報をハローワークへ届け出る仕組みです。この制度により、厚生労働省やハローワークは外国人労働者の就労実態を正確に把握し、不法就労の防止や再就職支援、雇用施策の立案につなげています。
外国人雇用状況届出は、外国人を雇用するすべての事業主に義務付けられています。企業の法令遵守とトラブル防止のためにも、制度の趣旨や提出方法を正しく理解しておきましょう。
参照:外国人雇用状況の届出について|厚生労働省
参照:外国人雇用はルールを守って適正に|厚生労働省
退職時にも届出が必要な理由
外国人雇用状況届出は、雇入れ時だけでなく退職時にも提出が必要です。退職の事実をハローワークへ届け出ることで、外国人労働者の在留資格や保険関連の情報が正しく整理され、次の在留資格更新・再就職につながります。
また、退職時の届出を怠ると、企業が不法就労の助長に関与したと判断されるリスクもあります。外国人雇用状況届出は、法令遵守の観点からも非常に重要な手続きといえるでしょう。なお、雇用保険に加入している場合は、雇用保険被保険者資格喪失届を提出すれば、外国人雇用状況届出は不要です。
提出期限と提出方法
退職時の外国人雇用状況届出は、原則として退職日の翌月末日までに提出する必要があります。提出方法は、ハローワーク窓口への持参や郵送といったオフライン提出のほか、ハローワークインターネットサービス「外国人雇用状況届出システム」を利用したオンライン提出も可能です。
外国人アルバイトの退職日が確定した段階で、企業は必要書類を整理し、速やかに対応することが求められます。
届出を怠った場合の罰則やリスク
外国人雇用状況届出は、雇用対策法に基づく事業主の義務です。届出を怠った場合や虚偽の内容を提出した場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
企業にとっては金銭的なリスクにとどまらず、コンプライアンス体制への信頼低下や、外国人本人の在留資格更新・再就職に悪影響を及ぼす点にも注意が必要です。万が一、外国人雇用状況届出の提出漏れに気づいた場合は、速やかに管轄のハローワークへ相談し、適切な対応を取る必要があります。
退職証明書とは

退職証明書とは、労働者が過去にどのような条件で勤務し、いつ退職したかを証明する書類です。退職証明書は、企業が必ず作成しなければならない書類ではありませんが、外国人労働者が在留資格の更新・変更、再就職手続きをする際に必要になる場合があります。
退職証明書が必要になる場面
退職証明書は、新しい職場への入社手続きや在留資格の変更・更新、雇用保険や社会保険の加入手続きなどで必要になる書類です。前職での勤務期間や業務内容、退職日を客観的に証明できるため、行政手続きや採用判断の資料として活用されます。
特に外国人アルバイトの場合、在留資格更新の際に、「これまでどの企業で、どのような業務に従事していたか」を確認されることがあります。その際、前職の勤務実績を示す書類として退職証明書の提出を求められるケースもあり、円滑に手続きを進めるために必要な書類の一つといえるでしょう。
法律上の作成義務はない
退職証明書の作成自体は労働基準法上の義務ではありません。しかし、労働基準法第22条により、労働者から請求があった場合には交付することが求められています。
円満な雇用関係の終了や企業のコンプライアンス対応の観点からも、請求があれば適切に対応する姿勢が重要です。
退職証明書に記載する5つの基本項目
退職証明書に記載する基本項目は、次の5つです。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由
ただし、これらの項目のうち、退職者が記載を希望しない項目は記載できません。例えば「退職の事由を記載しないでほしい」と要望があった場合、企業は該当する項目を除外する必要があります。
なお、退職者が希望しない項目を記載した場合、30万円の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。
雇用終結書(ターミネーションレター)とは

雇用終結書とは、雇用関係が終了した事実や退職日などを記載した書類です。日本では一般的になじみがありませんが、海外では「ターミネーションレター(Termination Letter)」として広く利用されています。
主に海外企業への転職時や、ビザ申請・身分証明の場面で、前職との雇用関係が適切に終了していることを証明する目的で提出を求められる場合があります。
記載内容や形式に法的な定めはなく、英文をはじめとする外国語での発行を依頼されるケースが一般的です。そのため、雇用終結書の作成可否や使用言語、記載項目の範囲について、あらかじめ社内で方針を検討し、必要に応じて簡易的なフォーマットを整備しておくとよいでしょう。
外国人アルバイトの退職手続きを行う際の注意点

外国人アルバイトの退職手続きでは、届出の提出期限や在留資格への配慮など、日本人労働者が退職する場合とは異なる点を意識する必要があります。ここでは、実務において注意すべきポイントを解説するので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
届出の提出期限を厳守する
外国人アルバイトの退職手続きでは、各種届出の提出期限を厳守することが重要です。期限を過ぎると、企業が行政指導や改善命令の対象となる可能性があり、悪質な場合には罰則が科される可能性もあります。
雇用保険に加入していない外国人アルバイトが退職した場合、企業は外国人雇用状況届出を退職日の翌月末日までに提出する必要があります。一方、雇用保険に加入している場合は、雇用保険被保険者資格喪失届を退職後10日以内に提出しなければなりません。
適切に手続きを進めるためにも、外国人アルバイトの退職が決まった時点で必要な提出書類と期限を確認し、担当者間で情報を共有しておきましょう。
退職後の動向を把握する
外国人アルバイトが退職する際は、退職後の進路や予定を把握しておくこともポイントです。退職後に転職するのか、在留資格を変更・更新するのか、あるいは帰国するのかによって、本人に必要となる手続きや案内内容が大きく異なるからです。
実務上、退職後であっても、在留資格の更新や変更に関連して出入国在留管理庁から企業へ勤務実態や退職時期に関する問い合わせが入るケースがあります。退職後は企業が在留資格の管理義務を負うわけではありませんが、退職時点で本人の予定を把握しておくことで、誤った案内や不要なトラブルを防げます。
在留資格について指導する
外国人アルバイトの退職時には、在留資格に関する基本的な指導をすると安心です。外国人アルバイトの場合、退職後は在留資格の種類によって就労の可否や必要な手続きが異なり、知らずに行動すると資格外活動や不法就労につながるおそれがあります。
企業が在留資格について正式な判断をする必要はありませんが、「退職後は在留資格に応じた手続きが必要になること」「不明点は出入国在留管理庁やハローワークに確認すること」といった基本的な案内をしましょう。
在留資格について適切に指導することで、不法就労の防止につながり、企業としてのコンプライアンス強化にも寄与します。
まとめ
外国人アルバイトの退職手続きは、日本人と共通する部分に加え、外国人雇用状況届出や在留資格への配慮といった特有の対応が求められます。特にハローワークへの届出期限や、退職証明書の取り扱いは、企業のコンプライアンスに直結する重要なポイントです。
本記事では、外国人アルバイトの退職手続きや実務上の注意点を解説しました。外国人アルバイトの退職が決まった段階で必要な手続きを整理し、本人へ適切に案内することで、円満な雇用終了につなげましょう。



