BPaas(ビーパース)を採用業務に活用する動きが注目されています。人手不足の解消や生産性向上にもつながる新たな選択肢として、導入を検討する企業も少なくありません。
応募者対応や面接日程の調整などに追われ、本来注力すべきマッチングや採用戦略に時間をかけられないと感じている方もいるでしょう。
本記事では、BPaaSに委託できる業務内容やメリット、導入ステップを解説します。事業者選びのポイントや実際の導入事例も紹介しているので、採用業務の改善を検討している方は、参考にしていただけますと幸いです。
BPaaSとは

BPaaS(Business Process as a Service)とは、クラウド上で提供される業務プロセス代行サービスです。SaaS(ソフトウェア)と BPO(業務代行)を組み合わせた形態を指し、ツールの提供だけでなく、実務の運用まで外部に任せられる点が特徴です。
SaaSは自社で操作・運用する必要がある一方で、BPaaSは運用ごと外部に委託できるため、社内負担が軽減される点がメリットといえます。
採用業務では、求人原稿の作成や面接日程の調節、スカウト配信などのノンコア業務を一括して委託可能です。社内の採用担当者は、戦略立案やマッチングなどのコア業務に集中できるため、業務の効率化と成果の向上が期待されます。
BPaaS市場は今後もさらに拡大が予測されており、採用体制を見直す企業にとって導入を検討すべき有効な手段といえるでしょう。
BPaaSで委託できる採用業務の内容
BPaaSでは、採用業務のなかでも特に負担が大きい煩雑なノンコア業務を一括して委託できます。業務の種類ごとに、以下のような作業の依頼が可能です。
カテゴリー | 依頼できる作業内容 |
---|---|
母集団形成 | 採用時期や人数の提案スケジュール提案募集媒体の検討媒体事業者とのやり取りスカウト配信 |
応募者対応 | 応募者情報の管理履歴書、職務経歴書のチェック適性検査の案内や実施スキルチェックの案内や実施質問対応 |
選考管理 | オファー面談の日程調整合否通知(メールの送信など) |
募集媒体の導入・設定 | 募集媒体の設定(権限付与や通知)求人票作成スカウト文やメールのテンプレート作成 |
面接調整 | 面接候補日の打診面接官との日程調整面接日の確定連絡面接日のリマインド |
BPaaSの提供業者によって、対応可能な業務は異なります。また、母集団形成や応募者対応などのノンコア業務に対応しているケースが多い一方で、面接や内定通知などの判断を伴う作業は、依頼企業側で実施するのが一般的です。
委託を検討する際は、自社で対応する業務と外部に委託する作業の線引きを明確にしておきましょう。想定していた作業が対応外となる可能性もあるため、事前確認が不可欠です。
BPaaSで採用業務を委託するメリット3選

BPaaSで採用業務を委託するメリットには、社内の担当者がコア業務に集中できる、生産性向上が期待できるといった点があります。
以下で、それぞれ解説するので参考にしていただけますと幸いです。
1.コア業務に集中できる
BPaaSを導入すれば、採用担当者は本来注力すべきコア業務に集中しやすくなります。今まで時間を取られていた応募者情報の管理や面接の日程調整、メール対応などの煩雑なノンコア業務を外部に委託できるためです。
ノンコア業務の負担が減ることで、担当者は採用戦略の立案や面接対応、案件内容と人材のマッチングといった、採用成果につながる業務に時間をかけられるようになります。作業の役割分担が明確になるため、業務の優先順位が整理され、会社全体の効率も向上するでしょう。
さらに、ノンコア業務に精通した外部の専門チームが対応することで、ミスや処理遅れなどのリスクも軽減されます。その結果、応募者と企業とのマッチング精度の向上にも期待できます。
2.採用業務の生産性向上が期待できる
BPaaSを導入すると、採用業務の生産性向上が期待できる点もメリットの一つです。SaaSとは異なり、BPaaSはツールの導入だけで終わらず、実際の運用まで外部に委託できるため、社内の負担を軽減できます。
また、SaaSを利用する場合は、自社の採用担当者がツール操作や運用フローを習得しなければなりません。一方で、BPaaSはツール操作やデータ入力から、日々の対応フローまで外部に任せられます。
そのため、社内研修やマニュアル整備に時間をかける必要もなく、採用業務の処理スピードや対応力の向上が期待できます。結果として、業務全体の効率化につながるでしょう。
3.採用ノウハウとデータを蓄積できる
BPaaSを導入すると、採用に関するノウハウとデータの蓄積が可能です。BPaaSはBPOとは異なり完全な委託ではなく、クラウド上でデータを共有しながら作業を進めます。そのため、実務を通して知見を自社内に残せる点が特徴です。
また、BPaaSの事業者によっては、数値分析や改善提案などの振り返りを定期的に実施してくれるケースもあります。たとえば、スカウト文面の反応率や、求人媒体ごとの応募率などのデータを可視化・分析することで、採用活動の精度向上にもつながります。
将来的に内製化を目指す場合にも、蓄積された情報やノウハウを活用できる点は大きなメリットといえるでしょう。
採用業務をBPaaSで委託するまでのステップ

採用業務をBPaaSで委託するまでのステップは以下のとおりです。
- 導入の目的を明確にする
- 委託する採用業務の範囲を決める
- 社内体制を整える
- セキュリティ対策をする
以下で、詳しく見ていきましょう。
導入の目的を明確にする
まずは、BPaaSを導入する前に、どのような採用課題を解消したいのか、その目的を明確にしましょう。目的が明確になっていれば、委託する業務や適したサービス事業者の選定がスムーズになります。
たとえば、「採用業務の効率化」「担当者の負担軽減」など、自社が抱える採用課題を洗い出しましょう。目的があいまいなままだと、外部に委託する範囲や選定するBPaaS事業者とミスマッチが起きる可能性があり、期待通りの効果が得られないかもしれません。
目的を明確にすることで、導入後の効果測定や評価も行いやすくなるでしょう。
委託する採用業務の範囲を決める
あらかじめBPaaS事業者に委託する採用業務の範囲を決めておくことも重要です。導入を決めたあとに、委託したい業務が対象外であった場合、期待していた作業の効率化が実現できなくなります。また、BPaaS事業者の再選定によって、余計なコストや手間がかかる恐れもあります。
たとえば、求人原稿の作成やスカウトメールの文面検討など、社内で工数がかかっている業務を明確にし、外部に依頼したい具体的な内容を整理しておきましょう。
BPaaS事業者により委託できる業務範囲が異なるため、候補となる事業者のサービス内容を事前に確認しておくことが重要です。採用業務の委託内容によって、どのBPaaS事業者を選定するのか検討するようにしましょう。
社内体制を整える
BPaaSを導入する前に、社内体制を整えておくことも重要です。スムーズに外部委託を進めるためには、BPaaSの事業者との窓口となる担当者やチームを明確にしておく必要があります。
あわせて、自社の業務フローを整理し、委託範囲や進め方についてもすり合わせを行っておくと、認識のズレを防げるでしょう。BPaaS導入後も、定期的にプロジェクトの進行状況を確認し、管理する体制も必要です。
セキュリティ対策をする
BPaaSを導入する際はセキュリティ対策が欠かせません。求人サービスを提供している企業や人材派遣会社では、応募者の個人情報や履歴書など機密性の高い情報を扱うため、情報漏えいのリスクは最小限に抑える必要があります。
委託先となるBPaaS事業者の情報管理体制や、データのバックアップ体制などを事前に確認しておくと安心です。
採用支援に強いBPaaS事業者を選ぶ5つのポイント

採用支援に強いBPaaS事業者を選ぶためには、実績やコスト面など、いくつかの確認しておきたいポイントがあります。BPaaS事業者選定の際に、参考にしていただけますと幸いです。
1.委託したい採用業務に対応しているか確認する
委託したい採用業務を明確にしたら、それらに対応できるBPaaS事業者かどうか確認する必要があります。対応範囲はBPaaS事業者によって異なるため、希望する業務が対象外であれば、想定していた業務の負担軽減が期待できません。
たとえば、スカウト配信や面接の日程調整、応募者対応などの業務を委託したい場合、事前に対応の有無を確認しておきましょう。導入後のミスマッチを防ぐためにも委託内容と提供範囲のすり合わせが不可欠です。
2.実績や業界特化性をチェックする
BPaaS事業者を選ぶ際は、自社と同業種・同規模の支援実績があるか、業界に特化したノウハウを持っているかを確認しましょう。類似企業の導入実績が豊富な事業者であれば、業務フローや課題を理解したうえで適切なプラン提案をしてもらえる可能性が高まります。
たとえば、自社が人材派遣業であれば、同じ業界の導入実績があるBPaaS事業者を選ぶことでスムーズな導入と効果的な業務委託につながるでしょう。実績や業界に特化しているかどうかは、BPaaS事業者の選定において重要なポイントです。
3.コスト面や柔軟性を比較する
BPaaS事業者を選定する際は、費用体系と対応の柔軟性も比較してください。委託する業務内容や事業者ごとのサービス形態によって、コストは異なります。
自社に適した業務範囲を適正な価格で対応してもらえるのかを見極めましょう。また、将来的に委託範囲を広げる可能性がある場合は、柔軟に対応してもらえるのかも確認しておく必要があります。
定額制か従量制なのか、プランによって対応可能な内容がどのように変わるかといった点も含めて、事前に比較検討しておくと安心です。
4.振り返りや改善支援が受けられるか確認する
比較検討しているBPaaS事業者が、単なる作業代行だけではなく、数値分析や改善提案などの支援までしているかどうかを確認しましょう。煩雑な作業を代行してくれるだけでは、業務負担の軽減は期待できるものの、「どの施策が効果的だったのか」「今後どのように改善すればよいのか」といった分析や改善につながりにくくなります。
たとえば、応募率の分析やスカウト文面、求人原稿のリライトなど、成果向上に向けた支援があるかどうかを確認しておきましょう。改善支援が受けられる場合は、蓄積されたデータをもとに、効果的な採用活動に期待ができます。
5.セキュリティ体制に問題はないか確認する
BPaaS事業者とその企業が利用するSaaSのどちらもセキュリティ体制に問題がないか、事前に確認しておくことが不可欠です。セキュリティ対策が不十分な場合、機密情報や応募者の個人情報が漏えいし、企業の信頼を失う恐れがあります。
また、セキュリティ対策だけでなく、コンプライアンス体制の整備状況も重要な確認ポイントです。専門部署やマニュアルを設けているかなど、社内体制の確認もしておきましょう。
採用業務でBPaaSを活用した企業の導入例
ここでは、実際にBPaaSを活用して採用課題の解決に取り組んだ企業の導入事例を見ていきます。導入検討の際に、参考にしていただけますと幸いです。
スカウト機能の改善で採用単価も減少した導入例
家庭向けロボットを開発・提供している企業の導入例を紹介します。採用オペレーションの見直しとスカウトの改善で採用単価の削減と採用数が向上した例です。
導入前の課題 | 採用のリソース不足会社の認知度が低い |
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導入後の効果 | 採用数が約2倍に向上スカウト機能の改善で返信率がアップスカウトによる内定数がアップ採用コストの削減 |
BPaaSの具体的な サポート内容 | スカウトメールの内容検討、送信候補者の対応数値分析や改善 |
採用担当者自身が入社間もないタイミングで、前任者の引き継ぎも十分でなく、採用に必要なノウハウや運用体制が整っていない状態からのスタートでした。BPaaSを活用することで、スカウト文面の作成・送信、返信対応、面接調整などの採用業務全般を委託し、土台を整えました。
結果として、スカウト返信率や内定数が向上し、採用数も約2倍に増加した事例です。
質の高いスカウトで母集団が約5倍に増加した導入例
情報セキュリティの教育支援を行う企業の導入事例を紹介します。限られた人員体制のなかで、30名規模の採用を目指す必要があり、採用実務のリソースを補うためにBPaaSを活用しました。
導入前の課題 | 採用のリソース不足採用のブランディング強化不足 |
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導入後の効果 | 母集団が約5倍にアップスカウト返信率の改善採用業務の負荷軽減 |
BPaaSの具体的な サポート内容 | 書類選考やスカウト業務ABテスト実施と結果検証数値分析と改善提案 |
スカウト業務や応募者とのやり取り、媒体管理などを委託し、スピーディーかつ質の高い対応を実現したことで、候補者が約4〜5倍に増加しました。戦略業務に集中できる体制が整い、今も継続して活用しているとのことです。
まとめ
BPaaSを活用すると、採用業務の生産性が向上し、担当者はコア業務に集中できるといったメリットがあります。BPaaSを導入する前には、目的を明確にし、委託する業務範囲や、事業者との窓口となる担当者を決めておくことが重要です。あわせて、コスト面やセキュリティ体制の確認も欠かせません。
本記事では、BPaaSで委託できる業務内容やメリット、導入手順を解説しました。自社に合ったかたちでBPaaSを取り入れ、業務の負担を減らしながら、より良い採用につなげてください。
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