「雇用契約書の作成は義務なのか知りたい」
この記事は上記のような思いをお持ちの方に向けて、雇用契約書の概要や法的な義務の有無を解説します。
雇用契約書と労働条件通知書の違いや、記載項目、作成方法などもご紹介していくため、ぜひ最後までご確認ください。
雇用契約書の概要
まずは雇用契約書の概要や労働条件通知書との違い、必要な理由について解説します。
雇用契約書とは?法的な義務は?
雇用契約書とは、労働者と雇用契約を締結する際に取り交わす契約書のことを指します。
労働基準法などによって義務付けられた書類ではないため、作成が必須というわけではありません。
雇用契約書は給与や就業場所、業務内容や労働時間など、どのような条件で雇用するのかを明記した上で、双方が記名捺印します。
基本的に労働契約締結時に取り交わすことになるため、入社時や内定時に発行することが一般的でしょう。
雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書と似たような書類に労働条件通知書というものがあります。
労働条件通知書は労働基準法第15条により規定されており、雇用契約書とは異なり、労働者を雇用する際に必ず交付しなければならない書類です。
もし明示義務を行った場合は、労働基準法120条の規定により、30万円以下の罰金に科されます。
また雇用契約書の場合は二部用意し、記名捺印した上で取り交わすといった対応になりますが、労働条件通知書はあくまで通知を目的する書類であるため、記名捺印などの対応は不要です。
雇用契約書は労働条件通知書を兼ねることが可能
労働条件通知書は法的に必要な書類ですが、雇用契約書で兼ねることが可能です。
労働条件通知書で網羅すべき項目を雇用契約書内に記載することで、労働条件通知書兼雇用契約書といった形で取り交わすことができます。
雇用契約書が必要な理由
ここまで雇用契約書の概要や労働条件通知書との違いについて触れてきましたが、なぜ法的に不要な雇用契約書をわざわざ手配する必要があるのでしょうか。
その理由としては以下の点が挙げられます。
理由①:労働者からの信頼が得られる
労働条件通知書はあくまで通知するだけであるため、労働者からすると一方的な印象を抱いてもおかしくはありません。
しかし雇用契約書を取り交わすことで、労働者側も内容をしっかりと確認した上で、雇用契約を締結できるため、企業への信頼感も醸成しやすいと言えます。
理由②:労使間トラブルを未然に防ぐことができる
雇用契約書を取り交わしていない場合、労使間での認識の相違によるトラブルが起こりかねません。
その点雇用契約書を準備し、企業側だけでなく労働者側も合意の上で締結することで、こういったトラブルも未然に防ぐことができます。
雇用契約書の記載事項
それでは雇用契約書の記載事項についてご紹介します。ここでは雇用契約書で労働条件通知書を兼ねるという前提で、確認していきましょう。
労働条件通知書に記載すべき項目
まずは労働条件通知書に記載すべき項目についてご紹介します。
絶対的明示事項
絶対的明示事項は労働条件通知書において、必ず記載しなければならない項目です。
具体的には以下の事項が該当します。
- 契約期間に関する事項
- 就業場所や従事する業務に関する事項
- 始業・終業時刻や休憩、休日などに関する事項
- 賃金の決定方法や支払時期などに関する事項
- 解雇事由など退職に関する事項
- 昇給に関する事項
上記の内、昇給に関する事項を除き、書面での交付が義務付けられています。
ただし本人の希望があった場合は、WebメールやFAXなどの方法で明示することが可能です。
相対的明示事項
相対的明示事項とは、該当する定めがある場合に明示する必要がある項目です。
具体的な項目としては、以下のとおりです。
- 退職手当に関する事項
- 賞与などに関する事項
- 食費や作業用品などの負担に関する事項
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償や疾病扶助に関する事項
- 表彰や制裁に関する事項
- 休職に関する事項
雇用契約書で兼ねる場合に追記すべき項目
労働条件通知書に記載すべき項目について確認いただいたところで、雇用契約書で兼ねる際に追記すべき項目についても確認しておきましょう。
雇用契約書で労働条件通知書も兼ねる場合は、以下のような項目を追記します。
- 社会保険加入に関する事項
- 人事異動・転勤に関する事項
- 職種変更に関する事項
特に正社員の雇用契約書を作成する場合は、人事異動や職種変更に関する事項について、忘れずに記載しておくことが重要です。
もし記載を忘れていた場合、いざ人事異動や職種変更の必要性が生じても、契約書に書かれていないことを理由に断られる可能性もあるため注意してください。
雇用形態に応じて追記すべき項目
雇用形態に応じて追記すべき項目についても確認しておきましょう。
契約社員の場合
契約社員の雇用契約書を作成する際は、契約期間や契約更新をする場合の基準などを記載しなければなりません。
これは契約社員を雇用する場合の絶対的明示事項として扱われるため、必ず追記するようにしましょう。
アルバイト・パートの場合
アルバイトやパートを雇用する場合は、昇給や退職金、賞与の有無といった項目についても書面交付が求められます。
これは先に挙げた労働基準法15条ではなく、パートタイム労働法第6条の規定によるものとなります。
違反した場合は10万円以下の過料が課されるため、注意しましょう。
雇用契約書を作成する方法
ここからは雇用契約書を作成する方法についてご紹介します。
雇用契約書のテンプレートを活用する
雇用契約書を作る際はテンプレートを活用するとよいでしょう。先の項目を含めて一から作る場合、作業効率が悪くなります。
現在は様々な企業が雇用契約書のテンプレートを提供してくれているため、それらを上手く活用することで雇用契約書の作成工数を削減できるでしょう。
テンプレートの中には無料で利用できるものもあるため、ぜひ活用してください。
テンプレートを利用する場合の注意点
雇用契約書を作成する際はテンプレートを利用すべきと解説しましたが、注意点もあります。
テンプレートはあくまで汎用性の高い項目のみを記載しているケースが多く、雇用形態の違いや自社制度の内容によっては、テンプレートの項目だけでは対応できない可能性があるでしょう。
そのためテンプレートの内容を細かく確認し、不足項目があればそのまま使うのではなく、カスタマイズするといった対応が必要になります。
雇用契約書の作成・運用時のポイント
最後に雇用契約書を作成・運用する際のポイントについて確認しておきましょう。
ポイント①:労働条件通知書と兼ねて作成する
一つ目に挙げられるポイントは労働条件通知書と兼ねて作成するという点です。
繰り返しになりますが、労働条件通知書は労働基準法第15条により義務付けられており、必ず作成しなければなりません。
そのため労働条件通知書とは別に、雇用契約書を作成するとなると、書類作成の工数が二倍になってしまいます。
従って雇用契約書を作成する場合は、労働条件通知書と兼ねて作成し、工数を削減するとよいでしょう。
ポイント②:労使双方が署名する
企業と労働者双方が署名するという点もポイントとして挙げられます。
雇用契約書を作成した場合は、企業と労働者双方で内容を確認した上で記名捺印を行い、お互いに保管しておきましょう。
仮に記名捺印がなければ契約書としての有効性が揺らぎ、労使間のトラブルが生じたとしても、契約書を根拠として対応することができません。
ポイント③:電子化する
最後に挙げられるポイントは雇用契約書を電子化するという点です。
労働条件通知書の絶対的明示事項も、本人の希望さえ得ることができれば、メール添付などの形で通知できます。
また今は電子署名・捺印などもあるため、労働条件通知書兼雇用契約書についても電子化することが可能です。
雇用契約書を電子化できれば、作成や手続きの工数などを大きく削減できる上、郵送費用などのコストも抑えられるでしょう。
まとめ
今回は「雇用契約書は義務であるのか」という疑問をテーマに解説してきましたが、いかがでしたか。
雇用契約書の作成や取り交わしに法的な義務はないものの、労使間のトラブルの防止や、労働者との信頼関係構築に役立ちます。
そのため労働条件通知書だけを用意するのではなく、雇用契約書も兼ねた上で、取り交わすことをおすすめします。
この記事が雇用契約書の作成や手続きの参考になれば幸いです。
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