人手不足に悩む企業の採用担当者にとって、応募数の確保や定着率の向上は大きな課題です。
時給の引き上げにも限界があるなか、新たな採用施策として注目を集めているのが「給与デジタル払い」です。2023年4月に解禁された給与デジタル払い制度は、単なる決済手段の多様化にとどまらず、若年層やタイパを重視する求職者への強力なアピールポイントになり得ます。
本記事では、給与デジタル払いの現状や求人効果を高める5つのメリットを解説します。実際の導入事例や採用競争力を強化するポイントもまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
給与デジタル払いの現状

給与デジタル払いは、2023年4月の労働基準法施行規則改正によって新たに解禁された制度です。2024年8月にはPayPay株式会社が初の指定資金移動業者に認定され、実用化に向かいました。
厚生労働省によると、給与デジタル払いの登録口座は2024年度末時点で17,210件です。従業員側の利用ニーズに関する回答は、「今後利用したい」が17.4%、「利用したくない」が33.8%、「どちらとも言えない」が48.5%となっています。また、企業側の回答は、「必要性を感じない」が71.6%と、「必要性を感じる」の2.2%を大きく上回っているのが現状です。
ただし、これらの数字はあくまで実用化初年度の半年間のデータであり、その後、主要な決済事業者が次々と参入したことで、現在はさらに普及が加速しています。
参照:資金移動業者の口座への賃金支払制度について|厚生労働省
給与デジタル払いの導入で期待できる5つの求人効果

給与デジタル払いの導入企業はまだそれほど多くありませんが、その分、早期に導入することで採用市場における武器になります。特に人手不足が深刻な業界において、給与以外の魅力で求職者を惹きつけることは重要です。
ここでは、給与デジタル払いの導入によって期待できる5つの求人効果を解説します。
1.他社と差別化できる
給与デジタル払いの導入は、採用市場において競合他社との明確な差別化につながります。現時点では給与デジタル払いに対応している導入企業がまだ限られているからです。
新聞やニュースなどを通じて給与デジタル払いの認知が広がる今、求人票に「給与デジタル払い対応」と記載するだけで、求職者の目に留まりやすくなります。早期に給与デジタル払いを導入して求人票でアピールすることは、他社をリードする有効な差別化戦略になるでしょう。
2.若年層の採用率向上が期待できる
若年層をターゲットとした求人において、給与デジタル払いは採用率の向上に直結します。デジタルネイティブであるZ世代などの若年層は、日常生活の支払いをスマートフォン決済で完結させている割合が高いからです。
実際に、若年層はほかの年代よりも給与デジタル払いの利用意向が高く、「キャッシュレスで生活している」「チャージの手間が省ける」といったタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する声が多く挙がっています。したがって、給与がPayPayなどのアプリへ直接入る仕組みは若年層のライフスタイルに合致し、強い訴求力を発揮するといえるでしょう。
3.応募単価を抑えられる
給与デジタル払いの導入により、応募単価を抑えられる効果が期待できます。給与受取の利便性という付加価値が、時給アップに代わるアピールポイントになるからです。
求人検索で「給与デジタル払い対応」というキーワードからの流入が見込めれば、高額な広告費をかけずともターゲット層への露出を自然に増やせます。結果として、無理な費用負担を避けつつ、応募1件あたりの獲得コストを効果的に抑えられます。
4.早期離職の防止につながる
早期離職の防止につながる点も、給与デジタル払いを導入するメリットの一つです。自身のライフスタイルに合わせて給与の受取方法を選択できることは、従業員の利便性と満足度を大きく高めます。
例えば、アプリに直接給与が入りチャージの手間が省けるといった利便性の提供は、「従業員の働きやすさを考えてくれる柔軟な会社」という信頼感やエンゲージメントを生み出します。企業と従業員の間で良好な関係性が構築できれば、結果として定着率の向上につながるでしょう。
5.企業イメージの向上を図れる
給与デジタル払いの導入は、企業イメージの向上につながるメリットがあります。働き方が多様化する現代において、新しい仕組みを積極的に取り入れ、多様な価値観や選択肢を受け入れる柔軟な姿勢を外部に発信できるからです。
なお、従業員に寄り添う企業姿勢は、求職者に対するアピールとなるだけでなく、既存社員のモチベーションや帰属意識にも好影響を与えます。給与デジタル払いは、「柔軟で従業員思いの会社」というポジティブなブランディングを実現する有効な手段といえるでしょう。
給与デジタル払いが求職者に支持される理由

厚生労働省の調査データによれば、給与デジタル払いの利用に関して「利用したくない」と回答している人が約3割を超えています。一方で、「とても利用したい」「今後利用したい」と前向きに捉え、支持をしている層も存在します。
以下で、求職者に支持される具体的な理由を解説するので、制度の理解を深めるための参考にしていただけますと幸いです。
キャッシュレスで生活できる
給与デジタル払いは、主にキャッシュレス決済を日常的に利用する層から支持を得ています。銀行の窓口やATMに並んで現金を引き出す必要がなくなり、直接アプリに残高が増えるからです。
普段から財布を持ち歩かず、スマートフォン決済だけで生活する層にとって、現金化せずに給料日当日からスムーズに買い物ができることの利便性は高いといえるでしょう。キャッシュレスで生活できる環境を提供することは、一定の求職者に対する魅力になります。
現金を引き出すための手数料が不要になる
給与デジタル払いは、現金引き出しにかかる手数料を節約したい層にとって大きなメリットです。銀行口座を介さず直接アプリで給与を受け取ることで、時間外手数料やコンビニATMの利用手数料を気にする必要がなくなります。
実際に、「手数料の積み重ねによる出費をなくしたい」という理由でデジタル払いを希望する声も多く挙がっています。給与デジタル払いは、「稼いだお金を無駄な手数料で減らしたくない」というシビアな金銭感覚を持つ層に対し、実生活に直結する魅力としてアピールが可能です。
チャージする手間を省ける
給与デジタル払いは、日々の小さなストレスをなくす解決策にもなります。銀行口座から日常的に使用している決済アプリへ毎回手動でチャージする作業には手間がかかります。
デジタル払いを利用したい理由として「チャージの手間が省けるから」という声も多く、資金移動を面倒に感じる人は少なくありません。給与がPayPayなどのアプリに直接振り込まれる利便性は、求職者に対する強いアピールポイントになるでしょう。
ポイントが貯まりやすくなる
給与デジタル払いは、日々の生活コストを抑えたい節約志向の層に対しても訴求力があります。決済アプリによっては給与の受取やチャージでポイント還元やボーナスが付与されるため、現金受取よりもお得にポイントを貯められます。
実際に、デジタル払いを利用する条件として「ポイントの還元や上乗せ」を希望する声も少なくありません。毎月給与を受け取るだけで自然にポイントが貯まる仕組みは、給与デジタル払いが支持される理由の一つです。
収支管理がしやすくなる
給与デジタル払いは、日々の収支管理を楽にし、使いすぎを防ぎたい層にも支持されます。決済アプリの履歴で自動的に入出金を管理できるうえ、給与の一部だけをデジタル払いで受け取ることも可能です。
例えば、生活費の決まった額だけをアプリで受け取るように設定すれば、家計簿をつける手間が省けるほか、チャージされた分だけでやり繰りする意識が働き、無駄遣い防止に役立ちます。手軽に家計管理ができる仕組みは、実生活に直結する大きなメリットになります。
少なくとも月1回は手数料無料で現金化できる
必要になれば手数料なし、かつ1円単位で銀行口座へ戻して現金化できる点も支持される理由の一つです。デジタル払いであっても制度上は「少なくとも月1回は手数料無料で、1円単位から引き出せること」が義務付けられています。
実際にPayPay給与受取の場合、自身の銀行口座への送金が月1回無料になるうえ、PayPay銀行宛てであれば何回でも無料で引き出しが可能です。万が一現金が必要になった際にも損をせずに手元に戻せる点で、安心して利用できます。
参考:資金移動業者の口座への賃金支払に関する資金移動業者向けガイドライン|厚生労働省
【導入事例】給与デジタル払いによる求人効果
ここでは、給与デジタル払いの導入事例と主な求人効果を見ていきましょう。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 具体的な取り組み | 主にアルバイト従業員向けに給与デジタル払いを導入従業員の利便性向上を図るため、前払いサービスと組み合わせて併用 | 本業の給与は銀行振込で受け取り、副業分はデジタル払いで受け取るといった新しいニーズが生まれると想定して導入アルバイトの日払い・週払いにも活用 |
| 給与デジタル払いによる 求人効果 | 新しい福利厚生として求職者にアピールすることで、採用競争力の強化に貢献している既存従業員の満足度や定着率の向上にもつながっている | 若年層をターゲットにした採用競争力の強化に貢献している急な出費にも対応できる柔軟な給与受取が可能となり、従業員の利便性向上につながっている |
給与受取の選択肢を増やすことは、従業員満足度の向上や採用力強化に直結していることがわかります。
給与デジタル払いの求人効果を高めるポイント

給与デジタル払いの求人効果を最大化するためには、求職者への伝え方を工夫する必要があります。特定のターゲット層には強い訴求力を持つ一方で、デジタル払いを「利用したくない」層も約3割いるため、選択の自由とメリットの両方をアピールする必要があるからです。
具体的には、従来の銀行振込も選べることや、全額ではなく給与の一部だけをデジタル払いにできることを明記し、保守的な層を取りこぼさないようにします。その上で、求人票には「PayPayで給与受取OK」「銀行に行かなくてもよい仕事」といったキーワードを活用します。
さらに、主婦層には「家計管理のしやすさ」、若年層には「遊びの予定に合わせた即時チャージ」など、ターゲット別のメリットを提示すると効果的です。求人効果を高めるためにも、あくまで従業員の選択肢が増えるメリットとして打ち出しつつ、ターゲット別に的確な訴求を行いましょう。
求人効果を高めるなら「速払いサービス」もおすすめ

給与デジタル払いの求人効果を高めるなら、「速払いサービス(前払いサービス)」との組み合わせがおすすめです。デジタル払いと給料日を待たずに働いた分の給与を受け取れる仕組みを併用することで、競合他社との明確な差別化になります。
「速払いサービス」を利用する企業の従業員は、サービスのアプリ上で「PayPayと連携」ボタンをタップするだけで手続きを完了でき、給料日を待たずにPayPay残高で給与を受け取れるようになります。チャージの手間なく、給与を受け取った日から決済に利用できるため、急な出費が必要な従業員にとって非常に利便性が高いシステムです。
「速払いサービス」は、すでに株式会社吉野家や株式会社ワールドインテックなどさまざまな企業で利用されており、実績も豊富です。従業員満足度と採用力の向上を目指すうえで、ぜひサービスの導入を検討してみてください。
サービスページ:速払いサービス|apseeds(エーピーシーズ)
まとめ
給与デジタル払いはまだ普及の途上にありますが、だからこそ早期に導入することで他社との差別化や応募単価の抑制といったメリットを享受できます。保守的な層への配慮として銀行振込との併用を明記しつつ、ターゲットに合わせた訴求を行うことがポイントです。
本記事では、給与デジタル払いの現状や企業が得られる5つの求人効果を解説しました。採用難を乗り切るための方法の一つとして、「速払いサービス」との組み合わせも含め、給与デジタル払いの導入を検討してみてください。



