人手不足が深刻化する現代において、アルバイトやパートを含めた従業員の離職を防ぎ、定着率を高めていくことは、あらゆる企業にとっての急務と言えます。
そこでこの記事ではアルバイト・パートの定着率の現状をおさらいした上で、以下の2つのテーマを中心に解説していきます。
- どういった理由で離職してしまうのか
- 定着率を高めるにはどうすればいいのか
アルバイト・パートの離職でお悩みの方は、ぜひ最後までご確認ください。
アルバイト・パートの定着・離職の現状
はじめにアルバイトやパートの定着率の現状や主な離職理由について確認していきます。
2021年におけるアルバイト・パートの定着率
以下のグラフは厚生労働省が2021年に公表した雇用動向調査結果から引用したものです。
グラフ引用:令和3年雇用動向調査結果の概要
グラフ上部のパートと示されている赤の点線が、アルバイトとパートの離職率の推移データであり、2021年における離職率は21.3%となっています。
離職率が分かれば自ずと定着率も導きだすことができ、具体的には以下の計算方法で算出することが可能です。
・定着率=100%-離職率
そのため2021年におけるアルバイトとパートの定着率は以下のように導き出すことができます。
・100%-21.3%=定着率78.7%
定着率78.7%と聞くと、「それなりに高いじゃないか」と感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、5人に1人が辞めてしまうと考えれば、かなりのインパクトではないでしょうか。
アルバイト・パートの主な離職理由
それではなぜアルバイト・パートが離職するのかについて、ここから主な理由をご紹介していきます。
理由①:賃金を含めた待遇が低い
アルバイトやパートで働く人の目的は、より多くのお金を稼ぐことであることは言うまでもありません。
そのため賃金や福利厚生などの待遇が低ければ、働く目的を満たすことができず、離職に繋がりやすいと言えます。
理由②:教育やフォローを受けられない
どれだけポテンシャルの高い人であっても、正しい教育やフォローを受けられなければ、業務でミスをしてしまいます。
ミスをして同僚や上司から注意されることが多くなれば、離職してしまっても不思議ではありません。
理由③:人間関係
たとえ賃金が高く、仕事自体にやりがいを感じていたとしても、上司や同僚と性格的に合わなければ離職してしまう可能性があります。
特にチームワークが必要な仕事であれば、その傾向は顕著になるでしょう。
理由④:事前に聞いていた内容と実際のギャップ
業務内容を実際よりも簡単だと思わせるように説明していたり、残業などのマイナス面も伏せてしまったり、ということは採用現場では起こりがちです。
そうなると現実とのギャップが生じ、離職の引き金になってしまうでしょう。
理由⑤:生活環境の変化
結婚や出産、引っ越しといった、従業員側の生活環境変化によって離職してしまうケースもあります。
業務内容や賃金・待遇などに不満はなく、頑張って働いてくれている従業員でも、家族や配偶者の都合などで生活環境が変化し、離職してしまう可能性はあると言えるでしょう。
定着率が低くなることによる主な影響
ここからは定着率が低くなることによる影響を4つご紹介します。
影響①:採用・育成コストの増大
定着率が下がれば、それだけ新たな人材を確保する必要が生じ、当然その分の採用コストが掛かってくることになります。
また新たな人材は育成しなければならず、その分の工数や費用も掛かるでしょう。
そのため「離職⇒新たな人材の確保」を繰り返せば、育成コストもかさみ、結果として利益などを圧迫することになってしまいます。
影響②:既存従業員の負担増加
また既存の従業員の負担が増加するという影響も忘れてはいけません。
離職者が出れば、残っている従業員でその分をカバーする必要が出てきますが、結果として役割以上のことを求められるようになり、負担も増加することでしょう。
そういった状況下では既存の従業員のロイヤルティも低下し、離職者が続出するという負のスパイラルが生じてしまう可能性もあります。
影響③:企業イメージの低下
企業イメージが低下するという影響も挙げられます。定着率が低下していると聞けば、誰もが「職場環境や待遇が悪いのだろう」と考えるでしょう。
今はSNSなどから一気に口コミが広がる時代であるため、「あの企業はしょっちゅう人が辞めている。きっと何かあるんだ。」といったネガティブなイメージが広がりやすいことは言うまでもありません。
影響④:採用力の低下
ここまで見てきた影響が積み重なることで、採用力の低下に繋がる恐れもあります。
何度も繰り返しになりますが、離職者が多い職場はそれだけ従業員にとって何かしらの負荷やマイナス要素があると言えます。
そのため新たな人材を採用したくとも、その事実がボトルネックとなり、そもそも応募が集まらないといった事態が生じてしまうでしょう。
【カテゴリ別】定着率を高めるための12のポイント
最後に前述したような悪い影響を避けるため、定着率を高めていく12のポイントを3つのカテゴリに分けてご紹介していきます。
制度・環境における4つのポイント
まずは制度・環境面における定着率を高めるポイントを4つご紹介していきます。
ポイント①:適切な評価制度の確立
制度・環境面におけるポイントとしてまず挙げられるのは、適切な評価制度を確立するという点です。
頑張っているアルバイト・パート従業員に適切な報酬や待遇で報いることは、定着率を高める上でのベースとなります。
そのためにはまず頑張っている人を適切に評価するための制度を確立する必要があるでしょう。
ポイント②:導入研修やフォローなどの教育制度の充実
続いてご紹介するポイントは教育制度の充実です。
離職理由でも挙げた通り、教育やフォローが受けられずに離職してしまうというケースは往々にしてあります。
こういった事態を防ぐために、導入研修や定期フォローといった教育制度を拡充していくことが重要になります。
ポイント③:メンター制度の導入
新しく入ってきたアルバイト・パート従業員に、先輩従業員をメンターとして付け、日々の教育やフォローなどを実施することで、定着率を高めることができます。
メンターを通じて従業員の状況を日頃からモニタリングしておけば、離職に繋がりそうな問題が生じても、早期に手を打つことが可能です。
ポイント④:福利厚生の充実
福利厚生の充実も定着率向上の大きなポイントとなります。
適正な賃金に加え、様々な福利厚生を用意しておけば、アルバイト・パート従業員の定着率は向上しやすくなります。
特に金銭面の不安を解消できる給与前払い制度や賞与支給、交通費支給といった制度はポジティブに作用しやすいと言えるでしょう。
採用活動における3つのポイント
次に採用活動におけるポイントとして以下の3点をご紹介します。
ポイント①:業務の明確化
採用活動において定着率を向上させる大きなポイントとなるのが、業務の明確化です。
先ほど離職の原因として、事前に聞いていた内容とのギャップを挙げましたが、業務内容のギャップもその中に当然含まれます。
そのため採用面接を行う前に、あらかじめアルバイト・パート従業員にお願いする可能性のある業務は洗い出し、明確化しておく必要があると言えるでしょう。
ポイント②:募集要項・採用基準の明確化
また募集要項や採用基準を明確にすることも重要なポイントです。人間関係やスキルのミスマッチは、離職に直結してしまいます。
そのため募集要項や採用基準を明確にしておき、あらかじめ離職するリスクのある人材を選考時点で落とすことで、結果として定着率向上が期待できるでしょう。
ポイント③:残業などのマイナス面も隠さず伝える
事前に聞いていたよりも残業や休日出勤が多いといったマイナス面は、アルバイト・パート従業員にとってかなりのインパクトとなります。
そのためそういったマイナス要素があれば、選考過程において隠さずに伝えましょう。
マイナス要素に対して、どういった改善活動をしているのかまで話すことができれば、ネガティブな印象を和らげることができます。
就業開始後における5つのポイント
最後に就業開始後のポイントについて5つご紹介していきます。
ポイント①:アルバイト・パートだから、といった偏見をなくす
正社員よりもアルバイト・パート従業員の方が能力的に劣っている、と考えてしまいがちですが、これはあくまで偏見でしかありません。
アルバイト・パート従業員であっても優秀な人は数多くいます。
そういった人に適切な業務を任せていくことでより良い関係が築け、定着率も向上させることができるでしょう。
ポイント②:歓迎する雰囲気を醸成する
新たにアルバイト・パート従業員が加わる際、歓迎の雰囲気をしっかりと醸成しておくことも重要なポイントです。
新たな職場に入ってただでさえ不安な中、誰も気にかけてくれなければ、どんな人でも「こんな職場は嫌だ」と感じてしまいます。
そうならないためにも、しっかりと歓迎する雰囲気を職場で醸成し、「入ってきてくれてありがとう」といった感謝の気持ちを伝えましょう。
ポイント③:シフトや休暇も柔軟に調整する姿勢
アルバイト・パート従業員にとって、シフトや休暇の調整がしにくい職場は働きにくく、離職に繋がる可能性もそれだけ高くなると言えます。
そのため、できるだけ柔軟にシフトや休日が組めるシステムを構築することが重要になります。
全員の希望を叶えることが難しくとも、調整する努力をしているという姿勢を見せるだけでも従業員からの信頼度は変わるので、この点は押さえておきましょう。
ポイント④:業務指示を丁寧かつ明確に行う
業務指示を曖昧に行えば、アルバイト・パート従業員がその指示を独自に解釈して、業務に望むことになります。
そうなればこちら側の望んでいた結果に繋がらない可能性も高まり、従業員に対して「なぜできていないんだ?」と注意することになるでしょう。
こういったことを繰り返せば、従業員のモチベーションも下がり、離職に繋がってしまいます。
そのため業務指示は丁寧、かつ明確に行うことがとても重要だと言えるでしょう。
ポイント⑤:現場マネージャーやリーダーの研修も行う
業務指示に関するノウハウなどをテーマとした研修を、現場のマネージャーやリーダーに行うことも有効です。
現在労働者の価値観も多様化する中で、あるべきリーダーシップやマネジメント方法も変化しています。
そういったノウハウを現場の責任者が正しく学ぶことができれば、アルバイト・パートを含めた全ての従業員の定着率を高めることができるでしょう。
まとめ
今回はアルバイト・パートの定着率をテーマとして、現状のデータや高めていくためのポイントをお伝えしてきましたが、いかがでしたか。
アルバイトやパートは正社員ほど企業との結びつきが強くはないため、本記事で紹介したようなマイナス要素が職場にあれば、すぐに見切りをつけて離職してしまいます。
これからどんどん人手不足が加速していく中では、「辞めてもまた採用すればいい」という考え方は通用しません。そのため「今働いてくれている従業員にいかに長く働いてもらうか」も、企業にとって大きな課題となっています。
ぜひこの記事でご紹介したポイントを参考にしつつ、定着率の高い職場を目指してください。
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