アルバイトの業務パフォーマンスの改善や離職防止に向けて適切な教育を実施したい。
本記事は上記のような方に向けて、アルバイト教育における課題を踏まえつつ、教育に際して準備すべき事項や具体的なカリキュラムをご紹介します。
アルバイト教育・指導におけるコツまで解説しているため、ぜひ最後までご確認ください。
アルバイト教育における課題
まずはアルバイト教育においてどのような課題があるのかを確認しましょう。
課題①:教育時間の確保
アルバイト教育において大きな課題となるのは時間の確保です。
アルバイト教育を適切に行うには、教育時間をしっかりと確保する必要があるものの、多くの企業において現場従業員は目の前の業務に追われてしまいます。
まとまった時間を確保できずに片手間の教育になってしまうと、十分な育成効果は得られません。
課題②:教育内容の属人化の防止
教育内容の属人化を防止することも、アルバイト教育において重要な課題となります。
教育担当者によって教える内容にばらつきがあると、育成効果も安定せず、アルバイト間でパフォーマンスの差が現れるといった事態に陥ります。
こういった事態を防ぐには、体系的な教育カリキュラムを確立し、教育内容の標準化を図ることが欠かせません。
課題③:教育効果や進捗の適切な把握
教育効果や進捗を適切に把握することも課題として挙げられます。
「教育の効果がどこまで出ているのか」「必要なノウハウやスキルの内、どこまで習得できているか」といった進捗を正確に把握しなければ、適切な教育アプローチができません。
アルバイト教育を最適化させるには、効果や進捗を把握するための仕組みの確立にも取り組む必要があるでしょう。
アルバイト教育が重要である理由
続いてアルバイト教育が重要な理由をご紹介します。
理由①:定着率が向上する
アルバイト教育には定着率を向上させる働きがあります。
アルバイトに対して適切かつ効果的な教育を施すことで、業務遂行力を底上げでき、活躍してもらうことができます。
「活躍できている」という実感は、やがて満足度やモチベーション向上にも繋がり、「ここで長く働きたい」と感じてもらいやすくなるでしょう。
理由②:サービス品質が向上する
サービス品質が向上する点も、アルバイト教育の効果の一つです。
アルバイト教育に注力することで、アルバイトのスキルやノウハウが高まり、各サービス品質が向上します。
また教育を通じてエンゲージメント(企業に貢献したいという意欲)が高まった従業員は、業務についてアイデアを出してくれる可能性も高くなるため、サービス改善も効果的に取り組めるでしょう。
理由③:顧客満足度の向上も期待できる
適切なアルバイト教育は、顧客満足度の向上にも繋がります。
アルバイト教育を通じてサービス品質が向上すれば、顧客の体験価値も高まることが期待できます。
そのため顧客満足度が向上し、リピート顧客の獲得やLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化といった効果も得られるでしょう。
理由④:労災やトラブルのリスクを低減できる
労災やトラブルのリスクを低減できる点も、アルバイト教育に取り組むべき理由として挙げられます。
アルバイトに対して業務遂行に必要な知識や技術を正しく伝授することで、誤った業務遂行に起因した労災やトラブルを防止可能です。
実被害を防止できるだけでなく、対応工数や費用を削減できる点も見逃せません。
理由⑤:現場マネージャーの負担を軽減できる
アルバイト教育は、現場マネージャーの負担軽減にも繋がります。
アルバイト教育を通じてスキルやノウハウを高めることで、現場マネージャーが細かく指示やフォローをしなくても、クオリティの高いパフォーマンスを発揮するようになるでしょう。
そのため、現場マネージャーの工数や負担を軽減でき、マネジメントやその他の重要な業務へとリソースを配分してもらうことができます。
アルバイト教育前に準備すべき事項
次にアルバイト教育を実践する前に準備すべき事項をご紹介します。
事項①:アルバイト教育計画の策定
準備すべき事項としてまず挙げられるのは、アルバイト教育計画の策定です。
効果的なアルバイト教育を行うには、業務内容に応じた教育カリキュラムの策定やスケジュール、習得完了時期の目安策定など、アルバイト教育全体の計画を策定しておくことが重要になります。
またこの段階で教育担当者やフォロー担当者といった、教育体制についても明確にしておくことで、教育時間の確保に向けた業務調整なども事前に検討しやすくなるでしょう。
事項②:マニュアルやチェックリストの作成
次に挙げられるのは、マニュアルやチェックリストの作成です。
アルバイトが日々の業務遂行において、困ったり判断に迷ったりした際に参照できるマニュアルを準備しておきましょう。
加えて、必須カリキュラムや教育におけるポイント、注意点などを網羅した教育担当向けマニュアルを用意することもポイントになります。
また教育の進捗状況などを確認するチェックリストを作成しておくと、よりスムーズにアルバイト教育に取り組めるでしょう。
事項③:教育担当者に対して研修を実施する
準備事項の最後にご紹介するのは、教育担当者に対する研修の実施です。
教育担当者による教育内容のばらつきを防ぐために、あらかじめ教育マニュアルなどを活用しながら、教育担当者に対して研修を実施しましょう。
マネージャーや人事部門が講師として研修を実施しても問題ありませんが、従業員教育に関する専門知識を持った外部講師を招いたり、外部研修に参加させたりすることも有効です。
アルバイト教育における主なカリキュラム
ここからはアルバイト教育における主なカリキュラムについてご紹介します。
1.企業・店舗概要とMVVの説明
アルバイト教育において、企業や店舗に関する説明は必須のカリキュラムと言えます。
創業の経緯や現在の事業規模、主なサービス提供範囲は勿論、何のために事業を展開しているのか、どういった世界を目指しているのかといったMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)も理解してもらいましょう。
MVVへの理解や共感は従業員エンゲージメントの向上に欠かせないため、背景なども踏まえた説明が求められます。
2.担当業務のやり方や背景
アルバイトに担当してもらう業務のやり方や背景についても、しっかりと時間を割いて教育する必要があります。
一日の大まかな流れや業務の具体的な進め方、関連する部門とのやり取りなどについて、マニュアルを活用しながら説明しましょう。
また業務の成り立ち、その業務が企業にとってどのような意義があるのかなども踏まえて説明することで、やりがいや誇りなどを感じてもらいやすくなります。
3.職場の設備やツールの操作方法
職場の設備やツールの操作方法についても、業務の進め方と併せて教育する必要があります。
複雑な操作や理解が求められる専用設備やツールは、実際に操作しているところを見てもらいながら解説するなど、細かな教育が求められるでしょう。
特に操作を誤ると労災に繋がる可能性が高いものについては、必要に応じて繰り返し解説することがポイントになります。
4.事務作業や社内処理手続きなどのやり方
事務作業や社内処理手続きなどのやり方なども、教育カリキュラムとして挙げられます。
アルバイトは正社員ほど事務処理や社内手続きを行うシーンは多くありませんが、それでも勤怠入力や業務報告書の提出といった作業が含まれるケースがあります。
アルバイトも関連する事務作業や社内処理については、承認フローなどを踏まえながら詳細な手続き方法を教示しましょう。
5.職場ルールや制度
アルバイト教育といえば、どうしても業務のやり方などにフォーカスしがちですが、職場独自のルールや制度面についても紹介すべきと言えます。
職場規律や業務遂行をスムーズにするためのルールは勿論、アルバイトでも利用できる福利厚生や正社員登用の仕組みといった社内制度については説明しておきましょう。
6.過去のトラブルや労災などの事例
過去のトラブルや労災などに関する社内事例について、発生した背景や具体的な被害状況、講じた対策方法など、詳しく紹介しておくとよいでしょう。
これらの内容について事前に把握してもらうことで、業務に取り組む際に一層注意してもらえるようになり、労災やトラブルなどを防止できます。
アルバイト教育・指導における8つのコツ
最後にアルバイト教育・指導におけるコツを8つご紹介します。
コツ①:OJTを重視する
アルバイト教育ではOJT(On the Job Training)を重視すべきと言えるでしょう。
座学による教育では、具体的な業務をイメージしづらいため、どうしても効果が限定的になります。
その点OJTを軸とした教育を実施しながら、適宜OJTの内容を座学で振り返るような形を取ることで、教育効果を底上げできます。
コツ②:徐々に任せる範囲を広げていく
徐々に任せる範囲を広げていくという点もコツとして挙げられます。
いきなり業務全てを任せると、アルバイトの負荷が急激に高まり、スキルやノウハウの向上どころか離職などに繋がりかねません。
そのため教育課程においては、アルバイトの習得状況などに合わせて、徐々に任せる範囲を広げていくことが重要になります。
コツ③:放置せず適宜フォローする
放置せずに適宜フォローを実施する点も、教育におけるコツと言えるでしょう。
教育担当も自分の業務を抱えているため、業務のやり方などを一通り教えたあと、「わからないことがあれば聞いて」といったように放置しがちになります。
しかしアルバイトの中には「自分からはなかなか聞けない」といった人もいるため、こちらから適宜フォローを入れ、アルバイトの困りごとに適切に対処していくことが求められます。
コツ④:自発的に学習できる環境を整備する
次に挙げられるのは、自発的に学習できる環境を整備するという点です。
あらかじめ教育計画を立て、ある程度の教育時間を確保できても、業務の繁忙によっては想定していたように教育を進められない可能性があります。
そのためeラーニングや研修用動画などを準備するなど、自発的に学習しやすい環境を併せて整備しておくことで、教育担当の業務繁忙に左右されずに教育を進められるでしょう。
コツ⑤:頑張りに対してしっかりと褒める
続いてご紹介するのは、頑張りに対してしっかりと褒めるという点です。
アルバイト教育ではどうしても「できていないこと」にフォーカスしてしまい、注意や指摘などが多くなりがちです。
そうなるとアルバイトの自己肯定感やモチベーションは下がり、最悪離職などに繋がりかねません。
そのためミスなどにフォーカスし過ぎず、小さなことでもアルバイトが成果を上げたら、しっかりと褒め、適切に評価することが重要になります。
コツ⑥:アルバイトの意見もしっかりと取り入れる
アルバイトの意見をしっかりと取り入れる点も重要です。
教育カリキュラムは企業側の視点が多くなり、教育の受け手、つまりアルバイト側の視点が不足しがちとなり、思わぬ抜け漏れが生じる可能性があります。
そのため教育カリキュラムや実施方法などについて、アルバイトから積極的に意見を取り入れることで、教育実施における課題や改善点を把握できるでしょう。
コツ⑦:教育カリキュラムは定期的に見直す
次に挙げられるのは教育カリキュラムを定期的に見直すという点です。
事前に策定した教育カリキュラムはあくまで仮説ベースのものであり、想定していたような効果を発揮できない可能性もあるでしょう。
そのため一度設計した教育カリキュラムをそのまま活用し続けるのではなく、育成効果を踏まえつつ、定期的に見直すことも重要になります。
コツ⑧:各アルバイトに最適化された教育を行う
コツの最後に挙げられるのは、各アルバイトに最適化された教育を行うという点です。
アルバイトと一口に言っても多様な人材がおり、能力や価値観、スキル習得率などはそれぞれ大きく異なります。
そのため教育カリキュラムやマニュアルを軸としつつも、各アルバイトの適性や状況に応じて柔軟に教育内容を調整・変更することで、より効果的な教育を実現できるでしょう。
まとめ
アルバイトは正社員と比較し、数か月や数年などで退職することも多いため、教育を怠ってしまうケースも散見されます。
しかしアルバイト教育を適切に行わなければ、早期離職や現場マネージャーの負担増加、顧客体験価値の低下など、企業にとってマイナスな効果を引き起こしてしまうでしょう。
そのためアルバイトに対しても、体系的かつ精度の高い教育を実施する必要があります。
ぜひこの記事を参考に適切なアルバイト教育に取り組んでください。