台風や地震などの自然災害が多く発生する日本において、企業には特別警報発令時の安全配慮義務が求められます。

人材派遣会社の場合、派遣スタッフの安全を確保するためには派遣先企業との連携が欠かせません。また、安全配慮を怠った場合には、法的責任や企業イメージの失墜といったリスクを負う可能性もあるため注意が必要です。

本記事では、特別警報発令時の安全配慮義務や人材派遣会社が注意すべき法的リスクについて解説します。安否確認体制を構築するためのポイントやシステム導入のメリットもまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

特別警報時の安全配慮義務とは

企業は労働契約法や労働安全衛生法などの法令に基づき、安全配慮義務を負う立場にあります。安全配慮義務とは、従業員の生命や身体の安全を守るための情報提供や安全対策を講じるなどの法的責任のことです。

特別警報には以下のような種類があり、いずれも重大な災害発生の危険が高いときに発令されます。

  • 大雨特別警報
  • 暴風特別警報
  • 高潮特別警報
  • 波浪特別警報
  • 大雪特別警報
  • 暴風雪特別警報

こうした状況下で企業が適切な指示を怠ると、従業員が通勤中や勤務中に被害を受けるリスクが高まります。そのため、企業は交通機関の運行状況や気象庁の最新情報を確認し、従業員に出勤停止や自宅待機などの判断を促す必要があります。これにより、法令遵守と従業員の安全確保の両立が可能です。

参照:特別警報(全般)について | 気象庁

人材派遣会社|特別警報時の安全配慮義務違反リスク

人材派遣会社は、雇用主として派遣スタッフの安全配慮義務を負う立場にあります。そのため、派遣先企業に特別警報発令時の安否確認や緊急連絡を任せきりにしてしまうと、知らないうちに安全配慮義務違反とみなされるリスクがあるため注意が必要です。

法的責任を問われる可能性がある

特別警報発令時において、通勤中の事故や派遣先でのトラブルが発生した場合、人材派遣会社は安全配慮義務違反として法的責任を問われる可能性があります。

例えば、特別警報が発令されている状況下で通常出勤を指示し、派遣スタッフが通勤中に被害を受けた場合には、人材派遣会社の判断が事故の一因と認定される可能性が高いでしょう。その結果、人材派遣会社は安全配慮義務違反として損害賠償請求などの法的責任を負うリスクが生じます。

たとえ自然災害による被害であっても、雇用主としての安全配慮が不十分であれば法的責任は避けられません。リスクを避けるためにも、人材派遣会社は安否確認体制の構築や出勤ルールの明確化に努める必要があります。

企業のイメージダウンにつながる

特別警報発令時の安全配慮義務違反リスクの一つが、企業のイメージダウンです。

人材派遣会社の安全配慮義務違反が明らかになると、その事実が報道やSNSを通じて瞬時に広まり、社会的な批判を受ける恐れがあります。その結果、コンプライアンス体制が不十分な企業と見なされ、派遣先企業から契約を解除されたり派遣スタッフの募集が減少したりするなど、事業継続に直接影響するリスクも考えられます。

一度失った信頼を回復するには長い時間がかかるため、企業価値を守るためにも、人材派遣会社は平常時から特別警報発令時の安否確認体制を整備しておくことが重要です。

人材派遣会社|特別警報時の安否確認体制構築のポイント

特別警報発令時に迅速な対応を行うためには、安否確認体制の強化が欠かせません。ここでは、派遣スタッフの安否確認体制を構築するために人材派遣会社が押さえておくべきポイントを紹介するので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

特別警報発令時の出勤ルールを明確にする

派遣スタッフの安全を守るために、人材派遣会社は特別警報発令時の出勤ルールを明確にしておく必要があります。特別警報発令時の出勤ルールが曖昧だと、危険な状況下での出勤や災害発生時の対応遅れにつながりかねません。

例えば、特別警報発令時には、状況に応じて「出勤を控える」「自宅待機とする」など、災害の種類や地域の危険度に応じた行動基準を設定しておくことがポイントです。

派遣スタッフに対する安全配慮義務は、派遣元と派遣先の双方に存在すると考えられます。平常時から全スタッフに出勤ルールを周知しておくことで、特別警報発令時の混乱を防げます。

全スタッフの安否を即時に把握できる仕組みを整える

特別警報発令時に迅速な対応を行うためには、全スタッフの安否を即時に把握できる仕組みを整えることが大切です。

電話やメールでの個別連絡は時間がかかるため、緊急時において迅速かつ確実に安否確認することは難しいといえます。そのため、安否確認体制を強化するためにはシステムの導入がおすすめです。安否確認システムなら全スタッフに一斉連絡を配信し、回答を自動で集計できるため、安否状況の即時把握が可能です。これにより、災害発生時の連絡遅延を防ぎ、迅速な判断・対応ができるようになります。

なお、安否確認の必要性や具体的な確認事項については、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:企業の安否確認とは?必要性や確認事項、ポイントまでわかりやすく解説

派遣先との情報共有ルールを明文化する

特別警報発令時の混乱を防ぐためには、派遣先企業との情報共有ルールを明文化しておくことがポイントです。特別警報発令時に情報共有すべき内容や方法が曖昧だと、連絡が遅れたり重複したりして、適切な対応ができなくなります。

「誰が・いつ・どの情報を・どの手段で共有するか」を文書化し、双方が共通認識を持つことで、必要な情報のスムーズな伝達が可能です。また、派遣先企業と連携して対応フローを標準化しておけば、緊急時でも迅速な対応が可能になります。

特別警報発令時の対応マニュアルを作成する

特別警報発令時の混乱を防ぐためにも、担当者が迷わず行動できる対応マニュアルを事前に整備しておきましょう。マニュアルが整備されていないと、担当者ごとに判断や対応がバラつき、安否確認の遅れや連絡漏れなどにつながる恐れがあります。

安否確認の手順や派遣先企業への連絡方法、社内への報告フローをマニュアル化しておくことで、緊急時でも一貫した対応が可能になります。また、定期的に訓練を実施しておくと、マニュアルの実効性が高まり、担当者も安心して対応できるでしょう。

安全配慮義務を果たすためのシステム導入のメリット

安否確認システムを導入することで、人材派遣会社は特別警報発令時の対応力を高められます。ここでは、システム導入によって得られる主なメリットを解説します。

災害発生時でも通信手段を確保しやすくなる

安否確認システムを導入するメリットは、災害発生時でも通信手段を確保しやすく、全スタッフの安否を迅速に把握できる点です。

災害発生時には電話がつながりにくくなることも多く、従来の個別連絡では全スタッフの安否確認に時間がかかります。一方で、安否確認システムなら、メールやアプリ通知、SMSなど複数の通信経路で一斉配信できるため、通信障害の影響を最小限にして全スタッフの状況を把握できます。

このように、災害発生時でも連絡手段を確保しやすくなる点は、企業が安否確認体制を構築するうえで大きなメリットになるでしょう。

法的リスクを軽減できる

法的リスクを軽減できる点も、人材派遣会社が安否確認システムを導入するメリットの一つです。人材派遣会社は、雇用主として派遣スタッフの安全配慮義務を負う立場にあります。そのため、災害時の対応が不十分と判断されれば、法的責任を問われる可能性がある点に注意が必要です。

安否確認システムを利用すると、連絡の送信履歴やスタッフからの回答履歴などが自動で保存されます。これらは「迅速かつ適切に安否確認を行った」という証拠になるため、万が一の際にも安全配慮義務を果たしたことを証明できます。

安否確認システムの活用は、災害時の対応を効率化できるだけでなく、法的リスクの軽減にもつながるメリットがあります。

担当者の負担を減らして対応を標準化できる

特別警報発令時の対応を標準化できる点も、安否確認システムを導入するメリットの一つです。従来の手作業による連絡・集計・報告は時間と労力がかかるうえ、担当者ごとに対応にバラつきやすく、効率的な運用が難しいという課題があります。

安否確認システムを利用すれば、連絡の送信や回答の集計、結果の共有までを自動化できるため、担当者の作業負担を減らせます。さらに、誰が担当してもテンプレート化された手順に沿って同じ対応ができるため、派遣先企業や派遣スタッフの混乱も防げるでしょう。

安否確認システムを導入する流れ

安否確認システムを導入する際は、次のような流れで進めるとスムーズです。

  1. 導入目的を明確にする
  2. 必要な機能を決める
  3. 自社に合ったシステムを選ぶ
  4. 社内マニュアルを作成する
  5. システム運用を開始する

このようにステップを踏んで準備を進めることで、システムを無理なく導入し、特別警報発令時にしっかりと対応できる体制を整えられます。逆にポイントを押さえずに導入すると、機能不足や運用トラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。

安否確認システムはサービスごとに機能が異なるため、通知方法や自動集計機能の有無、コストなどを比較しながら、自社に最適なものを選びましょう。

安否確認システムの選び方

安否確認システムを選ぶ際の主なチェックポイントは以下の通りです。

確認項目チェックポイント
価格初期費用や月額費用が予算内に収まるか運用コストが想定以上に膨らまないか
機能一斉配信や自動集計などの機能があるか必要な分析機能が搭載されているか
対応できる災害の種類地震・大雨・大雪などの自動通知に対応しているか自社の地域特性に合った災害種別を網羅しているか
外国語対応多言語に対応しているかメッセージ翻訳が自動化されているか
連携性勤怠・人事システムとスムーズに連携できるかCSV出力などで簡単にデータ連携できるか
サポート体制操作説明や教育の機会が設けられているか導入後に十分なサポートを受けられるか

これらのポイントを押さえて比較・検討することで、自社に最適な安否確認システムを選びやすくなります。

安全配慮義務体制の構築には「apseedsポータル」がおすすめ

特別警報発令時の安全配慮義務を果たすためには、安否確認システム「apseedsポータル」の導入がおすすめです。

「apseedsポータル」なら、気象庁の防災情報(震度速報)と連動して全自動で安否確認を配信できるため、緊急時の初動対応を効率化できます。また、メール通知とアプリのプッシュ通知を併用することで、従業員への到達率や回答率の向上も期待できます。

さらに、中国語やベトナム語を含む多言語翻訳に対応しており、外国人スタッフを多く抱える人材派遣会社でもスムーズな運用が可能です。安全配慮義務体制を強化したいと考えている方は、ぜひ「apseedsポータル」の導入をご検討ください。

サービスページ:apseedsポータル付加サービス|apseeds(エーピーシーズ)

まとめ

特別警報発令時には、企業の対応次第で従業員の安全が大きく左右されます。人材派遣会社は派遣スタッフも含めて幅広い安全管理が求められるため、安否確認体制の構築が必須です。安否確認システムを導入すれば、緊急時の迅速な初動対応に加えて、法的リスクの軽減や担当者の業務負担の削減も実現できます。

本記事では、特別警報時の安全配慮義務や安否確認体制を構築するためのポイントを解説しました。人材派遣会社としての信頼を高めるためにも、日頃から派遣スタッフを含めた従業員の安全管理体制を整えておきましょう。

スタッフマイページアプリ

『安否確認機能

従業員の安否を素早く確認!
気象庁の震度速報/特別警報と連動した自動配信