派遣社員の早期離職やモチベーション低下は、多くの派遣会社が抱える共通の課題です。金銭的報酬のみで対処しようとしても、長期的な成果や信頼関係の維持には限界があります。

こうした課題の解決策として注目されているのが、非金銭的報酬の導入です。非金銭的報酬は、派遣社員の満足度を高め、企業価値の向上にもつながる取り組みとして期待されています。

本記事では、派遣会社が非金銭的報酬を導入するメリットを解説します。制度を効果的に運用するための5つのステップも紹介するので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

非金銭的報酬が派遣社員に必要な理由

派遣社員の定着率を高めるためには、給与や手当といった金銭的報酬だけでは限界があります。厚生労働省の調査でも、離職理由として多く挙がるのは「職場の人間関係」や「働きやすさ」などの金銭面以外の要因です。

ここでは、非金銭的報酬が派遣社員に必要な理由を3つ紹介します。

金銭的報酬では一時的な成果になりやすいため

派遣社員のモチベーションを持続させるうえで、給与や手当といった金銭的報酬だけに頼るのは効果が限定的です。金銭的報酬は短期的な成果を上げるには効果があるものの、報酬が目的化しやすく、長期的な成長や定着にはつながりにくい傾向があります。

成果に応じた報酬金を設けても、報酬がなくなれば離職に直結するリスクも考えられます。派遣社員の多くは「安定して長く働きたい」と考えており、その期待に応えるためには金銭面以外の満足度を高める仕組みが必要です。

給与以外の離職理由も多いため

派遣社員の離職を防ぐためには、給与面の改善だけでなく、働きやすさや人間関係といった非金銭的な要素への配慮が欠かせません。金銭的な待遇を整えても、派遣社員が職場環境や人間関係に不満を抱えていれば、長く働き続けるのは難しくなります。

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として給与以外の項目も多く挙げられています。

たとえば、「職場の人間関係(男性9.1%、女性13.0%)」や「労働時間・休日(男性8.1%、女性11.1%)」などが一例です。特に女性では、人間関係や労働時間に関する理由の割合が給与の不満(7.1%)よりも高い割合を占めています。

引用:令和5年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省

このように、派遣社員が安心して働ける環境を整える非金銭的報酬の導入は、定着率の向上に有効です。

派遣社員の満足度向上を期待できるため

非金銭的報酬を導入することで、派遣社員の満足度が高まると、結果的に定着率の向上にもつながります。

派遣社員は雇用形態の特性上、契約期間や就業環境に不安を感じやすい傾向があります。仕事内容や評価が不透明だと「自分は大切にされていない」と感じ、モチベーション低下や離職の原因になりがちです。そのため、非金銭的報酬のような感謝を伝える仕組みや努力を評価する制度を設けると、「ここで働いてよかった」といった心理的な安心感とやる気を高める効果が期待できます。

心理的な安心感とモチベーション向上が組み合わさることで、派遣社員の定着率を高められるでしょう。

非金銭的報酬の具体例

非金銭的報酬といっても、具体的な内容や目的はさまざまです。派遣社員のモチベーションや定着率を高めるためには、どのような仕組みが効果的なのかを知ることが大切です。

ここでは、派遣会社で導入しやすい主な非金銭的報酬の種類と、期待できる効果を下表にまとめました。

種類内容・取り組み例期待できる効果
承認・表彰制度成績優秀者や勤続年数の長い社員を表彰感謝メッセージの社内共有 などモチベーションを高めたり、「自分が認められている」と感じたりするきっかけになる
研修・スキルアップ制度資格取得支援キャリア研修ビジネスマナー講座 など自己成長を実感しやすくなり、仕事への満足度が上がる
福利厚生制度健康管理のサポート施設割引食事割引 休暇制度 など働きやすさが向上し、仕事を長く続けたいと思える
柔軟な働き方テレワークフレックスタイム制 など仕事と私生活を両立しやすく、安心して働ける
ポイント付与による
インセンティブ
勤務日数や友人紹介、資格取得などに応じたポイントの付与ポイントとギフトの交換ゲーム感覚で楽しく続けられ、仕事へのモチベーションが上がる

非金銭的報酬は、給与だけでなく派遣社員の内面的な満足度を高める取り組みとして効果的です。

非金銭的報酬を派遣会社に導入する3つのメリット

非金銭的報酬を派遣会社に導入すると、派遣社員のモチベーションを高められるほか、定着率の向上も期待できます。

ここでは、派遣会社が非金銭的報酬を導入する主なメリット3つを紹介するので、参考にしていただけますと幸いです。

1.派遣社員のモチベーションを高められる

非金銭的報酬は、派遣社員のモチベーションを高められる点がメリットです。給与だけでなく、努力や成果を認められる機会があると、派遣社員が「自分は評価されている」と感じやすくなります。

成果を上げた派遣社員を表彰する制度や感謝の気持ちを伝える仕組みを設けると、モチベーション向上につながるでしょう。また、研修制度やスキルアップ支援によって「成長できる環境がある」と感じやすくなると、会社への信頼も高まります。

このように、金銭以外のかたちで努力を評価すると、派遣社員の働く意欲を継続的に引き出せます。

2.派遣社員の定着率向上に期待できる

非金銭的報酬を導入すると、派遣社員の満足度が高まり、定着率向上に期待できる点もメリットです。給与面だけでなく、派遣社員が「会社に大切にされている」と感じられるようになると、職場への信頼が生まれて離職防止につながります。

また、福利厚生の充実やテレワークなどの柔軟な働き方を導入すれば、ライフスタイルに合わせて働ける安心感が得られ、長く働きたいと感じてもらいやすくなるでしょう。

なお、派遣社員の定着率が上がることで、派遣会社にとっても採用コスト削減や人材の安定供給などの効果が期待できます。

3.顧客企業への提案材料になる

非金銭的報酬を導入すると、派遣社員の定着率やモチベーション低下といった課題に対して、顧客企業に新しい解決策を提案できるようになります。企業のなかには、「給与を上げても離職が減らない」といった問題を抱えており、金銭的報酬だけに頼らないアプローチは有効です。

たとえば、派遣社員に対するポイント制度や表彰制度を設けている場合には、「定着率の高い人材を安定的に供給できる仕組みがあります」と具体的に提案できるでしょう。派遣会社として提案の幅が広がることで、顧客企業の信頼獲得や競合との差別化にもつながります。

非金銭的報酬を導入した派遣会社の事例

非金銭的報酬の効果をより具体的にイメージできるように、弊社のサービス「ポイントインセンティブ」を導入した「株式会社Smart-Job」様の導入事例を紹介します。

同社がポイントインセンティブを導入した理由は、ほかの派遣会社との差別化です。派遣社員が「ここで働く理由」を感じられるよう、長期勤務や友人紹介に応じてポイントを付与する仕組みを整えました。

導入前の課題ほかの派遣会社との差別化が難しかった「働いた分の時給を支払う」だけではSmart-Jobで働くメリットがないと感じていた長期勤務や友人紹介のお礼としてほかの派遣会社ではやっていないワクワクする福利厚生がほしかった
導入施策長期勤務や友人紹介に応じてポイントを付与ポイントは電子ギフト券や生活用品などに交換可能ポイント付与の項目や使い道を柔軟に設定できるように設計
導入後の効果友人紹介数が増加した短期で契約が終了するはずの派遣社員が長期的に勤務するケースが増えた退職後もポイント残高を通じて関係を維持し、再就業につながった

ポイント制度を通じて「働く楽しさ」や「続ける理由」を提供することで、派遣社員の定着率アップとSmart-Job様自身の企業価値の向上にもつながっています。

エーピーシーズでは、貴社に最適な非金銭的報酬の仕組みづくりをサポートしています。詳しくは、弊社サービス「ポイントインセンティブ」をご覧ください。

非金銭的報酬を派遣会社に導入する5つのステップ

非金銭的報酬を派遣会社に導入する際は、制度の目的を明確にして対象者や内容を決める必要があります。以下で、非金銭的報酬を導入する5つのステップを詳しく見ていきましょう。

1.現状の課題と目的を把握する

非金銭的報酬を効果的に導入するためには、まず現状の課題と目的を明確にすることが大切です。課題を整理せずに非金銭的報酬を導入しても、制度と派遣社員が求めていることの方向性がずれてしまい、十分な効果が期待できません。

たとえば、派遣社員の定着率が低いのであれば、「長く働きたくなる仕組み」を作ると効果的です。また、派遣社員のモチベーション低下が課題の場合は、「日々の頑張りを評価・承認する制度」を取り入れると意欲向上が期待できます。

目的と課題を明確にしておくと、導入すべき非金銭的報酬の方向性が見えてくるでしょう。

2.制度の対象者を決める

次に、どの範囲の派遣社員を制度の対象にするかを明確にしてください。対象者を明確にしないまま運用を始めると、不公平感が生まれたり制度の目的があやふやになったりする恐れがあります。

派遣社員のなかでも、勤続年数や勤務状況に応じて対象を限定する方法もあれば、全員を対象とする仕組みも可能です。対象者を広げればモチベーションの底上げが期待できる一方で、運用負担が増える場合もあります。

対象を絞るか、広く設けるかによって派遣社員のモチベーションへの影響や公平感が変わるため、自社の課題や目的に合わせて対象範囲を明確にすることが重要です。

3.付与条件を明確にする

どのような場合に非金銭的報酬が得られるのか、付与条件をあらかじめ設定しておいてください。基準があいまいだと派遣社員の納得感を得られず、制度が形骸化してしまう恐れがあります。

「個人ノルマを達成した」「友人を紹介した」「会社指定の資格を取得した」など、付与条件を具体的に定めておくとわかりやすいでしょう。また、ごく一部の人しか受け取れないような条件にせず、多くの派遣社員にチャンスがある仕組みにすると、不公平感や不満が生じにくくなります。

付与条件を明確にしておくことで、制度の透明性と信頼性が高まり、派遣社員のモチベーション維持にもつながります。

4.非金銭的報酬の内容を決める

制度を設計する際は、非金銭的報酬の内容を具体的に決めることも重要です。非金銭的報酬の内容が不明瞭なままだと、制度と派遣社員の期待にギャップが生じて十分な効果が得られません。

非金銭的報酬の内容として、表彰制度やポイント付与のほか、スキルアップ研修なども選択肢に挙げられます。派遣社員のニーズや就業環境に合わせた内容にすると、制度の浸透や満足度の向上が期待できるでしょう。

また、導入コストや運用の手間も考慮し、無理なく継続できる仕組みを選ぶことが大切です。

5.運用フローを定める

非金銭的報酬を制度として機能させるには、運用フローを明確にすることが欠かせません。運用方法があいまいなままだと、派遣社員の不信感や不公平感を招きやすくなります。

非金銭的報酬を付与するタイミングは、あらかじめ決めておきましょう。たとえば、月末やプロジェクト終了時に付与する、表彰式やアプリ通知で伝えるなど、運用のルールを具体的に決めておくとスムーズです。あわせて、誰が付与や表彰を行うのかも明確にしておいてください。

また、非金銭的報酬の付与履歴を記録・管理し、透明性を確保することも大切です。制度を知らない人がいると不公平感につながるため、ルールや基準を明文化して全員に共有できるような運用体制を整えましょう。

まとめ

非金銭的報酬を導入すると、派遣社員のモチベーションや定着率の向上に期待ができるうえに、競合他社との差別化にもつながります。非金銭的報酬を導入するためには、目的や対象者、内容を明確にしておくことが重要です。

本記事では、派遣会社が非金銭的報酬を導入するメリットと5つのステップを解説しました。派遣社員のニーズを把握し、安心して働ける環境につながる仕組みを整えることで、企業と社員の双方にとって良好な関係を築けるでしょう。

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