地域別最低賃金の引き上げがおこなわれ、全国加重平均は2021年は28円アップの930円、2022年は31円アップの961円となります。政府はこの全国加重平均について「1,000円を目指す」としているため、最低賃金の上昇はこれからも続いていくと思われます。

これに合わせて、中小企業や小規模事業者向けの支援制度として、生産性向上のための設備投資費を最大で600万円を助成する業務改善助成金が設けられています。今回は、この業務改善助成金について説明していきます。

業務改善助成金とは?

最低賃金引上げの影響を受ける中小企業の負担を軽減し、賃上げに向けた環境整備を図ることを目的として設けられた助成金です。中小企業・小規模事業者が事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げたうえで、生産性向上のための設備投資などを行うと、その費用の一部が助成されます。

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。

生産性向上のための設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します

引用元:厚生労働省ホームページ

例えば事業場内最低賃金を引き上げたうえで、従業員数を変えずに新たな機械設備を導入した場合、その導入費用が助成の対象となります。加えて、利益が増加するなど所定の方法で計算した「生産性」が向上している場合は、助成額がさらに割増となります。

誰がもらえるの?

全国のすべての中小企業・小規模事業者に適用されます。
対象となる事業場に対して、支給対象となる取組を実施していると助成金が申請できます。

対象となる事業場
  • 日本国内の事業場で所属する労働者が100人以下であること
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること
支給対象となる取組
  • 賃金引上計画を策定すること
    事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)
  • 引上げ後の賃金額を支払うこと
  • 生産性向上に資する機器・設備やコンサルティングの導入、人材育成・教育訓練を実施することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと※単なる経費削減のための経費、職場環境を改善するための経費、通常の事業活動に伴う経費などは除く
  • 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など

賃金の引き上げは助成の申請書提出後におこなうもの、導入する機器・設備などは交付決定後に納品がおこなわれるものが対象となります。交付決定前に納品されたものは助成対象外となってしまいますのでご注意ください。

助成額はいくら?

助成率は賃上げ前の事業場内最低賃金額と生産性要件※1によって最大9/10とかなり高い助成率が設定されており、助成上限額は事業場内最低賃金の引き上げ額とその人数によって決まります。
今年度(令和3年度)は特例として、「コロナ禍で特に影響を受けている事業主」と事業場内最低賃金900円未満の事業場に対して上限額が引き上げられているため、上限額は最大600万円です。

※1生産性要件:企業の決算書類から算出した労働者1人当たりの付加価値
<生産性要件に関して詳しくはこちら>https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html

(※1)10人以上の上限額区分は、以下のいずれかに該当する事業場が対象となります。
・賃金要件:事業場内最低賃金900円未満の事業場
・生産量要件:売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3ヶ月間の月平均値が前年または前々年の同じ月に比べて、30%以上減少している事業者

(※2)ここでいう「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値を指します。助成金の支給申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、伸び率が一定水準を超えている場合等に、加算して支給されます。

引用:[2]業務改善助成金:中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援

また通常は年度内に一度の受給しか認められていませんが、今年度(令和3年度)は特例的に複数回の申請・受給が認められています。今年度の早い時期にすでに助成を受けている企業でも、最低賃金の改定に伴う賃上げ等があればもう一度申請・受給ができますので、該当する場合は活用をおすすめします。

どのような費用が対象になる?

生産性向上のための設備投資費用が対象になります。

どういったものが認められてきたのでしょうか?
導入例をみていきましょう。

  • POSレジシステム導入(在庫管理の短縮) 
  • リフト付き特殊車両の導入(福祉車両、送迎時間の短縮) 
  • 顧客・在庫・帳票管理システムの導入(業務効率化) 
  • ホームページ見積もりシステムの導入(業務効率化)
  • 給与計算システムの導入(業務効率化)
  • 食品加工機械の導入(生産性の向上)
  • 専門家のコンサルティングによる業務フローの見直し(顧客回転率の向上)
  • 外部講師や外部団体等が行うセミナー・研修の実施(人材教育)

機械や設備といった「モノ」だけでなく、コンサルティングや教育訓練等の費用についても対象となることがわかります。

コロナ禍においてニーズの高い設備(宅配用バイク・自転車、自動検温器、Web会議システム)も助成対象となるため、積極的に活用するよう周知がおこなわれています。

また、今年度は新型コロナの影響を考慮した特例として、生産量要件※2に該当し、30円以上のコースを利用する場合はパソコン、タブレット、スマートフォン等の端末および周辺機器(新規購入に限る)も対象となります。
※2生産量要件:売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3ヶ月間の月平均値が前年または前々年の同じ月に比べて、30%以上減少している事業者

詳しい活用事例は厚生労働省のホームページでも紹介されていますので、ぜひ確認してみてください。
<活用事例集はこちら>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html#001

2021年10月からの要件緩和・運用変更について

コロナ禍においても賃上げや人材育成に取り組む事業者を支援するために、使い勝手向上の観点から一部要件の緩和や運用改善がおこなわれています。

助成対象となる「人材育成・教育訓練」費用の要件緩和

見直し前・研修の外部講師の謝金について、1時間当たり10万円まで(3時間まで)
 回数は1回までを上限。
・外部団体が行う研修等の受講費について、上限30万円。
見直し後・研修の外部講師の謝金について、1回当たり10万円まで
 回数は5回までを上限。
・外部団体が行う研修等の受講費について、上限50万円

手続きの簡素化 

賃金引上げの6ヶ月後に提出する賃金台帳の対象者が変更されました。

見直し前全労働者分
見直し後賃上げ対象者のみでOK

活用支援

  • コールセンターの設置

申請の期限は?

今年度の申請締切は2022年11月30日です。
※予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集が終了となる場合があります。

申請方法は?

交付申請書事業実施計画書に、賃金台帳の写しや助成対象経費の見積書を添付し、割増を受ける場合は生産性要件算定シート等もあわせて各都道府県労働局へ提出しましょう

現在は混雑を避けるため、郵送や電子申請の活用が呼びかけられています。不備や記入漏れを防ぐためにも、詳しくは厚生労働省ホームページの交付要領・申請マニュアルを必ずご確認ください。

<交付要領・申請マニュアルはこちら>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html#001

<電子申請はこちら>
デジタル庁補助金電子申請システムjGrants
※ログイン・申請にはGBizIDプライムアカウントが必要です

まとめ

今回は要件も緩和されて使いやすくなった業務改善助成金について紹介しました。
新型コロナウイルス感染症対策や最低賃金の引き上げなど大変なことも多いですが、こういった助成金をうまく活用していきたいですね。

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