採用施策の一環として就職お祝い金の導入を検討しているものの、「具体的な導入方法や注意点までは理解できていない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では就職お祝い金の概要や相場感などを踏まえ、支給するメリットやデメリット、導入方法をわかりやすく解説します。

最後に導入における注意点までご紹介しているため、最後までご確認ください。

就職お祝い金(入社祝い金)とは

まずは就職お祝い金の概要や仕組み、相場などの基本情報について確認しましょう。

就職お祝い金の概要と仕組み

就職お祝い金とは、新たに入社した従業員に対して、一定要件を満たした場合に企業から支給されるお金です。

入社を迷っている求職者の後押しをするとともに、入社後のモチベーション形成を図るために活用されることが多いと言えるでしょう。

就職お祝い金は正社員だけでなく、金額こそ少し低めになりますが、アルバイトやパートに対して設けているケースもあります。

【補足】職業紹介事業者による就職祝い金は禁止されている

かつて就職お祝い金は、転職時に利用した職業紹介事業者(人材サービス会社)から支払われるケースもありました。

しかし2021年4月以降は、職業紹介事業者が就職お祝い金を支給することが禁止されています。

禁止された理由としては、金銭的なインセンティブによって求職者を惹きつけるのではなく、紹介サービスとしての質を向上させることを重要視した点が挙げられます。

また職業紹介事業者と求職者が結託し、繰り返し手数料収入を得ようとする事態を防ぐことも目的の一つです。

就職お祝い金の相場

就職お祝い金の相場としては、数万円〜50万円程度が相場です。ただし数万〜10万円程度がボリュームゾーンとなっています。

実際に本記事の作成時点(2024年10月12日)では、求人検索サービスで以下のような求人が見られました。

  • 交通警備スタッフ:就職お祝い金5万円
  • 看護師:就職お祝い金10万円
  • 半導体製造装置メンテナンス:就職お祝い金30万円
  • うどん屋の店長候補:就職お祝い金50万円

また期間工などの職種は就職お祝い金の金額も高い傾向にあり、60〜70万円と記載のある求人もありました。

このように相場については職種によってある程度変動すると言えるでしょう。

就職お祝い金(入社祝い金)を支給するメリット

次に就職お祝い金を支給するメリットについてご紹介します。

メリット①:募集力の向上

就職お祝い金を設けることで、求人の募集力向上が期待できます。

求職者が仕事を選ぶ上で重視する要素の一つが、給与をはじめとする金銭的な要素です。

給与や賞与といった通常の待遇に加え、就職お祝い金というプラス要素があることで、求職者の目を引きやすくなり、応募数の増加が見込まれるでしょう。

メリット②:新入社員のモチベーション向上

就職お祝い金は新入社員のモチベーション向上にも繋がります。

給与や賞与といった金銭的な報酬は、従業員のモチベーションに対して大きな影響を与えます。

就職お祝い金を設けることによって、基本給与にプラスαで報酬を支給できるため、新入社員の仕事に対するモチベーションが高まり、立ち上がりもスムーズになることが期待できるでしょう。

メリット③:早期離職の防止

就職お祝い金を設けることで、早期離職の防止効果も得られます。

例えば「初月に5万円・翌月に5万円・半年後に10万円」といったように、段階的に就職お祝い金を支給する方式を取ることで、従業員のモチベーションを維持しやすくなります。

そのため入社して数日で退職してしまうといった事態も避けやすいでしょう。

就職お祝い金(入社祝い金)を支給するデメリット

メリットと併せてデメリットについても押さえましょう。

デメリット①:ミスマッチの可能性がある

就職お祝い金を前面に出し過ぎると、業務内容や風土などではなく、就職お祝い金につられて入社を希望する人材も集まりやすくなります。

その結果ミスマッチの可能性が高まり、従業員同士でのトラブル発生や離職といった事態に繋がりかねません。

デメリット②:中長期的な定着にはあまり効果がない

就職お祝い金は、中長期的な定着にはあまり効果がありません。

先述のとおり数日から数か月レベルでの退職は防ぎやすいといえますが、支給を終えた後に従業員のモチベーションが低下し、離職してしまうケースはあります。

そのため段階的に支給するなどの工夫を取りながら、その期間中に良好な関係性を構築し、定着を図る必要があるでしょう。

デメリット③:ネガティブなイメージを持たれる可能性がある

ネガティブなイメージを持たれる可能性がある点も留意しましょう。

就職お祝い金を設けた場合、「お祝い金を支給しなければ人が集まらない理由があるのでは?」と勘ぐる求職者も一定数出てくることが予想されます。

このように一部の求職者からはネガティブな印象を抱かれ、逆に敬遠される可能性があるでしょう。

就職お祝い金(入社祝い金)制度の導入方法

ここからは就職お祝い金制度を導入する際の流れについて、4ステップに分けてご紹介します。

ステップ①:就職お祝い金の金額を規定する

就職お祝い金の具体的な金額について、他社の事例や自社の予算などを考慮しつつ、業務内容や職種ごとに規定しましょう。

詳しくは後述しますが、金額次第では課税所得として扱われるため、その点も考慮しながら決めることになります。

ステップ②:支給要件を決める

就職お祝い金の金額が決まった後は、支給要件を定めます。

就職お祝い金は入社した従業員に対して即日で払ってしまうと、入社お祝い金だけが目当ての求職者が集まる可能性があります。

そのため一定の要件を定め、その要件をクリアした場合に支給する方式にした方が安心でしょう。

要件の規定例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 入社から一定期間経過後に支給
  • 入社から一定期間経過につき段階的に支給
  • 対象期間の○○割出勤した際に支給
  • 試用期間から本採用に切り替えた際に支給

ステップ③:申請方法を決める

続いて就職お祝い金の申請方法を決めます。

従業員側の手続きなしで支給するケースもありますが、従業員から申請してもらう方式にすることで、お祝い金だけが目当ての求職者をある程度遠ざけることが可能です。

具体的な申請方法やフローを規定するとともに、申請書類などのフォーマットを用意しましょう。

ステップ④:求人情報に反映する

求人情報や自社採用ページなどに就職お祝い金について記載し、訴求ポイントとして活用しましょう。

具体的な金額は勿論、支給要件や申請方法がある旨なども併せて記載しておくことで、就職お祝い金だけを目当てにした求職者を減らすことができます。

就職お祝い金(入社祝い金)を導入する際の注意点

最後に就職お祝い金を導入する際の注意点をご紹介します。

注意点①:課税対象になるケースがある

就職お祝い金は、扱いによって課税対象になるケースがあります。

契約金のように、入社後の労働の対価として支給する場合は課税対象になる上、賃金扱いとなるため、就業規則に記載しなければなりません。

その一方で、一時所得として扱う場合は50万円以下なら非課税となります。

ただしこの辺りの見極めは難しいため、弁護士などの専門家にあらかじめ相談することをおすすめします。

就職お祝い金は社会保険料の対象となる?

社会保険料についても、就職お祝い金が賃金(賞与扱い)となれば対象となりますが、こちらもケースバイケースで見解が分かれます。

課税・非課税同様に判断が難しいため、弁護士や年金事務所などに課税の件も含めて相談すると良いでしょう。

注意点②:公平な制度として確立する

就職お祝い金の支給要件が曖昧であるなど、制度上の公平性が担保できなければ、従業員からネガティブな反応が出る可能性があります。

そのためあらかじめ支給要件や金額を明確にした上で全従業員に周知し、公平性を従業員が把握できる状態にしておくことが重要です。

注意点③:既存従業員に対して導入理由を説明する

新たに就職お祝い金を設ける場合、お祝い金を支給されなかった直近入社の従業員からネガティブな意見が出ることがあります。

そのため、なぜ今就職お祝い金を設ける必要があるのか、理由や背景などを丁寧に説明し、納得してもらう必要があります。

注意点④:労働環境や基本待遇の改善にも取り組む

就職お祝い金はあくまで入社時の一時的な報酬であるため、中長期的な定着には効果がありません。

そのため就職お祝い金だけに頼るのではなく、労働環境や基本待遇の改善にも併せて取り組み、従業員が「ここでずっと働きたい」と思える環境を整えることも重要になるでしょう。

まとめ

就職お祝い金を設け、求人サイトなどで上手くアピールすれば、募集力を高めることが可能です。

ただし支給要件や申請方法などを適切に定めておかなければ、就職お祝い金だけを目当てにした求職者が集まったり、従業員のモチベーションが下がったりする恐れがあります。

ぜひこの記事を参考に、適切な就職お祝い金制度を設計し、採用活動に役立ててください。

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