アルバイトのやる気や定着率を高めるため、インセンティブ制度の導入を検討している方もいるでしょう。インセンティブ制度をうまく活用すると、モチベーションの向上や業務の生産性アップにつながります。
本記事では、アルバイトにインセンティブを支給する際の注意点を解説します。導入のメリットや、支給基準の決め方も紹介しているので、制度の導入を検討している方は、参考にしていただければ幸いです。
インセンティブとは?アルバイトのやる気を引き出す制度

インセンティブとは、行動を促すために、給与に加えて金銭や物品などを支給する仕組みです。一般的な賞与や昇給とは異なり、インセンティブは目標達成などの成果に応じて支給される特徴があります。
インセンティブには「現金や物品支給(物質的インセンティブ)」「表彰・賞賛(評価的インセンティブ)」「チーム内の承認(人的インセンティブ)」などの種類があります。また、企業によってインセンティブを支給する条件はさまざまです。
アルバイトにインセンティブを支給することで、やる気の向上やモチベーション維持につながるでしょう。また、アルバイトにインセンティブを支給することは法律上の問題はありませんが、雇用契約書や就業規則などに明確に記載しておくことが重要です。雇用契約書に支給基準や内容を明示すると、トラブル防止に役立ちます。
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アルバイトへインセンティブを支給する際の注意点

アルバイトへのインセンティブ制度を導入する際の注意点として、雇用契約書への明記や評価基準の設定などがあります。
以下で詳しく解説するので、見ていきましょう。
雇用契約書に明示する
賃金としてインセンティブを支給する場合は、労働基準法により、支給内容を雇用契約書に明示する必要があります。
具体的には、以下のような内容を明記しておきましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
支給条件 | 売上達成率、出勤率、チームでの成果 など |
算出方法 | 達成率×単価 など |
支給方法 | 給与に上乗せする、別途支給する など |
支給時期 | 達成月の翌月支給、締日から〇日後 など |
また、業績悪化で支払いが困難になった場合に備え、支給停止条件も明記しておくとトラブル防止につながります。
インセンティブが賃金として支払われる場合は、支給条件や計算方法などを就業規則や賃金規定に明記することが求められます。具体的なインセンティブ制度の導入や運用については、社会保険労務士などの専門家に確認しながら進めると安心です。
アルバイト全員に制度と評価方法を説明する
アルバイト含む全従業員に、インセンティブ制度の導入目的や内容を説明しましょう。入社時期にかかわらず、インセンティブ制度の存在と内容を周知し、不満や不公平感が出ないよう配慮することが大切です。
また、評価方法や支給条件もあわせて明示し、全員が納得できる具体的な基準を設けます。たとえば、「売上達成率〇〇%を超えた場合」「1日〇個以上販売した場合」など、わかりやすい目標を設定すると効果的です。
アルバイト全員が制度の内容や評価基準を理解したうえで業務に取り組めるよう、丁寧な説明と情報共有を心がけましょう。
インセンティブ支給後のフォローをする
インセンティブは成果をもとに公平な基準で評価できる一方で、もらえなかったアルバイトにも声掛けやフォローが欠かせません。毎回同じアルバイトだけが受け取っていると、不満やモチベーションの低下につながる可能性があります。
また、インセンティブを支給されたアルバイトに対しても努力を認め、次回も意欲的に取り組んでもらえるよう声掛けしましょう。
インセンティブの有無にかかわらず、日常業務や朝礼、顔を合わせるタイミングでアルバイトたちの努力を適切に評価することが大切です。
インセンティブの課税処理にも注意する
アルバイトに支給するインセンティブは、原則として給与所得として扱われるため、課税対象になります。
現金以外にも、商品券やクオカードなど、労働の成果に対して支払われる換金性の高いものは、所得税や社会保険料の課税処理の対象となるので注意が必要です。
処理を誤ると税務トラブルにつながるリスクがあるため、必要に応じて税理士や社労士への相談も検討すると安心です。
アルバイトへインセンティブを支給するメリット

アルバイトへインセンティブを支給するメリットとして、モチベーションや生産性の向上が挙げられます。
以下で、それぞれメリットを解説するので参考になさってください。
モチベーションの向上や定着率アップにつながる
アルバイトにインセンティブを支給することは、やる気や定着率の向上につながる有効な手段の一つです。頑張った分の成果が給与や評価に反映されるため、アルバイトの意欲につながります。特に、金銭的なインセンティブは明確な目標となるため効果的です。
たとえば、「あと〇件達成すればインセンティブがもらえる」といった明確な目標があることで、日々の業務を前向きに取り組めるようになります。
インセンティブ制度により平等な評価がなされ、給与アップのチャンスがあることで、アルバイトの定着率の向上が期待できるでしょう。
生産性の向上が期待できる
アルバイトへインセンティブを支給するメリットには、生産性の向上が期待できる点も挙げられます。アルバイトが、インセンティブを得るために意欲的に業務に取り組むようになると、売上やパフォーマンスが向上し、組織全体の生産性アップにつながります。
業務スピードの向上や作業ミスの減少、接客態度の改善などにつながるケースも少なくありません。また、アルバイトが積極的に仕事に取り組むことで、店舗運営やプロジェクト進行が円滑になり、リーダーや正社員の負担軽減にも寄与するでしょう。
アルバイトの意欲を引き出し、生産性を高めたい企業にとって、インセンティブ制度は有効だといえます。
アルバイトの成果を正当に評価できる
アルバイトの成果を正当に評価するためには、客観的な基準が欠かせません。基準を定めることで、評価する側の主観が入りにくくなり、成果や数字だけで公平に判断できるためです。
たとえば、売上金額や販売個数などの、数値に基づいた基準を設けることで、アルバイトの成果を客観的かつ公平に評価しやすくなります。
また、評価基準が明確になると、本人も意識すべきポイントが理解できて、努力の方向性が定まり改善点も見つかりやすくなるでしょう。貢献度が可視化されるため、評価への納得感が高まり、モチベーションの維持にもつながります。
アルバイトへインセンティブを支給するデメリット

インセンティブ制度には、多くのメリットがある一方で、配慮すべき点も少なくありません。
ここでは、アルバイトにインセンティブを支給する際に起こり得るデメリットを3つ紹介します。
アルバイト間で不平・不満が出る可能性がある
成果を評価しにくいサポート業務に従事するアルバイトから、不平や不満が出てモチベーションが下がるケースには注意が必要です。平等な評価基準を設定していても、業務内容によって数字での成果が見えにくく、評価に偏りが生じる可能性があります。
たとえば、「売上達成率が〇〇%」「〇〇個販売」など、接客や販売に直接関わる業務を評価基準に設定するケースも少なくありません。このような基準の場合、バックオフィス業務のアルバイトは達成が困難です。
また、同じ業務をしていても評価される人とされない人がいると、「自分だけが正当に評価されていない」と感じるアルバイトが出る可能性もあります。
誰もが参加できるチーム達成型の基準や、業務改善の提案などを評価基準に取り入れることも検討するとよいでしょう。
チームワークが低下する可能性がある
チームワークの低下も、インセンティブ制度の導入によって起こり得るデメリットの一つです。評価基準を売上や達成率のみに設定すると、結果ばかりを重視して、個人プレーに走るアルバイトが出てくる可能性があります。
全員が販売にまわり、サポート業務を担う人がいなくなると現場のバランスが崩れ、チーム内の連携が取りづらくなることも考えられます。また、成果を競い合う雰囲気になると、情報共有や助け合う意識が薄れるケースも少なくありません。
職場の人間関係が悪化しないよう、個人の成果だけではなく、チームへの貢献も評価基準に含めるといった工夫が求められます。
コストがかかる
インセンティブ制度を導入すると、企業側にとってコスト面の負担が発生する点にも注意が必要です。特に、現金や物品支給などの物質的インセンティブは、一度限りではなく継続的に支給する必要があります。想定以上に基準値に達成するアルバイトが増えるとコストが膨らむリスクがあります。
そのため、金銭的な報酬のみならず、表彰や感謝の言葉など評価的・人的インセンティブも組み合わせると効果的です。
アルバイトのインセンティブ支給基準の決め方

アルバイトへのインセンティブ支給を決めたら、明確な基準を設定しましょう。特に、次の4点は決めておく必要があります。
- 支給対象者
- 支給条件
- 支給内容
- 支給のタイミングと方法
以下でそれぞれ解説します。
支給対象者
まずは、インセンティブ支給の対象者が全アルバイトなのか、一部のアルバイトなのか決めましょう。支給対象者があいまいだと不平・不満が生まれ、運用時にトラブルになる可能性があります。
また、成果が目に見えにくいサポート業務の職種のアルバイトについても支給対象に含めるのか検討が必要です。全従業員に不公平感を与えないよう、配慮が求められます。
支給対象者を明確にし、制度運用時のトラブルや不公平感を防ぐことが重要です。
支給条件
アルバイトに対してインセンティブを支給するために、必要な条件を明確に決める必要があります。条件があいまいだと、支給の判断ができずトラブルにつながるケースも少なくありません。
売上額や達成率、チーム全体での成果など、何を対象に評価するのか具体的に決めることが重要です。
また、試用期間中や出勤率が低い場合など、支給対象から除外するケースもあわせてルール化しておくと安心です。
支給内容
インセンティブの支給内容は、あらかじめ決めておく必要があります。支給内容によって、アルバイトのモチベーションが変わるためです。
金銭にするのか、旅行券やギフト券などの物品にするのか、あるいは表彰にするのかなど、インセンティブの目的や条件に見合った内容を選びましょう。
また、一度設定した支給内容を変更したり取り下げたりすると、アルバイトの不信感やモチベーション低下につながるため慎重な検討が求められます。
支給のタイミングと方法
インセンティブ支給のタイミングや支払い方法を決めることも重要です。支給時期と支払い方法があいまいだと、アルバイトに不信感を与える恐れがあります。
たとえば、目標達成した月の翌月に支給する、給与に上乗せするといった具体例を挙げ、わかりやすく提示するようにしましょう。
支給時期を短く設定してしまうと、人事・総務担当者への事務負担がかかるため、無理のない運用スケジュールを決めることが大切です。
まとめ
インセンティブとは、条件を達成したら、給与に加えて金銭や物品などを支給する制度です。アルバイトにインセンティブを支給することで、モチベーションや生産性の向上につながります。また、制度を導入する際には、雇用契約書への記載や評価基準の設定、支給内容の決定などといった事前準備が必要です。
本記事では、アルバイトへのインセンティブ支給における注意点や運用のポイントを解説しました。インセンティブ制度を効果的に活用し、アルバイトの人手不足の解消や定着率アップにつなげましょう。

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