人材派遣会社のなかには、優良派遣事業者認定を受けたいと考えている企業もいるでしょう。優良派遣事業者認定の取得・更新のためには、安否確認体制を含めた一定の基準を満たす必要があります。

企業活動において、安全管理は社員が安心して働くために欠かせない要素です。人材派遣会社であれば、内勤社員に限らず、派遣社員を含めた安全管理が求められます。

本記事では、優良派遣事業者認定に必要な安否確認体制について解説します。優良派遣事業者認定制度の概要や安否確認の方法などを事例付きで解説するので、実用的な安否確認体制を整えたい方は、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

優良派遣事業者認定に欠かせない安否確認体制

優良派遣事業者認定制度とは、厚生労働省からの委託により、審査認定機関が一定の基準を満たす人材派遣会社を優良事業者として認定する制度のことです。優良派遣事業者認定制度は、2014年に派遣社員と派遣先企業の双方が安心して利用できるよう、人材派遣業界全体の質の向上を目的に生まれました。

優良派遣事業者の認定基準は多岐にわたり、安否確認体制も項目の一つです。認定にあたっては、災害発生時における内勤社員・派遣社員の安否確認体制を有しているかどうかが評価されます。安否確認に法的な義務はないものの、労働契約法第5条に規定される安全配慮義務の一環として位置付けられています。

参照:制度概要|一般社団法人日本人材派遣協会

優良派遣事業者認定とは

優良派遣事業者認定とは、いくつかの申請要件と細かな基準をクリアした企業のみが認定を受けられる制度です。人材派遣会社は、優良派遣事業者の認定を受けることで、社会的信頼の獲得や、派遣先企業との取引機会の拡大といったメリットがあります。

参照:優良派遣事業者認定制度申請マニュアルブック|一般社団法人日本人材派遣協会

優良派遣事業者認定制度の申請要件

優良派遣事業者の認定を受けるためには、労働者派遣法などの関係法令を遵守するだけでなく、法令以上の取り組みが求められます。優良派遣事業者認定制度で定められている申請要件は、以下の9つです。

  • 労働者派遣事業の許可を受けていること
  • 直近5年間、労働関係法令について重大な違反をしていないこと
  • 労働者派遣事業の許可・届出後、3年以上の事業実績があること
  • 直近過去3年間、税金を滞納していないこと
  • 直近過去3年間、派遣労働者への給与の遅配がされていないこと
  • 直近過去3年間、社会保険料及び労働保険料を滞納していないこと
  • 直近過去3年間において、厚生労働省から以下の命令を受けておらず、かつ3年より以前に以下の命令を受けた場合でも申請時にはすでに命令を解除されていること
    • 労働者派遣事業改善命令
    • 労働者派遣事業停止命令
  • 認定日の属する月の前月から遡る12ヶ月間において、違法な法定時間外労働および休日労働がないこと
  • そのほか、本制度の趣旨に照らして問題となる事実が認められないこと

優良派遣事業者の認定を受けるには、まず申請要件をクリアできているか確認する必要があります。

優良派遣事業者の認定基準

優良派遣事業者の認定基準として、安否確認を含めた81項目が定められています。81項目の認定基準の大まかな分類は、以下の通りです。

  • 事業体に関する基準(20項目)
    • 事業健全性
    • 社内監査体制
    • 情報管理・保護
  • 派遣社員の適正就労とフォローアップに関する基準(26項目)
    • 派遣社員の募集・採用
    • 派遣社員の安定就労とフォローアップ
    • 派遣社員の雇用管理
  • 派遣社員のキャリア形成と処遇向上の取り組みに関する基準(20項目)
    • 派遣労働者のキャリア形成
    • 派遣社員の処遇向上
  • 派遣先へのサービス提供に関する基準(15項目)
    • 派遣先ニーズへの対応
    • 派遣先の就業環境の整備
    • 派遣先でのトラブル予防・是正措置

安否確認は、事業体に関する基準の一つとして設けられています。認定にあたっては、現場確認や関係者へのヒアリングを通じて、認定基準として定められている各チェック項目の内容が実施されているかどうかが判断されます。

優良派遣事業者になるメリット

社内体制の整備や新規取引の開拓など、優良派遣事業者になるメリットはさまざまです。一般社団法人日本人材派遣協会の調査によると、優良派遣事業者認定を取得した事業者のうち、63.4%の事業者が「メリットがあった」と回答しています。

優良派遣事業者になる主なメリットは、以下の通りです。

社内体制におけるメリット社内教育につながる社内体制の整備・運用を実現できる社内の意識改革を図れる
人材採用・派遣登録における
メリット
認定マークにより、派遣社員に安心感を与えられる派遣社員の満足度向上につながる適切な処遇を確保できる
取引におけるメリット派遣先や親会社からの評価が高まる社会的信用が高まる認定がアピール材料となり、競争力が高まる

なお、認定の有効期限は3年です。そのため、優良派遣事業者であり続けるためには、社内改革や環境改善の取り組みを継続させる必要があります。

参照:認定のメリット|一般社団法人日本人材派遣協会

関連記事:【優良派遣事業者とは】申請条件や認定メリットまで詳しく解説

安否確認体制を有していることを示す方法

安否確認体制の整備は、災害発生時に内勤社員や派遣社員の安全を確保するために欠かせない要素です。優良派遣事業者の認定を受けるには、安否確認体制が整っていることを示す必要があります。

ここでは、安否確認体制を有していることを示す具体的な方法を解説します。

参照:認定基準チェックリスト|一般社団法人日本人材派遣協会

安否確認方法に関する説明

優良派遣事業者の認定を受けるためには、非常時における安否確認方法について説明が必要です。具体的な説明内容として、以下の2つが定められています。

  • 安否確認のタイミングや実施体制、情報の集約・管理方法
  • 定期的な訓練やテスト

たとえば、内勤社員と派遣社員の安否確認方法として連絡網を使用している場合は、内容を更新するタイミングや管理方法などを説明します。また、安否確認システムを利用している場合は、システムの概要がわかる資料や実際の操作フローなどの説明が必要です。

なお、災害発生時の対応方針としてBCP(事業継続計画)を策定している場合は、該当箇所を提示します。

派遣先への書面提示

優良派遣事業者として認定を受けるためには、人材派遣会社の立場から派遣先企業に対し、非常時に派遣社員の安全を確保してもらうよう依頼していることを示さなければなりません。具体的には、災害発生時には派遣先企業が安否確認を実施し、必要な対応を講じるよう求める内容の書面を提示します。

また、派遣先による安否確認にあたって個人情報の開示が必要な場合は、派遣社員から同意を得る必要があります。

関連記事:企業の安否確認とは?必要性や確認事項、ポイントまでわかりやすく解説

安否確認の手段

安否確認の代表的な手段は、以下の3つです。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自社のニーズに合った手段を選びましょう。

手段電話やメールビジネスチャットツール安否確認システム
メリット多くの人が利用しているツールやシステムに慣れていない人でも使いやすい普段の業務で利用しているツールなら連絡が取りやすい回答の記録を残せる災害発生時に自動でメールやアプリを使って安否確認できる回答をリアルタイムで集計できる災害時でもつながりやすい
デメリット災害時に回線混雑や通信規制の影響を受けやすいプライベートの電話番号やメールアドレスを知らせることに抵抗がある人もいる安否確認以外のやり取りが混在してしまう可能性がある回答が流れてしまうと安否確認や集計に時間がかかる利用頻度が低いため、使い慣れるのに時間がかかる定期的にシステムログインの訓練を実施する必要がある導入コストがかかる

安否確認のための手段を決めたら、実施体制や情報の管理体制を整え、社内に周知します。災害時に混乱が生じないよう、定期的に安否確認訓練を実施しましょう。

優良派遣事業者における安否確認の取り組み事例

ここでは、人材派遣会社における安否確認の取り組み事例を紹介します。

A社B社C社
安否確認の手段メールチャットツール安否確認システム
具体的な取り組みすべての事業所で安否確認訓練を実施毎年訓練を実施し、安否確認メールの回答率の目標値を達成アンケート機能を活用して災害時の安否確認体制を確立有料プランに切り替えて連絡体制を強化就業時間外でも派遣社員の安否確認ができる体制づくり毎月入退社が発生する派遣社員の管理体制を強化
成果能登半島地震の発生時には、当日中に安否確認の発信を行い、早々に全員の回答を集計できた大阪北部地震の発生時には、電話やメールで連絡が取れなかった社員とも、チャットツールを使って安否確認できた地方での災害にも素早く対応でき、安否確認にかかる工数も削減できた

電話やメールなどは手軽に使いやすい一方で、一人ひとりに連絡する時間がかかります。社員数が多く、情報の集約に手間がかかる場合は、安否確認システムをはじめとするツールの導入を検討してみてください。

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「apseedsポータル」は、安否確認機能を搭載した業務用アプリです。従業員へのメッセージや問い合わせ、シフト管理をはじめ、業務効率化に役立つさまざまな機能を搭載しています。

気象庁の防災情報(震度速報)と連動して、全自動で安否確認を配信できる機能も搭載されており、災害発生時の安否確認体制の強化に役立ちます。メール通知とスマートフォン用アプリのプッシュ通知を併用することで、従業員への到着率および回答率の向上も期待できるでしょう。

また、中国語やベトナム語を含む多数の言語の自動翻訳に対応しているため、外国人労働者を雇用している場合にもおすすめです。

優良派遣事業者の認定を受けるために安否確認体制を整備したいと考えている方は、ぜひ「apseedsポータル」の導入をご検討ください。

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まとめ

安否確認体制は、従業員の命と企業の信頼を守るための重要な仕組みです。電話やメール、チャットツール、専用システムなど、各手段の特徴を理解したうえで、自社に適した安否確認体制を整備することが求められます。

特に、優良派遣事業者の認定を目指す場合は、派遣社員の安全確保を含めた実効性のある仕組みが必要です。

本記事では、優良派遣事業者認定制度の概要や認定基準、安否確認体制を有することを示す方法を解説しました。安否確認の取り組み事例を参考に、優良派遣事業者制度の申請準備を進めましょう。

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