2025年3月31日の改正により、36協定の一括届出に関する要件が緩和され、より柔軟な運用が可能になりました。これまでは、本社と同一の協定内容でなければ利用できなかった一括届出が、条件を満たせば異なる内容でも申請が認められます。

本記事では、36協定における一括届出の緩和ポイントを解説します。一括届出が利用できる条件のチェックリストや電子申請の方法も簡潔にまとめているので、実務の運用時に参考にしていただけますと幸いです。

36協定における一括届出の概要と従来の条件

36協定の一括届出とは、本社が複数の事業場分をまとめて提出できる制度です。まずは36協定の一括届出の概要と、2025年3月の要件緩和前に定められていた従来の条件を確認しておきましょう。

概要

36協定は、時間外労働や休日労働を行う際の労使協定で、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。企業全体でいくつかの拠点を展開している場合、協定内容が同一であれば「本社一括届出」の制度を活用して複数の事業場の届出をまとめて提出できます。

さらに、2025年3月の要件緩和により、一定条件を満たすと協定内容が異なる事業場も含めた申請が可能になり、一括届出の運用はより柔軟になっています。

提出手段には、書面や電子申請(e-Gov)、専用ポータルサイトの3つがあり、それぞれの方法によって求められる要件や操作手順が異なります。いずれの場合でも、あらかじめ各拠点で労働組合または過半数代表者と36協定を締結しておくことが前提です。

一括届出を活用すると、提出物の一元管理が実現でき、業務効率化や提出漏れの防止といったメリットが期待できます。

従来の条件

従来の36協定における一括届出では、基本的に本社と同じ協定内容でなければ利用できませんでした。例外として、事業場ごとに異なっていても差し支えない項目は、以下のとおりです。

  • 労働保険番号
  • 事業の種類
  • 事業の名称
  • 事業の所在地(電話番号)
  • 労働者数
  • 協定の成立年月日

これら以外の内容はすべて本社の36協定と一致している必要がありました。また、提出先は各事業場の所在地ではなく、本社所在地を所轄する労働基準監督署にまとめて提出する形式でした。

参照:就業規則、36協定の本社一括届出について|厚生労働省

【2025年3月】36協定における一括届出の要件緩和ポイント

2025年3月31日から、専用ポータルサイト経由の新たな提出方法が追加され、一括届出の対象が拡大しました。ここでは、具体的にどのような点が緩和されたのか確認しましょう。

本社と異なる協定でも同一内容の事業場は一括届出が可能

これまで36協定の一括届出を活用するには、本社と同一の協定内容であることが条件でした。しかし、2025年3月31日より、事業場同士で36協定の内容が同一であれば、本社と異なっていても一括届出が可能になりました。

ただし、この取り扱いの提出方法は専用ポータルサイト「確かめよう労働条件」経由のみに限られます。e-Govや書面を利用した一括届出は、従来どおり本社と36協定の内容が同一でなければなりません。

専用ポータルサイト経由の電子申請を新設

今回の緩和で、新たに専用ポータルサイト「確かめよう労働条件」経由での一括届出の電子申請が可能になりました。対象は36協定の様式第9号、9号の2、9号の3に限られます。

この新しい仕組みにより、専用ポータルサイト経由で申請すれば、本社と異なる協定内容でも事業場同士の内容が同一であれば一括届出ができるようになりました。

また、専用ポータルサイトには、申請を効率化する以下の機能が備わっています。

  • 本社一括届出用のCSVファイルを自動作成できる
  • 所在地から届出先の労働基準監督署を自動で選択できる
  • 有効期間満了前にリマインド通知が届く
  • 過去の申請内容を複写して再利用できる

新設されたこの申請方法により、対象の事業者はこれまでより柔軟かつ効率的に届出を行えるようになりました。

参照:時間外労働・休日労働に関する協定の本社一括届出について|厚生労働省

【チェックリスト】36協定の一括届出を利用する条件

36協定の一括届出を検討する際には、以下のすべての条件に当てはまっているかを事前に確認する必要があります。対象や提出方法に制限があるため、下表を参考に漏れがないかチェックしてみてください。

確認項目内容
対象様式36協定の様式第9号、9号の2、9号の3のいずれかである
協定内容の一致対象の事業場間で、以下の項目を除いた協定の内容が同一である
「労働保険番号」「事業の種類」「事業の名称」「事業の所在地(電話番号)」「労働者数」「協定の成立年月日」
提出方法専用ポータルサイト「確かめよう労働条件」を利用する予定がある
36協定の締結状況労働組合または過半数代表者との協定締結が済んでいる
準備状況36協定の一括届出に必要な情報やデータが揃っている

このチェックをすべてクリアすれば、一括届出を活用した効率的な手続きが進められます。

参照:時間外労働・休日労働に関する協定の本社一括届出について|厚生労働省

36協定の一括届出を利用するメリットとデメリット

36協定の一括届出を利用するメリットには、事務手続きの軽減や業務の効率化などが挙げられます。一方で、パソコンの操作に不慣れな場合は、かえって時間がかかる可能性もあるでしょう。

ここでは、一括届出のメリットとデメリットを解説するので、導入を検討する際の参考にしていただけますと幸いです。

一括届出のメリット

複数の事業場を抱える企業にとって、一括届出は申請業務をスムーズに進める手段となります。手続きの煩雑さを軽減できるため、限られた人員で労務管理を行う企業にも有効です。

具体的なメリットは以下のとおりです。

  • 事務手続きが軽減され、事業場ごとに個別で提出する手間が省ける
  • 業務効率化につながり、申請内容を一括で管理や処理がしやすくなる
  • 郵送が不要になるため、切手代や封筒代などのコストを削減できる

業務負担の軽減やコスト削減を実現でき、特に事業場の数が多い企業では大きなメリットになるでしょう。

一括届出のデメリット

36協定の一括届出にはいくつかのデメリットもあるため、すべての企業にとって最適とは限りません。導入前には、以下のようなデメリットを把握しておく必要があります。

  • 電子申請が前提となるため、パソコンの操作に不慣れな場合は時間がかかる可能性がある
  • 事業場数が少ない企業は、紙の申請のほうがスムーズな場合もある

このように、事業場数や社内のITリテラシーによっては、かえって非効率になるケースも想定されます。自社の状況に合わせて、利用を検討することが大切です。

36協定を一括届出する際の電子申請の流れ

36協定の一括届出を電子申請で行うためには、手順や操作方法を正しく理解しておきましょう。ここでは、e-Govと専用ポータルサイトのそれぞれを使った申請の流れを簡潔に紹介します。

e-Gov経由の場合

政府の行政手続きをオンラインで行える「e-Gov」からも、36協定の一括届出が可能です。以下で、e-Govを利用した基本的な申請手順の流れをまとめました。

  1. アカウントを作成してログインする
  2. 「時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)」を検索し、適切な様式を選択する
  3. 「一括届出事業場一覧作成ツール」でCSVデータを作成する
  4. 申請書入力画面で必要情報を入力し、作成したCSVデータを添付する
  5. 提出先を選択して送信する

e-Govでの手続きには、事前準備や操作に時間がかかる場合もあります。あらかじめ申請の流れを把握しておくと、スムーズに進められるでしょう。

参照:「36協定届」や「就業規則(変更)届」など労働基準法などの電子申請がさらに便利になりました!|厚生労働省

専用ポータルサイト経由の場合

2025年3月31日から導入された専用ポータルサイト「確かめよう労働条件」では、36協定の一括届出をWeb上で効率的に行えるようになりました。基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 専用ポータルサイトにアカウント登録またはログインする
  2. 申請に必要な事業場情報を登録する
  3. 一括届出用のCSVデータを作成し、画面上でエラーがないかチェックする
  4. 問題がなければCSVファイルをアップロードする
  5. 申請事業場と申請様式の選択をする
  6. 必要事項を入力して添付資料をアップロードする
  7. 「入力内容を点検する」ボタンで最終確認を行う
  8. エラーがなければPDFを出力できるようになる
  9. 控えを保存しておく

専用ポータルサイトには、複写・リマインド機能が備わっているため、更新手続きや定期的な申請にも対応しやすくなっています。日々の業務で手一杯な担当者にとっても、安心して使える仕組みといえるでしょう。

参照:作成支援ツールご利用の流れ 電子申請方法について|厚生労働省

まとめ

2025年3月31日からの要件緩和により、36協定の一括届出は、本社と協定内容が異なる場合でも事業場ごとに内容が同一であればまとめて提出ができるようになりました。ただし、「36協定の内容が同一であること」「専用ポータルサイト経由での提出に限ること」などの条件があります。

本記事では、36協定における一括届出の要件緩和のポイントやメリット・デメリットなどを解説しました。制度を正しく理解し、専用ポータルサイトを活用して労務手続きを効率化させましょう。

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