「一身上の都合」といった建前ばかりで、退職者の本当の退職理由がわからず悩んでいる方もいるでしょう。特に、年度末などはアルバイトや派遣スタッフの退職が重なりやすく、定着率の改善が急務となる場合もあります。
退職者の本音を知り、職場環境の改善につなげるために有効なのが「退職アンケート」です。退職アンケートはオンライン上で実施されることが多く、対面の面談に比べて退職者の本音を引き出しやすい特徴があります。
本記事では、退職アンケートの具体的なやり方を7つのステップで詳しく解説します。本音を引き出すための設問例や、回収したデータを定着率の向上に活かすコツもまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
退職アンケートとは

退職アンケートとは、退職が決まった従業員に対して行うアンケート調査のことです。主に退職に至った経緯や、会社に対する意見を聞き出すことを目的としています。海外では「エグジットサーベイ(Exit Survey)」とも呼ばれ、人材流動性が高い欧米企業では一般的な施策として定着しています。
以下で、退職アンケートのメリットとデメリットを見ていきましょう。
退職アンケートのメリット
退職アンケートの主なメリットは、以下の3点です。
- 退職者の本音を引き出しやすい
- データを蓄積・分析できる
- 低コストかつ手軽に実施できる
退職面談を実施する場合、退職者は「円満に退職したい」という心理から本音を言いにくい傾向にあります。一方で、非対面のアンケートであれば心理的なハードルが下がり、率直な意見を引き出しやすくなります。
また、同じ質問をすることでデータが蓄積され、部署ごとの傾向や離職の原因を客観的に分析できる点もメリットです。退職アンケートなら面談のような日程調整が不要で、最初にアンケートさえ準備できれば気軽に実施できるため、担当者の負担を軽減できます。
退職アンケートのデメリット
一方で、退職アンケートには以下のようなデメリットもあります。
- 個別の事情を深掘りできない
- アンケートの回答を拒否される可能性がある
- 退職者との関係構築が希薄になる
退職アンケートは質問がテンプレート化されている点が特徴です。そのため、一人ひとりの状況に合わせた深掘りができず、回答が浅くなる場合があります。また、会社に不満を抱えている場合には、ネガティブな感情から回答の協力を得られない可能性も考えられます。
なお、面談とは異なり、退職アンケートは事務的な手続きになりがちです。アルムナイ採用を見据えている場合や、退職後も良好な関係を築きたい場合には不向きな側面もあります。
退職アンケートのやり方【7ステップで解説】

退職アンケートを効果的に活用するためには、退職者が安心して本音を回答できる環境づくりと、分析しやすい設問設計が不可欠です。単にアンケートを実施するだけでなく、目的を明確にし、回収したデータを改善につなげる仕組みを整える必要があります。
以下で、実務に即した退職アンケートの具体的なやり方を7つのステップで解説するので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
1.実施形式を決める
まずは退職アンケートの実施形式を決めましょう。退職アンケートの実施形式は大きく分けてオンライン(Webフォームや専用システム)と紙(アンケート用紙)の2種類があります。
| 実施方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| オンライン(Webフォームや専用システム) | ・好きなタイミングで回答してもらえる ・自動集計やデータ分析がしやすく、担当者の負担を減らせる ・筆跡で個人が特定されないため、退職者が本音を回答しやすい | ・従業員数が多い場合には、専用システムを導入するためのコストがかかる可能性 ・スマートフォンの操作に不慣れな従業員には回答のハードルが高い |
| 紙(アンケート用紙) | ・デジタル機器やスマートフォンの操作に不慣れなシニア層などでも回答しやすい ・システム費用をかけず手軽に実施できる | ・筆跡から個人が特定される可能性 ・回答の回収や、手作業でのデータ集計・分析の手間 |
どちらの方法でも問題ありませんが、メールやチャットツールなどでURLを送れば対象者の好きなタイミングで回答できるオンラインでの実施がおすすめです。ただし、シニア雇用のスタッフなど、スマートフォンの操作に不慣れな従業員が対象の場合は、例外的にアンケート用紙を用意するといった配慮も必要です。
2.設問を設計する
実施方法を決めたら、次に設問を設計します。退職アンケートの設問は、具体的に「何を知りたいのか」を明確にしたうえで、自社の課題に合わせて設問を設計することが重要です。
退職アンケートでは、集計しやすく回答者の負担が少ない「選択式」を中心に、具体的なエピソードを拾うための「自由記述」を組み合わせるケースが一般的です。
質問数が多すぎると、回答者の集中力が切れて途中で離脱されたり、適当に回答されたりする恐れがあります。回答時間が5〜10分程度(10〜20問程度)に収まるよう、項目を絞り込むことがポイントです。
退職アンケートの設問例
退職アンケートの設問例を項目別にまとめました。
| 項目 | 具体的な質問 | 選択肢の例 |
|---|---|---|
| 退職理由 | 退職の理由として、最も当てはまるものを1つ選択してください | ・給与に不満を感じていた ・職場の人間関係に悩んでいた ・業務内容に不満があった ・シフトの融通が利かなかった ・教育体制に不満があった ・キャリア形成が不安だった |
| 職場環境への 満足度 | △△に対する満足度を選択してください(業務量・職場の雰囲気・上司のマネジメント・設備や休憩スペースなど) | ・非常に満足 ・満足 ・普通 ・不満 ・非常に不満 |
| 上司への フィードバック | ・業務で困ったときに相談しやすい環境でしたか ・日々の指導は適切でしたか | ・そう思う ・ややそう思う ・あまりそう思わない ・そう思わない(「そう思わない」と回答した場合は具体的なエピソードを自由記述で回答してもらう) |
| 他者への 推奨意向 | 親しい友人や知人に、当社で働くことをどの程度勧めたいと思いますか | 0(全く勧めない)〜10(非常に勧めたい)の11段階評価 |
| 再雇用への意向 | ・機会があれば、将来また当社で働きたいと思いますか ・再雇用制度を活用する可能性について選択してください | ・ぜひ働きたい(再雇用を希望する) ・条件次第で検討したい(まだわからない) ・働きたいとは思わない(再雇用を希望しない) |
これらを参考に、自社の課題に合わせて設問をカスタマイズしてください。
3.依頼方法とタイミングを決める
次のステップは、アンケート調査の依頼方法とタイミングの決定です。
退職アンケートを依頼するタイミングは、退職日の確定後、すべての事務手続きが終わったあとや、最終出社日の直前がおすすめです。退職の意思表示をした直後や引き止め交渉の最中は、警戒心が強く本音を引き出しにくいため避けましょう。
また、退職アンケートを依頼する際は、アンケートの目的を誠実に伝えることが重要です。「今後の職場環境改善のためにのみ結果を使用すること」「個人の人事評価に影響しないこと」を明記しましょう。メールやチャットツールでURLを送付する場合は、忘れずに労いの言葉を添えることも大切です。
4.第三者が回答を回収する
退職アンケートを実施する際は、第三者による回収ルートや閲覧制限を明確にすることがポイントです。「回答内容が周囲にバレるのでは」という不安があると、本音を引き出しにくくなるため注意が必要です。
具体的には、「人事労務・採用担当者のみが閲覧する」「上司やそのほかの従業員には個人が特定されないかたちで共有する」といったルールを設定しましょう。記名式ではなく匿名回答ができる設定にしたり、外部の退職アンケートツールを活用して第三者機関を介したりするのも方法の一つです。
5.現場にフィードバックする
アンケート結果を回収したら、現場にフィードバックします。回収したアンケート結果を人事部で管理するだけでは意味がありません。改善につなげるためには、現場の上司や役職者にフィードバックし、現状を認識してもらうことがポイントです。
現場の協力を得るためにも、個人の不満をそのまま伝えるのではなく、アンケート結果を客観的なデータとして共有しましょう。ネガティブな意見ほど「組織の構造的な課題」として現場に浸透させると、改善を進めやすくなります。
6.退職理由を分類する
退職アンケートを通じて退職者の本音を引き出したら、内容に応じて退職理由を分類しましょう。退職理由は大きく「不可避なもの」と「防止可能なもの」の2種類に分けられます。
| 不可避な退職理由 | 家業の後継ぎ・進学・就職など、企業側でのコントロールが難しいもの |
|---|---|
| 防止可能な退職理由 | 人事評価への不満・人間関係のトラブル・長時間労働・教育不足など、企業側の努力で改善できるもの |
アンケート結果から、「防止可能な退職理由」に該当する自社の課題を洗い出し、可視化することが離職防止・定着率改善につながります。
7.優先順位をつけて改善する
分類した「防止可能な退職理由」の中から、優先順位をつけて改善策を実行しましょう。
退職アンケートから浮き彫りになったすべての課題や要望を一度に解決することはできません。そのため、まずは離職者が多い属性の退職理由を解消することから始めていくと効果的です。また、高い成果を発揮していた人材が共通して挙げた不満など、組織への影響が大きい項目から優先的に着手するのも方法の一つです。
なお、企業の制度や体制上、すぐに対応するのが難しい内容もあります。ほかに優先するべきことはないかを見極めつつ、焦らずじっくりと時間をかけて職場環境の整備に取り組みましょう。
退職アンケートで本音を聞き出すことの重要性
退職アンケートを通じて退職者の本音を引き出すことは、企業のより良い経営判断につながります。本当の退職理由を見誤ってしまうと、企業は的外れな対策にコストを費やすことになるため注意が必要です。
多くの退職者は円満退職を望んでおり、対面での面談時には「一身上の都合」といった建前上の退職理由を使う傾向にあります。しかし、その裏には人間関係のトラブルや待遇への不満といった「本当の退職理由」が隠れているケースも少なくありません。
正しい改善策を実行するためにも、企業は退職者が対面では言いにくい不満を安心して吐き出せる環境を構築する必要があります。
退職アンケートを定着率向上に活かすコツ

退職アンケートの結果を定着率向上につなげるためには、収集したデータを多角的に分析することが重要です。単一の視点だけでなく、さまざまな角度や属性からデータを掛け合わせて分析することで、各層に特化した効果的な対策を実施できます。
設問に関しては、選択式の定量データで全体の離職傾向を掴みつつ、自由記述の定性データで退職者の感情や真因を深掘りするといった設計が有効です。あわせて、入社年次や職種別のクロス分析を行うのもおすすめです。
また、アンケート内で再雇用の意向を確認し、将来的なアルムナイ採用の可能性を残しておくことも、慢性的な人手不足の解消や即戦力確保につながる貴重な機会になります。アルムナイ採用のメリットや制度構築のポイントについては、こちらの記事もチェックしてみてください。
関連記事:アルムナイとは?アルバイト採用にも役立つ採用制度を簡単解説
まとめ
退職アンケートは、退職者の本音を引き出し、自社の課題を明らかにするための有効な手段です。実施する際は、回答者が安心して記入できるよう匿名性を確保し、設問を絞り込むなどの工夫が求められます。
本記事では、退職アンケートのやり方を7つのステップで解説しました。回収したアンケート結果を多角的に分析し、現場へのフィードバックや改善策の実行につなげることで、組織の定着率向上を目指しましょう。

人材不足をアルムナイで解決しませんか?
深刻な人材不足に退職者との”つながり”が効く
在職中から退職後まで、一貫した関係構築で退職スタッフの “再戦力化” をサポート!



