ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対して高い意欲を持ち、心身ともに充実した状態で働いていることを意味する言葉です。ワークエンゲージメントが高まると、離職率の低下や業務効率の向上など、企業にさまざまなメリットをもたらします。

一方で、派遣社員を雇用する企業の中には、「ワークエンゲージメントを高めることで、どのようにモチベーション低下を防げるのだろうか」と疑問を抱いている方もいるでしょう。

本記事では、厚生労働省が提唱するワークエンゲージメントの3つの構成要素を解説します。派遣社員のワークエンゲージメントを高めるための具体的な施策もまとめているので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントとは、従業員が仕事に対してポジティブな心理状態を保ちながら、高いパフォーマンスを発揮する状態を意味します。

ワークエンゲージメントが高まると、従業員は日々の業務に活力を感じるようになり、意欲を持って仕事に没頭できるようになります。その結果、個人の生産性が高まるだけではなく、企業の持続的な成長にもつながる点が特徴です。

なお、職場におけるエンゲージメントとして、「ワークエンゲージメント」と「従業員エンゲージメント」の2つがあります。主な違いは、ワークエンゲージメントが「仕事との関係」に着目しているのに対し、従業員エンゲージメントは「組織との関係」に着目している点です。

ワークエンゲージメント仕事のやりがい仕事への熱意仕事から得る活力
従業員エンゲージメント組織が目指すビジョンや方針への理解個人目標と組織の方向性の一致組織への貢献意欲

ワークエンゲージメントを高めることは、企業と従業員の双方にメリットがあり、企業規模の大小や業界を問わず重要な取り組みとして位置付けられています。

参照:ワークエンゲージメントとは | 厚生労働省

ワークエンゲージメントの3つの構成要素

ワークエンゲージメントの構成要素は、「活力(Vigor)」「熱意(Dedication)」「没頭(Absorption)」の3つです。従業員一人ひとりがそれぞれの要素を高いレベルで保てるようになると、結果的に組織全体の生産性向上につながります。

1.活力 (Vigor)

活力 (Vigor)とは、仕事に取り組む際に心身のエネルギーが満ちている状態のことです。具体的に、次のような状態にある人は活力が高いと考えられます。

  • 常に前向きに仕事に取り組める
  • 困難に直面しても諦めずに挑戦できる
  • 忙しいときや疲れているときでも安定したパフォーマンスを発揮できる

活力は、前向きな姿勢で仕事に取り組むために欠かせない要素の一つです。そのため、ワークエンゲージメントにおいても重要な要素として位置付けられています。

2.熱意 (Dedication)

熱意 (Dedication)とは、自分の仕事に誇りや使命感を感じている状態のことです。熱意はワークエンゲージメントを構成する要素の中でも特に感情的な側面を示すものです。例えば、次のような状態にある人は、熱意があると考えられます。

  • 自分の仕事が好き
  • 自分の成長を組織への貢献に結びつけられる
  • やりがいを持って難しい課題に取り組める

要するに、熱意は仕事における前向きな価値を見いだし、周囲にも良い影響を与える内面的なエネルギーだといえるでしょう。

3.没頭(Absorption)

没頭(Absorption)とは、集中力を発揮して時間を忘れるほど仕事に熱中している状態のことです。具体的に、次のような人は高い没頭状態にあると考えられます。

  • 長時間にわたって高い集中力を維持できる
  • 周囲の音が気にならないほど作業に没頭する
  • ミスが少なく作業スピードが速い

このように、没頭とは仕事への意識を高め、成果に直結する集中状態にあることを意味します。

参照:「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて | 厚生労働省

派遣社員のワークエンゲージメントの重要性

派遣社員のワークエンゲージメントは、企業の生産性向上や人材定着につながる重要な取り組みです。

派遣社員は雇用形態の違いから正社員と比較されやすく、待遇の差やキャリア形成の不透明さ、人間関係を築きにくい点などが原因で、モチベーションが低下しやすい傾向があります。その結果、離職率が高まり、業務の継続性にも影響を与えかねません。

そのため、派遣社員のワークエンゲージメントを高めることは、組織全体のパフォーマンスを底上げするうえで重要なポイントです。厚生労働省のアンケート調査によると、ワークエンゲージメントを高めることで職場にもたらされる主な変化として、以下のメリットがあげられています。

  • 従業員の定着率向上
  • 従業員同士のチームワーク強化
  • 従業員の仕事に対する意欲向上
  • 従業員の作業効率向上
  • 従業員自身のスキルアップに対する意欲向上

企業が組織全体の生産性を高めるためには、派遣社員が働きやすい環境を整え、定着率を向上させることが大切だといえるでしょう。

関連記事:アンコンシャスバイアスから派遣社員を守るには?具体例や解消方法を紹介

参照:働きがいのある職場づくりのための支援ハンドブック | 厚生労働省

【活力】派遣社員のワークエンゲージメントを高める施策

派遣社員が活力を持って仕事に取り組むためには、働く環境や制度の整備が欠かせません。ここでは、職場環境の見直しや健康経営の推進など、派遣社員の活力を向上させるための具体的な施策を紹介します。

職場環境を見直す

派遣社員のワークエンゲージメントを高めるためには、快適に働ける職場環境の整備が不可欠です。派遣社員が正社員と同様の環境で働けるようになると、待遇差による不安やストレスが和らぎ、モチベーションを維持しやすくなるためです。

同一労働同一賃金の観点からも、派遣社員が食堂や休憩室、更衣室などの福利厚生施設を利用できる環境を整える必要があります。さらに、オフィスの温度や湿度を適切に保ったり、デスク周りや作業場を整理整頓したりするなど、快適かつ安全な環境づくりに努めることもポイントです。

このような取り組みを通じて職場環境を整えると、派遣社員の活力向上につながります。

柔軟な勤務形態を導入する

柔軟な勤務形態を導入することも、派遣社員のワークエンゲージメントを高める施策の一つです。勤務時間や勤務場所に柔軟性があると、派遣社員はライフスタイルや家庭の事情に合わせて働けるようになり、仕事への活力を維持しやすくなります。

ほかにも、派遣社員一人ひとりに合わせて業務量やスケジュールを調整すると、心身の負担を軽減できるでしょう。仕事の進め方に裁量を持たせる仕組みを取り入れると、派遣社員の主体性が高まり、活力向上につながります。

健康経営を強化する

派遣社員のワークエンゲージメントを高めるためには、心身の健康をサポートすることも重要です。心身の健康が不安定な場合、どれほど環境や制度を整えても、仕事に対する活力は長くは続きません。

具体的には、メンタルヘルス対策としてカウンセリングやストレスチェックを実施したり、必要に応じて産業医や専門家のサポートを受けられる体制を整えたりすると効果的です。さらに、正社員と同様に定期健康診断やフォローアップを行うことで、派遣社員の健康に対する意識も高められるでしょう。

健康経営によって派遣社員が安心して業務に取り組めるようになると、活力の維持につながります。

【熱意】派遣社員のワークエンゲージメントを高める施策

派遣社員が熱意を持って仕事に取り組むためには、キャリアパスの明確化や定期的なフィードバックの実施などが効果的です。ここでは、派遣社員の熱意を向上させるための施策を紹介します。

キャリアパスを明確化する

派遣社員の仕事に対する熱意を引き出すためには、将来のキャリアパスを明確に示すことがポイントです。派遣社員が自身の成長イメージを具体化できれば、目的意識を持って日々の業務に取り組めるようになります。

企業として、「派遣社員が自社でどのようなスキルを身につけられるか」「どのようなキャリアを築けるか」などを明示し、成長を支援するための体制を整えましょう。単にキャリアパスについて説明するだけではなく、一人ひとりの目標に沿った業務機会を提供することも大切です。

正社員との交流機会を設ける

正社員との交流機会を設けることも、派遣社員のワークエンゲージメントを高める施策の一つです。正社員との交流を促すことで、派遣社員も組織の一員としての一体感を感じられるようになります。

例えば、全社員向けの社内イベントを定期的に開催したり、正社員と派遣社員が共同でプロジェクトに参加する機会を設けたりするなど、自然なかたちで接点を増やすことがポイントです。これにより、従業員同士が互いの知識や経験を共有でき、信頼関係を構築しやすくなります。

正社員との交流を通じて派遣社員が「自分も組織に貢献している」と実感できると、仕事への熱意を高めるきっかけになります。

定期的に1on1ミーティングを実施する

派遣社員の仕事に対する熱意を向上させるためには、定期的な1on1ミーティングを実施して価値観を共有すると効果的です。業務の意義や具体的な目標を伝えたうえで、評価やフィードバックを直接行うことで、派遣社員は職場における自身の存在価値を認識しやすくなります。

派遣社員との1on1ミーティングでは、日々の業務に関する評価やフィードバックに加えて、今後のキャリアの方向性も共有しましょう。コミュニケーションを重ねて派遣社員が自身の成長を意識できるようになると、長期的にワークエンゲージメントを高めやすくなります。

【没頭】派遣社員のワークエンゲージメントを高める施策

派遣社員が業務に没頭し、集中して取り組める環境を整えることは、組織全体の生産性向上につながります。ここでは、没頭の観点から派遣社員のワークエンゲージメントを高める施策を紹介するので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

研修・教育訓練を実施する

派遣社員が業務に没頭できる環境を整えるためには、研修や教育訓練の実施がおすすめです。業務に必要なスキルを習得するための研修を定期的に実施することで、派遣社員の作業効率が上がり、自信を持って仕事に集中できるようになります。

ほかにも、新しいツールの導入や業務プロセスの変更にあわせて適切なタイミングで教育訓練を実施できれば、派遣社員が戸惑うことなく対応できるでしょう。

また、学びをすぐに現場で実践できる環境を整えると、派遣社員の成長意欲も高まります。派遣社員がより安心して業務に没頭できるよう、教育体制を強化しましょう。

チャレンジできる機会を用意する

派遣社員のワークエンゲージメントを高めるためには、チャレンジできる機会を積極的に提供することが大切です。

新しい業務やプロジェクトにチャレンジすることで、派遣社員は自身の成長に気づいたり、達成感を味わったりしやすくなります。また、成功体験を積み重ねるうちに「自分にもできる」という自己効力感が生まれ、業務により没頭できるようになるでしょう。

派遣社員がチャレンジできる環境を整えることは、一人ひとりのモチベーション低下を防ぐだけではなく、組織の活性化にもつながります。

派遣社員にも仕事の裁量を持たせる

派遣社員にも一定の裁量を持たせることも、ワークエンゲージメントを高める施策の一つです。「自分の判断で仕事を進められる」「任されている」という感覚は、責任感や集中力を生み出すためです。

派遣社員に仕事の裁量を持たせる際は、目標や期待値などを明示し、成果を適切に評価する仕組みを整えましょう。評価基準が明確であるほど、派遣社員が自分の役割に没頭しやすくなり、主体的に行動するようになります。

派遣社員のワークエンゲージメント向上に取り組むポイント

施策の効果を最大化するため、派遣社員のワークエンゲージメント向上に取り組む際は、以下のポイントを押さえましょう。

  • 組織全体で一貫した体制を構築する
  • 現場責任者への支援を充実させる
  • 派遣社員との相互コミュニケーションを図る
  • 施策を効果検証して改善を繰り返す

派遣社員のワークエンゲージメントを高めるためには、組織全体で一貫した体制を構築する必要があります。一部の部署や担当者だけで施策を実施しても効果が限定的になり、派遣社員の活力や熱意を十分に高められない可能性があります。

具体的には、現場責任者が派遣社員の意見を定期的に収集し、経営層と共有する仕組みを整えることで、現場との一体感が高まります。

また、施策実施後には効果検証し、改善を重ねることも重要です。組織全体で継続的なサイクルを回すことで、派遣社員が安心して働ける環境が整い、結果的にワークエンゲージメントを高められます。

参照:働きがいのある職場づくりのための支援ハンドブック | 厚生労働省

まとめ

派遣社員のワークエンゲージメントを高めるためには、「活力」「熱意」「没頭」の3つの構成要素を意識した施策が重要です。企業は、柔軟な勤務形態の導入やキャリア支援、教育体制の強化などを通じて、派遣社員が安心して能力を発揮できる環境を整えることが求められます。

本記事では、派遣社員のワークエンゲージメントを高める施策を3つの構成要素別に紹介しました。派遣社員のモチベーション低下を防ぎ、定着率を高めるためにも、組織全体で一貫した体制を整えて継続的に施策に取り組んでいきましょう。

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